物価に関するニュースでは、
「消費者物価指数(CPI)が上昇した」
「企業物価指数が前年を上回った」
「輸入物価の上昇が消費者価格へ波及している」
といった表現をよく目にします。
どちらも「物価指数」なので、
「CPIと企業物価指数は何が違う?」
「企業物価が上がれば、あとからCPIも上がる?」
「企業物価指数にサービス価格は入る?」
「輸入物価指数と企業物価指数は同じ?」
と迷うこともあるでしょう。
結論からいうと、CPIは家計が商品・サービスを購入するときの価格を測る指標です。一方、企業物価指数は主に企業間で取引される「商品(財)」の価格を測る指標です。
最も簡単に覚えるなら、
CPI=「消費者が払う価格」
企業物価指数=「企業同士で売買するときの価格」
です。
たとえば原材料価格が上昇すると、まず企業が仕入れる価格に影響し、その後、企業がコストを販売価格へ転嫁すれば、スーパーや小売店などで消費者が支払う価格にも波及することがあります。
しかし、
「企業物価が上がったら、必ず同じ割合でCPIも上がる」
わけではありません。
企業が値上がり分を利益の減少などで吸収することもあれば、流通段階、競争環境、需要、賃金などによって価格転嫁の程度も異なるからです。
この記事では、「CPI」と「企業物価指数」の違いから、国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数、企業向けサービス価格指数、価格転嫁、インフレとの関係まで詳しく解説します。
- 「CPI」と「企業物価指数」の違い【結論】
- そもそも「CPI」とは?
- CPIには「商品」だけでなく「サービス」も入る
- 「企業物価指数」とは?
- 企業物価指数は1種類ではない
- 「国内企業物価指数」とは?
- CPIとの違いは「誰が買うか」
- 具体例:小麦価格が上がった場合
- 企業物価指数はCPIより先に動く?
- 企業物価が10%上がればCPIも10%上がる?
- 「価格転嫁」とは?
- 「輸入物価指数」とは?
- 円安になると輸入物価はどうなる?
- 輸入物価上昇からCPIまでの流れ
- 企業物価指数に「輸入品の国内販売価格」は含まれる?
- 「企業物価指数」と「企業向けサービス価格指数」の違い
- 企業向けサービス価格指数には何が入る?
- CPIにもサービス価格は入る
- CPIと企業物価指数は「取引段階」も違う
- 卸売物価指数と企業物価指数は同じ?
- 日本の企業物価指数は「PPI」と同じ?
- 米国の「PPI」と日本の企業物価指数をそのまま比較できる?
- CPIと企業物価指数では「サービス」の扱いが大きく違う
- 企業物価指数が下がればCPIも下がる?
- 企業物価とCPIの差から何が分かる?
- 人件費上昇は企業物価指数に反映される?
- 「コストプッシュ・インフレ」との関係
- 「デマンドプル・インフレ」ではどうなる?
- どちらが「本当の物価」を表す?
- 日本銀行は企業物価指数を何に使う?
- CPIと企業物価指数はどちらが早く公表される?
- 2026年時点の基準年は?
- 基準年が違っても比較できる?
- 「CPI・企業物価指数」で迷ったときの3秒判定
- 「CPI」を使った例文
- 「企業物価指数」を使った例文
- よくある間違い1:「企業物価指数=CPIの企業版」とだけ覚える
- よくある間違い2:「企業物価が上がれば必ずCPIも同じだけ上がる」と思う
- よくある間違い3:「国内企業物価指数には輸入品も全部入る」と思う
- よくある間違い4:「輸入物価指数は為替と無関係」と思う
- よくある間違い5:「企業物価指数には企業向けサービスも含まれる」と思う
- よくある間違い6:「PPIと日本の企業物価指数は完全に同じ」と思う
- よくある間違い7:「指数水準をそのまま比較すれば物価差が分かる」と思う
- 「CPI」と「企業物価指数」に関するよくある質問
- まとめ
- 参考リンク・出典
「CPI」と「企業物価指数」の違い【結論】
| 比較項目 | CPI(消費者物価指数) | 企業物価指数(CGPI) |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 家計が購入する財・サービスの価格変動 | 企業間で取引される商品(財)の価格変動 |
| 主な取引段階 | 小売段階 | 企業間取引・生産者段階など |
| 商品(財) | 対象 | 主な対象 |
| サービス | 対象 | 企業物価指数では基本的に対象外 |
| 作成機関 | 総務省統計局 | 日本銀行 |
| 主な用途 | 家計が直面する物価の把握 | 企業間取引価格・価格波及の把握 |
| 代表的な関連指数 | 総合、コアCPIなど | 国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数 |
3秒で判断するなら、
「スーパー・家賃・外食など、消費者が払う価格?」 → CPI
「メーカー同士・企業同士で売買される商品の価格?」 → 企業物価指数
と考えると分かりやすいでしょう。
そもそも「CPI」とは?
