取引先から「覚書を取り交わしたい」と連絡が来たとき、「契約書と何が違うのだろう」「署名したら法的な義務が生じるのだろう」と不安に感じることがあるかもしれません。仕事で契約期間を延長するときや、依頼した業務の内容を変更するときにも登場する言葉です。
「覚書(おぼえがき)」は、忘れないためのメモを意味する一方、ビジネスでは当事者同士の合意内容や既存の契約を補足・変更する事項を書き記した文書を指します。「覚書」という名前だからといって、契約書より効力が弱いわけではありません。
この記事では、覚書の読み方と意味から、契約書・念書・合意書・誓約書との違い、法的効力、書き方、具体的な文面例、収入印紙の判断、取り交わす際の注意点まで、一般の方にもわかるように解説します。
- 覚書とは?意味と読み方をわかりやすく解説
- 覚書はどんなときに使う?身近な具体例
- 覚書と契約書の違い|効力に上下関係はある?
- 覚書と念書の違い|誰が約束するかに注目
- 覚書と合意書の違い|どちらを使えばよい?
- 覚書と誓約書・確認書・議事録の違い
- 覚書に法的効力はある?署名する前に知っておきたいこと
- 覚書の作り方|記載したい基本項目
- 覚書の文面例①|契約期間を延長するとき
- 覚書の文面例②|業務内容を変更するとき
- 覚書の書き方でよくある失敗と修正例
- 覚書に収入印紙は必要?国税庁の説明をもとに解説
- 覚書に押印は必要?電子署名でもよい?
- 覚書を取り交わす流れ|作成から保管まで
- 覚書を依頼・送付するときのビジネスメール例文
- 覚書に関するよくある質問(FAQ)
- Q1. 覚書は契約書と同じ効力がありますか?
- Q2. 覚書は必ず契約書を作った後に作成しますか?
- Q3. 覚書の読み方は「かくしょ」ですか?
- Q4. 覚書には必ず双方の押印が必要ですか?
- Q5. 覚書は手書きでもよいですか?
- Q6. 覚書だけで新しい契約を結べますか?
- Q7. 念書と覚書はどちらが強いですか?
- Q8. 覚書に収入印紙が必要なのはいくらからですか?
- Q9. 覚書をPDFで交わしてもよいですか?
- Q10. 覚書を2通作らなければいけませんか?
- Q11. 覚書の有効期限はありますか?
- Q12. 覚書の締結日より前から効力を生じさせられますか?
- Q13. 覚書は相手方が一方的に作っても有効ですか?
- Q14. 元の契約書がない場合でも覚書を作れますか?
- Q15. 覚書を後から修正したい場合は?
- Q16. 覚書と業務委託契約書を併用してもよいですか?
- Q17. 覚書に会社の代表者名がなく、担当者名だけでもよいですか?
- Q18. 覚書を破棄すれば合意もなくなりますか?
- まとめ|覚書は名前より合意の内容が重要
- 参考リンク
覚書とは?意味と読み方をわかりやすく解説
「覚書」の読み方は「おぼえがき」
「覚書」は「おぼえがき」と読みます。「覚え書き」と書くこともあります。「覚書を作成する」「覚書を交わす」「覚書を取り交わす」「覚書を締結する」といった言い方が使われます。
「おぼえがき」という読み方は、日常のメモにも、契約に関わる書面にも共通です。文書の内容を確認しないと、どちらの意味かは判断できません。
意味① 忘れないように書き留めたメモ
一つ目は、後で思い出せるように必要事項を記録するという意味です。例えば「会議で決まったことを覚書にしておく」「旅先で見聞きしたことを覚書に残す」と使えます。個人の備忘録や短いメモに近い用法です。
この意味での覚書は、通常、書いた本人の記憶を助けるものです。個人的に書き留めたというだけで、相手方との契約が成立するわけではありません。
意味② 契約や合意の内容を記録する文書
二つ目は、契約の当事者が合意した事項や、すでに結んだ契約の解釈・補足・変更を記録する文書という意味です。ビジネスで「覚書を取り交わす」と言われたら、まずこちらを想定すると理解しやすいでしょう。
例えば、保守サービスの契約期間を3か月延ばす、納品する資料の内容を追加する、取引の連絡窓口を改める、といった合意を覚書にまとめることがあります。ただし、どのような変更を覚書で扱うかは当事者や取引によって異なります。
小学館『デジタル大辞泉』でも、備忘のための記録、外交上の文書、契約の補足や解釈を記した文書という意味が区別されています。出典:コトバンク「覚書」。
外交文書としての「覚書」もある
外交分野では、国同士の交渉で見解や確認事項を伝える文書を覚書と呼ぶ場合があります。「了解覚書」という言葉もこの分野で見られます。会社間の契約変更の覚書とは扱う対象が異なるため、ニュースを読むときには文脈を区別しましょう。
覚書はどんなときに使う?身近な具体例
契約期間を延長するとき
会社が外部業者に設備点検を依頼しており、当初の契約終了日を迎える前に期間を延長することになったとします。契約書には業務内容、支払条件、秘密保持など多くの条項が書かれていますが、今回は終了日だけを変えたい。このようなとき、元の契約書を特定し、変更する条項だけを覚書に記す方法が考えられます。
