ニュースや契約書、ビジネス文書では、
「契約を取り消す」
「発言を撤回する」
「申込みを撤回する」
「処分を取り消す」
といった表現を目にします。
「取消し」と「撤回」は、どちらも一度行ったことを後からやめる意味があるため、
「取消しと撤回は何が違う?」
「発言は取消しではなく撤回?」
「契約の申込みをやめる場合はどちら?」
「法律上、取消しは過去にさかのぼる?」
「撤回なら最初の行為は有効だったことになる?」
と迷いやすい言葉です。
結論からいうと、一般的な法律用語としては、「取消し」はいったん生じた法律行為などの効力を一定の理由に基づいて失わせ、民法上の取消しでは原則として初めから無効だったものと扱う仕組みです。一方、「撤回」は、自分が一度示した意思・申込み・発言などを取り下げることで、一般には将来に向けてその効果をなくす意味で使われます。
簡単に覚えるなら、
取消し=「いったん生じた効力を、一定の理由でさかのぼって消す」
撤回=「一度出したものを引っ込める」
です。
たとえば、詐欺によって行った意思表示を法律上取り消した場合、民法第121条では、その行為は初めから無効だったものとみなされます。
一方、契約成立前の「申込み」については、民法第521条・第524条で、一定の場合に撤回という言葉が使われています。
ただし、法律では「取消し」という言葉がすべて同じ法的効果を持つわけではありません。また、行政法など他の分野では独自の区別があります。
この記事では、「取消し」と「撤回」の基本的な違いから、民法、契約の申込み、消費者契約、クーリング・オフ、発言・申請・予約などの日常的な使い分け、「解除」「無効」との違いまで詳しく解説します。
- 「取消し」と「撤回」の違い【結論】
- 「取消し」とは?
- 「取消し」は最初から無効だったことになる?
- 取消し後はどうなる?
- 「取消し」は自由にできる?
- 消費者契約にも「取消し」がある
- 「撤回」とは?
- 法律上の「撤回」は将来に向かって効力をなくす
- 民法にも「撤回」という言葉がある
- 「申込みの撤回」と「契約の取消し」は違う
- 「撤回」はいつでもできる?
- 発言の場合は「取消し」と「撤回」のどちら?
- 「撤回」と「訂正」の違い
- 「申請を撤回する」は使える?
- 予約をやめる場合は「取消し」と「撤回」のどちら?
- クーリング・オフは「取消し」?「撤回」?
- 「撤回」「解除」「取消し」はどう違う?
- 「取消し」と「無効」の違い
- 「取消し」と「解除」の違い
- 「取消し」と「撤回」で迷ったときの3秒判定
- 「取消し」を使った例文
- 「撤回」を使った例文
- ビジネスメールでの使い分け
- よくある間違い1:「取消し」と「撤回」は完全な同義語だと思う
- よくある間違い2:「取消しは単に気が変わったときにも自由にできる」と思う
- よくある間違い3:「撤回なら何でもいつでも自由にできる」と思う
- よくある間違い4:「発言を間違えたら必ず撤回」と思う
- よくある間違い5:「取消しと無効は同じ」と思う
- よくある間違い6:「取消しと解除は同じ」と思う
- よくある間違い7:「クーリング・オフ=取消し」と思う
- 「取消し」と「撤回」に関するよくある質問
- まとめ
- 参考リンク・出典
「取消し」と「撤回」の違い【結論】
| 比較項目 | 取消し | 撤回 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | すでに生じた行為・効力などを取り消す | 一度示した意思・発言・申込みなどを取り下げる |
| 法律上の典型 | 取消権に基づく法律行為の取消し | 契約成立前の申込みの撤回など |
| 民法上の典型的効果 | 初めから無効だったものとみなす | 将来に向けて意思表示の拘束をなくす意味で使われることが多い |
| 代表的な原因 | 制限行為能力、錯誤、詐欺、強迫など | 自分が示した申込み・発言等を取り下げる |
| 日常語 | 予約の取り消し、注文の取り消し | 発言の撤回、提案の撤回 |
| 簡単なイメージ | 「効力をなかったことにする」 | 「出したものを引っ込める」 |
3秒で判断するなら、
「すでに成立した行為の効力を法的に消す?」 → 取消し
「自分が出した発言・申込みなどを引っ込める?」 → 撤回
と考えると分かりやすいでしょう。
「取消し」とは?
