会社の人事発表で「営業部と企画部を兼務することになりました」と聞いたり、辞令に「○○課兼務」と書かれていたりすると、何が変わるのか気になるかもしれません。
「兼務」と「兼任」は同じ意味なのか、兼務になれば仕事も給料も増えるのか、兼務解除とは退職することなのか。似た言葉が多いため、意味だけでなく実務での使い方にも迷いやすい表現です。
この記事では、「兼務」の意味・読み方・自然な例文から、「兼任・兼職・併任」との違い、兼務辞令の書き方、兼務を解くときの考え方まで、一般の国語辞典と自治体の人事規程を区別して解説します。
- 「兼務」とは?まずは結論
- 「兼務」の読み方・漢字・基本的な使い方
- 「本務」と「兼務」の違いは?
- 「兼務」と「兼任」の違い|基本は近いが制度上の意味に注意
- 「兼務」と「兼職」の違い
- 「兼務」と「併任」の違い|公務員の人事で重要
- 「兼務」と「副業・兼業」の違い
- 「兼務」「専任」「専従」「事務取扱」の違い
- 「兼務」の使い方と例文|会社・学校・行政
- 「兼務」の言い換え表現と使い分け
- 兼務辞令とは?意味と書き方を具体例で解説
- 「兼務解除」とは?兼務を解く意味と文例
- 兼務になったとき、所属・上司・評価はどうなる?
- 兼務手当は必ず支給される?給与・残業時間の考え方
- 兼務が決まったときに確認したい7つのポイント
- 兼務を円滑に進めるための工夫
- 「兼務」と間違えやすい表現の比較例
- 「兼務」の意味と使い方を確認する練習問題
- 「兼務」に関するよくある質問(FAQ)
- 「兼務」とは一言でいうと何ですか?
- 「兼務」の読み方は「けんむ」で合っていますか?
- 「兼務」と「兼任」はどちらが正しいですか?
- 兼務と兼職の違いを短く教えてください。
- 兼務と併任は何が違いますか?
- 兼務になると所属部署は変わりますか?
- 兼務と異動は同じ意味ですか?
- 「兼務を解く」とはクビになることですか?
- 兼務が終われば必ず解除辞令が出ますか?
- 兼務はいつまで続くものですか?
- 兼務になったら給与は上がりますか?
- 兼務は副業と同じですか?
- 一人が三つの部署を担当しても兼務ですか?
- 部長が課長も兼ねることはできますか?
- 名刺には「兼務」と「兼任」のどちらを書けばよいですか?
- 兼務を頼まれたら最初に何を確認すべきですか?
- 公務員の兼務は民間企業と同じですか?
- 兼務が長期間続き、負担が大きい場合はどうすればよいですか?
- まとめ|「兼務」は本務に加えてほかの仕事も受け持つこと
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- 参考リンク
「兼務」とは?まずは結論
兼務(けんむ)とは、現在の本来の仕事や職務を続けながら、別の仕事・職務も併せて受け持つことです。簡単に言えば、「一人で複数の仕事を掛け持ちすること」です。
たとえば、総務部の担当者が総務の仕事を続けながら、社内の情報セキュリティ推進チームの業務も担当する場合、「総務部の業務と情報セキュリティ業務を兼務している」と表現できます。
| 項目 | 簡単な答え |
|---|---|
| 読み方 | けんむ |
| 意味 | 本務のほかに別の職務も兼ねること |
| 反対の状態 | 兼務のない専任・専従など(文脈による) |
| よくある表現 | 「兼務する」「兼務を命じる」「兼務を解く」「○○課兼務」 |
| 間違えやすい点 | 兼務は必ず一時的とは限らず、給与増額や昇進を意味するものでもない |
| 「兼任」との関係 | 一般的には意味が重なるが、組織の規程では別の人事用語として定義される場合がある |
国語辞典の「兼務」の項目でも、本務に加えてほかの職務を担当することとして説明され、「兼任」は類義語に挙げられています。
「兼務」の読み方・漢字・基本的な使い方
「兼務」は「けんむ」と読む
「兼」は二つ以上のことを併せ持つこと、「務」は務め・仕事を表します。つまり、複数の務めを一人が併せ持つことが「兼務」です。「兼務する」はサ変動詞として使えます。
