交通事故や近隣トラブル、契約上の争い、刑事事件などでは、「和解が成立した」「示談で解決した」という表現が使われます。どちらも当事者が話し合って争いを終わらせるため、まったく同じ言葉だと思われることがあります。
結論からいうと、「和解」は当事者が互いに譲歩して争いを終わらせることを表す法律上の概念で、「示談」は主に裁判所を介さず、当事者間の話し合いでトラブルを解決することを表す実務上・日常上の言葉です。
ただし、両者を完全に別の契約と考えるのも正確ではありません。示談の内容が、当事者が互いに譲歩して争いをやめるものであれば、民法上の和解契約に当たるのが一般的です。つまり、示談は多くの場合、和解の一種として扱われます。
一方で、「裁判上の和解」と「裁判外の示談」を比べると、成立する場所、作成される文書、強制執行へ進むための条件などに重要な違いがあります。「和解は裁判所で、示談は裁判外で行う」と説明されることがあるのは、この違いに注目した整理です。しかし、和解という言葉自体は裁判外でも使われるため、常にこの二分法が成り立つわけではありません。
この記事では、和解と示談の意味、決定的な違い、民法上の位置付け、裁判上の和解との関係、交通事故・刑事事件・契約トラブルでの使い分け、合意書を作る際の注意点、例文、3秒判定、よくある質問まで詳しく解説します。
結論:「和解」は法律上の概念、「示談」は裁判外の話し合いによる解決を指すことが多い
和解と示談の違いを短く整理すると、次のようになります。
- 和解:当事者が互いに譲歩し、争いをやめることを約束すること。民法に規定があり、裁判上の和解と裁判外の和解がある
- 示談:事故や事件などの当事者が、主に裁判所を介さず話し合い、賠償額や解決条件を決めて争いを終わらせること
最も大切なのは、「和解」という大きな範囲の中に、裁判外で行う示談が含まれる場合が多いという関係です。示談は民法に名前のある独立した典型契約ではありませんが、その合意内容が民法上の和解の要件を満たせば、和解契約として扱われます。
一言で覚えるなら、「互いに譲って争いを終わらせる法的な枠組み」が和解、「裁判を使わず当事者間で解決する実務的な呼び名」が示談です。
ただし、実際の効力は「和解」「示談」という表題だけでは決まりません。誰が、何について、どの請求を、どの条件で解決すると合意したのか、裁判所の手続内で成立したのか、文書に執行力があるのかを確認する必要があります。
【徹底比較】「和解」と「示談」の違い
| 比較する点 | 和解 | 示談 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 当事者が互いに譲歩して争いを終わらせる | 当事者が話し合って事件・事故などを解決する |
| 法律上の規定 | 民法第695条以下に規定がある | 示談という名称の契約を直接定めた一般規定はない |
| 一般的な位置付け | 法律上の概念・契約類型 | 実務上・日常上の呼び名で、多くは和解契約に当たる |
| 成立する場所 | 裁判所の内外どちらでも成立する | 主に裁判所の外で成立する |
| 裁判所の関与 | 裁判上の和解では裁判所が関与する | 通常は裁判所が関与しない |
| 典型的な場面 | 訴訟、民事紛争、契約上の争い、家事事件など | 交通事故、傷害、器物損壊、近隣トラブルなど |
| 作成される文書 | 和解契約書、和解調書など | 示談書、合意書など |
| 強制執行 | 裁判上の和解調書は債務名義となり得る | 一般の示談書だけでは直ちに強制執行できないのが原則 |
| 刑事事件への影響 | 被害回復や被害者との合意として考慮されることがある | 被害弁償、宥恕条項などを含む示談が処分・量刑で考慮されることがある |
| 共通点 | 当事者の意思の一致によって紛争を終わらせる点 | |
表から分かるように、和解と示談は対立する別制度ではありません。比較の軸によっては、示談が和解に含まれます。特に「私法上の契約として何に当たるか」を考えるときは、示談の多くが和解契約に当たると整理できます。
これに対し、「裁判手続の中か外か」という軸で比べると、裁判上の和解と裁判外の示談に明確な差が見えます。インターネット上の説明が食い違って見えるのは、どちらの比較軸を使っているかが異なるためです。
「和解」とは?
