Wi-Fi 6やWi-Fi 7について調べていると、
「OFDM」
「OFDMA」
という非常によく似た用語が登場します。
末尾に「A」が付いているかどうかだけなので、
「OFDMとOFDMAは何が違う?」
「OFDMAはOFDMの高速版?」
「Wi-Fi 5はOFDM、Wi-Fi 6はOFDMA?」
「サブキャリアやResource Unitとは何?」
「Wi-Fi 7ではOFDMAはどう進化した?」
と迷いやすい用語です。
結論からいうと、OFDMは1つのチャネルを多数の直交するサブキャリアに分割してデータを送る変調・多重化方式です。一方、OFDMAは、そのサブキャリアを複数のグループに分け、複数ユーザーへ同じ通信機会の中で割り当てられる多元接続方式です。
Wi-Fiを前提に簡単に表現すると、
OFDM=「多数の細い周波数へ分けるが、1回の送信では基本的に1ユーザーが使う」
OFDMA=「その細い周波数をさらにグループ分けし、複数ユーザーが同時に使える」
という違いです。
一言で覚えるなら、
OFDM=「周波数を細かく分ける」
OFDMA=「分けた周波数を複数ユーザーへ振り分ける」
です。
CiscoのWi-Fi 6技術資料でも、802.11acまでのOFDMでは1回のPPDUで1ユーザーにサブキャリア群を割り当てるのに対し、802.11axのOFDMAではサブキャリア群をResource Unit(RU)として複数クライアントへ個別に割り当てる仕組みが説明されています。
この記事では、「OFDM」と「OFDMA」の違いから、サブキャリア、直交性、Resource Unit、アップリンク・ダウンリンク、Wi-Fi 5・6・6E・7との関係まで詳しく解説します。
- 「OFDM」と「OFDMA」の違い【結論】
- 「OFDM」とは?
- 「サブキャリア」とは?
- なぜ1本の周波数で全部送らない?
- OFDMの「O=Orthogonal」とは?
- OFDMを「大型トラック」で例えると?
- OFDMの弱点は「少ないデータでもチャネル全体を使う」こと
- 「OFDMA」とは?
- OFDMAの「A」は何?
- 「Resource Unit(RU)」とは?
- 「トーン」と「サブキャリア」の違い
- Wi-Fi 6ではサブキャリア間隔も細かくなった
- OFDMとOFDMAの違いを「配送トラック」で比較
- OFDMとOFDMAでは「チャネル幅」が変わる?
- OFDMAなら端末数と同じ数だけ分割できる?
- OFDMAではアクセスポイントが交通整理をする
- 「ダウンリンクOFDMA」とは?
- 「アップリンクOFDMA」とは?
- Wi-Fi 6以前は本当に複数端末が同時通信できなかった?
- OFDMとMU-MIMOは両立する?
- OFDMAはWi-Fiの最高速度を上げる技術?
- OFDMAのメリットは「待ち時間を減らしやすい」こと
- Wi-Fi 5はOFDM?
- Wi-Fi 6はOFDMA?
- Wi-Fi 6EでもOFDMAを使う?
- Wi-Fi 7ではOFDMAはどうなる?
- Multi-RUは何が便利?
- OFDMはWi-Fi 7でなくなった?
- OFDMAは携帯電話でも使われる?