- 営業部と広報部を兼務する。
- 商品開発部の担当者に、新規事業チームの仕事を兼務させる。
- 来月から経営企画室を兼務することになった。
- 兼務先の業務量を毎月確認する。
「兼務する」「兼務となる」「兼務を命じる」の違い
| 表現 | 使う場面 | 例文 |
|---|---|---|
| 兼務する | 本人が複数の職務を受け持つことを述べる | 私は総務部と採用プロジェクトを兼務しています。 |
| 兼務となる | 人事上の状態になったことを伝える | 4月1日付で品質管理部兼務となりました。 |
| 兼務を命じる | 組織側が追加の担当を指示する | 企画部の業務を兼務するよう命じられた。 |
| 兼務を解く | 追加して担当していた職務を外す | 新組織の発足に伴い、広報室の兼務を解かれた。 |
「兼務することになりました」は本人による異動挨拶でも使いやすく、「兼務を命じる」は人事通知や社内規程などで使われる少し硬い表現です。
「本務」と「兼務」の違いは?
本務は、もともと中心として担当している仕事
「本務(ほんむ)」は、本来の務め・中心となる仕事を指します。これに対して「兼務」は、本務に加えて担当する別の仕事を指します。
例えば、営業部に所属する社員が、週の一部を新規サービス検討チームの業務に使う場合、営業部の仕事を本務、検討チームの仕事を兼務として整理できます。
本務がなくなって兼務だけになるわけではない
「営業部兼企画室」と表示されても、通常は営業部の仕事が自動的になくなるわけではありません。ただし、どちらを本務とするか、どの程度の時間を割くかは会社・組織の取り決めによります。
| 確認したい点 | 本務と兼務の例 |
|---|---|
| 中心となる所属 | 営業部(本務) |
| 追加で担当する職務 | 企画室での市場調査(兼務) |
| 人事上の所属 | 営業部のままの場合もあれば、複数部署の兼務表示をする場合もある |
| 業務時間の配分 | 例えば営業7割・企画3割など、事前に調整する |
| 評価や承認の担当 | 誰が評価・決裁するかを明確にする必要がある |
「兼務」と「兼任」の違い|基本は近いが制度上の意味に注意
一般的な日本語では意味がほぼ重なる
辞書で「兼務」は「兼任」と説明され、「兼任」も一人で二つ以上の職務を受け持つ意味です。したがって、日常の職場では「部長を兼務する」「部長を兼任する」のどちらも通じることがあります。
「兼務は仕事内容だけ、兼任は役職だけ」という区別は、説明の目安になる場面はあっても、すべての会社・自治体に共通する絶対的なルールではありません。
実務では「担当業務」か「複数の職・役職」かが表現の目安
| 観点 | 兼務 | 兼任 |
|---|---|---|
| 日常的な重点 | 複数の業務・職務を担当する状況を表しやすい | 複数の職・役職に就く状況を表しやすい |
| よくある例 | 営業の仕事と採用業務を兼務する | 営業部長と経営企画部長を兼任する |
| 辞書上の関係 | 兼任とほぼ同義 | 兼務とほぼ同義 |
| 人事制度上 | 組織の規程によって定義される | 組織の規程によって定義される |
日進市の人事規程では明確に区別している
具体例として、愛知県日進市の「職員辞令式規程」では、「兼任」を現在の身分のまま別の身分を兼ねること、「兼職」を今の職に加えて別の職を兼ねること、「兼務」を今の勤務組織に加えて別の勤務組織も兼ねることと、別々に定義しています。
このように、辞令や公務員の人事異動では、一般的な言い換えよりも、その組織の規程に書かれた定義を優先する必要があります。なお、自治体によって分類は異なり、三木市の規程では兼務を「別の職も兼ねて任命する」意味で用いています。
「兼務」と「兼職」の違い
「兼職(けんしょく)」は、すでに持っている職のほかに別の職も持つことを表します。辞書では「兼務」と近い意味ですが、「職」という地位や職の兼有に注目する場面で使われます。
- 兼務の例:経理部の担当業務と社内研修プロジェクトを受け持つ。