互いに譲歩して争いをやめる契約
和解とは、争いのある当事者が互いに譲歩し、その争いを終わらせることを約束するものです。たとえば、一方は請求額を100万円から70万円へ減らし、他方は責任を全面的に争う立場から70万円を支払う立場へ変える、といった形です。
和解の目的は、過去の出来事について最後まで白黒をつけることだけではありません。互いに一定の主張を譲り、受け入れられる条件を定めることで、紛争を将来へ持ち越さないようにします。
民法第695条に規定されている
民法第695条は、当事者が互いに譲歩をして、その間にある争いをやめることを約することで和解の効力が生じると定めています。法律上の和解では、次の要素が中心になります。
- 当事者間に争いがあること
- 当事者が互いに譲歩すること
- その争いを終わらせると約束すること
「互いに譲歩」といっても、必ず同じ金額・同じ割合を譲る必要はありません。一方が金額を減らし、他方が支払期限や謝罪などを受け入れる場合もあります。何を譲歩したかは、当事者の主張と合意内容を具体的に見て判断されます。
裁判外の和解と裁判上の和解がある
和解は裁判所だけで行われるものではありません。当事者だけで交渉したり、弁護士を通して交渉したりして結ぶ和解もあります。これは「裁判外の和解」と呼ばれます。
一方、訴訟の途中で、裁判官も関与しながら合意して終わらせるのが「裁判上の和解」です。裁判上の和解が成立すると、その内容は和解調書に記載されます。和解調書には確定判決と同一の効力が認められ、金銭支払などの義務が履行されない場合、内容に応じて強制執行へ進む根拠になります。
したがって、「和解=必ず裁判所で行う」という理解は誤りです。正しくは、和解には裁判所の外で成立するものと、裁判所の手続内で成立するものがあります。
判決とは違い、当事者が解決内容を決める
判決では、裁判官が双方の主張と証拠を検討し、法に基づいて結論を示します。和解では、最終的な解決条件を受け入れるかどうかを当事者自身が決めます。
そのため和解では、分割払い、今後の取引方法、修理、謝罪、秘密保持、連絡禁止など、判決だけでは実現しにくい柔軟な条件を組み合わせられます。反面、両者の意思が一致しなければ成立しません。
「示談」とは?
裁判所を介さず、話し合いで紛争を解決すること
示談とは、事故・事件・損害賠償などをめぐる当事者が、主に裁判所を介さず、話し合いによって解決条件を定めることです。加害者本人と被害者本人が話す場合だけでなく、保険会社や弁護士が代理して交渉する場合も示談と呼ばれます。
典型例は交通事故です。治療費、休業損害、慰謝料、修理費、過失割合などを話し合い、最終的な支払額や支払日を決めます。合意後に示談書や免責証書などを作成し、一定の範囲で紛争を終結させます。
「示談契約」という名前の独立した典型契約ではない
民法には、売買、賃貸借、請負、和解など、一定の名称と規定を持つ契約があります。一般に示談は、それらと並ぶ独立した典型契約として規定されているわけではありません。
しかし、法律に「示談」という契約名がないからといって、示談に法的効力がないわけではありません。当事者の意思が一致すれば合意は成立し、その内容が民法上の和解の要件を満たす場合には、和解契約として効力が認められます。
示談書は合意内容を証明する文書
示談は口頭でも成立し得ますが、後から「その条件には合意していない」「支払期限が違う」「追加請求を放棄していない」と争われるおそれがあります。そのため、実務では示談書などの書面を作成することが重要です。
示談書には、当事者、対象となる事故・事件、責任の範囲、支払額、支払方法、期限、清算条項などを記載します。刑事事件では、被害届や告訴に関する意思、加害者を許す旨の宥恕条項、接触禁止、口外禁止などが検討されることもあります。
一般の示談書だけで直ちに差押えできるとは限らない
示談書に「○月○日までに50万円を支払う」と書かれていても、相手が払わないときに、その私文書だけを使って直ちに預金や給与を差し押さえられるとは限りません。通常は、訴訟、支払督促などで債務名義を得る必要があります。
金銭債務について、債務者が強制執行に服する旨を陳述した公正証書を作成するなど、将来の不履行に備える方法もあります。どの方法が適切かは、金額、支払方法、相手の信用状況などによって異なります。
「和解」と「示談」の決定的な違い
違い1:法律に明文の定義があるか
和解は民法に規定された契約です。これに対し、示談という名称の契約について、民法に一般的な定義条文はありません。示談は社会や実務の中で広く使われてきた言葉です。
