「アカウントを守るために多要素認証を設定してください」「二段階認証を有効にすると安全性が高まります」。インターネットのサービスや会社のシステムでは、このような案内をよく見かけます。
どちらも、パスワードだけに頼らず、本人確認を強化するための仕組みです。しかし、「多要素認証」と「二段階認証」は、同じ意味なのでしょうか。
例えば、パスワードを入力した後に、スマートフォンへ届いた確認コードを入力する方法は、二段階認証の代表的な例です。同時に、パスワードとスマートフォンという異なる種類の認証要素を使用しているため、多要素認証にも該当します。
一方、パスワードを入力した後に、別のパスワードを入力するだけでは、本人確認を二つの手順に分けていても、異なる種類の認証要素を使用しているとはいえません。
さらに、指紋や顔認証を使用するパスキーでは、パスワードを入力せず、少ない操作で複数の認証要素を組み合わせられる場合があります。
「多要素認証」は、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせること。「二段階認証」は、本人確認を二つの段階に分けて行うことです。
この記事では、多要素認証と二段階認証の違いを比較表で整理し、パスワードとSMS、認証アプリ、指紋認証、セキュリティキー、パスキーなどの具体例を交えて解説します。さらに、2要素認証との関係や、スマートフォンを紛失した場合の備え、企業での導入時の注意点も紹介します。
- 結論|多要素認証は「要素の種類」、二段階認証は「確認の段階」に注目する
- 【徹底比較】「多要素認証」と「二段階認証」の違いを一覧表で解説
- 「多要素認証」とは?MFAの意味と仕組み
- 「二段階認証」とは?意味と代表的な仕組み
- 「多要素認証」と「2要素認証」の違いとは?
- 「二段階認証」と「多要素認証」が同じになる具体例
- 二段階認証でも、多要素認証とは限らない?
- 指紋認証だけでログインする場合は、多要素認証?
- パスキーは、多要素認証と二段階認証のどちら?
- Googleアカウントの二段階認証とパスキーはどう違う?
- SMS認証と認証アプリは、どちらも多要素認証?
- 多要素認証と二段階認証の具体例を一覧表で比較
- 多要素認証なら、必ず安全?
- スマートフォンを紛失したら、多要素認証はどうなる?
- 企業では、多要素認証と二段階認証のどちらを導入する?
- 多要素認証を設定すれば、アクセス権限の管理は不要?
- 「多要素認証」と「二段階認証」の例文を場面別に比較
- 【実践】多要素認証と二段階認証を使い分ける3つの判断基準
- ビジネスメール・社内案内文での使い分け
- 多要素認証と二段階認証について、よくある5つの誤解
- 参考リンク
- FAQ|「多要素認証」と「二段階認証」に関するよくある質問
- Q1. 多要素認証と二段階認証は、同じ意味ですか?
- Q2. 多要素認証とは、簡単に言うと何ですか?
- Q3. 二段階認証とは、簡単に言うと何ですか?
- Q4. 2要素認証と多要素認証は、どう違いますか?
- Q5. パスワードとSMSの組み合わせは、多要素認証ですか?
- Q6. パスワードを二つ入力する方法は、多要素認証ですか?
- Q7. 認証アプリの確認コードは、多要素認証に利用できますか?
- Q8. 指紋認証だけでも、多要素認証になりますか?
- Q9. パスキーは、多要素認証ですか?
- Q10. 多要素認証を使うと、必ずログインに時間がかかりますか?
- Q11. SMS認証と認証アプリでは、安全性が違いますか?
- Q12. スマートフォンを紛失した場合は、どうすればよいですか?
- Q13. 企業では、多要素認証と二段階認証のどちらを導入すればよいですか?