- 兼職の例:ある職に就いたまま、別の委員や役職にも就く。
ただし「兼職」の対象が会社の職務なのか、公的な職なのかで意味合いが変わる場合があります。公務員の職務兼有を表す用語として使うときは、人事規程や法令に従ってください。
「兼務」と「併任」の違い|公務員の人事で重要
「併任(へいにん)」は、公務員の人事で使われることが多い言葉です。一般に、元の職を保持したまま、別の任命権者に属する機関の職員に任命されるような場合を指します。
例えば日進市や三木市の規程では、「他の任命権者」に属する職員を、その職にあるまま任命する場合を併任と定義しています。
| 比較 | 兼務 | 併任 |
|---|---|---|
| 基本的なイメージ | 現在の仕事に別の仕事・職務が加わる | 元の職を保持したまま、別の人事上の任命も受ける |
| 主な使用場面 | 民間企業・自治体など広い | 官公庁・自治体などの公務員人事で多い |
| 区別の目安 | 職務・勤務組織・職の兼有 | 異なる任命権者に属する機関への任命など |
| 注意点 | 自治体によって定義が異なる | 具体的な法令・辞令規程で確認する |
注意したいのは、「併任なら必ず別の自治体で働く」とは限らないことです。同じ自治体内でも、任命権者が異なる機関の職を兼ねる場合があります。反対に、異なる場所で働いていても、直ちに併任と決まるわけではありません。
「兼務」と「副業・兼業」の違い
兼務は同じ組織内での仕事の掛け持ちに使われやすい
一般の会社で「兼務」という場合、本務のほかに社内の別部署やプロジェクトも担当する状況を指すことが多いでしょう。たとえば「人事部と総務部の兼務」「営業と社内DX推進の兼務」です。
副業・兼業は複数の仕事を行う広い表現
厚生労働省の副業・兼業の資料では、複数の仕事を行うことを広く想定し、別の会社に雇われる場合だけでなく、事業主として仕事をする場合も含めて説明しています。
したがって、社内の別部署を兼務することと、勤務時間外に別の会社で副業することは、同じ「掛け持ち」でも人事・労務上の話が異なります。一方、グループ会社間の役員や職務を兼ねることを「兼務」と呼ぶ例もあるため、単に会社が同じかどうかだけで断定しないのが安全です。
| 言葉 | 典型的な例 | 主に確認すること |
|---|---|---|
| 兼務 | 営業部と採用プロジェクトを担当する | 担当範囲・指揮命令・業務量・評価 |
| 兼任 | 営業部長と企画部長を務める | 役職・権限・責任の範囲 |
| 兼職 | 現在の職に加えて別の職を持つ | 兼ねる職の性質・規程 |
| 併任 | 異なる任命権者の機関の職員として任命される | 任命権者・身分・辞令の定義 |
| 副業・兼業 | 本業に加えて他社の仕事や個人事業を行う | 就業規則・契約・労働時間の管理 |
「兼務」「専任」「専従」「事務取扱」の違い
専任は特定の仕事に任じることを強調する
「専任」は、一つの職務や役職を専ら担当することを表します。兼務の対比として使える場合もありますが、制度によっては専任者が一部の関連業務も担当できることがあります。
専従は、ほかの仕事をせず特定の仕事に従事する意味が強い
「専従」は、ある業務にもっぱら従事することを表します。一般的な兼務とは対照的に使われますが、「専任」と「専従」が常に同じ条件を指すわけではありません。
事務取扱は、本来の担当者に代わって職務を扱うこと
自治体の人事制度では「事務取扱」が定義される場合があります。別の職を併せ持つ兼務と、一時的に職務を代行する事務取扱は、似て見えても規程上の扱いが異なることがあります。
例えば日進市の規程は、事務取扱いを役付職員が同等または下位の職の職務を一時的に代行するものとして定義しています。「部長が課長事務取扱をする」などの表現も、勤務先の規程を確認しましょう。
「兼務」の使い方と例文|会社・学校・行政
営業・企画の例文
- 今年度は営業課に所属しながら、営業企画チームも兼務しています。
- 彼女は法人営業と新規市場調査を兼務しているため、担当範囲が広い。