大切なのは、「どの契約の」「どの条項を」「いつから」「どう変更するか」を明確にすることです。「しばらく延長する」とだけ書いても、終了時期をめぐる認識違いが生じやすくなります。
仕事の範囲や条件を変更するとき
品質検査を外部に依頼している会社が、検査対象品目を増やすことになった場合も例になります。新しい対象品目、検査頻度、費用の変更有無、適用開始日などを覚書に記せば、担当者が代わった後も変更内容を確認しやすくなります。
特に「業務範囲だけを増やし、報酬は据え置きなのか」「追加費用は別途見積りなのか」は、後で争いになりやすい点です。変更内容と費用の扱いを別々に確認しましょう。
会議や共同事業の合意を記録するとき
複数の団体がイベントを共同開催する場合、「会場費はA団体が負担し、広報はB団体が担当する」といった分担を覚書にすることがあります。合意内容を残すことが目的で、必ずしも元となる契約書があるとは限りません。
つまり、覚書は「すでにある契約を変更する場合」だけに使う書面ではないのです。新たな合意自体を覚書という表題で記録する場合もあります。
覚書と契約書の違い|効力に上下関係はある?
一般的には「使われる場面」に違いがある
契約書は、取引の当事者、業務内容、金額、期間、責任など、契約条件を体系的にまとめた書面としてよく使われます。一方、覚書は、決まった事項を簡潔に確認したり、既存契約の一部を補足・変更したりするときによく使われます。
ただし、これらはあくまで実務上の傾向であり、「契約書なら必ず全部の条項を載せる」「覚書なら必ず一部分だけを書く」といった法的な決まりではありません。
「覚書だから契約書より効力が弱い」は誤解
文化庁は、文書のタイトルを「契約書」「覚書」「合意書」などのどれにしても、名称だけで契約としての効力が変わるわけではないと説明しています。したがって、覚書という表題でも、必要な合意が成立し、その内容が有効であれば、当事者は約束した内容に拘束され得ます。
逆に、契約書という表題であっても、合意が成立していない、内容が不明確である、法令に反する事項を含むといった事情があれば、タイトルだけであらゆる効力が保証されるわけではありません。出典:文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」。
覚書と契約書を比較表で整理
| 比較項目 | 覚書 | 契約書 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 合意事項の記録、契約の補足・変更など | 契約条件全体の明確化など |
| よくある使い方 | 契約期間の延長、料金・担当範囲の変更 | 取引開始時の基本条件の設定 |
| 分量・形式 | 比較的短くまとめることが多い | 複数条項を詳しく記載することが多い |
| 法的効力 | 表題では決まらず、内容と合意による | 表題では決まらず、内容と合意による |
| 収入印紙 | 記載内容と作成方法により判断 | 記載内容と作成方法により判断 |
例えば、業務委託契約を締結した後に追加の取り決めを行う場面では、覚書が便利な場合があります。外部へ仕事を任せること自体の意味は、関連記事「委託」とは?意味・使い方と類語の違いでも解説しています。
覚書と念書の違い|誰が約束するかに注目
念書は一方が約束事項を記す場面で使われやすい
「念書(ねんしょ)」は、一定の事実を確認したり、約束事項を文書に残したりするときに使われます。一般的には、当事者の一方が相手方に対して約束や確認事項を示す文書を念書と呼ぶことが多いでしょう。
例えば、資料を借りた人が「指定日までに返却し、第三者には渡しません」と書面で約束するケースです。これに対し、両社が「今後の納期を変更する」と合意した内容をまとめる場合は、覚書という表題が自然なことがあります。
署名する人数だけで絶対に区別できるわけではない
「覚書は必ず2人以上が署名し、念書は必ず1人だけが署名する」という説明は厳密ではありません。実際には文書の内容や作成方法がさまざまで、法律上、名称と署名者数を機械的に対応させる決まりはありません。
念書という名前でも契約の成立・変更を証明する文書であれば、法的な効果や印紙税の検討が必要となる場合があります。国税庁も、印紙税法上の契約書には、当事者の一方のみが作成する念書などが含まれる場合があると説明しています。出典:国税庁「No.7117 契約書の意義」。
覚書と念書の例を比較
覚書の例:「甲および乙は、2026年4月1日付の契約に定める納品日を、2026年11月20日に変更することに合意した。」
念書の例:「私は、貸与された備品を2026年11月20日までに返却することを約束します。」
前者は当事者間の合意を、後者は一方の約束を前面に出しています。ただし、判断の決め手は文書の名称ではなく、誰が何に合意し、何を約束しているかです。
覚書と合意書の違い|どちらを使えばよい?