家計が購入する財・サービスの物価指数
CPIは、
Consumer Price Index
の略で、日本語では、
消費者物価指数
と呼ばれます。
総務省統計局はCPIについて、全国の世帯が購入する家計に係る財・サービスの価格等を総合し、物価変動を時系列的に測定する指数と説明しています。
簡単にいえば、
「一般家庭が普段購入するものの値段が、平均的にどれだけ変わったか」
を見る統計です。
CPIには「商品」だけでなく「サービス」も入る
CPIの特徴は、商品だけでなくサービスも幅広く対象になることです。
たとえば、
- 食料品
- 衣料品
- 家電
- ガソリン
- 電気・ガス
- 家賃
- 外食
- 通信サービス
- 医療サービス
- 教育
- 宿泊
- 娯楽サービス
などが対象になります。
そのためCPIは、
消費者の生活コストに近い物価指数
として広く利用されています。
「企業物価指数」とは?
企業間で取引される商品の価格を測る指数
企業物価指数は英語で、
Corporate Goods Price Index(CGPI)
と呼ばれます。
日本銀行が作成・公表しています。
企業物価指数は、
企業間で取引される商品(財)の価格変動
を測る物価指数です。
ここで特に重要なのが、
「Goods=商品・財」
という点です。
CPIのように、企業向けサービス全体まで一つの指数として含んでいるわけではありません。
企業物価指数は1種類ではない
日本銀行の企業物価指数は、大きく、
- 国内企業物価指数
- 輸出物価指数
- 輸入物価指数
という基本分類指数から構成されています。
| 指数 | 対象 |
|---|---|
| 国内企業物価指数 | 国内で生産され、国内需要家向けに取引される商品 |
| 輸出物価指数 | 日本から輸出される商品 |
| 輸入物価指数 | 海外から日本へ輸入される商品 |
ニュースで単に、
「企業物価が上昇した」
と表現される場合には、国内企業物価指数の動きを指しているケースが多くあります。
ただし厳密には、「企業物価指数」という統計体系の中に複数の指数があるため、どの系列を指しているか確認すると正確です。
「国内企業物価指数」とは?
国内企業物価指数は、
国内で生産され、国内の需要家向けに販売される商品の企業間取引価格
を指数化したものです。
日本銀行は、国内企業物価指数について、国際的に使われる、
PPI(Producer Price Index=生産者物価指数)
におおむね相当すると説明しています。
たとえば、
- 鉄鋼
- 化学製品
- 食品
- 機械
- 電子部品
- 電力・ガスなどの商品的取引
など、企業間で取引される幅広い商品の価格変動を測ります。
CPIとの違いは「誰が買うか」
同じ商品でも、企業物価指数とCPIでは取引の段階が異なります。
たとえばメーカーが小売企業へ商品を販売するときの価格が、
企業間価格
です。
その後、小売店が消費者へ販売する価格が、
小売価格
です。
非常に単純化すると、
メーカー → 企業・卸売・小売
の価格を見るのが企業物価指数、
小売・サービス提供者 → 家計
の価格を見るのがCPIです。
具体例:小麦価格が上がった場合
たとえば小麦などの原材料価格が上昇したとします。
パンメーカーが購入する原材料価格が上がれば、企業側の仕入れコストが上昇します。
その後、メーカーがパンの卸売価格を上げれば、企業間価格に表れます。
さらにスーパーなどが店頭価格を引き上げれば、CPIにも反映されます。
単純化すると、
原材料価格上昇
↓
企業の仕入れ価格上昇
↓
企業間販売価格上昇
↓
小売価格上昇
↓
CPI上昇
という流れが考えられます。
企業物価指数はCPIより先に動く?