- 「OFDM・OFDMA」で迷ったときの3秒判定
- 「OFDM」を使った例文
- 「OFDMA」を使った例文
- 具体例で比較:スマート家電が1台だけ
- 具体例で比較:スマート家電が20台
- よくある間違い1:「OFDMとOFDMAはまったく別の仕組み」と思う
- よくある間違い2:「OFDMAはOFDMより単純に高速」と思う
- よくある間違い3:「OFDMは周波数を分割しない」と思う
- よくある間違い4:「OFDMAなら複数端末が自由に同時通信する」と思う
- よくある間違い5:「Wi-Fi 6ではOFDMを一切使わない」と思う
- よくある間違い6:「Wi-Fi 5は必ず1台ずつしか通信できない」と思う
- よくある間違い7:「Wi-Fi 7ではOFDMAは不要になった」と思う
- 「OFDM」と「OFDMA」に関するよくある質問
- まとめ
- 参考リンク・出典
「OFDM」と「OFDMA」の違い【結論】
| 比較項目 | OFDM | OFDMA |
|---|---|---|
| 正式名称 | Orthogonal Frequency Division Multiplexing | Orthogonal Frequency Division Multiple Access |
| 日本語 | 直交周波数分割多重 | 直交周波数分割多元接続 |
| 基本的な考え方 | チャネルを多数のサブキャリアへ分割 | サブキャリア群を複数ユーザーへ割り当て |
| Wi-Fiでのユーザー利用 | 1回の送信では基本的に1ユーザー | 1回の送信で複数ユーザーを収容可能 |
| Resource Unit | 通常使わない | 利用する |
| 得意なこと | マルチパス環境で効率よくデータ伝送 | 多数端末の通信効率・遅延改善 |
| Wi-Fi 5 | 利用 | 非対応 |
| Wi-Fi 6 | 基礎技術として関係 | 主要機能として導入 |
| Wi-Fi 6E | 関係あり | 6GHzでも利用 |
| Wi-Fi 7 | 基礎技術として継続 | Multi-RUでさらに発展 |
3秒で判断するなら、
「1ユーザー向けに多数のサブキャリアを使う?」 → OFDM
「複数ユーザーへサブキャリア群を分ける?」 → OFDMA
と考えると分かりやすいでしょう。
「OFDM」とは?
データを多数の直交するサブキャリアへ分けて送る方式
OFDMは、
Orthogonal Frequency Division Multiplexing
の略です。
日本語では、
直交周波数分割多重
と呼ばれます。
1本の高速なデータ列を多数の比較的低速なデータ列へ分け、それぞれを近接した複数のサブキャリアで同時送信する方式です。
Wi-Fiでは、
- IEEE 802.11a
- IEEE 802.11g
- IEEE 802.11n
- IEEE 802.11ac
などでOFDMが利用されてきました。
「サブキャリア」とは?
Wi-Fiで使う20MHz、40MHz、80MHzなどのチャネルを、さらに細かい周波数へ分割したものが、
サブキャリア
です。
たとえば従来の20MHz OFDMでは、多数のサブキャリアを並べて情報を伝送します。
Ciscoの解説では、従来の20MHz OFDMについて、312.5kHz間隔の64サブキャリアへ分割する構造が説明されています。
それぞれのサブキャリアを利用して少しずつデータを送り、全体として高速な通信を実現します。
なぜ1本の周波数で全部送らない?
無線通信では、建物の壁・床・家具などによって電波が反射します。
同じ電波が、
- 直接届く経路
- 壁で反射する経路
- 床で反射する経路
など複数の経路から少しずつ時間差を持って到着する現象があります。
これを、
マルチパス
と呼びます。
OFDMは1本の非常に高速な信号として送るのではなく、多数の比較的低速なサブキャリアへ分けることで、マルチパスの影響へ対応しやすくしています。
OFDMの「O=Orthogonal」とは?
Orthogonalは、
直交
という意味です。
サブキャリア同士を数学的に直交する関係で配置することで、周波数を密接に並べながらも受信側でそれぞれを分離しやすくします。
一般的な周波数分割では、隣の信号と干渉しないように周波数間へ大きな空白を設ける必要があります。
OFDMでは直交性を利用することで、サブキャリアのスペクトルが重なっていても、それぞれの情報を復元できます。
これにより周波数を効率よく利用できます。
OFDMを「大型トラック」で例えると?
OFDMを大型トラックに例えてみましょう。
1台の利用者Aが大量の荷物を運ぶため、大型トラックの荷台を多数の小さな区画へ分割したとします。
荷台の区画1、区画2、区画3……を同時に利用して、
利用者Aの荷物だけを運ぶ
イメージです。
荷台は細かく分かれていますが、トラック全体を使っているのは1人です。
これがWi-Fiにおける従来のOFDMを理解するイメージです。
OFDMの弱点は「少ないデータでもチャネル全体を使う」こと
OFDMそのものが非効率という意味ではありません。
しかし多数の端末を同時に処理するという観点では課題があります。
たとえばスマート家電Aが、
「室温22℃」
という非常に小さな情報だけ送るとします。
従来の単一ユーザーOFDM方式では、その通信機会でチャネルのサブキャリア群をAが利用します。
次にスマート家電B、次にスマートフォンCというように、各端末が通信機会を待ちます。
接続端末が少なければ問題になりにくいですが、数十台・数百台と増えると、
「自分の通信順番を待つ時間」
が問題になってきます。
「OFDMA」とは?