合意書は「双方が合意した内容」を明示する表現
「合意書(ごういしょ)」は、複数の当事者が同意した内容を文書にしたものです。例えば、支払期日の変更、共同事業の費用分担、取引条件の変更を明確に記録する場面で使えます。
覚書も合意事項を記録できるため、両者の使われ方は大きく重なります。特に「契約内容の変更に関する覚書」と「契約内容の変更に関する合意書」は、実際の内容が同じなら、表題の違いだけで効力に差が出るわけではありません。
迷ったら文書の目的を優先して決める
新しい取引の主要な条件をまとめる場合は「契約書」、すでにある契約の一部を変える場合は「覚書」、当事者間で合意した事実を明確に示したい場合は「合意書」が、読み手に意図を伝えやすいことがあります。
ただし、取引先が指定する書式や社内規程がある場合は、それに従うことが先です。タイトルを選ぶことより、内容の正確さや合意の証拠を残すことが大切です。
覚書と誓約書・確認書・議事録の違い
誓約書との違い
「誓約書」は、一定の義務を守ることを誓う文書として使われます。「社外秘の情報を漏らしません」「社内規則を守ります」など、約束する側の意思を明確にする場面が代表的です。覚書は、当事者間の合意条件を整理する場面でも広く使えます。
もっとも、誓約書も単なる形式上の宣言とは限りません。その内容が契約上の義務や法令上の問題と関わる場合があるため、署名する前に確認する必要があります。
確認書との違い
「確認書」は、すでに存在する事実や取り決めを確かめるために作られることが多い文書です。例えば「検収を完了したことを確認する」「貸与品の返却を確認する」などです。
新しい条件を定めたいのか、すでに決まった内容を確認したいのかを区別すると、文章を作りやすくなります。ただし、確認書に新たな義務や変更条項が記載されていれば、その内容にも注意が必要です。
議事録との違い
「議事録」は会議で話し合われた内容、決定事項、出席者などを記録するものです。一方、覚書は当事者同士が合意した事項を明確にし、その内容を後から確認できるようにする目的で使われます。
会議の議事録に「次回までに料金を協議する」と書かれていても、料金変更に正式に合意したことにはならない場合があります。反対に、議事録の内容によっては合意の証拠となることもあります。重要な変更事項は独立した覚書に整理し、当事者が認識を共有するのが実務上の一つの方法です。
違いを一覧で確認
| 書面 | 中心となる役割 | 典型的な場面 |
|---|---|---|
| 覚書 | 合意・補足・変更事項の記録 | 契約条件の変更 |
| 契約書 | 契約条件の体系的な記録 | 取引開始時の契約 |
| 念書 | 一方からの約束・事実確認 | 返却や履行の約束 |
| 合意書 | 当事者間の合意を明確化 | 条件変更への同意 |
| 誓約書 | 一定の義務を守ることを誓う | 秘密保持などの誓約 |
| 確認書 | 事実・既存事項の確認 | 納品・返却の確認 |
| 議事録 | 会議の経過・決定事項の記録 | 会議後の情報共有 |
これは一般的な使い分けを示した表です。文書の法的効力を表題だけで判定するための表ではありません。
覚書に法的効力はある?署名する前に知っておきたいこと
合意の内容によっては契約と同じ効力がある
民法第522条では、契約は申込みに対して相手方が承諾したときに成立すると定められています。法令に特別な定めがある場合を除き、契約の成立に必ずしも書面を必要としません。
したがって、覚書に業務内容、代金、納期などが明確に記され、当事者がその内容に合意していれば、契約としての効力が生じ得ます。反対に、社内の個人的なメモであれば、通常は相手方との合意を示す文書ではありません。
「法的効力」と「証拠としての強さ」は分けて考える
当事者間で約束が成立しているかという問題と、その約束の内容や成立を後から証明できるかという問題は別です。口頭で合意が成立する場合でも、後から「そんな約束はしていない」と争われれば立証が難しくなることがあります。
覚書を取り交わす意味の一つは、誰が何に合意したかを後から確認できるようにすることです。変更前の契約、当事者、日付、変更内容、署名・電子署名などを適切に残すことは、内容の理解と証拠の管理に役立ちます。
覚書に署名すれば必ず全条項が有効になるわけではない