先行して動くことはありますが、常にそうなるわけではありません。
原材料や企業間価格が変化した後、消費者向け価格へ転嫁されるまでには時間がかかる場合があります。
そのため企業物価指数の上昇が、
将来の消費者物価上昇圧力を考える材料
になることがあります。
しかし、企業物価指数とCPIには対象範囲やウエイトの違いもあるため、単純な先行・遅行関係が必ず成立するわけではありません。
企業物価が10%上がればCPIも10%上がる?
いいえ。
企業の仕入れ価格が10%上がったからといって、消費者向け価格が自動的に10%上昇するわけではありません。
価格転嫁には、
- 企業の利益率
- 競合企業の価格
- 消費者の需要
- 流通コスト
- 人件費
- 企業の値上げ判断
などが影響します。
たとえば原材料費が上昇しても、販売競争が激しい企業は値上げをせず、利益を減らしてコスト上昇を吸収することがあります。
この場合、企業側のコストは上昇していてもCPIへの波及は限定的になります。
「価格転嫁」とは?
価格転嫁とは、
原材料費、人件費、物流費などのコスト上昇分を販売価格へ反映すること
です。
たとえば製造コストが100円から110円へ上昇したとします。
企業が販売価格も10円引き上げれば、コスト上昇を価格へ転嫁したことになります。
一方、販売価格を据え置けば、企業がコスト増加を吸収していることになります。
したがって企業物価指数からCPIへの波及を見る際には、
価格転嫁がどの程度進んでいるか
が重要です。
「輸入物価指数」とは?
輸入物価指数は、
海外で生産され、日本へ輸入される商品の価格
を測る指数です。
日本銀行は、本邦へ入着する段階の取引価格を調査対象としています。
輸入物価指数では、
円ベース
と、
契約通貨ベース
の指数が公表されています。
この2つを見ることで、海外での商品価格そのものの変化と、為替変動の影響をある程度分けて考えることができます。
円安になると輸入物価はどうなる?
海外でのドル建て価格が変わらなくても、円安になると円で支払う金額は増えます。
たとえば商品価格が、
100ドル
だったとします。
1ドル100円なら、
1万円
です。
1ドル150円になれば、
1万5,000円
になります。
海外価格が同じでも、円ベースでは50%高くなります。
そのため円安は、
輸入物価を押し上げる要因
になることがあります。
輸入物価上昇からCPIまでの流れ
代表的な流れを単純化すると、
円安・原油高・海外商品価格上昇
↓
輸入物価指数上昇
↓
企業の原材料・仕入れコスト上昇
↓
国内企業物価上昇
↓
企業が価格転嫁
↓
CPI上昇
という経路が考えられます。
ただし、すべての段階で同じ割合の値上げが行われるわけではありません。
企業物価指数に「輸入品の国内販売価格」は含まれる?
国内企業物価指数が対象とするのは、
国内で生産され、国内需要家向けに取引される商品
です。
そのため、日本銀行は、
輸入品の国内出荷価格は国内企業物価指数の対象には含まれない
と説明しています。
海外で生産され、日本へ輸入される商品については、輸入物価指数で捉えます。
この点も、単純に「日本国内で企業が買うもの全部=国内企業物価指数」とはならない理由です。
「企業物価指数」と「企業向けサービス価格指数」の違い
企業物価指数で主に対象となるのは、
商品(財)
です。
では企業間で取引されるサービス価格はどこで見るのでしょうか。
そこで使われるのが、
企業向けサービス価格指数
です。
英語では、
Services Producer Price Index
などと呼ばれます。
日本銀行が作成しており、企業間で取引されるサービスの価格を測ります。
企業向けサービス価格指数には何が入る?