- まとめ|多要素認証は「要素の種類」、二段階認証は「確認の手順」
結論|多要素認証は「要素の種類」、二段階認証は「確認の段階」に注目する
多要素認証と二段階認証を理解するには、「何を使って本人確認するか」と「どのような手順で本人確認するか」を分けて考えることが重要です。
- 多要素認証(MFA):知識・所持・生体など、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせて本人確認すること。
- 二段階認証:ログインなどの際に、本人確認を二つの段階に分けて行うこと。一般的なサービスでは、パスワードによる確認の後に、追加の確認を求める仕組みを指す。
- 2要素認証(2FA):異なる二種類の認証要素を組み合わせること。多要素認証の一種。
例えば、パスワードを入力した後、スマートフォンの認証アプリで生成されたワンタイムパスワードを入力する場合を考えてみましょう。
この方法では、パスワードという「知識」の要素と、認証アプリを利用できる端末という「所持」の要素を組み合わせています。
また、通常は、パスワードの入力と確認コードの入力という二つの段階で本人確認を行います。
したがって、この方法は多要素認証であり、2要素認証であり、二段階認証でもあります。
ただし、サービスによっては、多要素認証と二段階認証をほぼ同じ意味で案内している場合もあります。設定画面に表示される名称だけでなく、実際にどのような方法で本人確認しているのかを確認しましょう。
【徹底比較】「多要素認証」と「二段階認証」の違いを一覧表で解説
| 比較項目 | 多要素認証 | 二段階認証 |
|---|---|---|
| 読み方 | たようそにんしょう | にだんかいにんしょう |
| 英語・略称 | Multi-Factor Authentication/MFA | Two-Step Verificationなど/2SV |
| 中心となる考え方 | 異なる種類の認証要素を組み合わせる | 本人確認を二つの段階で行う |
| 注目する点 | 認証要素の種類 | 確認の手順 |
| 代表的な例 | パスワード+認証アプリ | パスワード入力後に確認コードを入力 |
| 認証要素の数 | 異なる種類の要素が二つ以上 | 二段階という名称だけでは、要素の種類までは確定しない |
| 必ず二回操作する? | いいえ。一度の操作で複数の要素を使用する方式もある | 通常は二つの確認段階を設ける |
| パスキーとの関係 | 端末の所持と生体認証・PINなどを組み合わせられる | サービスによっては追加の確認段階を省略できる |
| 安全性の判断 | 要素の種類に加え、採用する認証技術も重要 | 追加確認の方法によって安全性が異なる |
二つの言葉は同じ仕組みを説明する場面も多くありますが、厳密には着眼点が異なります。
特に企業の情報セキュリティー対策や、認証方式の技術的な評価では、確認の段階だけでなく、異なる種類の認証要素を使用しているかどうかが重要です。
「多要素認証」とは?MFAの意味と仕組み
多要素認証は、異なる種類の認証要素を組み合わせる仕組み
多要素認証は、本人であることを確認するために、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせる仕組みです。
例えば、次のような組み合わせがあります。
- パスワードと、認証アプリの確認コード
- パスワードと、物理的なセキュリティキー
- 端末の所持と、指紋認証
- 端末の所持と、端末を解除するためのPIN
このような方法は、パスワードなどの一つの認証要素が漏えいした場合でも、別の要素によって不正なログインを防ごうとするものです。
認証要素は、大きく三つに分けられる
多要素認証でよく使われる認証要素には、次の三種類があります。
| 認証要素 | 意味 | 代表例 |
|---|---|---|
| 知識要素 | 本人が知っている情報 | パスワード、暗証番号、PIN |
| 所持要素 | 本人が持っているもの | スマートフォン、セキュリティキー、認証用の端末 |
| 生体要素 | 本人の身体的な特徴 | 指紋、顔など |
例えば、パスワードを入力した後にスマートフォンの認証アプリを使う場合には、知識要素と所持要素を組み合わせています。