OFDMのサブキャリアを複数ユーザーで分けて利用する方式
OFDMAは、
Orthogonal Frequency Division Multiple Access
の略です。
日本語では、
直交周波数分割多元接続
と呼ばれます。
OFDMの仕組みを土台にしながら、サブキャリアを複数のグループへ分け、
異なるユーザーへ同時に割り当てられる
ようにしたものです。
Wi-FiではIEEE 802.11ax、つまりWi-Fi 6で主要機能として導入されました。
IEEEの研究資料でも、802.11axが通常の20MHzチャネルをResource Unitへ分割し、複数ユーザーの同時通信を可能にすることが説明されています。
OFDMAの「A」は何?
OFDMAの末尾に付いているAは、
Access
です。
ここがOFDMとの違いを端的に表しています。
OFDMは、
Multiplexing=複数のサブキャリアを多重化して利用
する技術です。
OFDMAではそこへ、
Multiple Access=複数ユーザーが通信資源へアクセス
する考え方が追加されています。
つまり、
「複数の周波数を使う」から「複数ユーザーでその周波数を分けて使う」へ発展した
と考えると分かりやすいでしょう。
「Resource Unit(RU)」とは?
OFDMAで重要になるのが、
Resource Unit(RU)
です。
RUは、OFDMAでサブキャリアをまとめた通信資源の単位です。
アクセスポイントは、
端末Aには小さなRU
端末Bには大きなRU
端末Cには別のRU
というように通信資源を割り当てられます。
Ciscoの802.11ax技術資料では、Wi-Fi 6のRUは最小26トーンから構成され、チャネル幅や通信内容に応じてさまざまな大きさを選択できることが説明されています。
「トーン」と「サブキャリア」の違い
Wi-FiのOFDMA解説では、
tone(トーン)
という表現もよく登場します。
技術資料ではOFDMAを構成するサブキャリアをトーンと呼ぶことがあります。
たとえば、
26-tone RU
は、26トーンで構成されるResource Unitという意味です。
すべてがユーザーデータだけに使われるわけではなく、パイロット等も含まれます。
Wi-Fi 6ではサブキャリア間隔も細かくなった
Wi-Fi 6のIEEE 802.11axでは、従来のOFDMと比べてサブキャリア間隔も細かくなっています。
Ciscoの技術資料では、
802.11ac:312.5kHz
802.11ax:78.125kHz
と説明されています。
802.11axでは約4分の1の間隔になり、同じチャネル幅の中へより多くのサブキャリアを配置できます。
これによってRUを細かく構成し、複数端末へ柔軟に割り当てられるようになります。
OFDMとOFDMAの違いを「配送トラック」で比較
先ほどのトラックの例で比較してみましょう。
OFDMの場合
大型トラック1台の荷台を多数の区画に分けます。
しかし1回の配送では、
利用者Aの荷物だけ
を運びます。
次の配送でB、その次でCと順番に運びます。
OFDMAの場合
同じ大型トラックの荷台を複数の区画に分け、
- Aの荷物
- Bの荷物
- Cの荷物
を1回の配送でまとめて運びます。
つまり、
OFDM=1回1ユーザー
OFDMA=1回に複数ユーザー
という違いです。
CiscoもOFDMAを、従来は1台のトラックが1人分の荷物しか運べなかったのに対し、1台へ複数利用者の荷物を載せる仕組みに例えています。
OFDMとOFDMAでは「チャネル幅」が変わる?
必ずしもチャネルそのものの幅が変わるわけではありません。
たとえば同じ20MHzのWi-Fiチャネルでも、
OFDM=1ユーザーがその通信機会を利用
OFDMA=20MHz内を複数RUへ分けて複数ユーザーへ割り当て
という違いを作れます。
OFDMAの重要点は、チャネルをさらに広げることではなく、
既存のチャネルを複数ユーザーで効率よく使えるようにする
ことです。
OFDMAなら端末数と同じ数だけ分割できる?
無制限に分割できるわけではありません。
利用できるRUの数・大きさには規格上の組み合わせがあります。
たとえば20MHzのWi-Fi 6チャネルでは、最小の26-tone RUを使う構成で複数のRUへ分割できます。
ただし、
- 端末が必要とするデータ量
- チャネル幅
- 電波状態
- QoS
- 対応端末数
などに応じてアクセスポイントが割り当てを決めます。
OFDMAではアクセスポイントが交通整理をする
OFDMAでは、単に複数端末が勝手に好きなサブキャリアを利用するわけではありません。
アクセスポイントが、
「この通信機会ではAはこのRU、BはこのRU」
とスケジューリングします。
Ciscoの802.11ax資料では、ダウンリンクOFDMAでAPが、
- 通信する端末
- それぞれに割り当てるRUサイズ
を決定したうえで、複数STAへデータを送る仕組みが説明されています。
「ダウンリンクOFDMA」とは?