合意があるとしても、法律上許されない内容が有効になるわけではありません。また、代表権や代理権の有無、契約締結の権限、説明された内容と実際の文書の不一致など、個別事情が問題となることがあります。
重要な取引では、社内の承認手続きや契約審査を経たうえで署名することが安全です。自分が契約当事者なのか、会社を代表して署名する権限があるのかも確認しましょう。
覚書の作り方|記載したい基本項目
① どの契約・合意に関する文書かを特定する
元の契約がある場合は、「2026年4月1日付業務委託契約書」のように契約名と締結日を記します。同じ取引先との契約が複数あるときは、契約番号や対象業務も加えると明確です。
例えば「前回の契約を変更する」と書くだけでは、どの契約が対象なのか特定しにくくなります。覚書だけを読んでも元の契約が分かるようにすることが大切です。
② 何をどう変更するかを変更前後で示す
契約期間を変更するなら、新旧の終了日を明記します。料金を変更するなら、新しい金額、消費税の扱い、支払期日、変更開始日を明らかにします。業務範囲なら、対象品目・納品物・作業回数など、実務で確認できる内容にすると誤解を防げます。
「必要に応じて調整する」「適宜対応する」といった表現だけでは、何に合意したか分からない場合があります。後で担当者が読んでも判断できる書き方を心掛けましょう。
③ 変更が始まる日を明確にする
覚書の締結日と、変更後の条件が適用される日は必ずしも同じではありません。例えば10月30日に署名し、11月1日から新しい条件を適用する場合は、その旨を別に記載します。
すでに終わった期間にさかのぼって条件を変更する場合は、第三者への影響や会計・税務上の取り扱いも問題になり得ます。単に日付を過去にすればよいわけではありません。
④ 元の契約の他の条項をどう扱うかを書く
一部だけを変更する覚書には「本覚書に定める事項を除き、原契約の各条項は従前どおり効力を有する」といった文言を置くことがあります。これは、変更の対象外となる条件まで意図せず変わることを防ぐためです。
ただし、覚書と原契約が矛盾した場合の扱いが不明確だと混乱します。変更する事項については覚書を優先する、その他は原契約を維持するなど、必要に応じて整理します。
⑤ 当事者・日付・署名欄を整える
文書の最後に、会社名、所在地、代表者または権限のある担当者、締結日などを記載することが一般的です。組織の契約権限規程や取引先の手続きに沿って、署名・押印・電子署名などの方法を選びます。
覚書の表題、前文、変更条項、日付、署名欄という構成は分かりやすい例ですが、法定の統一書式ではありません。文化庁も、契約文書の表題や書式に一律の決まりはないと説明しています。参考:文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」。
覚書の文面例①|契約期間を延長するとき
ここからは、一般的な文書の構成をイメージできるように、架空の会社・条件を使った例を紹介します。以下は法定の様式でも、あらゆる取引にそのまま使用できる契約書ひな形でもありません。実際に使う際は、原契約の条項・契約権限・印紙税の扱いを確認してください。
契約期間の延長に関する覚書の例
覚書(契約期間の変更)
株式会社青葉企画(以下「甲」という。)と株式会社みどりサポート(以下「乙」という。)は、2026年4月1日付で締結した「設備保守業務委託契約書」(以下「原契約」という。)について、次のとおり合意する。
第1条(契約期間の変更)
甲および乙は、原契約第8条に定める契約期間の終了日「2027年3月31日」を「2027年6月30日」に変更する。
第2条(その他の条件)
本覚書で変更する事項を除き、原契約の各条項は従前どおり効力を有する。
第3条(覚書の効力)
本覚書は、甲および乙による締結の日から効力を生ずる。
本覚書の成立を証するため、本書を2通作成し、甲乙が署名または記名押印のうえ、各1通を保有する。
2026年10月30日
甲 株式会社青葉企画 (住所・権限ある署名者)
乙 株式会社みどりサポート (住所・権限ある署名者)
この例文で確認したい3つの点
第一に、原契約の日付と名称が書かれているため、どの文書を変更するのか分かります。第二に、変更前と変更後の終了日を示しているため、延長幅が明確です。第三に、それ以外の条件を維持する旨を記しています。
