「伺う」と「参る」の違いは?意味・敬語の使い分けを例文でわかりやすく解説
「明日そちらへ伺います」
「明日そちらへ参ります」
どちらもビジネスでよく聞く表現です。
しかも、どちらも「行く」の謙譲表現として説明されることがあるため、
「伺うと参るは何が違う?」
「取引先へ行くときは、どちらを使えばいい?」
「先生のところに参ります、では先生への敬意にならない?」
「伺うには『聞く』という意味もあるの?」
「お伺いしますは二重敬語?」
と迷うことがあります。
簡単にいうと、「伺う」は訪問先・質問相手など、その行為の向かう先を立てる謙譲語Ⅰです。一方、「参る」は自分側の「行く・来る」という行為を、話している相手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱ(丁重語)です。
たとえば、先生の家へ行くことを別の人へ話す場合、
「明日、田中先生のお宅へ伺います」
なら、訪問先である田中先生を立てています。
一方、
「明日、田中先生のお宅へ参ります」
という場合、「参ります」が丁重にしている相手は、基本的にはその文を聞いている相手です。
田中先生を立てるために使われているわけではありません。
つまり、
伺う=「どこ・誰に向かうか」が重要
参る=「誰に話しているか」が重要
という違いがあります。
ただし、訪問先の相手に直接「明日伺います」「明日参ります」と伝える場合には、行為の向かう先と話し相手が同じになるため、実際にはどちらも自然に使えることがあります。
この記事では、「伺う」と「参る」の違いを文化庁の「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ」という考え方から整理し、「聞く・尋ねる」の意味の「伺う」、「伺ってください」の誤用、「お伺いします」「伺わせていただきます」などの注意点まで詳しく解説します。
- 「伺う」と「参る」の違い【結論】
- 「伺う」とは?
- 「参る」とは?
- 文化庁が示す「伺う」と「参る」の違い
- 「先生のところに伺います」と「先生のところに参ります」の違い
- 訪問先本人に話す場合は、どちらも自然になる
- 「伺う」は行き先によって使えないことがある
- 「弟のところに参ります」なら使える
- 「御社へ伺います」と「御社へ参ります」はどちらが自然?
- 「参る」は「来る」にも使える
- 「伺う」には「聞く」の意味がある
- 「伺う」には「尋ねる・質問する」の意味もある
- 「話を伺う」と「質問を伺う」は同じ?
- 「伺ってください」はなぜ注意が必要?
- 「お伺いします」は二重敬語?
- 「伺わせていただきます」は正しい?
- 「参らせていただきます」は必要?
- 「伺う」と「訪問する」の違い
- 「参る」と「行く・来る」の違い
- 「参る」には敬語以外の意味もある
- 「伺う」と「参る」で迷ったときの3秒判定
- 「伺う」を使った例文
- 「参る」を使った例文
- ビジネスメールでの使い分け例
- よくある間違い1:相手の行動に「伺う」を使う
- よくある間違い2:自分側の人を「伺う」で立てる
- よくある間違い3:「参る」を使えば行き先を立てられると思う
- よくある間違い4:丁寧にするため敬語を重ね続ける
- 「伺う」と「参る」に関するよくある質問
- まとめ
- 参考資料・出典
「伺う」と「参る」の違い【結論】
| 比較項目 | 伺う | 参る |
|---|---|---|
| 敬語の分類 | 謙譲語Ⅰ | 謙譲語Ⅱ(丁重語) |
| 基本的な働き | 行為の向かう先を立てる | 自分側の行為を話し相手に丁重に述べる |
| 「行く」の意味 | ○ | ○ |
| 「来る」の意味 | 訪問する意味で使える | ○ |
| 「聞く」の意味 | ○ | × |
| 「尋ねる・質問する」の意味 | ○ | × |
| 行き先を立てる働き | ある | 基本的にはない |
| 行き先が自分側の人でも使えるか | 通常は使わない | 使える |
| 代表例 | 先生のお宅へ伺います | これから会社へ参ります |
一言で覚えるなら、
伺う=「訪問先・質問相手を立てる」
参る=「自分が行く・来ることを丁重に言う」
です。
「伺う」とは?