ダウンリンクは、
アクセスポイント → 端末
方向です。
たとえばアクセスポイントが、
RU1 → スマートフォンA
RU2 → PC B
RU3 → スマート家電C
のように割り当て、同じ送信機会に複数端末へデータを送れます。
「アップリンクOFDMA」とは?
アップリンクは、
端末 → アクセスポイント
方向です。
Wi-Fi 6ではアップリンクOFDMAにも対応します。
複数端末がそれぞれ割り当てられたRUを使い、同期してアクセスポイントへデータを送ることができます。
アクセスポイントはTrigger Frameなどを使って、各端末の送信を調整します。
Wi-Fi 6以前は本当に複数端末が同時通信できなかった?
この点は単純化に注意が必要です。
Wi-Fi 5のIEEE 802.11acでは、
MU-MIMO
によって空間方向に複数端末へ同時通信する仕組みが存在しました。
したがって、
「Wi-Fi 6になるまでWi-Fiでは絶対に複数端末へ同時送信できなかった」
という説明は正確ではありません。
Wi-Fi 6で大きく追加されたのは、
周波数方向でもOFDMAによるマルチユーザー化が可能になった
ことです。
OFDMとMU-MIMOは両立する?
MU-MIMOはOFDMAとは別の考え方です。
OFDMA=周波数方向に分割
MU-MIMO=空間方向に分割
します。
Wi-Fi 6ではOFDMAとMU-MIMOの両方が利用され、ネットワーク状況に応じて複数端末を効率よく処理できます。
OFDMAはWi-Fiの最高速度を上げる技術?
主目的は最高速度より通信効率の改善です。
1台だけが大容量データを通信している状況では、その端末へチャネル全体を割り当てたほうが適している場合があります。
一方、
- 多数のスマートフォン
- IoT機器
- 音声通信
- 小さなパケット
が混在している環境では、OFDMAによって通信機会を共有するメリットが大きくなります。
IEEEの研究では、802.11axのOFDMAが非飽和条件で遅延を大きく削減できた例が報告されている一方、スケジューリング方法や通信条件によっては単一ユーザー送信よりスループット面で不利になる場合があることも報告されています。
つまり、
OFDMA=いつでも最高速度を上げる魔法の機能
ではありません。
OFDMAのメリットは「待ち時間を減らしやすい」こと
多数の端末が少量のデータを送る環境では、各端末が順番にチャネルを利用すると待ち時間が増えます。
OFDMAなら、複数端末を同じ送信機会へまとめられるため、
- 通信待ち時間
- 競合
- オーバーヘッド
を抑えやすくなります。
そのため、
- 音声通話
- ビデオ会議
- ゲーム
- IoT
など、遅延の影響を受けやすい用途でメリットが期待できます。
Wi-Fi 5はOFDM?
はい。
Wi-Fi 5のIEEE 802.11acではOFDMが利用されています。
Ciscoの802.11ax技術資料でも、802.11acでは20・40・80・160MHzのWi-FiチャネルをOFDMサブキャリアへ分けるものの、1回のPPDUでは1ユーザーへそのサブキャリア群を割り当てることが説明されています。
ただし前述のとおり、Wi-Fi 5にはダウンリンクMU-MIMOもあるため、無線通信のすべてが単純な1ユーザー処理という意味ではありません。
Wi-Fi 6はOFDMA?
Wi-Fi 6ではOFDMAが主要な新機能として利用されます。
IEEE 802.11axは高効率WLANを目的とした規格であり、OFDMAによって1チャネルをRUへ分けて複数ユーザーを同じ送信機会で処理できます。
ただしWi-Fi 6が、
「すべての通信を必ずOFDMAで行う」
わけではありません。
通信状況に応じて、
- 単一ユーザー通信
- OFDMA
- MU-MIMO
などを使い分けます。
Wi-Fi 6EでもOFDMAを使う?