- 新商品の立ち上げ期間中、営業部から二人が企画室を兼務する予定だ。
総務・人事の例文
- 総務部の職員が、社内イベントの事務局を兼務する。
- 採用活動が集中する時期だけ、人事担当者が研修運営業務を兼務する。
- 人事部と広報室の兼務になったため、問い合わせ先を整理した。
管理職・役員の例文
- 組織改編に伴い、営業部長が地域事業部長を兼務する。
- 後任の着任まで、副部長が部門長の仕事を兼務する。
- 代表取締役がグループ会社の役員を兼ねている場合は、兼務の内容と責任範囲を確認する。
「兼務」と「兼任」は近い意味ですが、役職に関する正式な表現は会社の役員規程や人事発令に合わせると誤解を防げます。
学校・自治体の例文
- 教員が学年の仕事と学校行事の担当を兼務する。
- 職員が市民相談窓口と広報業務を兼務している。
- 異なる任命権者の機関に所属する場合は、「兼務」ではなく「併任」として発令されることがある。
異動挨拶・自己紹介の例文
- 4月から営業部に加え、業務改革プロジェクトを兼務することになりました。引き続きよろしくお願いいたします。
- このたび企画室兼務となりました。主担当はこれまでどおり総務部です。
- 本年度は二部署を兼務しますので、ご連絡の際は担当業務をお知らせいただけると助かります。
「兼務」の言い換え表現と使い分け
「兼務」は人事発表やビジネス文書で使いやすい言葉ですが、日常会話や外部向けの自己紹介では言い換えた方が伝わりやすいこともあります。文の目的に合わせて選びましょう。
| 言い換え候補 | 適した場面 | 伝わり方・注意点 |
|---|---|---|
| 二つの仕事を担当する | 社外向けの分かりやすい説明 | 専門用語を使わずに意味を示せる |
| 複数の部署の業務を受け持つ | 所属や担当範囲の説明 | 役職の兼有とは限らないことを示せる |
| 掛け持ちする | 同僚との日常的な会話 | ややくだけた印象になる |
| 兼任する | 複数の役職・職務に就く場面 | 一般語として近いが、正式な制度上は用語の確認が必要 |
| 二足のわらじを履く | 比喩的な表現や会話 | 会社の辞令などの正式文書には不向き |
たとえば取引先には「営業部を本務とし、企画室の案件も担当しています」と説明すれば、単に「兼務です」と言うより窓口が明確になります。逆に人事発表では、正式な辞令や組織図で採用している「兼務」という用語を変えずに用いる方が正確です。
兼務辞令とは?意味と書き方を具体例で解説
「兼務辞令」とは、職員や社員に別の職務・役職などを併せて担当させることを正式に通知する辞令のことです。ただし、すべての企業で辞令という書面の交付が必要と決まっているわけではなく、様式は組織ごとに異なります。
兼務辞令に入れておきたい基本情報
- 発令の対象となる本人の氏名や現在の所属
- 新たに兼ねる部署・職務・役職の名称
- 兼務の開始日と、必要なら終了予定日
- 本務が引き続きどこにあるか
- 指揮命令系統、決裁権限、兼務解除時の手続きなど
書面を作る際は、「誰が」「何を」「いつから」兼ねるのかが読み取れるようにすると、本人と関係部署の双方で理解をそろえられます。
兼務を命じる辞令の文例
以下は一般企業を想定した説明用の架空例です。実際の発令用語は就業規則・人事規程、また公務員の場合は辞令式に従ってください。
人事発令
営業部営業第一課 山田 花子
2026年11月1日付
現職のまま、企画部事業推進グループの業務を兼務することを命じます。
株式会社〇〇 人事部
この例では「営業部営業第一課」が本務であり、企画部事業推進グループが追加の担当先です。「兼ねて○○課勤務を命ずる」などの文言を用いる自治体の辞令式も実際に存在します。
辞令が「兼務」と書かれていても役職が二つとは限らない
「企画室兼務」は、企画室の仕事を併せて担当する意味として使われますが、企画室長のような役職に就任したとは限りません。肩書きや権限が変わるかどうかは、人事発令と組織規程を確認してください。
兼務の内示と正式な辞令は同じ?