代表的には、
- 運輸
- 広告
- 情報通信
- 不動産関連サービス
- リース・レンタル
- 専門サービス
など、企業向けのさまざまなサービス価格が対象になります。
したがって、企業段階の物価を見る場合は、
商品の価格 → 企業物価指数
サービスの価格 → 企業向けサービス価格指数
と分けて考えると理解しやすくなります。
CPIにもサービス価格は入る
CPIでは、家計が購入するサービスが対象となります。
たとえば、
- 外食
- 宿泊
- 家賃
- 携帯電話通信
- 理美容
- 医療
などです。
つまり、
企業向けサービス価格指数=企業が購入するサービス
CPI=家計が購入するサービス
という違いがあります。
CPIと企業物価指数は「取引段階」も違う
日本銀行の説明では、国内企業物価指数は主に、
生産者段階
の価格を調査します。
一方、CPIは、
小売段階
の価格です。
したがって、同じ商品でも、
工場から企業へ出荷される価格
と、
店舗で消費者へ販売される価格
では異なることがあります。
卸売物価指数と企業物価指数は同じ?
昔の経済記事では、
卸売物価指数
という名称を見ることがあります。
日本銀行は2000年基準への改定時に、統計名称を「卸売物価指数」から、
「企業物価指数」
へ変更しました。
これは、実際の調査価格が必ずしも卸売段階に限らず、主として企業間で取引される商品の価格を測っているという統計の性格を、より分かりやすく表すためです。
そのため、古い記事の「卸売物価指数」と現在の「企業物価指数」には歴史的なつながりがありますが、現在は「企業物価指数」という名称が使われています。
日本の企業物価指数は「PPI」と同じ?
海外ニュースでは、
PPI(Producer Price Index)
という言葉をよく見かけます。
日本銀行によると、日本の、
国内企業物価指数
は、国際的に一般的なPPIにおおむね相当します。
そのため、
日本の国内企業物価指数 ≒ 海外でいうPPIに近いもの
と理解するとよいでしょう。
ただし、国によって対象範囲・計算方法・統計制度が異なるため、完全に同一とは限りません。
米国の「PPI」と日本の企業物価指数をそのまま比較できる?
大まかな企業段階の物価動向を比べることはできますが、詳細比較では注意が必要です。
国ごとに、
- 対象となる商品・サービス
- 産業分類
- 価格調査段階
- 指数算式
などが異なる場合があります。
そのため、国際ニュースで「PPI」と出てきた場合は、その国の統計定義を確認すると確実です。
CPIと企業物価指数では「サービス」の扱いが大きく違う
| 対象 | CPI | 企業物価指数 |
|---|---|---|
| 商品 | ○ | ○ |
| 家計向けサービス | ○ | × |
| 企業向けサービス | × | × |
| 企業向けサービスを見る統計 | ― | 企業向けサービス価格指数 |
このため、サービス業の価格上昇まで含めて企業側のインフレを見る場合には、企業物価指数だけでは不十分です。
企業物価指数が下がればCPIも下がる?
必ずしもそうではありません。
たとえば原材料価格が低下して企業の商品価格が落ち着いても、
- 人件費が上昇している
- サービス価格が上昇している
- 家賃が上昇している
- 以前のコスト上昇の価格転嫁が続いている
場合には、CPIの上昇が続くことがあります。
逆に企業物価が上昇しても、企業がコスト増を吸収すればCPIへの影響が小さい場合があります。
企業物価とCPIの差から何が分かる?
両者の動きを比較すると、
企業段階のコスト変化が消費者価格へどの程度波及しているか
を考える材料になります。
たとえば、
企業物価が大幅上昇・CPIは小幅上昇
なら、企業がコストの一部を吸収している可能性があります。
一方、時間がたってCPIも上昇してくれば、
価格転嫁が進んでいる可能性
を考えることができます。
ただし実際には対象品目が異なるため、単純な差だけで企業利益や価格転嫁率を正確に計算することはできません。
人件費上昇は企業物価指数に反映される?