「伺う」の意味
「伺う(うかがう)」は、「聞く」「尋ねる」「訪問する」などをへりくだって表す言葉です。
代表的には、次の3つの使い方があります。
- 「聞く」の謙譲表現
- 「尋ねる・質問する」の謙譲表現
- 「訪問する」の謙譲表現
たとえば、
- 以前からお話は伺っております。
- 先生のご意見を伺いたいと思います。
- 一つ伺ってもよろしいでしょうか。
- 明日、御社へ伺います。
- 午後3時にご自宅へ伺います。
などと使います。
「伺う」は謙譲語Ⅰ
文化庁は、「伺う」を「謙譲語Ⅰ」に分類しています。
謙譲語Ⅰとは、自分側から相手側や第三者へ向かう行為について、その行為の向かう先を立てる表現です。
たとえば、
「先生のところに伺います」
では、訪問という行為が先生へ向かっています。
そこで「行く・訪問する」の代わりに「伺う」を使うことによって、訪問先である先生を立てています。
「自分を低くしている」という説明だけでは少し足りません。
より正確には、
「自分側から相手へ向かう行為をへりくだって表現し、その向かう先を立てている」
と理解するとよいでしょう。
「参る」とは?
「参る」の意味
今回比較する敬語としての「参る」は、主に「行く」「来る」を丁重に表す言葉です。
たとえば、
- 明日、東京へ参ります。
- 担当の者がすぐに参ります。
- ただいまそちらへ参ります。
- これから本社へ参ります。
- 午後には戻って参ります。
などと使います。
「参る」は謙譲語Ⅱ(丁重語)
文化庁は、「参る」を「謙譲語Ⅱ(丁重語)」に分類しています。
謙譲語Ⅱとは、自分側の行為を、話や文章の相手に対して丁重に述べる表現です。
たとえば、
「明日から海外へ参ります」
という場合、海外という場所を立てているわけではありません。
「海外へ行きます」という自分の行為を、聞いている相手に対して改まって伝えています。
つまり、
伺う → 行為の向かう先への敬語
参る → 話している相手への敬語
という違いです。
文化庁が示す「伺う」と「参る」の違い
文化庁には、この違いを非常にわかりやすく示す例があります。
小学校時代の恩師・田中先生の家へ行くことを、中学校時代の恩師・加藤先生へ話す場面です。
田中先生を立てたいのであれば、
「明日、田中先生のところに伺います」
とします。
なぜなら、「伺う」は訪問するという行為の向かう先である田中先生を立てる謙譲語Ⅰだからです。
一方、
「明日、田中先生のところに参ります」
と述べた場合、「参ります」が丁重にしている相手は、話を聞いている加藤先生です。
この一文で田中先生を立てているわけではありません。
この例を理解すると、「伺う」と「参る」の違いがかなり明確になります。
「先生のところに伺います」と「先生のところに参ります」の違い
では、次の2つはどちらが正しいのでしょうか。
「先生のところに伺います」
「先生のところに参ります」
実は、文脈によってはどちらも使えます。
ただし、敬語としての働きが異なります。
「先生のところに伺います」
訪問先である先生を立てています。
つまり、
先生 ← 伺う
という敬意の向きです。
「先生のところに参ります」
「参る」は、その文を聞いている相手に対して、自分の「行く」を丁重に述べています。
したがって、話し相手が先生とは別の人であれば、「参る」によって訪問先の先生を立てているわけではありません。
ここが大切なポイントです。
訪問先本人に話す場合は、どちらも自然になる
では、田中先生本人に電話をして、
「明日、先生のところへ伺います」
と伝える場合はどうでしょうか。
この場合、「行為の向かう先」と「話をしている相手」が、どちらも田中先生です。
そのため、
「明日、そちらへ伺います」
「明日、そちらへ参ります」
のどちらも事実上自然に使えます。
文化庁も、向かう先と話し相手が一致する場合には、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱが実際上よく似た働きになることを説明しています。