「内示」は正式発令前に予定を知らせること、「辞令」は正式な発令を示すことが一般的です。ただし民間企業では呼び方や手続きがさまざまなので、口頭での予告だけで担当変更が確定したと早合点しないようにしましょう。
「兼務解除」とは?兼務を解く意味と文例
兼務解除とは、追加で兼ねていた職務や役職などを担当しない状態に戻すことです。通常、それだけで退職・解雇・降格を意味するわけではありません。
兼務を解いても本務は続く場合が多い
営業部を本務としながら企画室を兼務していた人が、企画室の担当だけを外れる場合、営業部の仕事はそのまま続きます。ただし、人事異動と同時に兼務が終了するなど別の変更がある場合は、辞令全体を確認する必要があります。
兼務解除の辞令の例文
人事発令
営業部営業第一課 山田 花子
2027年3月31日付
企画部事業推進グループの兼務を解きます。
株式会社〇〇 人事部
これも架空の一般企業向け例文です。三木市の「辞令式に関する規程」などには、実際に兼務と兼務解除の発令区分が設けられています。辞令の語句は所属先の正式な様式に合わせてください。
兼務期間が決まっている場合は?
兼務を「○月○日まで」と期間付きで命じる場合があります。期間が終われば別の解除辞令が必要かどうかも、個別の規程によって異なります。例えば串本町の規程には、期限付き発令の扱いが記載されています。「兼務の終了時には必ず別紙の解除辞令を出す」と一律には言えません。
兼務になったとき、所属・上司・評価はどうなる?
所属の表示と実際の指揮命令は分けて考える
名刺や社内システムに「営業部(企画室兼務)」と書かれていても、業務ごとの指揮命令者が誰かは別に確認する必要があります。現場の上司と兼務先の責任者から異なる依頼が来る場合は、優先順位を事前に決めておくと仕事が進めやすくなります。
業務目標・人事評価の方法も確認しておく
兼務先で担当した仕事が評価に反映されるのか、どの管理職が評価資料を集めるのかが曖昧だと、本人にも管理者にも負担が生じます。兼務の目的・成果物・評価する人・面談の機会を明確にしておくと安心です。
情報管理や決裁権限は自動的に広がらない
別部署を兼務するようになっても、その部署のすべてのシステムにアクセスしたり、すべての案件を決裁したりできるとは限りません。役職・職務権限規程、守秘義務、データ管理のルールに従って対応します。
兼務手当は必ず支給される?給与・残業時間の考え方
兼務になっただけで、必ず手当が出るわけではない
「兼務手当」という名称の手当を支給する会社も考えられますが、兼務という事実だけを理由に、すべての会社へ一律に手当を義務付ける制度があるわけではありません。支給の有無や金額は、就業規則・賃金規程・雇用契約などの定めを確認する必要があります。
逆に、兼務手当の定めがあれば、その支給条件を満たしているかを確認します。手当がない場合でも、仕事量に見合う勤務時間や担当範囲を調整することは重要です。
兼務による業務変更は、労働条件の確認が大切
労働条件には従事する業務や賃金、労働時間などが関係します。厚生労働省も、労働契約を結ぶときには一定の労働条件の明示が必要であり、内容はできる限り書面で確認することが望ましいと案内しています。
「兼務の開始日」「兼務先の仕事」「勤務場所」「所定時間の扱い」「給与や評価の変更の有無」などを確認し、必要なら人事部門に問い合わせましょう。
兼務を理由に無制限の残業が認められるわけではない
一つの会社の中で仕事が二つになっても、労働時間の管理が不要になることはありません。通常の労働時間・休憩・休日・時間外労働などのルールを守り、兼務の負担が過大にならないよう業務配分を検討する必要があります。