ただし、この違いは「和解だけが有効で、示談は無効」という意味ではありません。示談書という名称でも、内容に応じて和解契約その他の契約として効力を持ちます。
違い2:使われる場面と語感
和解は、一般的な民事紛争から訴訟、家族関係、国際紛争まで幅広く使われます。「長年対立していた両者が和解した」のように、関係修復を表す日常語としても使われます。
示談は、交通事故、暴行、傷害、窃盗、器物損壊、不貞慰謝料、近隣トラブルなど、具体的な損害や事件を金銭その他の条件で解決する場面に多く使われます。「示談金」「示談交渉」という組み合わせが多いのも特徴です。
違い3:裁判所との関係
示談は通常、裁判所の外で行われます。一方、和解には裁判外の和解と裁判上の和解があります。したがって、比較対象を「裁判上の和解」に限れば、裁判所の関与の有無が大きな違いになります。
裁判上の和解では裁判所が和解調書を作成します。示談では、通常、当事者や代理人が示談書・合意書を作成します。
違い4:成立後に強制執行へ進めるか
裁判上の和解調書は、確定判決と同一の効力を持ち、給付内容が明確であれば強制執行の根拠になり得ます。これに対し、一般的な示談書は、合意の存在を示す重要な証拠にはなりますが、それだけで当然に強制執行できるわけではありません。
ただし、ここで比べているのは「裁判上の和解」と「通常の示談」です。裁判外の和解契約書も、一般の示談書と同様に、その文書だけで直ちに強制執行できるとは限りません。
違い5:言葉より合意内容が重要
文書の題名が「示談書」でも「和解契約書」でも、「本件について今後一切請求しない」という清算条項があれば、後の追加請求が制限される可能性があります。反対に、「示談」と呼んでいても、対象や条件が曖昧なら、解決した範囲をめぐって再び争いになることがあります。
法律効果を判断するときは、名称ではなく、合意の対象、当事者の意思、条項の内容、成立経緯を確認します。
示談は和解に含まれる?二つの考え方を整理
法的な性質を見ると、多くの示談は和解契約
事故の責任や賠償額について争いがあり、被害者が請求額を一部譲り、加害者側も一定額の支払を受け入れて争いを終わらせる場合、互譲と紛争終結の合意があります。このような示談は、通常、民法上の和解契約に当たります。
この意味では、「和解と示談に本質的な違いはほとんどない」「示談は和解の一種」という説明が成り立ちます。
手続の違いを見ると、裁判上の和解と示談は異なる
訴訟の途中で成立し、和解調書が作成される裁判上の和解と、裁判所外で示談書を取り交わす示談では、成立手続と文書の効力が異なります。この意味では、「和解は裁判所で行い、示談は裁判外で行う」という説明が使われます。
ただし、和解には裁判外のものもあるため、厳密には「裁判上の和解は裁判所内、示談は通常裁判所外」と表現するのが安全です。
片方だけが譲歩する合意はどうなる?
民法上の和解は「互いに譲歩する」ことを要素とします。では、一方が相手の請求を全面的に認め、相手は何も譲らずに争いを終わらせた場合はどうなるのでしょうか。
その合意は、典型的な和解契約の要件を満たさない可能性があります。しかし、当事者間の合意として直ちに無効になるわけではなく、債務承認や無名契約など、内容に応じた法的性質が検討されます。ここでも、示談という名称だけで結論は決まりません。
公的資料に見る「和解」と「示談」
民法は和解の成立要件を定めている
e-Gov法令検索の民法では、第695条に和解の規定があります。当事者が互いに譲歩し、争いをやめることを約することで効力が生じるという定めです。
この条文から、和解は単に仲直りする感情的な行為ではなく、紛争を終わらせる法的な合意でもあることが分かります。
裁判所は訴訟の途中でも話し合いによる解決ができると説明
裁判所の「民事訴訟」では、訴訟は判決によって紛争解決を図る手続ですが、訴訟の途中で話し合いにより解決することもでき、これを和解と呼ぶと説明されています。
訴訟を始めたからといって、必ず判決まで争わなければならないわけではありません。証拠や見通しを踏まえ、途中で条件に合意して終了することもできます。
和解調書は確定判決と同じ効力を持つ
裁判所の不動産競売物件情報サイトにある「確定判決と同一の効力を有するもの」では、裁判上の和解調書などの記載は確定判決と同じ効力を有し、それらの文書に基づいて強制執行ができると説明されています。