ただし、契約期間を延ばすことで自動更新の規定や料金の扱いに影響する場合は、この3条項だけでは不足することがあります。例えば月額保守料の支払回数や解約予告期間が変わるなら、併せて確認が必要です。
覚書の文面例②|業務内容を変更するとき
外部検査の対象を追加する場合の例
次は、外部の品質検査機関に依頼する対象品目を増やす場面です。業務範囲を曖昧にすると、現場では「どの品目を、いつから、何回検査するか」が分からなくなります。
覚書(検査業務の変更)
株式会社つばき食品(以下「甲」という。)と株式会社北星検査センター(以下「乙」という。)は、2026年6月1日付で締結した「製品検査業務に関する契約」(以下「原契約」という。)の一部を、次のとおり変更する。
第1条(検査対象の追加)
原契約に定める検査対象に、「製品C(500グラム包装品)」を追加する。製品Cについては、甲から検査を依頼したロットごとに5検体の検査を行う。
第2条(費用)
前条により追加する検査の料金は1ロット当たり15,000円(消費税別)とし、原契約に定める方法で請求および支払いを行う。
第3条(適用開始日)
本覚書による変更は、2026年11月1日以降に乙が受け付ける検査依頼から適用する。
第4条(その他)
本覚書に定める変更を除き、原契約の各条項は引き続き効力を有する。
2026年10月30日
甲 株式会社つばき食品 (住所・権限ある署名者)
乙 株式会社北星検査センター (住所・権限ある署名者)
「追加するもの」「金額」「開始日」は別々に書く
検査対象の追加は業務範囲の変更であり、料金設定は報酬条件の変更です。ひとまとめに「検査内容を増やす」と書かず、それぞれの条件を分けることで、発注書・請求書・検査結果報告書を確認するときにも役立ちます。
この例は業務委託契約の変更を想定していますが、契約の法的性質や印紙税の対象となるかどうかは、原契約と覚書の内容によって判断されます。「検査業務の覚書なら必ず非課税」と考えることはできません。
覚書の書き方でよくある失敗と修正例
失敗① 変更対象が曖昧
曖昧な書き方:「以前の契約に関する金額を見直す。」
伝わりやすい書き方:「2026年7月1日付の保守契約第5条に定める月額料金を、2026年12月分から35,000円(消費税別)に変更する。」
変更する契約、条項、金額、適用時期が分かるようにするのがポイントです。
失敗② 当事者と適用開始日の認識が違う
「来月から対応する」とだけ書くと、月初からなのか次回発注分からなのかが不明確です。また、親会社と子会社のどちらが契約当事者か曖昧な場合もあります。実際の契約当事者名を記載し、変更内容が適用される条件を明らかにしましょう。
失敗③ 口頭説明と書面の内容が一致していない
打ち合わせでは「追加費用なし」と説明されていたのに、覚書には「別途費用を請求できる」と書かれているような場合、署名前に修正が必要です。担当者の口頭説明だけに頼らず、合意した内容を文書に反映させます。
失敗④ 原契約と覚書の矛盾が残る
納期だけを変更したつもりでも、原契約に「毎月末までに納品」と書かれていれば整合性を確認しなければなりません。変更する条項だけでなく、関連する条項や別紙にも目を通すと安心です。
契約内容の「変更」と「訂正」の意味の違いを整理したい場合は、関連記事「変更」と「訂正」の違いも参考になります。契約条件を新しく変えることと、単なる記載ミスを直すことは、検討すべき問題が同じとは限りません。
覚書に収入印紙は必要?国税庁の説明をもとに解説
「覚書」という名称だけでは印紙税は決まらない
収入印紙が必要かどうかを判断するときは、文書のタイトルではなく、契約の成立・変更等を証明する内容が記されているか、印紙税法で定める課税文書に該当するかを確認します。
国税庁は、覚書や念書という表題を使って原契約を変更する場合、その変更内容に課税文書の「重要な事項」が含まれているかどうかなどにより判定すると説明しています。出典:国税庁「No.7127 契約内容を変更する文書」。
例えば請負契約の納期や支払方法を変更する覚書
国税庁の解説では、請負契約の支払方法や納期などを変更する覚書が、課税文書として扱われる例が示されています。単に「追加の覚書だから印紙不要」とは言えません。