「兼務は断れる?」は契約と指示の内容によって異なる
業務上の指示をどこまで受ける義務があるかは、雇用契約、就業規則、職務内容、命令の合理性など具体的な事情によって変わります。そのため「兼務は必ず断れる」「辞令が出たら絶対に断れない」のどちらも一般論としては正確ではありません。
兼務により本務がこなせない、勤務場所が大きく変わる、健康面に影響が出るなどの懸念がある場合は、業務量・優先順位・人員配置について上司や人事部門に具体的に相談しましょう。法的な判断が必要なら専門窓口への相談を検討してください。
兼務が決まったときに確認したい7つのポイント
- 本務:従来の所属・役職・担当業務のどれが継続するか。
- 兼務先:新たに何を担当し、何を担当しないか。
- 期間:開始日、終了予定日、見直し時期はいつか。
- 業務配分:週の何割・何時間を兼務先に割くのか。
- 上司と承認:指示や決裁が重なったとき、誰が優先順位を決めるか。
- 給与・評価:手当や評価方法などに変更があるか。
- 連絡・引き継ぎ:兼務先への問い合わせ窓口や不在時の対応はどうするか。
特に大切なのは、「兼務」という一言だけで業務範囲を判断しないことです。人事上の表示より、日々の仕事内容と責任範囲が明確になっているかを確認しましょう。
兼務を円滑に進めるための工夫
仕事の優先順位を一本化する
例えば営業の締切と企画室の資料提出が重なったとき、本人が一人で板挟みにならないように、両部署の責任者で優先順位を調整することが大切です。「急ぎと言われた順」で仕事を積み重ねるだけでは、重要な仕事が遅れることがあります。
兼務先での成果を共有する
兼務先で何を担当し、どこまで進んでいるかを本務の上司にも共有しておくと、仕事の重複や評価の漏れを防ぎやすくなります。週1回の共有や簡単なタスク一覧など、負担の少ない方法が向いています。
兼務の目的が達成されたら見直す
「新規事業が軌道に乗るまで」「欠員補充が決まるまで」など、兼務の目的が明確な場合は、一定期間後に必要性を見直しましょう。兼務が長く続くこと自体が悪いわけではありませんが、当初の状況が変わっても業務配分を放置しないことが重要です。
「兼務」と間違えやすい表現の比較例
| 伝えたい内容 | 自然な表現 | 理由 |
|---|---|---|
| 二部署の仕事を担当している | 営業部と商品開発部を兼務している | 業務の掛け持ちを表す |
| 二つの役職に就いている | 総務部長と経理部長を兼任している | 複数の役職を持つことを明確にする |
| 別の職も保有している | 本職のほかに別の職を兼職している | 職の兼有を表す |
| 異なる任命権者の職員にも任命された | 教育委員会の職員に併任された | 公務員の制度上の区別を表す |
| 会社以外でも仕事をしている | 勤務先に加えて個人事業を行っている | 副業・兼業の意味を明確にする |
| 追加の担当を外れた | 企画室の兼務を解かれた | 本務の終了まで意味しない |
役職名や発令用語を正式に書く場合は、本人の所属する組織の規程を確認することが前提です。
「兼務」の意味と使い方を確認する練習問題
ここまでの理解を確かめるため、意味・類語・辞令の読み方を中心に16問用意しました。答えの理由も確認してみてください。
基礎編:意味と使い方(1〜6問)
【第1問】兼務の読み方は?
答え:けんむ。「兼ねて務める」という意味です。
【第2問】兼務とは、必ず元の仕事を辞めて新しい仕事に移ることである。正しい?