これは、通常の私文書である示談書との実務上の大きな違いです。もっとも、強制執行には、支払義務などが執行できる形で具体的に記載されている必要があります。
訴え提起前でも裁判上の和解を利用できる
東京簡易裁判所の「訴え提起前和解」では、民事上の争いがある当事者が、訴訟提起前に簡易裁判所へ和解を申し立てる手続が案内されています。合意内容が和解調書に記載されると、確定判決と同一の効力を有します。
当事者間ですでに条件がまとまっていても、履行確保のために裁判上の和解という形を選ぶことがあり得ます。
交通事故での「和解」と「示談」
一般には「示談」が多く使われる
交通事故では、保険会社を通じて賠償額や過失割合を話し合う手続を「示談交渉」と呼ぶのが一般的です。話し合いがまとまれば、示談書、免責証書、承諾書などを作成します。
この示談も、事故による損害賠償をめぐる争いを互いの譲歩で終わらせるなら、法的には和解契約として扱われます。
示談成立後の追加請求には注意
示談書に清算条項があると、原則として、合意した範囲について後から追加請求することが難しくなります。そのため、治療中で損害額が確定していない段階や、後遺障害の見通しが立っていない段階で安易に最終示談をするのは慎重に考える必要があります。
例外的に、示談時に予想できなかった後遺症などが問題になることもありますが、当然に追加請求できるとは限りません。事故、傷害、支払額が大きい場合は、署名前に専門家へ確認することが重要です。
訴訟に進んだ後は「裁判上の和解」と呼ばれる
示談交渉がまとまらず訴訟になっても、途中で当事者が条件に合意すれば裁判上の和解が成立します。解決内容が似ていても、裁判外で合意した段階では示談、訴訟手続内で合意した場合は裁判上の和解と呼ばれるのが一般的です。
刑事事件での「和解」と「示談」
示談は民事上の損害賠償を解決する合意
刑事事件でいう示談は、加害者側と被害者側が、被害弁償、慰謝料、謝罪、接触禁止などについて合意するものです。示談金の支払だけでなく、被害者が加害者を許す意思を示す宥恕条項が含まれる場合もあります。
示談が成立すると、捜査機関や裁判所が処分・量刑を判断する際に考慮する事情になり得ます。しかし、示談が成立したからといって、刑事手続が自動的に終了したり、必ず不起訴になったりするわけではありません。
被害届の取下げと告訴の取消しは同じではない
示談書では、「被害届を取り下げる」「告訴を取り消す」「処罰を望まない」などの表現が使われることがあります。これらは法的な意味が同じではありません。対象となる犯罪や手続の段階によって効果も異なります。
刑事事件の示談は、被害者と加害者の安全、連絡方法、守秘、将来の民事請求にも関わります。定型文をそのまま使うのではなく、事件に合った内容を検討する必要があります。
「示談金を払えば罪が消える」は誤り
示談は当事者間の民事上の問題を解決するものです。犯罪について捜査・起訴するか、どの刑を科すかを最終的に決めるのは当事者ではありません。示談成立は重要な事情になり得ますが、国家の刑罰権そのものを当事者間の契約で消すことはできません。
契約・職場・近隣トラブルでの使い分け
契約上の争いでは「和解契約」が自然
売買代金、工事代金、納品物の不具合、賃貸借、業務委託などをめぐり、企業や個人が条件を調整して争いを終わらせる場合は、「和解契約」「和解合意」という表現がよく使われます。
文書では、対象となる契約、争点、支払義務、期限、遅延損害金、秘密保持、権利放棄などを明確にします。
事故や具体的被害では「示談」が自然
交通事故、暴行、物損、騒音による損害など、具体的な事件・事故について賠償条件をまとめる場面では「示談」が自然です。「本件事故について示談が成立した」「示談金を支払った」のように使います。
関係修復を表すなら「和解」
長く対立していた組織同士が関係を修復した場合や、親族が争いを収めた場合は「和解」が自然です。「兄弟が和解した」とは言いますが、金銭その他の具体的な紛争解決がなければ「兄弟が示談した」とは通常言いません。
「調停」「仲裁」「合意」との違い
| 言葉 | 中心となる意味 | 第三者の関与 | 解決を決める主体 |
|---|---|---|---|
| 和解 | 互いに譲歩して争いを終わらせる | なくても成立する | 当事者 |
| 示談 | 主に裁判外で話し合って事件・事故を解決する | なくても成立する | 当事者 |
| 調停 | 中立的な第三者の支援で合意を目指す | ある | 当事者 |
| 仲裁 | 仲裁人へ判断を委ねる | ある | 仲裁人・仲裁廷 |