はい。
Wi-Fi 6EはWi-Fi 6と同じIEEE 802.11axの技術を6GHz帯へ拡張したものです。
そのため6GHzでも、
- OFDMA
- MU-MIMO
- 1024-QAM
- BSS Coloring
など802.11axの技術を利用できます。
Wi-Fi 7ではOFDMAはどうなる?
Wi-Fi 7のIEEE 802.11beでもOFDMAは引き続き重要です。
さらに、
Multi-RU(MRU)
が導入されています。
CiscoのWi-Fi 7資料では、Wi-Fi 6では1回の送信機会に1ユーザーが1つのRUを利用するのに対し、Wi-Fi 7のMulti-RUでは、
1ユーザーへ複数のRUを割り当てられる
ことが説明されています。
Multi-RUは何が便利?
Wi-Fi 6では、利用可能な周波数資源の状況によっては、
「使えるRUが複数あるのに、1台の端末へまとめて割り当てられない」
ことがありました。
Wi-Fi 7ではMulti-RUによって、離れた複数のRUなどを同じ端末へ割り当てられる場合があります。
これにより、利用できる周波数資源をより柔軟に活用できます。
OFDMはWi-Fi 7でなくなった?
なくなったわけではありません。
OFDMAはOFDMの考え方を土台としています。
Wi-Fi 7でも直交するサブキャリアを利用したマルチキャリア通信という基本原理は続いています。
そこへ、
- OFDMA
- Multi-RU
- MU-MIMO
- MLO
など高度なマルチユーザー・マルチリンク技術を組み合わせています。
OFDMAは携帯電話でも使われる?
OFDMAという考え方はWi-Fi専用ではありません。
セルラー通信でも利用されています。
Ciscoも、OFDMAがWi-Fi 6以降だけでなく、LTE・5Gなどの無線通信でも利用されていることを説明しています。
ただし、Wi-Fiと携帯電話では、
- 周波数帯
- チャネルアクセス
- スケジューリング
- 規格設計
などが異なります。
そのため、
「OFDMAを使っているからWi-Fiと5Gは同じ方式」
という意味ではありません。
「OFDM・OFDMA」で迷ったときの3秒判定
| こんな場合 | 答え |
|---|---|
| Orthogonal Frequency Division Multiplexing | OFDM |
| Orthogonal Frequency Division Multiple Access | OFDMA |
| 多数の直交サブキャリアへ分割 | OFDMの基本 |
| Resource Unitへ分割 | OFDMA |
| 複数ユーザーを同じ送信機会で処理 | OFDMA |
| Wi-Fi 5 | 主にOFDM |
| Wi-Fi 6 | OFDMAを導入 |
| Wi-Fi 6E | 6GHzでもOFDMA |
| Wi-Fi 7 | OFDMA+Multi-RU |
最も簡単な覚え方は、
OFDM=「周波数を分割する技術」
OFDMA=「分割した周波数を複数ユーザーで分ける技術」
です。
「OFDM」を使った例文
- Wi-Fi 5ではOFDMが利用されている。
- OFDMでは多数の直交サブキャリアを利用する。
- OFDMはマルチパスに対応しやすい通信方式だ。
- 802.11acではOFDMサブキャリア群を利用する。
- OFDMはOFDMAの基礎となる考え方だ。
「OFDMA」を使った例文
- Wi-Fi 6ではOFDMAが導入された。
- OFDMAでチャネルを複数のRUへ分割する。
- OFDMAによって複数端末を同時に処理する。
- アップリンクOFDMAで複数端末からデータを送信する。
- Wi-Fi 7ではOFDMAをMulti-RUでさらに発展させている。
具体例で比較:スマート家電が1台だけ
Wi-Fiへ接続している機器が1台だけで、大容量ファイルを送信しているとします。
この場合、チャネルを複数ユーザーへ細かく分割する必要性は高くありません。
1ユーザーが広い通信資源を利用する単一ユーザー送信が適している場合があります。
つまり、OFDMAは、
「常にOFDMより高速だから使う」
ものではありません。
具体例で比較:スマート家電が20台
今度は、
- エアコン
- スマートプラグ
- 照明
- 温度計
- 監視カメラ