答え:誤り。本務などを続けながら、別の仕事を併せて担当することです。
【第3問】「営業部と採用業務を兼務する」は自然な表現?
答え:自然です。部署と業務を掛け持ちする意味で使えます。
【第4問】兼務になれば、必ず兼務手当が支給される。正しい?
答え:誤り。給与や手当の有無は就業規則・賃金規程・契約などで確認します。
【第5問】「本務」はどのような仕事を指す?
答え:本来の務め、中心となる仕事を指します。
【第6問】兼務は一時的な担当にしか使えない。正しい?
答え:誤り。期間を区切って兼務する場合も、長く兼務する場合もあります。
標準編:似た言葉の違い(7〜12問)
【第7問】一般的な辞書では「兼務」と「兼任」は必ず別の意味として区別される?
答え:いいえ。一般の辞書では同義語・類義語として説明されます。
【第8問】「A部長とB部長の二つの役職に就いている」を表す自然な言葉は?
答え:「兼任している」などです。「兼務」も通じることがありますが、役職の兼有を明確に示すなら「兼任」が使いやすいです。
【第9問】公務員の「併任」では、何の違いが重要になる場合がある?
答え:任命権者の違いです。具体的な扱いは人事規程によります。
【第10問】「兼職」はどのような意味?
答え:本職に加えて別の職を持つことです。
【第11問】兼務と副業・兼業は常に同じ労務管理の問題になる?
答え:いいえ。社内の業務の掛け持ちと、別の会社や個人事業の仕事の掛け持ちでは確認する事項が異なります。
【第12問】「課長事務取扱」と「課長兼務」は、どの組織でも同一の意味?
答え:いいえ。自治体の辞令式などで別々に定義されることがあります。
応用編:人事発令の読み方(13〜16問)
【第13問】「人事部勤務のまま研修室を兼務」とあれば、人事部の仕事はどうなる?
答え:通常は継続します。ただし、詳しい担当範囲や時間配分は人事発令・指示を確認します。
【第14問】「研修室の兼務を解く」は必ず退職を意味する?
答え:いいえ。追加の職務を外れる意味であり、退職とは別です。
【第15問】兼務の終了日が辞令に書かれている場合でも、必ず別途解除辞令が必要?
答え:必ずとは言えません。規程によっては期限満了時の解除発令を省略する場合があります。
【第16問】「兼務」を命じられ、双方の上司から異なる締切が示された。何を確認すべき?
答え:仕事の優先順位を決める人、業務量と時間配分、承認・評価の担当を確認します。
「兼務」に関するよくある質問(FAQ)
「兼務」とは一言でいうと何ですか?
本来の仕事を続けながら、別の仕事も併せて受け持つことです。
「兼務」の読み方は「けんむ」で合っていますか?
はい。「けんむ」と読みます。
「兼務」と「兼任」はどちらが正しいですか?
どちらも一般の日本語として正しい表現です。役職か業務かで表現を選ぶ目安はありますが、正式な発令では勤務先の用語を優先します。
兼務と兼職の違いを短く教えてください。
兼務は複数の職務を受け持つこと、兼職は本職とは別の職を持つことに重点があります。辞書上は近い意味です。
兼務と併任は何が違いますか?
併任は、特に公務員人事で別の任命権者による任命などを指します。細かな定義は規程次第です。
兼務になると所属部署は変わりますか?
必ずしも変わりません。本務の部署に所属したまま、別部署の職務を担当する場合もあります。
兼務と異動は同じ意味ですか?
同じではありません。異動は所属や役職などを移す場合を広く指し、兼務は本来の担当に加えて別の職務も持つことを表します。
「兼務を解く」とはクビになることですか?
いいえ。通常は追加で担当していた仕事から外れることです。退職や解雇とは別の意味です。
兼務が終われば必ず解除辞令が出ますか?
組織の規程によります。期間満了によって終了する運用や、解除の辞令を発する運用などがあります。
兼務はいつまで続くものですか?