そのため、日常のビジネス場面では「どちらも使われていて違いが分からない」と感じやすいのです。
「伺う」は行き先によって使えないことがある
「伺う」は、向かう先を立てる言葉です。
そのため、向かう先が立てるのにふさわしい相手であることが基本です。
たとえば、取引先の人へ、
「明日は先生のお宅へ伺います」
というのは自然です。
一方、同じ取引先の人へ、
「明日は弟の家へ伺います」
というと、自分側の弟を敬語で立てることになってしまいます。
文化庁は、このような使い方を不自然・不適切な例として説明しています。
「弟のところに参ります」なら使える
一方、
「明日は弟のところに参ります」
は使えます。
なぜなら、「参る」が丁重にしているのは「弟」ではなく、その話を聞いている相手だからです。
つまり、行き先が、
- 自分の弟
- 自分の会社
- 倉庫
- 駅
- 海外
など、特に敬う対象でなくても、話し相手に自分の移動を丁重に伝えるために「参る」を使うことができます。
| 表現 | 基本的な考え方 |
|---|---|
| 先生のところに伺います | ○ 先生を立てる |
| 弟のところに伺います | △ 自分側の弟を立てることになるため通常は不適切 |
| 先生のところに参ります | ○ 話し相手に丁重に述べる |
| 弟のところに参ります | ○ 話し相手に丁重に述べる |
「御社へ伺います」と「御社へ参ります」はどちらが自然?
取引先の担当者へ直接メールを送る場面では、どちらも使えます。
たとえば、
「明日10時に御社へ伺います」
「明日10時に御社へ参ります」
です。
相手本人・相手の会社が訪問先であり、同時にその相手へ文章を送っているため、実用上の差は小さくなります。
ただし、敬語の仕組みとしては、
伺います → 訪問先である相手側を立てる
参ります → メールの相手に自分の移動を丁重に伝える
という違いがあります。
訪問という場面では、相手側へ出向く意味がはっきりする「伺います」が特に使いやすいでしょう。
「参る」は「来る」にも使える
「参る」は「行く」だけでなく、「来る」の謙譲語Ⅱとしても使われます。
たとえば、電話で、
「担当者がすぐに参りますので、少々お待ちください」
ということができます。
これは、
「担当者がすぐに来ます」
を、相手に対して丁重に述べた表現です。
ほかにも、
- まもなく電車が参ります。
- 担当の者が後ほど参ります。
- こちらまで車で参りました。
などと使えます。
「行く・来る」の両方を表せることも「参る」の特徴です。
「伺う」には「聞く」の意味がある
「参る」と大きく異なるのが、この点です。
「伺う」は、訪問する意味だけでなく、「聞く」の謙譲語として使えます。
たとえば、
「そのお話は以前から伺っております」
という場合です。
これは、
「その話は以前から聞いています」
をへりくだって表現しています。
ほかにも、
- お噂はかねがね伺っております。
- 詳しい事情を伺いました。
- 先生のお話を伺うことができました。
などと使います。
この意味で「参る」に置き換えることはできません。
「伺う」には「尋ねる・質問する」の意味もある
「伺う」は、相手に質問する意味でも使えます。
たとえば、
「一つ伺ってもよろしいでしょうか」
という表現です。
これは、
「一つ尋ねてもよろしいでしょうか」
という意味です。
ほかにも、
- ご意見を伺いたいと思います。
- ご希望を伺ってもよろしいでしょうか。
- 詳しい経緯を伺えますでしょうか。
- 一点だけ伺いたいことがあります。
などと使えます。
「話を伺う」と「質問を伺う」は同じ?
「伺う」には「聞く」と「尋ねる」の両方の意味があるため、文脈によって意味が変わります。
たとえば、
「先生のお話を伺いました」
なら、先生の話を「聞いた」という意味です。
一方、
「先生に今後の方針を伺いました」
なら、先生に方針を「尋ねた」という意味になることがあります。
前後の文脈から、「聞く」なのか「尋ねる」なのかを判断します。
「伺ってください」はなぜ注意が必要?