- スマートスピーカー
など20台以上の機器がWi-Fiへ接続しているとします。
各機器が少量のデータを頻繁に送る場合、端末ごとに通信機会を1つずつ与えるより、OFDMAで複数端末を1回の送信機会へまとめたほうが効率的です。
このような、
「大勢が少しずつ通信する環境」
がOFDMAの得意分野です。
よくある間違い1:「OFDMとOFDMAはまったく別の仕組み」と思う
OFDMAはOFDMの考え方を発展させた技術です。
どちらも直交する多数のサブキャリアを利用します。
違いは、それを複数ユーザーへ割り当てられるかどうかです。
よくある間違い2:「OFDMAはOFDMより単純に高速」と思う
OFDMAの大きな目的は、多数端末が存在するときの通信効率・遅延改善です。
1台だけの最高通信速度が必ず上がるわけではありません。
よくある間違い3:「OFDMは周波数を分割しない」と思う
OFDMも多数の直交サブキャリアへ周波数を分けています。
OFDMAとの違いは、分割自体ではなく、サブキャリア群を複数ユーザーへ個別に割り当てる点です。
よくある間違い4:「OFDMAなら複数端末が自由に同時通信する」と思う
Wi-Fi 6のスケジュール型OFDMAでは、アクセスポイントがRUや送信タイミングの割り当てに重要な役割を持ちます。
各端末が好きな周波数を勝手に選ぶわけではありません。
よくある間違い5:「Wi-Fi 6ではOFDMを一切使わない」と思う
Wi-Fi 6でもすべてのフレームが常にマルチユーザーOFDMAになるわけではありません。
通信状況によって単一ユーザー方式なども利用します。
よくある間違い6:「Wi-Fi 5は必ず1台ずつしか通信できない」と思う
Wi-Fi 5にはダウンリンクMU-MIMOがあります。
OFDMAによる周波数分割のマルチユーザー通信はありませんが、空間方向の同時通信は可能です。
よくある間違い7:「Wi-Fi 7ではOFDMAは不要になった」と思う
Wi-Fi 7でもOFDMAは重要です。
Multi-RUによって、Wi-Fi 6よりさらに柔軟にResource Unitを利用できるようになっています。
「OFDM」と「OFDMA」に関するよくある質問
Q1. OFDMとOFDMAの一番簡単な違いは?
OFDMは多数のサブキャリアを1ユーザーの通信に使い、OFDMAはサブキャリア群をResource Unitへ分けて複数ユーザーへ同時に割り当てられる点が違います。
Q2. OFDMAのAは何の略ですか?
Accessです。
正式名称はOrthogonal Frequency Division Multiple Accessです。
Q3. OFDMAはWi-Fi 6で初めて使われましたか?
Wi-Fi規格ではIEEE 802.11ax、つまりWi-Fi 6で主要機能として導入されました。
ただしOFDMA自体はWi-Fi専用の技術ではなく、セルラーなど他の通信方式でも利用されています。
Q4. Wi-Fi 5はOFDMですか?
IEEE 802.11acではOFDMを利用します。
さらにダウンリンクMU-MIMOにも対応します。
Q5. Resource Unitとは何ですか?
OFDMAでサブキャリアをグループ化し、ユーザーへ割り当てる通信資源の単位です。
一般にRUと略されます。
Q6. OFDMAなら遅延は必ず小さくなりますか?
多数端末の小容量通信などでは遅延低減が期待できます。
ただし効果はトラフィック、端末数、スケジューリングなどによって異なり、常に単一ユーザー通信より優れるわけではありません。
Q7. OFDMAとMU-MIMOは何が違いますか?
OFDMAは周波数資源を複数端末へ分けます。
MU-MIMOは複数の空間ストリームを使って複数端末と通信します。
両者は組み合わせて利用できます。
Q8. Wi-Fi 6EでもOFDMAは使えますか?
はい。
Wi-Fi 6EはIEEE 802.11axを6GHzまで拡張したものなので、6GHzでもOFDMAを利用できます。
Q9. Wi-Fi 7では何が変わりましたか?
OFDMAに関連してMulti-RUが追加され、1ユーザーへ複数のRUを割り当てられるようになりました。
さらにWi-Fi 7ではMLO、320MHz、4096-QAMなども導入されています。
Q10. 家庭でOFDMA対応ルーターを選ぶ意味はありますか?