企業物価指数は商品の取引価格を測る指数であり、人件費そのものを直接測る統計ではありません。
しかし、人件費上昇によって企業が商品の販売価格を引き上げれば、結果として企業物価指数へ反映される可能性があります。
サービス業では人件費の比重が大きい業種も多いため、企業向けサービス価格指数やCPIサービス価格と賃金の関係も重要になります。
「コストプッシュ・インフレ」との関係
企業物価指数は、コストプッシュ型のインフレを分析する際にも利用されます。
コストプッシュ・インフレとは、
- 原材料費
- エネルギー価格
- 輸送費
- 人件費
などの上昇によって企業のコストが増え、販売価格へ転嫁されることで物価が上昇する現象です。
輸入物価指数や企業物価指数が大きく上昇している場合、
企業側から消費者価格へ物価上昇圧力が波及する可能性
を考える材料になります。
「デマンドプル・インフレ」ではどうなる?
需要が非常に強くなり、消費者が商品・サービスを積極的に購入することで価格が上がる、
デマンドプル・インフレ
の場合は、必ずしも企業物価や輸入物価の上昇が最初の原因になるわけではありません。
そのためインフレの原因を分析する場合は、CPI・企業物価指数だけでなく、
- 賃金
- 個人消費
- 需給ギャップ
- 輸入物価
- 企業利益
なども確認する必要があります。
どちらが「本当の物価」を表す?
どちらも正しい物価指数ですが、見ている場所が違います。
たとえば、
「家庭の生活費はどれくらい上がった?」
という質問にはCPIが適しています。
一方、
「企業の商品取引価格はどの程度上昇している?」
という質問には企業物価指数が適しています。
さらに、
「企業が利用するサービス価格は?」
なら企業向けサービス価格指数を見る必要があります。
日本銀行は企業物価指数を何に使う?
日本銀行自身が作成しているため、企業物価指数は経済・物価情勢の分析に幅広く利用されています。
たとえば、
- 原材料価格の変化
- 輸入物価の変化
- 為替変動の価格への影響
- 企業の価格設定行動
- CPIへの波及
などを分析する材料になります。
また、企業物価指数はGDPなど各種経済統計の実質化に用いるデフレーターの基礎資料としても利用されています。
CPIと企業物価指数はどちらが早く公表される?
どちらも月次統計ですが、公表日程は異なります。
企業物価指数は日本銀行、CPIは総務省統計局がそれぞれ公表しています。
企業段階の価格をより早く確認できる場合があるため、企業物価指数は、
将来の物価動向を分析する材料の一つ
として注目されます。
ただし、企業物価指数だけから翌月・翌年のCPIを機械的に予測できるわけではありません。
2026年時点の基準年は?
消費者物価指数は2026年8月に、
2025年基準
へ改定されています。
2025年平均を100とし、家計の消費構造の変化や新たな財・サービスなどを反映するよう品目・ウエイト等が見直されています。
一方、日本銀行が現在公表している企業物価指数は、
2020年基準
が中心です。
日本銀行は2026年6月に、次回の2025年基準改定に向けた基本方針を公表しています。
つまり、CPIと企業物価指数では、必ずしも同じ基準年を使っているわけではありません。
基準年が違っても比較できる?