また、対応するセキュリティキーを所持していることに加えて、指紋などで本人確認する方式もあります。
確認方法を二つ使えば、必ず多要素認証になるわけではない
例えば、パスワードを入力した後、別の暗証番号を入力する方式を考えてみましょう。
この場合、パスワードも暗証番号も、本人が知っている情報です。
二つの秘密情報を使用していても、どちらも知識要素に分類されるため、それだけでは異なる種類の要素を組み合わせた多要素認証とはいえません。
「二段階認証」とは?意味と代表的な仕組み
二段階認証は、本人確認を二つの段階に分けること
二段階認証は、ログインなどの際に、通常の本人確認に加えて、別の確認段階を設ける仕組みです。
例えば、次のような流れです。
- アカウントのパスワードを入力する。
- スマートフォンに表示された確認コードを入力する。
- 両方の確認が完了すると、ログインできる。
この方式では、パスワードだけを知っている第三者が、簡単にはログインできないようにしています。
二段階認証の追加確認には、さまざまな方法がある
例えば、次のような方法があります。
- SMSで送信された確認コードを入力する。
- 認証アプリが生成したワンタイムパスワードを入力する。
- スマートフォンに届いた通知を確認する。
- 物理的なセキュリティキーを使用する。
ただし、これらの方法は、安全性やフィッシングへの耐性が同じではありません。
サービスによって、二段階認証という名称の使い方が異なる
例えば、GoogleアカウントやMicrosoftアカウントでは、二段階認証に関する設定が提供されています。
サービスによっては、二段階認証と多要素認証を、利用者向けの説明でほぼ同じ意味として扱う場合があります。
そのため、設定画面に「二段階認証」と書かれているからといって、多要素認証とは別の仕組みだと考える必要はありません。
「多要素認証」と「2要素認証」の違いとは?
多要素認証と似た言葉に、「2要素認証」があります。
2要素認証は、異なる二種類の認証要素を使うこと
例えば、パスワードと認証アプリを組み合わせた方式は、代表的な2要素認証です。
パスワードは知識要素、認証アプリを利用する端末は所持要素に当たります。
多要素認証は、2要素認証を含む広い概念
多要素認証は、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせる仕組みです。
したがって、2要素認証は多要素認証の一種です。
ただし、一般的なサービスでは、二種類の要素を組み合わせる方式が広く利用されています。
2要素認証と二段階認証は、注目する点が異なる
2要素認証は、使用する認証要素の種類を表します。
一方、二段階認証は、確認の手順を表します。
例えば、パスワードとスマートフォンの確認コードを順番に入力する方式は、2要素認証であると同時に、二段階認証でもあります。
詳しくは、「二段階認証」と「2要素認証」の違いを解説した記事をご覧ください。
「二段階認証」と「多要素認証」が同じになる具体例
両者の違いを理解するため、実際のログイン方法を例に考えてみましょう。
例1:パスワード+SMSの確認コード
例えば、パスワードを入力した後、登録したスマートフォンへ送信された確認コードを入力する場合です。
この場合、パスワードという知識要素と、SMSを受信できる端末や電話番号へのアクセスという所持に関係する要素を使用しています。
一般的には、二段階認証であり、多要素認証でもあります。
ただし、SMSを使う方法には、フィッシングや電話番号の乗っ取りなどに関する注意点があります。
例2:パスワード+認証アプリ
例えば、パスワードを入力した後、スマートフォンの認証アプリが生成したワンタイムパスワードを入力する場合です。
この方式も、知識要素と所持要素を組み合わせるため、多要素認証に該当します。
また、確認を二段階で行うため、二段階認証でもあります。
例3:パスワード+セキュリティキー
例えば、パスワードを入力した後、登録した物理的なセキュリティキーを使用する場合です。
この場合も、異なる認証要素を組み合わせています。
セキュリティキーの規格や利用方法によっては、フィッシングに対して高い耐性を持つ認証を実現できます。
二段階認証でも、多要素認証とは限らない?