また、変更前の契約金額が記載された原契約書を特定できる場合などには、変更契約書の記載金額の扱いも変わります。必要な場合は国税庁「No.7123 契約金額を変更する契約書の記載金額」で確認してください。
紙で作成する場合と電子的にやり取りする場合
印紙税は原則として課税文書の作成に関わる税金です。例えば契約書の原本を紙で作成・交付する場合と、電子データだけで契約を締結する場合では、印紙税の扱いが異なります。
国税庁は、契約書の原本を送らず電子メール等で送信し、受信側で出力したものは写しとして扱われ、原則として印紙税の課税対象とならないと説明しています。ただし、紙の原本を別途作成・交付する場合や、取引の実態が異なる場合は、その扱いを個別に確認する必要があります。出典:国税庁「No.7120 契約書の写し、副本、謄本等」。
印紙税と契約の有効性は別の問題
印紙税の申告・納付が必要かという問題と、当事者間に契約が成立しているかという問題は分けて考えます。収入印紙を貼ったから契約内容が必ず有効になるわけでも、印紙がないから直ちに当事者の合意がなかったことになるわけでもありません。
金額の大きい契約や、複雑な条項の変更では、税務担当者や税務署、必要に応じて専門家へ相談することをおすすめします。
覚書に押印は必要?電子署名でもよい?
押印は契約成立の一般的な必須条件ではない
民法第522条の考え方では、特別な定めがある場合を除き、契約は当事者の合意によって成立します。そのため、民間の通常の契約について「印鑑がなければ絶対に契約は無効」と考えるのは正確ではありません。
ただし、押印が不要ということと、署名や押印を確認しなくてよいということは別です。誰がどの内容に同意したかを後から示すため、適切な本人確認や記録管理は重要です。文化庁も文書の形式だけでなく、合意の成立を重視して説明しています。
電子契約でも覚書を交わせる
電子契約サービスなどを用いて覚書を締結する方法もあります。その場合は、変更内容が後で改ざんされていないことを確認できる仕組みや、署名者の権限、原契約とのひも付け、保存方法を整える必要があります。
電子化したという理由だけで、記載事項の確認や社内決裁を省いてよいわけではありません。契約締結方法が複数ある会社では、原契約と覚書の保管場所を統一すると実務がスムーズになります。
会社のルールがある場合はそれに従う
法令上の成立要件とは別に、会社や団体が契約書類への押印、電子決裁、法務部門の審査などを定めていることがあります。取引先と合意できたとしても、社内承認が済んでいなければ担当者だけで締結できない場合があります。
「法的に押印が必須か」と「会社の手続きとして何が必要か」を分けて確認しましょう。
覚書を取り交わす流れ|作成から保管まで
手順① 元の契約と変更理由を確認する
まず、変更前の契約書、仕様書、見積書、発注書などを確認します。変更理由が「納期の延期」なのか「仕事の追加」なのかによって、記載すべき条項は変わります。相手方に説明する前に、社内で変更内容を整理することが大切です。
手順② 相手方と条件をすり合わせる
変更する条項とその条件について、担当者同士で認識を合わせます。この段階では、合意していない部分を「決定済み」と記載しないように注意しましょう。特に金額、納期、追加業務の範囲、責任分担は確認が必要です。
手順③ 覚書の案文を作成し、承認を得る
元の契約を特定したうえで、変更内容を文書にまとめます。会社が定める法務・経理・購買・品質保証などの審査が必要なら、署名前に回付します。担当部署の承認を経ずに締結すると、意図しない責任を負うおそれがあります。
手順④ 当事者が合意し、締結する
文書の内容に双方が納得したら、署名・押印や電子署名など、適切な方法で合意を記録します。締結日と適用開始日が異なる場合は特に注意してください。双方の控えで内容が一致するように確認しましょう。
手順⑤ 原契約と一緒に保管する
覚書を単独で保管すると、どの契約の変更なのか後から分からなくなることがあります。契約書原本と関連する覚書、改定履歴、別紙をひとまとまりで管理すると、更新時・監査時・担当者交代時の確認が容易になります。
契約を終了させる話が出ている場合は、単なる条件変更と契約の解除・解約を混同しないことも重要です。関連記事「解除」と「解約」の違いもあわせて確認してください。