指数の水準そのものを、
「CPIは110、企業物価指数は125だから企業物価のほうが15ポイント高い」
と単純比較するのは適切ではありません。
物価指数では、
- 前年比
- 前年同月比
- 前月比
など、変化率を見ることが重要です。
対象・基準年・ウエイトが違う指数同士では、指数水準そのものよりも、
「どの方向へ、どの程度動いているか」
を見るほうが理解しやすいでしょう。
「CPI・企業物価指数」で迷ったときの3秒判定
| 知りたいこと | 見る指標 |
|---|---|
| 消費者が支払う物価 | CPI |
| 家計の生活コスト | CPI |
| 国内企業同士の商品取引価格 | 国内企業物価指数 |
| 輸入商品の価格 | 輸入物価指数 |
| 輸出商品の価格 | 輸出物価指数 |
| 企業間のサービス価格 | 企業向けサービス価格指数 |
| 企業コストから消費者価格への波及 | 複数の物価指数を組み合わせて確認 |
「CPI」を使った例文
- 食品価格の上昇を受けてCPIが上昇した。
- 家計が直面する物価を確認するためCPIを見る。
- 企業物価の上昇が時間をかけてCPIへ波及した。
- サービス価格の上昇がCPIを押し上げた。
- CPIは企業物価指数より消費者に近い取引段階を対象とする。
「企業物価指数」を使った例文
- 原材料価格の上昇によって企業物価指数が上昇した。
- 企業物価指数から企業間取引価格の変化を確認する。
- 円安により輸入物価指数が上昇した。
- 価格転嫁の進展によって国内企業物価指数が上昇した。
- 企業物価指数だけで消費者物価を判断することはできない。
よくある間違い1:「企業物価指数=CPIの企業版」とだけ覚える
大まかな理解としては便利ですが、企業物価指数は主に商品(財)が対象です。
企業向けサービス価格は別に「企業向けサービス価格指数」があります。
よくある間違い2:「企業物価が上がれば必ずCPIも同じだけ上がる」と思う
価格転嫁の程度は企業や業種によって異なります。
企業が利益を減らしてコストを吸収すれば、CPIへの波及は小さくなる場合があります。
よくある間違い3:「国内企業物価指数には輸入品も全部入る」と思う
国内企業物価指数は、国内で生産され国内需要家向けに取引される商品が対象です。
海外からの輸入品は輸入物価指数で捉えます。
よくある間違い4:「輸入物価指数は為替と無関係」と思う
輸入物価指数には円ベースと契約通貨ベースがあります。
円ベースでは為替変動が大きく影響することがあります。
よくある間違い5:「企業物価指数には企業向けサービスも含まれる」と思う
企業物価指数は基本的に商品の価格指数です。
企業向けサービスは企業向けサービス価格指数で確認します。
よくある間違い6:「PPIと日本の企業物価指数は完全に同じ」と思う
日本の国内企業物価指数は国際的なPPIにおおむね相当しますが、国によって統計の対象範囲や制度は異なります。
よくある間違い7:「指数水準をそのまま比較すれば物価差が分かる」と思う
CPIと企業物価指数では基準年、対象、ウエイトが異なります。
指数の絶対水準を直接比較するのではなく、前年比などの変化率と中身を見ることが重要です。
「CPI」と「企業物価指数」に関するよくある質問
Q1. CPIと企業物価指数の一番簡単な違いは?
CPIは消費者が購入する財・サービスの価格、企業物価指数は企業間で取引される商品の価格です。
Q2. 企業物価指数は誰が作っていますか?
日本銀行が作成・公表しています。
CPIは総務省統計局が作成しています。
Q3. 企業物価指数が上がるとCPIも上がりますか?
上昇圧力になることはありますが、必ず同じように上がるわけではありません。
企業がどの程度価格転嫁するかによって変わります。
Q4. 企業物価指数のほうがCPIより先に動きますか?
原材料・企業間価格の変化が先に表れ、その後CPIへ波及するケースはあります。
ただし対象範囲が異なるため、常に企業物価指数が先行するとは限りません。
Q5. 輸入物価指数と国内企業物価指数の違いは?
国内企業物価指数は国内で生産され国内需要家向けに取引される商品、輸入物価指数は海外で生産され日本へ輸入される商品を対象にします。
Q6. 円安はどの指数に最も直接表れやすいですか?
海外価格が同じなら、円安は円ベースの輸入物価指数を押し上げる方向に働きます。
その後、価格転嫁を通じて国内企業物価やCPIへ波及する可能性があります。
Q7. 企業向けサービス価格はどこで見ますか?
日本銀行の「企業向けサービス価格指数」で確認できます。
企業物価指数とは別の統計です。
Q8. 日本のPPIはどの指数ですか?
日本銀行によると、国内企業物価指数が国際的なPPIにおおむね相当します。
Q9. インフレを見るならCPIと企業物価指数のどちらが重要ですか?
消費者が直面する物価を見るならCPIが中心です。
一方、企業側のコストや将来の価格転嫁圧力を分析するには企業物価指数や輸入物価指数も重要です。
Q10. 経済ニュースでは両方確認したほうがよいですか?