本人確認を二つの段階で行っていても、必ずしも異なる種類の認証要素を使用しているとは限りません。
パスワードを二つ使用する場合
例えば、ログイン画面で一つ目のパスワードを入力し、続いて別のパスワードを入力する方式です。
二つの確認段階がありますが、どちらも本人が記憶している秘密情報です。
そのため、一般的な認証要素の分類では、異なる種類の要素を組み合わせたことにはなりません。
秘密の質問を追加する場合
例えば、パスワードを入力した後、「初めて飼ったペットの名前は何ですか」といった秘密の質問に答える方式です。
この場合も、パスワードと秘密の質問の答えは、いずれも知識情報です。
加えて、秘密の質問には、第三者に答えを推測されたり、公開情報から調べられたりするリスクがあります。
段階の数だけで、安全性を判断しない
例えば、本人確認の画面が二つに分かれていても、両方とも推測しやすい情報を尋ねているだけでは、十分な安全性を確保できない場合があります。
多要素認証として適切かどうかを考える際には、認証要素の種類と、採用する技術の両方を確認することが重要です。
指紋認証だけでログインする場合は、多要素認証?
指紋認証が使用されているからといって、それだけで多要素認証だと判断することはできません。
指紋は、生体要素に分類される
指紋や顔などの身体的な特徴は、生体要素として扱われます。
例えば、指紋だけを確認する単独の認証方式であれば、確認している認証要素は生体要素です。
端末の所持と指紋を組み合わせる場合がある
一方、登録済みの端末やセキュリティキーを所持していることに加え、その端末を指紋で解除する仕組みでは、所持要素と生体要素を組み合わせられる場合があります。
このような仕組みは、パスキーなどの認証技術でも重要です。
操作が一度でも、複数の要素を確認している場合がある
例えば、スマートフォンの指紋認証によってパスキーを使用し、ログインが完了する場合があります。
利用者から見ると指を置くだけの簡単な操作でも、内部では、登録済みの端末に保存された認証情報と、端末を解除するための生体情報などを組み合わせている場合があります。
このように、画面上の操作回数と認証要素の種類は、同じものではありません。
パスキーは、多要素認証と二段階認証のどちら?
パスキーは、パスワードを使わずにログインできる認証技術です。
ただし、その仕組みは、従来のパスワードと確認コードを順番に入力する方法とは異なります。
パスキーは、公開鍵暗号方式を利用する
パスキーでは、公開鍵暗号方式を利用して本人確認を行います。
一般的な利用では、登録した端末や認証器に秘密鍵が保存され、サービス側には対応する公開鍵が登録されます。
ログイン時には、秘密鍵を利用した暗号学的な処理によって、登録した認証器を使用していることを確認します。
指紋・顔・PINなどでパスキーを使用できる
例えば、スマートフォンに保存されたパスキーを使う場合には、指紋、顔、画面ロックのPINなどによって端末側の本人確認を行い、ログインを完了できる場合があります。
利用者は、毎回パスワードとSMSコードを入力する必要がないこともあります。
一度の操作で多要素認証を実現できる場合がある
例えば、端末に保存されたパスキーについて、その端末を所持していることと、生体情報によって端末を解除することを組み合わせる場合です。
このとき、所持要素と生体要素を組み合わせた本人確認を実現できます。
ただし、具体的な認証要素の扱いや保証水準は、認証器の仕様やサービスの設計によって異なります。
パスワードを使う方式とパスキーの違いについては、「パスワード」と「パスキー」の違いを解説した記事をご覧ください。
Googleアカウントの二段階認証とパスキーはどう違う?
Googleアカウントでは、二段階認証とパスキーの両方が提供されています。
従来の二段階認証では、追加確認を行う
例えば、パスワードでログインした後、スマートフォンに届いたGoogleからの通知を確認したり、確認コードを入力したりする方法です。
パスワードを知っているだけでは、ログインを完了できないようにする仕組みです。
パスキーでは、パスワードの入力を省略できる場合がある
一方、Googleアカウントにパスキーを登録すると、対応する端末で指紋や顔、画面ロックなどを使ってログインできる場合があります。
Googleでは、パスキーを使ってログインすると、追加の二段階認証を省略できる場合があると説明しています。
パスキーを使えば、従来の認証設定が自動的にすべて消えるわけではない
例えば、Googleアカウントへパスキーを追加しても、現在登録されているほかのログイン方法や復旧方法が、その操作だけですべて削除されるわけではありません。
アカウントの設定画面で、利用できるログイン方法や復旧方法を確認しましょう。
SMS認証と認証アプリは、どちらも多要素認証?