受付などで、客に、
「詳しくは担当者に伺ってください」
と言うのは、基本的には適切ではありません。
「伺う」は謙譲語Ⅰだからです。
客の「尋ねる」という行為に「伺う」を使うと、質問の向かう先である担当者を立てることになり、肝心の客を立てる尊敬表現にはなりません。
文化庁も、この例について、
「担当者にお聞きください」
「担当者にお尋ねください」
などとするのが適切だと説明しています。
| 表現 | 判断 |
|---|---|
| 担当者に伺ってください | 通常は避ける |
| 担当者にお聞きください | 自然 |
| 担当者にお尋ねください | 自然 |
「お伺いします」は二重敬語?
「伺う」はすでに謙譲語なので、
「お伺いします」
は「お+伺う+する」となり、一見すると敬語が重なっているように見えます。
文化庁の「敬語の指針」では、「お伺いする」「お伺いいたす」「お伺い申し上げる」について、形式的には二重敬語に当たるものの、習慣として定着している表現として挙げています。
そのため、
「明日、お伺いします」
を一律に誤用とする必要はありません。
実際のビジネスでも広く使われています。
ただし、簡潔に、
「明日、伺います」
としても十分丁寧です。
「伺わせていただきます」は正しい?
「伺わせていただきます」も、ビジネスでよく目にします。
ただし、「させていただく」は、付ければ必ず丁寧になる万能表現ではありません。
一般に、相手の許可を受けて行うことや、そのことによって自分が恩恵を受けるという文脈と相性がよい表現です。
たとえば、取引先から、
「ぜひ弊社へお越しください」
と言われたうえで、
「それでは、明日10時に伺わせていただきます」
と返すことはできます。
一方、通常の訪問予定を知らせるだけなら、
「明日10時に伺います」
で十分です。
必要以上に敬語を重ねない方が、文章がすっきりすることもあります。
「参らせていただきます」は必要?
「参らせていただきます」も耳にすることがありますが、単に自分が行くことを丁重に述べるだけなら、
「参ります」
で十分です。
たとえば、
「明日10時に御社へ参ります」
だけで丁寧な文章です。
相手の許可によって訪問するという意味を特に表したい場合を除き、無理に「させていただく」を付ける必要はありません。
「伺う」と「訪問する」の違い
「訪問する」は、人や場所を訪ねることを客観的に表す言葉です。
それ自体は謙譲語ではありません。
たとえば、
「担当者が顧客を訪問しました」
というように使います。
一方、取引先本人に対して、
「明日、御社へ伺います」
と言えば、訪問する自分の行為をへりくだり、相手側を立てています。
つまり、
訪問する=行為を客観的に表す
伺う=相手側を立てながら訪問することを表す
という違いがあります。
「参る」と「行く・来る」の違い
「参る」は、普通の「行く・来る」を話し相手に対して丁重に述べる表現です。
たとえば、
「明日、本社へ行きます」
より、
「明日、本社へ参ります」
の方が改まった表現です。
また、
「担当者が来ます」
より、
「担当の者が参ります」
の方が、顧客などへ丁重に説明する表現になります。
「参る」には敬語以外の意味もある
「参る」には、今回扱っている謙譲語Ⅱ以外にもさまざまな意味があります。
たとえば、
- 神社に参る
- 暑さに参る
- 完全に参った
- 彼女にすっかり参っている
などです。
「神社に参る」では参詣する意味、「暑さに参る」では困る・弱る意味、「参った」では降参する意味などになります。
これらは、「伺う」と比較している「行く・来る」の丁重語としての「参る」とは別の用法です。
「伺う」と「参る」で迷ったときの3秒判定
| こんな場合 | 選びやすい言葉 |
|---|---|
| 取引先の会社へ訪問する | 伺うが使いやすい |
| 先生のお宅を訪問する | 伺う |
| 目上の相手へ質問する | 伺う |
| 目上の相手の話を聞く | 伺う |