| 合意 | 複数当事者の意思が一致する | 不要 | 当事者 |
和解と示談は「どのような内容で紛争を終わらせるか」を表す言葉です。調停と仲裁は、第三者を介した紛争解決の手続を表します。調停の結果として和解が成立することはありますが、調停と和解は同じ言葉ではありません。
また、和解も示談も当事者の意思の一致によって成立します。複数人の意思が一致する「合意」と、一方が示された内容を受け入れる「同意」の区別については、「合意」と「同意」の違いで詳しく解説しています。
交渉前に関係者が論点や条件を話し合う場合は「協議」と表現することもあります。助言を求める「相談」との使い分けは、「協議」と「相談」の違いも参考にしてください。
示談書・和解契約書に記載したい主な事項
当事者と対象となる紛争
氏名・名称・住所などで当事者を特定し、いつ、どこで、何が起きた事件・事故・契約なのかを明記します。対象が曖昧だと、どの請求が解決済みなのか争われる原因になります。
支払額・方法・期限
支払総額、一括か分割か、振込先、振込手数料の負担、各回の期限を定めます。分割払いでは、一定回数の遅滞があれば残額を一括請求できる期限の利益喪失条項や、遅延損害金も検討します。
清算条項
清算条項は、合意書に定めたもの以外に債権債務がないことを確認する条項です。紛争を最終的に終わらせるために重要ですが、対象を広げすぎると、想定していなかった請求まで放棄したと解釈されるおそれがあります。
特定の事故だけを清算するのか、当事者間のすべての関係を清算するのかを区別します。
謝罪・秘密保持・接触禁止
事情に応じて、謝罪文の交付、秘密保持、SNS投稿の削除、誹謗中傷の禁止、接触方法の制限などを定めます。禁止行為は、誰が読んでも分かるよう具体的に書くことが大切です。
不履行への備え
相手が支払わない可能性がある場合、連帯保証、公正証書、担保などを検討します。ただし、条項の有効性や執行方法は内容によって異なります。高額な合意や長期分割では、専門家の確認を受けると安全です。
間違えやすいポイント
「示談には法的効力がない」は誤り
示談という名称が民法に規定されていなくても、当事者の合意は契約として効力を持ち得ます。署名した示談書を「単なる話し合いのメモ」と考えてはいけません。
「和解はすべて強制執行できる」は誤り
強制執行の根拠になり得るのは、裁判上の和解調書などです。裁判外で作った一般的な和解契約書は、和解という名称でも、それだけで当然に差押えができるわけではありません。
「示談成立で刑事事件も必ず終了する」は誤り
示談は民事上の損害回復や被害者の意思を示す重要な事情ですが、捜査・起訴・量刑は公的機関が判断します。示談の有無だけで一律に結論は決まりません。
「一度署名しても簡単に撤回できる」は誤り
当事者が内容を理解して自由な意思で合意した示談・和解は、原則として一方的な都合だけで撤回できません。錯誤、詐欺、強迫、公序良俗違反などが問題になる余地はありますが、成立後の効力を否定するには法的な検討が必要です。
「口約束なら無効」は誤り
法律上、示談・和解は常に書面がなければ成立しないわけではありません。ただし、口頭では合意内容を証明しにくいため、重要な紛争では書面化すべきです。
「和解」と「示談」の例文
「和解」を使う例文
- 訴訟の途中で双方が条件を受け入れ、裁判上の和解が成立した。
- 取引先と支払額について和解契約を締結した。
- 長年対立していた兄弟が話し合い、ようやく和解した。
- 裁判官から提示された和解案を慎重に検討する。
- 和解調書に記載された期限までに解決金を支払う。
「示談」を使う例文
- 交通事故の損害賠償について保険会社と示談交渉を進める。
- 当事者は修理費と慰謝料を含む金額で示談した。
- 示談書へ署名する前に、清算条項の範囲を確認した。
- 被害者との示談が成立し、示談金を一括で支払った。
- 治療が終わって損害が確定してから示談することにした。
同じ出来事を言い換える例
「交通事故について当事者間で示談が成立した」と「交通事故について裁判外の和解が成立した」は、文脈によってほぼ同じ内容を表します。ただし、日常・保険実務では前者が自然です。
「訴訟の途中で和解が成立した」は自然ですが、通常は「訴訟の途中で示談が成立した」よりも「裁判上の和解が成立した」と表現します。裁判手続内で成立したことが明確になるためです。
迷ったときの3秒判定
和解と示談のどちらを使うか迷ったら、次の順に判断します。
- 裁判手続の中で合意した?