パスワードと組み合わせて利用する場合、SMS認証も認証アプリも、多要素認証を実現する方法として使われます。
ただし、安全性は同じではありません。
SMS認証は、電話番号へ確認コードを送信する
例えば、パスワードを入力した後、スマートフォンへSMSで送られた確認コードを入力する場合です。
この方法は、多くの人が利用しやすい一方、フィッシングや電話番号の乗っ取り、SMSの通信経路に関係する攻撃などへの注意が必要です。
認証アプリは、確認コードなどを生成する
例えば、スマートフォンの認証アプリが一定時間ごとに生成する確認コードを、ログイン画面へ入力する方法です。
SMSの受信を必要としない方式もあります。
ただし、認証アプリのワンタイムパスワードであっても、偽のログイン画面へ入力してしまうと、攻撃者に悪用される可能性があります。
フィッシングへの耐性まで考えるなら、セキュリティキーやパスキーも確認する
例えば、FIDO2などに基づくパスキーやセキュリティキーは、ログイン先の正当性を確認する仕組みを備えており、フィッシングに強い認証を実現できます。
米国のCISAも、利用できる場合には、フィッシングに強い多要素認証の導入を推奨しています。
多要素認証と二段階認証の具体例を一覧表で比較
| 認証方法 | 多要素認証に当たる? | 二段階認証に当たる? |
|---|---|---|
| パスワードのみ | いいえ | いいえ |
| パスワード+別のパスワード | いいえ。いずれも知識要素 | 二つの確認段階を設けた方式と説明できるが、通常の安全な二段階認証の例とは異なる |
| パスワード+SMSコード | 通常は該当する | 通常は該当する |
| パスワード+認証アプリ | 通常は該当する | 通常は該当する |
| パスワード+セキュリティキー | 通常は該当する | 通常は該当する |
| 端末所持+指紋によるパスキー認証 | 認証器の仕様に応じて該当する | 一度の操作で完了する場合があり、必ずしも二段階ではない |
このように、異なる認証要素を使用しているかどうかと、確認を何段階で行っているかは、分けて考える必要があります。
多要素認証なら、必ず安全?
多要素認証は、パスワードだけに頼る場合と比べ、不正なログインを防ぐための重要な対策です。
しかし、多要素認証を利用すれば、どのような攻撃も完全に防げるというわけではありません。
確認コードを盗まれる場合がある
例えば、本物そっくりの偽のログイン画面に、パスワードと確認コードを入力してしまう場合があります。
このような攻撃では、多要素認証を使用していても、攻撃者に認証情報を悪用される可能性があります。
不審な認証通知を承認してしまう場合がある
例えば、自分がログインしようとしていないのに、認証アプリへログインの承認通知が届いた場合です。
自分が開始していない認証要求は、承認しないようにしましょう。
認証方法によって、攻撃への耐性が異なる
例えば、SMSコードや認証アプリのワンタイムパスワードと、FIDO2に対応したセキュリティキーとでは、フィッシングへの耐性が異なります。
利用するサービスが対応している場合には、フィッシングに強い認証方式の利用を検討するとよいでしょう。
スマートフォンを紛失したら、多要素認証はどうなる?
多要素認証を有効にする場合には、スマートフォンの紛失や故障に備えておくことも重要です。
認証アプリが使えなくなる場合がある
例えば、認証アプリをインストールしたスマートフォンが故障すると、確認コードを取得できなくなる場合があります。
そのため、利用しているサービスが提供するバックアップや復旧方法を、事前に確認しましょう。
バックアップコードを保管する
例えば、Googleアカウントなどでは、二段階認証の復旧に利用できるバックアップコードが提供されています。
バックアップコードは、不正なログインに悪用される可能性もあるため、安全な場所に保管する必要があります。
複数の認証方法を登録する
例えば、認証アプリに加えて、対応するセキュリティキーやパスキーなどを登録できるサービスがあります。
ただし、登録できる認証方法や復旧手段は、サービスによって異なります。
利用しているアカウントの公式な設定画面で、利用可能な方法を確認しましょう。
企業では、多要素認証と二段階認証のどちらを導入する?