一定期間の兼務もあれば、終了時期を定めない場合もあります。開始時に予定と見直し時期を確認しましょう。
兼務になったら給与は上がりますか?
必ずしも上がりません。手当や給与の扱いは賃金規程・契約などを確認します。
兼務は副業と同じですか?
通常は異なります。社内の兼務は同じ会社の別業務を担当する場面が多く、副業は別会社の仕事や自営などを行う場合も含みます。
一人が三つの部署を担当しても兼務ですか?
はい。二つだけでなく、複数の仕事や部署を兼ねる場合にも使えます。
部長が課長も兼ねることはできますか?
組織によってはあり得ますが、正式な呼称は「兼務」「事務取扱」など規程によって変わる場合があります。
名刺には「兼務」と「兼任」のどちらを書けばよいですか?
社内の正式な発令名・所属表示に合わせるのが確実です。読み手に分かるよう部署名と役職を併記する方法もあります。
兼務を頼まれたら最初に何を確認すべきですか?
追加業務の範囲、期間、上司、優先順位、勤務時間、評価と待遇を確認するとよいでしょう。
公務員の兼務は民間企業と同じですか?
一般的な意味は近いですが、任命権者や辞令式によって制度上の意味が厳密に定められる場合があります。
兼務が長期間続き、負担が大きい場合はどうすればよいですか?
担当業務を一覧にし、必要な時間と優先順位を共有したうえで上司・人事に調整を相談してください。
まとめ|「兼務」は本務に加えてほかの仕事も受け持つこと
「兼務」とは、本来の務めを続けながら、別の職務も担当することです。「営業部と企画室を兼務する」「兼務を命じる」「兼務を解く」など、会社や官公庁の人事発表で使われます。
- 「兼任」「兼職」は辞書では兼務に近い意味。ただし役職・職の兼有を強調する場面がある。
- 「併任」は特に公務員の人事で、異なる任命権者による任命などを表す。
- 「兼務解除」は追加の担当を解く意味であり、退職や降格とは限らない。
- 兼務手当・担当期間・人事評価・指揮命令などは、勤務先の規程と具体的な発令を確認する。
「兼務・兼任・兼職・併任」は日常語として重なる部分があっても、正式な辞令では別の定義を持つことがあります。言葉の一般的な意味と、人事制度上の定義を分けて考えることが、正確な使い分けのポイントです。
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仕事の担当範囲と責任の違いをより詳しく知りたい方は、「役割」と「職務」の違いをご覧ください。仕事内容と期待される働きの関係が整理できます。
行政や組織で受け持つ業務の範囲については、「所掌」とは?も参考になります。
任された仕事そのものと職務の関係は、「任務」とは?で解説しています。
参考リンク
本文は国語辞典の語義と、自治体の辞令規程、厚生労働省の労働条件資料を照合して作成しています。人事上の細かな用語・発令形式は組織により異なるため、正式な手続きでは勤務先の規程を確認してください。
- コトバンク「兼務」(『デジタル大辞泉』『精選版 日本国語大辞典』など):本務のほかに他の職務を兼ねるという、兼務の基本的な意味を確認できます。
- コトバンク「兼任」:兼任の意味と、兼務が類義語として扱われることを確認できます。
- コトバンク「兼職」:本職以外の職を兼ねるという、兼職の語義を確認できます。
- 日進市「職員辞令式規程」:兼任・兼職・兼務・併任を区別する自治体の具体的な規程です。
- 三木市「辞令式に関する規程」:兼務・兼務解除・併任に関する発令用語と辞令文例を確認できます。
- 甲佐町「辞令の発令形式」:「兼ねて○○課勤務を命ずる」など、具体的な辞令の表現が示されています。
- 厚生労働省「副業・兼業」:会社外の仕事も含む副業・兼業の考え方と、国のガイドラインを確認できます。
- 厚生労働省「労働条件の明示」:従事する業務・賃金・労働時間など、労働条件を確認する際の基本を説明しています。
- 串本町「職員辞令式規程」:期限を設けた兼務等の発令と、解除の扱いに関する規程を確認できます。