はい → 「裁判上の和解」が適切です。 - 交通事故や事件について裁判外で賠償条件を決めた?
はい → 「示談」が自然です。 - 互いに譲歩して一般的な民事紛争を終わらせた?
はい → 「和解」が使えます。 - 対立していた関係を修復したことを表したい?
はい → 「和解」が自然です。
法律効果を確認するときは3秒で決めず、文書の表題ではなく、成立した手続と条項の内容を確認してください。
よくある質問
Q1.和解と示談は結局、同じ意味ですか?
多くの場面では重なります。示談の内容が、互いに譲歩して争いを終わらせるものであれば、民法上の和解契約に当たるのが一般的です。ただし、和解には裁判上の和解もあり、示談は主に裁判外で使われるため、完全な同義語ではありません。
Q2.示談書と和解契約書では、どちらが強いですか?
題名だけで効力の強弱は決まりません。重要なのは、当事者、対象、支払義務、清算範囲などの条項です。なお、裁判上の和解調書は、一般の示談書・和解契約書とは異なり、債務名義として強制執行の根拠になり得ます。
Q3.示談した後でも裁判を起こせますか?
訴えを提起すること自体が物理的に不可能になるとは限りませんが、示談で解決済みの請求なら、相手から合意の成立や清算条項を主張され、請求が認められない可能性があります。示談の対象外だった損害や、合意の有効性に問題がある場合などは個別判断になります。
Q4.示談金と慰謝料は同じですか?
同じではありません。慰謝料は精神的損害に対する賠償です。示談金は、示談によって支払う金銭の総称として使われ、治療費、休業損害、修理費、慰謝料などをまとめて含む場合があります。
Q5.示談は弁護士を通さないと成立しませんか?
当事者同士でも成立します。ただし、金額が大きい、後遺障害がある、刑事事件である、相手と直接接触すると危険がある、清算条項の範囲が分からないといった場合は、専門家を介する意義が大きくなります。
Q6.裁判上の和解に納得できなくなったら撤回できますか?
成立した裁判上の和解は確定判決と同一の効力を持ち、単に後悔したという理由で自由に撤回できるものではありません。意思表示や手続に重大な問題がある場合の扱いは専門的な判断が必要です。
Q7.示談書に必ず清算条項を入れるべきですか?
紛争の最終解決を目的とするなら重要な条項です。ただし、治療継続中で将来の損害が確定していない場合などは、対象を限定したり、一定の損害を除外したりする検討が必要です。無条件に広い清算条項を入れればよいとは限りません。
Q8.「和解」と「仲直り」は同じですか?
日常語では近い意味で使われますが、和解には紛争を終わらせる法律上の契約という意味があります。仲直りは主に感情や人間関係の修復を表し、必ずしも法的な権利義務を定めるものではありません。
まとめ
「和解」と「示談」は、どちらも話し合いによって紛争を終わらせる点で共通しています。
- 和解:当事者が互いに譲歩して争いをやめること。民法に規定があり、裁判外の和解と裁判上の和解がある
- 示談:主に裁判所を介さず、事件・事故の当事者が賠償額や条件を話し合って解決すること
多くの示談は、法的には和解契約に当たります。そのため、両者は完全に別物ではありません。
一方、「裁判上の和解」と「通常の示談」を比べると、裁判所の関与、作成される文書、強制執行への進み方が異なります。裁判上の和解では和解調書が作成され、確定判決と同一の効力を持ちます。一般の示談書は重要な契約書ですが、それだけで直ちに強制執行できるとは限りません。
使い分けに迷ったら、裁判手続内なら「裁判上の和解」、交通事故や事件を裁判外で解決するなら「示談」、広く互いに譲歩して争いを終わらせるなら「和解」と考えると分かりやすいでしょう。
ただし、実際の権利義務は文書の名前ではなく、合意した条項によって決まります。金額の大きい紛争、刑事事件、将来損害の可能性がある事故では、署名前に内容を慎重に確認することが大切です。