企業の情報セキュリティー対策では、単に「二段階認証を設定しているか」だけでなく、実際にどのような認証要素や技術を使用しているかが重要です。
まず、保護するアカウントを整理する
例えば、社内メール、クラウドストレージ、業務システム、管理者アカウントなど、保護する必要があるアカウントを整理します。
特に、重要な情報や管理権限にアクセスできるアカウントでは、適切な認証方式を選ぶことが重要です。
認証方法の安全性を確認する
例えば、SMSによる確認と、FIDO2に対応したセキュリティキーでは、フィッシングへの耐性が異なります。
導入するサービスがどのような認証方法に対応しているかを確認しましょう。
利用者が継続して使える運用方法を考える
例えば、すべての従業員が会社支給のスマートフォンを持っているとは限りません。
また、スマートフォンの紛失や機種変更、担当者の異動などに対応する手順も必要です。
導入時には、認証方法の安全性に加えて、利用者の環境や、復旧手続きなども考慮しましょう。
多要素認証を設定すれば、アクセス権限の管理は不要?
多要素認証を導入しても、アクセス権限の管理が不要になるわけではありません。
認証は、本人であることを確認する仕組み
例えば、社員が社内システムへログインする際に、パスワードと認証アプリで本人確認する場合です。
このとき、システムは、ログインしようとしている人が正当な利用者かどうかを確認しています。
認可は、何を操作してよいかを決める仕組み
一方、ログインに成功した社員が、どのファイルを閲覧できるか、どの設定を変更できるかは、アクセス権限によって決まります。
例えば、一般社員には閲覧権限だけを与え、管理者には必要な設定変更の権限を与える場合があります。
本人確認とアクセス権限は、両方が重要
例えば、多要素認証によって正当な利用者だと確認できても、その利用者へ必要以上の権限が与えられていれば、情報の取り扱いに問題が生じる場合があります。
本人確認とアクセス権限は、それぞれ別の対策として考える必要があります。
詳しくは、「認証」と「認可」の違いを解説した記事をご覧ください。
「多要素認証」と「二段階認証」の例文を場面別に比較
| 場面 | 多要素認証を使った例文 | 二段階認証を使った例文 |
|---|---|---|
| 個人のアカウント | アカウント保護のため、多要素認証を利用する。 | アカウントの設定画面で、二段階認証を有効にする。 |
| 認証方式の説明 | 異なる種類の認証要素を組み合わせて本人確認する。 | ログイン時に、追加の確認段階を設ける。 |
| 企業のセキュリティー | 管理者アカウントに多要素認証を導入する。 | 従業員向けに、二段階認証の設定方法を案内する。 |
| 認証アプリ | パスワードと認証アプリを組み合わせ、多要素認証を実現する。 | パスワード入力後に、認証アプリの確認コードを入力する。 |
| パスキー | 所持要素と生体要素などを組み合わせた認証を利用する。 | パスキーを利用することで、従来の追加確認を省略できる場合がある。 |
このように、多要素認証は認証要素の種類に、二段階認証は確認手順に重点を置いた表現です。
【実践】多要素認証と二段階認証を使い分ける3つの判断基準
1. 異なる種類の認証要素を組み合わせるなら「多要素認証」
例えば、パスワードと認証アプリ、端末の所持と指紋認証など、異なる種類の要素を組み合わせる場合には、「多要素認証」が適しています。
2. 確認を二つの段階に分けるなら「二段階認証」
例えば、パスワードを入力した後、スマートフォンに届いた確認コードを入力する場合には、「二段階認証」が自然です。
ただし、その方式が多要素認証に該当するかどうかは、実際に使用している認証要素を確認する必要があります。
3. サービスの設定方法を案内するときは、公式名称を使用する
例えば、Googleアカウントの設定方法を案内する場合には、設定画面で使用されている「2段階認証プロセス」などの公式名称を使うと、利用者が迷いにくくなります。
一方、企業の情報セキュリティー方針を作成する場合には、求める認証要素や対応技術を明確に示しましょう。
ビジネスメール・社内案内文での使い分け
例文1:多要素認証の導入を案内する場合
件名:社内システムへの多要素認証導入について
関係者各位
お疲れさまです。