はい。
CPIだけでは企業側のコスト変化が分かりにくく、企業物価指数だけでは消費者が実際に支払う価格が分かりません。
両方を見ることで、物価上昇が経済のどの段階で起きているのかを理解しやすくなります。
まとめ
「CPI」と「企業物価指数」は、どちらも重要な物価指数ですが、価格を測る取引段階が異なります。
| CPI | 企業物価指数 |
|---|---|
| 消費者が支払う価格 | 企業間で取引される商品の価格 |
| 商品とサービスが対象 | 主に商品(財)が対象 |
| 小売段階 | 生産者・企業間取引段階 |
| 総務省統計局が作成 | 日本銀行が作成 |
最も簡単な覚え方は、
CPI=「家計の買値」
企業物価指数=「企業同士の売買価格」
です。
物価上昇が起きるときには、
海外商品価格・為替
↓
輸入物価
↓
企業の仕入れコスト
↓
企業物価
↓
価格転嫁
↓
CPI
という波及経路が生じることがあります。
ただし、
「企業物価上昇=そのままCPI上昇」
ではありません。
企業がコストをどこまで価格転嫁するか、消費者需要がどの程度強いか、賃金・流通費がどう変化するかなどによって結果は変わります。
また企業段階でも、
国内で生産する商品 → 国内企業物価指数
海外から輸入する商品 → 輸入物価指数
海外へ輸出する商品 → 輸出物価指数
企業が購入するサービス → 企業向けサービス価格指数
というように、複数の指数があります。
関連する物価指標まで整理すると、
CPI=家計が購入する財・サービスの価格
国内企業物価指数=国内企業間で取引される国内生産商品の価格
輸入物価指数=海外から輸入する商品の価格
輸出物価指数=海外へ輸出する商品の価格
企業向けサービス価格指数=企業間で取引されるサービス価格
PPI=国際的に使われる生産者物価指数。日本の国内企業物価指数がおおむね相当
となります。
経済ニュースを見るときは、単に、
「物価が○%上昇した」
という数字だけを見るのではなく、
「誰が、誰から買うときの価格なのか」
を確認しましょう。
CPIと企業物価指数の違いを理解すると、円安や原材料高がどのように企業コストへ波及し、最終的に家計の物価へつながっていくのかを、より正確に読み解けるようになります。
参考リンク・出典
-
総務省統計局「2025年基準 消費者物価指数の解説」
― CPIを、全国の世帯が購入する家計に係る財・サービスの価格等を総合し、物価変動を時系列的に測定する指数として解説 -
総務省統計局「2025年基準改定について」
― 2026年8月に実施された2025年基準への改定、指数・ウエイトの扱いなどを説明 -
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」
― 国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数など企業物価指数の公式統計・解説資料を掲載 -
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)のFAQ」
― 国内企業物価指数を国内で生産した国内需要家向け商品の価格指数と説明し、CPIとの対象範囲・価格調査段階の違い、国内企業物価指数がPPIにおおむね相当することなどを解説 -
日本銀行「企業物価指数の公表データ一覧」
― 2020年基準による企業物価指数の月次公表データを掲載 -
日本銀行「企業向けサービス価格指数(2020年基準)のFAQ」
― 企業間で取引されるサービスと、CPIに含まれる家計向けサービスとの対象範囲・価格調査段階の違いを解説
※「企業物価指数」という言葉は、日本銀行が公表する企業物価指数体系全体を指す場合と、その中の「国内企業物価指数」を指すような文脈で使われる場合があります。ニュースを読む際には、国内企業物価・輸出物価・輸入物価のどの系列を扱っているか確認してください。
※企業物価指数がCPIに先行して動くことはありますが、両者には対象品目・取引段階・ウエイトが異なるため、企業物価指数からCPIを機械的に予測することはできません。
※企業の仕入れコスト上昇が消費者価格へ波及する程度は、企業の利益率、競争環境、需要、価格転嫁行動などによって変わります。「企業物価が5%上昇したらCPIも5%上昇する」という関係ではありません。
※企業物価指数は主に商品の価格を対象とします。企業間のサービス価格については、日本銀行が別途「企業向けサービス価格指数」を作成しています。