覚書を依頼・送付するときのビジネスメール例文
例文① 覚書の作成を依頼するメール
件名:保守契約の期間変更に関する覚書作成のご相談
いつもお世話になっております。現在ご対応いただいている設備保守業務について、契約期間を3か月延長する方向で社内調整を進めております。
つきましては、現行契約の終了日を変更する覚書の取り交わしについて、ご相談させていただけますでしょうか。ご都合がよろしければ、当社で案文を作成してお送りします。
なお、その他の契約条件は現行どおりとする想定です。ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
例文② 覚書の案文を送付するメール
件名:【ご確認依頼】検査業務の変更に関する覚書(案)
お世話になっております。先日ご相談した検査対象品目の追加について、覚書の案文を添付いたします。
第1条に追加対象と検査数、第2条に料金、第3条に適用開始日を記載しております。お手数ですが、内容をご確認のうえ、ご意見がございましたらお知らせください。
双方で内容を確認できましたら、正式な締結手続きを進めたいと存じます。引き続きよろしくお願いいたします。
例文③ 覚書の締結完了を知らせるメール
件名:契約変更に関する覚書の締結完了について
いつもお世話になっております。このたび、契約期間の変更に関する覚書の締結が完了しましたので、ご連絡申し上げます。
変更後の契約終了日は2027年6月30日です。その他の条件については、原契約に定める内容を継続することを確認しております。
ご対応いただきありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
「覚書を交わす」と「覚書を締結する」の使い分け
「覚書を交わす」「覚書を取り交わす」は、当事者が文書を交換し合意する場面に自然な表現です。「覚書を締結する」は、契約上の合意として正式に成立させる場面でよく使われます。
ただし、二者の間に厳密な法的な使い分けがあるわけではありません。社内の案内文では「覚書の取り交わし」、契約管理台帳では「覚書締結日」など、文脈に合わせて選ぶと読みやすくなります。
覚書に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 覚書は契約書と同じ効力がありますか?
有効な合意が記載されていれば、覚書という表題でも契約としての効力が生じ得ます。ただし、具体的な内容や当事者の権限、法令上の制限などによって判断が変わります。
Q2. 覚書は必ず契約書を作った後に作成しますか?
いいえ。既存契約の補足・変更に使うことは多いものの、新たな合意を覚書という表題で記録することもあります。
Q3. 覚書の読み方は「かくしょ」ですか?
通常は「おぼえがき」と読みます。「覚え書き」と表記することもあります。
Q4. 覚書には必ず双方の押印が必要ですか?
一般に契約成立のために一律に押印が必要なわけではありません。ただし、適用される法令や社内規程、取引の方法によって確認すべき手続きがあります。
Q5. 覚書は手書きでもよいですか?
形式だけで一律に無効になるわけではありません。重要なのは、内容が明確で、誰が合意したか分かることです。読み間違いを防ぐため、実務では文書作成ソフトで作ることも多いでしょう。
Q6. 覚書だけで新しい契約を結べますか?
内容と合意が有効に成立していれば可能な場合があります。ただし、法令が書面の作成などを求める取引や、追加の手続きが必要な契約もあります。
Q7. 念書と覚書はどちらが強いですか?
名前だけで法的効力の強弱は決まりません。一般には念書は一方の約束、覚書は当事者間の合意の記録として使われることがありますが、実際の記載内容が重要です。
Q8. 覚書に収入印紙が必要なのはいくらからですか?
一律の金額では答えられません。まず課税文書に該当するか、どの号の文書かを判定し、必要なら記載金額や変更内容に応じて税額を判断します。
Q9. 覚書をPDFで交わしてもよいですか?
電子的な方法で合意を記録することは可能です。ただし、本人確認、締結権限、記録の真正性、保存方法や、紙の原本を別途交付するかなどを確認してください。
Q10. 覚書を2通作らなければいけませんか?