社内システムのセキュリティー強化に向けて、多要素認証を導入いたします。
今回の導入では、従来のパスワード認証に加えて、認証アプリによる本人確認を行う予定です。
対象となるシステムおよび設定方法につきましては、添付資料をご確認ください。
なお、設定に関するご不明な点がございましたら、情報システム担当までお問い合わせください。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
この例文では、異なる種類の認証要素を組み合わせる仕組みを導入するため、「多要素認証」を使用しています。
例文2:二段階認証の設定を依頼する場合
件名:アカウントの二段階認証設定のお願い
関係者各位
お疲れさまです。
アカウント保護のため、二段階認証の設定をお願いいたします。
設定後は、パスワードによるログインに加え、必要に応じてスマートフォンによる追加の本人確認が求められます。
設定手順につきましては、添付のマニュアルをご確認ください。
また、スマートフォンの紛失や機種変更に備え、利用できる復旧方法についても、事前にご確認ください。
よろしくお願いいたします。
この例文では、利用者へ具体的な設定方法を案内するため、「二段階認証」という表現を使用しています。
多要素認証と二段階認証について、よくある5つの誤解
1. 二段階認証なら、必ず多要素認証になる
一般的なサービスでは、二段階認証として異なる種類の認証要素を使用する場合が多くあります。
ただし、確認を二つの段階に分けていても、どちらも同じ種類の知識情報であれば、それだけでは多要素認証とはいえません。
2. 多要素認証では、必ず二回以上の操作が必要になる
例えば、対応するパスキーでは、登録済みの端末を所持していることと、指紋やPINによる本人確認を組み合わせ、少ない操作でログインを完了できる場合があります。
操作回数と認証要素の数は、同じではありません。
3. パスワードを二つ使えば、2要素認証になる
パスワードを二つ使用しても、どちらも知識要素です。
2要素認証では、知識要素と所持要素など、異なる種類の認証要素を組み合わせる必要があります。
4. 多要素認証を設定すれば、フィッシングを完全に防げる
多要素認証は、不正なログインを防ぐために役立ちますが、採用する方式によって安全性は異なります。
例えば、SMSや認証アプリの確認コードを偽のログイン画面へ入力してしまうと、悪用される可能性があります。
利用できる場合には、フィッシングに強い認証方式も検討しましょう。
5. パスキーを登録すると、ほかの認証方法がすべて不要になる
例えば、サービスによっては、パスキーを使用しても、別のログイン方法やアカウントの復旧方法が残る場合があります。
また、パスキーを使えない端末でログインするときに、別の認証方法が必要になる場合もあります。
利用しているサービスの設定や復旧方法を確認しておきましょう。
参考リンク
- NIST|Digital Identity Guidelines:Authentication and Authenticator Management
- CISA|Require Multifactor Authentication
- Google アカウント ヘルプ|2段階認証プロセスによるアカウント保護
- Microsoft サポート|Microsoft Authenticatorについて
FAQ|「多要素認証」と「二段階認証」に関するよくある質問
Q1. 多要素認証と二段階認証は、同じ意味ですか?
同じ仕組みを説明する場合も多くありますが、厳密には着眼点が異なります。多要素認証は異なる種類の認証要素を組み合わせること、二段階認証は本人確認を二つの段階に分けることです。
Q2. 多要素認証とは、簡単に言うと何ですか?
パスワードとスマートフォンなど、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせて本人確認する仕組みです。一つの要素が漏えいした場合でも、不正なログインを防ごうとします。
Q3. 二段階認証とは、簡単に言うと何ですか?
パスワードによるログインなどに加えて、スマートフォンの確認コードや認証通知など、別の確認段階を設ける仕組みです。
Q4. 2要素認証と多要素認証は、どう違いますか?