スマートフォン、PC、テレビ、ゲーム機、IoT家電など多数のWi-Fi機器を同時利用する家庭ではメリットがあります。
ただし端末側もWi-Fi 6以降へ対応している必要があり、OFDMAだけで実際の通信速度が決まるわけではありません。
まとめ
「OFDM」と「OFDMA」は非常によく似た名前ですが、複数ユーザーへの通信資源の割り当て方に大きな違いがあります。
| OFDM | OFDMA |
|---|---|
| Orthogonal Frequency Division Multiplexing | Orthogonal Frequency Division Multiple Access |
| 多数の直交サブキャリアを利用 | 多数の直交サブキャリアを複数ユーザーへ分配 |
| 1回の送信で基本的に1ユーザー | 1回の送信で複数ユーザー |
| Resource Unitを基本的に使わない | Resource Unitを利用 |
| Wi-Fi 5などで利用 | Wi-Fi 6で主要機能として導入 |
最も簡単な覚え方は、
OFDM=「周波数を細かく分ける」
OFDMA=「分けた周波数を複数人で使う」
です。
OFDMの時点ですでに、1つのWi-Fiチャネルを多数の直交サブキャリアへ分割しています。
そのため、
「OFDMは分割しない、OFDMAは分割する」
と覚えるのは正しくありません。
本当の違いは、
OFDM=サブキャリア群を1ユーザーの通信に利用
OFDMA=サブキャリア群をRUへ分け、複数ユーザーに割り当て可能
という点です。
Wi-Fi世代との関係を整理すると、
Wi-Fi 5(802.11ac)=OFDM+ダウンリンクMU-MIMO
Wi-Fi 6(802.11ax)=OFDMAを主要機能として導入
Wi-Fi 6E=OFDMAを6GHzでも利用
Wi-Fi 7(802.11be)=OFDMA+Multi-RUへ発展
と理解すると分かりやすいでしょう。
またOFDMAは、
「1台の端末を必ず高速化する技術」
ではありません。
多数の端末が存在するWi-Fi環境で、限られた周波数と通信時間を効率よく共有するための技術です。
スマートフォンやIoT機器が増え続ける現在、
最高速度だけでなく「大勢が同時に使っても快適」という方向へWi-Fiを進化させた技術がOFDMA
と考えると、その役割を理解しやすいでしょう。
参考リンク・出典
-
IEEE Standards Association「IEEE 802.11ax-2021」
― Wi-Fi 6の技術的基盤となった高効率WLAN規格。PHY・MACを高効率化する802.11axの正式な規格情報 -
Cisco「IEEE 802.11ax: The Sixth Generation of Wi-Fi White Paper」
― OFDMでは1ユーザーへサブキャリア群を割り当てるのに対し、OFDMAでは個々のサブキャリア群をRUとして複数クライアントへ割り当てる違いを詳しく解説 -
Cisco「What is OFDMA?」
― OFDMAがWi-FiチャネルをResource Unitへ分割し、複数クライアントへ同時に通信資源を割り当てる仕組みを解説。OFDMとの違い、Wi-Fi 7のMulti-RUにも言及 -
IEEE Xplore「Will OFDMA Improve the Performance of 802.11 WiFi Networks?」
― IEEE 802.11axのアップリンク・ダウンリンクOFDMAについて、遅延・スループット等を従来の単一ユーザー通信と比較した研究 -
Cisco「Wi-Fi 7 and the Growing Future of Wireless Design Guide」
― Wi-Fi 6のOFDMA・RUから、Wi-Fi 7のMultiple Resource Unit(Multi-RU)へ発展した仕組みを解説
※本記事ではWi-FiでのOFDM・OFDMAの違いを中心に説明しています。OFDM・OFDMA自体はWi-Fi専用の技術ではなく、携帯電話など他の無線通信でも関連技術が利用されています。
※「OFDM=1ユーザー、OFDMA=複数ユーザー」という説明はWi-Fiにおける違いを理解するための基本整理です。実際のIEEE 802.11ではMU-MIMO、チャネルアクセス、複数のPPDU形式なども存在するため、ネットワーク全体の同時通信をこれだけで完全に説明できるわけではありません。
※Wi-Fi 6対応機器でも、すべての通信が常にOFDMAで行われるわけではありません。アクセスポイントは通信量・接続端末・端末能力・QoS・電波状態などに応じて送信方式を選択します。
※OFDMAはネットワークの最大リンク速度そのものを単純に引き上げる機能ではありません。多数端末を同じ通信機会で処理し、周波数利用効率・待ち時間・混雑時のユーザー体験を改善することが主な目的です。
※Wi-Fi 7ではMulti-RUによってOFDMAのResource Unit利用がさらに柔軟になっていますが、利用できる機能はアクセスポイント・端末・ファームウェア等の対応状況によって異なります。