| 自分が海外へ行くことを丁重に伝える | 参る |
| 自分の弟のところへ行くことを目上の相手に丁重に伝える | 参る |
| 自社の担当者が相手のところへ来る | 参る |
| 訪問先本人へ「明日行きます」と伝える | 伺う/参るの両方が使える |
迷った場合は、次の2つを考えてみてください。
「訪問先・質問相手そのものを立てたい?」 → 伺う
「自分が行く・来ることを、今話している相手に丁重に伝えたい?」 → 参る
これが最も基本的な使い分けです。
「伺う」を使った例文
訪問する意味
- 明日10時に御社へ伺います。
- 来週、先生のお宅へ伺う予定です。
- 後ほど担当者と一緒に伺います。
- ご都合がよろしければ、午後に伺いたいと存じます。
聞く意味
- その件については以前から伺っております。
- 先生のお話を詳しく伺いました。
- ご事情は担当者から伺っております。
尋ねる意味
- 一点伺ってもよろしいでしょうか。
- 今後の予定を伺いたいと思います。
- お客様のご希望を伺います。
「参る」を使った例文
- 明日から大阪へ参ります。
- これから本社へ参ります。
- 担当の者がすぐに参ります。
- 午後3時ごろ、そちらへ参ります。
- 来週は海外出張へ参ります。
- 本日は電車で参りました。
- 後ほど改めて参ります。
ビジネスメールでの使い分け例
取引先を訪問する
明日14時に、弊社担当者2名で貴社へ伺います。
何卒よろしくお願いいたします。
訪問先本人に予定を伝える
それでは、10月10日午前10時に伺います。
当日はどうぞよろしくお願いいたします。
自分の移動予定を丁重に伝える
明日から3日間、名古屋支店へ参ります。
期間中のご連絡はメールにてお願いいたします。
相手の意見を聞く
今後の進め方について、ご意見を伺えれば幸いです。
相手の要望を尋ねる
ご希望の納期について伺ってもよろしいでしょうか。
よくある間違い1:相手の行動に「伺う」を使う
相手に対して、
「詳しくは担当者に伺ってください」
とするのは基本的に避けます。
「伺う」は自分側の行為に用いて、行為の向かう先を立てる謙譲語Ⅰです。
相手の行為を立てるなら、
「担当者にお尋ねください」
「担当者にお聞きください」
などとします。
よくある間違い2:自分側の人を「伺う」で立てる
目上の人に対して、
「明日は父のところへ伺います」
とすると、自分側の父を立てることになります。
通常は、
「明日は父のところへ参ります」
「明日は父のところへ行きます」
などと表現します。
よくある間違い3:「参る」を使えば行き先を立てられると思う
「参る」は丁寧なので、
「先生のところへ参ります」と言えば、先生を立てている
と思われることがあります。
しかし、文化庁の分類では、「参る」は基本的に話し相手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱです。
別の人に「先生のところへ参ります」と話しても、その「参る」によって先生を立てているわけではありません。
先生を訪問先として明確に立てたいなら、
「先生のところへ伺います」
が適しています。
よくある間違い4:丁寧にするため敬語を重ね続ける
たとえば、
「明日お伺いさせていただきます」
のような表現は実際に使われています。
しかし、文章を丁寧にするために敬語を重ねれば重ねるほどよいわけではありません。
多くの場合、
「明日伺います」
「明日お伺いします」
で十分に丁寧です。
何を立て、誰に丁寧に述べているのかを考えながら、必要な敬語だけを使うと文章が分かりやすくなります。
「伺う」と「参る」に関するよくある質問
Q1. 「伺う」と「参る」は同じ意味ですか?
「行く」という意味では重なりますが、敬語としての働きが異なります。
「伺う」は行為の向かう先を立てる謙譲語Ⅰ、「参る」は自分側の「行く・来る」を話し相手に丁重に述べる謙譲語Ⅱです。
Q2. 取引先へ行くなら「伺う」と「参る」のどちらですか?