すべての覚書で必ず紙2通が必要という決まりはありません。双方が保管するため紙を2通作ることはありますが、電子契約など異なる方法もあります。紙の各通が印紙税の課税対象となるかにも注意が必要です。
Q11. 覚書の有効期限はありますか?
覚書という名前だけで共通の有効期限が決まるわけではありません。覚書に定めた期間、変更対象の原契約、法律上の規定などによって異なります。
Q12. 覚書の締結日より前から効力を生じさせられますか?
当事者間でさかのぼった適用を合意することが検討される場合はありますが、第三者の権利、法律上の制限、税務・会計処理などに影響することがあります。実際の締結日を偽って記載することとは区別し、慎重に確認しましょう。
Q13. 覚書は相手方が一方的に作っても有効ですか?
相手方が案文を作ること自体は問題ではありません。ただし、案文を送られただけで自動的に合意したことにはなりません。契約の成立は相手方の承諾など、実際の意思表示を確認して判断します。
Q14. 元の契約書がない場合でも覚書を作れますか?
はい。覚書で新たな合意事項を記録する場合もあります。ただし、元の契約書がないために条件が不明確なら、重要事項を含む新たな契約書として整理した方がよいこともあります。
Q15. 覚書を後から修正したい場合は?
一方が勝手に書き換えるのではなく、関係する当事者で変更内容に合意し、変更履歴が分かる形で記録します。新たな覚書や変更合意書を作る方法もあります。
Q16. 覚書と業務委託契約書を併用してもよいですか?
はい。業務委託契約で基本条件を定め、必要な変更を覚書にまとめる方法があります。双方の文書が矛盾していないか、変更内容がいつ適用されるかを確認してください。
Q17. 覚書に会社の代表者名がなく、担当者名だけでもよいですか?
担当者に適切な締結権限があるかによります。肩書や氏名を記載するだけで当然に会社を拘束できるとは限りません。契約権限や社内規程を確認しましょう。
Q18. 覚書を破棄すれば合意もなくなりますか?
一般に文書を破棄するだけで、それまで成立した契約や合意が当然に消滅するわけではありません。契約を終了・変更するには、必要な合意や法令上の手続きを確認する必要があります。
まとめ|覚書は名前より合意の内容が重要
「覚書(おぼえがき)」は、個人の備忘のための記録という意味と、契約や合意の内容を記録する書面という意味を持つ言葉です。ビジネスでは、契約期間・業務範囲・料金などの変更を記録するためによく用いられます。
覚書と契約書の違いは、主に実務上の使われ方にあります。覚書という表題だから法的効力が弱いわけではなく、内容と当事者の合意によって判断されます。念書・合意書・確認書などとの使い分けも、名前だけにこだわらず、文書が何を証明し、誰に何を約束させるものなのかを見極めることが大切です。
実際に覚書を作成するときは、原契約の特定、変更事項、適用開始日、その他の条項の扱い、署名者の権限を確認しましょう。印紙税は文書の実質に応じて判定されるため、必要に応じて国税庁の情報や専門家の助言を利用してください。
参考リンク
- コトバンク「覚書」(小学館『デジタル大辞泉』):備忘録としての意味、外交文書、契約に関する覚書の意味を確認できます。
- 文化庁「文化芸術活動に関する法的問題についてよくあるご質問」:「覚書」に署名した場合の契約としての効力や、書面の表題と契約成立との関係を説明しています。
- 文化庁「誰でもできる著作権契約マニュアル」:契約書の書式や表題、合意内容を明確に記載するための基本的な考え方を紹介しています。
- e-Gov法令検索「民法」:第521条・第522条で、契約の内容の自由や契約成立と方式に関する原則を確認できます。
- 国税庁「No.7117 契約書の意義」:印紙税法上の契約書の考え方と、覚書・念書など文書名によらない判断方法を説明しています。
- 国税庁「No.7127 契約内容を変更する文書」:契約変更の覚書が印紙税の課税対象になるかどうかの考え方と具体例を確認できます。
- 国税庁「No.7123 契約金額を変更する契約書の記載金額」:金額変更の覚書に関する印紙税の記載金額の扱いを説明しています。
- 国税庁「No.7120 契約書の写し、副本、謄本等」:契約書を複数作成する場合や、メールで送信した写しの印紙税上の取り扱いを確認できます。
※本記事は言葉の意味と一般的な制度を説明するものです。具体的な覚書の効力、条項の作成、印紙税の判断は、取引の内容や法令によって異なります。