2要素認証は、異なる二種類の認証要素を組み合わせる方式です。多要素認証は、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせる仕組みなので、2要素認証は多要素認証の一種です。
Q5. パスワードとSMSの組み合わせは、多要素認証ですか?
通常は、多要素認証に該当します。パスワードという知識要素と、SMSを受信できる端末や電話番号へのアクセスという所持に関係する要素を組み合わせているためです。ただし、SMSにはフィッシングなどに関する注意点があります。
Q6. パスワードを二つ入力する方法は、多要素認証ですか?
いいえ。二つのパスワードを使用しても、どちらも知識要素です。異なる種類の認証要素を組み合わせていないため、それだけでは多要素認証とはいえません。
Q7. 認証アプリの確認コードは、多要素認証に利用できますか?
はい。例えば、パスワードと、スマートフォンの認証アプリが生成する確認コードを組み合わせれば、知識要素と所持要素による多要素認証を実現できます。
Q8. 指紋認証だけでも、多要素認証になりますか?
指紋認証だけを使用する方式であれば、それだけで多要素認証とは限りません。一方、登録済み端末の所持と指紋による本人確認を組み合わせる方式では、多要素認証を実現できる場合があります。
Q9. パスキーは、多要素認証ですか?
パスキーを使用する認証器の仕様によっては、端末の所持と指紋やPINなどを組み合わせ、多要素認証を実現できます。ただし、具体的な認証の仕組みや保証水準は、機器やサービスによって異なります。
Q10. 多要素認証を使うと、必ずログインに時間がかかりますか?
必ずしもそうではありません。例えば、パスキーを使用する場合には、指紋や顔認証などによって、パスワードや確認コードを毎回入力せずにログインできる場合があります。
Q11. SMS認証と認証アプリでは、安全性が違いますか?
はい。どちらも多要素認証に利用できますが、攻撃への耐性は異なります。また、確認コードを使用する方式と、FIDO2対応のセキュリティキーやパスキーでも、フィッシングへの耐性が異なります。
Q12. スマートフォンを紛失した場合は、どうすればよいですか?
利用しているサービスの公式な復旧手続きに従いましょう。紛失する前に、バックアップコードや、追加の認証方法などを登録できるか確認しておくことが重要です。
Q13. 企業では、多要素認証と二段階認証のどちらを導入すればよいですか?
名称だけで判断せず、実際に使用する認証要素や認証技術を確認することが重要です。重要なアカウントについては、対応サービスや利用環境に応じて、フィッシングに強い多要素認証の導入を検討しましょう。
まとめ|多要素認証は「要素の種類」、二段階認証は「確認の手順」
「多要素認証」と「二段階認証」は、どちらもアカウントの安全性を高めるために使用されますが、中心となる考え方は異なります。
- 多要素認証:知識・所持・生体など、異なる種類の認証要素を二つ以上組み合わせて本人確認すること。
- 二段階認証:本人確認を二つの段階に分けて行うこと。一般的には、パスワードに加えて別の確認方法を使用する。
- 2要素認証:異なる二種類の認証要素を組み合わせること。多要素認証の一種。
例えば、パスワードを入力した後に認証アプリの確認コードを入力する方法は、異なる種類の要素を使用しているため、多要素認証に該当します。また、確認を二つの段階に分けているため、二段階認証にも該当します。
一方、パスキーでは、登録済み端末の所持と指紋やPINなどを組み合わせ、少ない操作で多要素認証を実現できる場合があります。
ただし、多要素認証や二段階認証を設定すれば、すべての不正アクセスを完全に防げるわけではありません。実際に使用する認証技術によって、フィッシングへの耐性などが異なります。
異なる種類の認証要素を組み合わせているかを考えるなら「多要素認証」、本人確認を何段階で行うかを考えるなら「二段階認証」。この違いを理解すると、アカウントの設定や企業のセキュリティー対策でも、適切な認証方法を判断しやすくなるでしょう。