取引先本人へ訪問予定を伝える場合は、どちらも使えることがあります。
訪問先である取引先を立てることを明確に示すなら、「伺います」が特に分かりやすい表現です。
Q3. 「明日そちらへ参ります」は正しいですか?
正しい表現です。
「参る」は「行く・来る」を、話し相手に対して丁重に述べる言葉です。
Q4. 「先生のところへ参ります」は間違いですか?
間違いではありません。
ただし、「参る」そのものが先生を立てているとは限りません。
先生とは別の人に話している場合、「参る」はその話し相手に対する丁重語として働きます。
Q5. 「一つ伺ってもよろしいですか」は正しいですか?
自然な表現です。
この「伺う」は「尋ねる・質問する」の謙譲語です。
Q6. 「お話を伺いました」の「伺う」はどういう意味ですか?
この場合は「聞く」の謙譲語です。
「お話を聞きました」を、話の相手を立てて表現しています。
Q7. 「お伺いします」は二重敬語ですか?
形式上は敬語が重なっていますが、文化庁の「敬語の指針」では「お伺いする」は習慣として定着している二重敬語の例に挙げられています。
そのため、一律に誤りとする必要はありません。
Q8. 「伺ってください」は使えませんか?
客や目上の相手自身の「尋ねる」という行為を表すために「伺ってください」とするのは、通常は適切ではありません。
「お聞きください」「お尋ねください」などを使います。
まとめ
「伺う」と「参る」は、どちらも「行く」の謙譲表現として使われますが、敬語としての働きが異なります。
| 伺う | 参る |
|---|---|
| 謙譲語Ⅰ | 謙譲語Ⅱ(丁重語) |
| 行為の向かう先を立てる | 自分側の行為を話し相手に丁重に述べる |
| 先生のお宅へ伺います | 明日大阪へ参ります |
| 「聞く」「尋ねる」の意味もある | 「行く」「来る」を丁重に表す |
| 行き先が立てるべき相手かが重要 | 行き先を立てる必要はない |
覚え方としては、
伺う=「行き先・質問相手を立てる」
参る=「自分が行く・来ることを相手に丁重に伝える」
とすると分かりやすいでしょう。
特に重要なのが、
「先生のところへ伺います」
と、
「先生のところへ参ります」
では、敬語が向いている相手が同じとは限らないことです。
「伺う」は訪問先である先生を立てます。
一方、「参る」は、その文章を聞いている相手に対して自分の移動を丁重に述べます。
ただし、訪問先本人に直接話している場合には、行為の向かう先と話し相手が一致するため、「伺います」「参ります」のどちらも自然になる場面があります。
また、「伺う」には、
「お話を伺う」=聞く
「ご意見を伺う」=尋ねる
という使い方があります。
文章で迷った場合は、
「その行為の向かう先を立てたいのか」
「自分の行動を、今話している相手へ丁重に伝えたいのか」
を確認してください。
前者なら「伺う」、後者なら「参る」が基本です。
参考資料・出典
本記事は、以下の辞書・文化庁の資料を参照し、内容を整理したうえで作成しています。
-
コトバンク「伺う」
― 「聞く」「尋ねる」「訪問する」の謙譲語としての意味 -
コトバンク「参る」
― 「行く・来る」の丁重な表現など、「参る」の意味・用法 -
文化庁「第二話『敬語の基本』理解度チェックの解答」
― 「伺う」を謙譲語Ⅰ、「参る」を謙譲語Ⅱ(丁重語)として整理し、両者の働きの違いを解説 -
文化庁「第六話『間違いやすい敬語(3)~謙譲語Ⅰ VS 謙譲語Ⅱ』」
― 「先生のところに伺います」と「先生のところに参ります」の敬語としての違い -
文化庁「第四話『間違いやすい敬語(1)~尊敬語 VS 謙譲語Ⅰ』」
― 「担当者に伺ってください」が通常適切でない理由、「お伺いする」など定着した二重敬語についての解説
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