一度成立した法律行為の効力を後から失わせる仕組み
一般語としての「取消し」には、
一度したことをなかったことにする
という広い意味があります。
たとえば、
- 予約を取り消す
- 注文を取り消す
- 予定を取り消す
- 免許を取り消す
などです。
一方、民法上の「取消し」には、より専門的な意味があります。
民法第120条では、制限行為能力、錯誤、詐欺、強迫などを理由に取り消すことができる法律行為について、誰が取消権を行使できるかが定められています。
そして民法第121条は、
「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす」
と規定しています。
「取消し」は最初から無効だったことになる?
民法第121条が適用される取消しでは、
はい。
取り消された法律行為は、法律上、初めから無効だったものとみなされます。
たとえば、詐欺によって商品を購入する契約を結び、その意思表示を適法に取り消したとします。
取消しが行われると、その法律行為は、
「取消しをした日から先だけ効力がなくなる」
のではなく、原則として最初から無効だったものとして扱われます。
このように、過去へさかのぼって法律効果を失わせることを、
遡及効
と呼びます。
取消し後はどうなる?
すでに商品やお金の受け渡しが済んでいる場合には、元の状態へ戻す必要が生じます。
民法第121条の2では、無効な行為に基づく債務の履行として給付を受けた者について、原則として、
相手方を原状に復させる義務
を定めています。
たとえば、契約が取り消され、
買主が商品を受け取っていた
売主が代金を受け取っていた
のであれば、それぞれ返還が問題になります。
ただし制限行為能力者などについては、返還義務の範囲に特則があります。
「取消し」は自由にできる?
法律上の取消しは、単に「気が変わった」という理由だけで自由にできるものではありません。
民法上の取消しには、
- 制限行為能力
- 錯誤
- 詐欺
- 強迫
など、法律で認められた取消原因が必要です。
また、取消権を行使できる人も決められています。
一度有効に成立した契約について、
「やっぱり欲しくなくなったから取り消します」
と一方的に言えば、常に民法上の取消しができるわけではありません。
消費者契約にも「取消し」がある
消費者契約法でも「取消し」は重要な制度です。
たとえば事業者から事実と異なる説明を受け、それを事実だと誤認して契約した場合など、法律上の要件を満たせば消費者は契約の申込みや承諾の意思表示を取り消すことができます。
消費者庁の消費者契約法の逐条解説でも、取消しが行われた場合、民法第121条により、
初めから無効だったことになる
と説明されています。
「撤回」とは?
一度出したものを取り下げること
「撤回」は、一般には、
いったん提出・公表・表明したものを取り下げること
を意味します。
代表的には、
- 発言を撤回する
- 提案を撤回する
- 申込みを撤回する
- 立候補を撤回する
- 申請を撤回する
などです。
「取消し」と比較すると、
自分が一度外へ出した意思・申し出などを引っ込める
というニュアンスが強い言葉です。
法律上の「撤回」は将来に向かって効力をなくす
辞書上、民法における「撤回」は、
意思表示をした者が、その効果を将来に向かって消滅させること
と説明されます。
ここが民法上の典型的な「取消し」との大きな違いです。
取消し=過去へさかのぼって効力を失わせる
撤回=これから先の効力・拘束をなくす
という整理です。
ただし、法律の条文上の用語は分野や制度によって異なるため、この区別だけで全ての法令を判断してはいけません。
民法にも「撤回」という言葉がある
現在の民法では、契約の申込みについて「撤回」という言葉が使われています。
民法第521条では、
承諾期間を定めてした契約の申込みは、原則として撤回できない
とされています。
また第524条では、承諾期間を定めないで離れた場所にいる相手に対してした申込みについて、一定期間は撤回できないことが定められています。
つまり、
申込みをしたものの、契約成立前にその申込みを引っ込める
場面で「撤回」という言葉が使われています。
「申込みの撤回」と「契約の取消し」は違う
これは非常に重要です。
たとえばAさんがBさんへ、
「このパソコンを5万円で買いませんか」
と契約を申し込んだとします。
Bさんがまだ承諾しておらず、契約が成立していない段階でAさんが申込みを引っ込める問題は、
申込みの撤回
です。
一方、すでに契約が成立した後に、詐欺など法律上の取消原因を理由として意思表示の効力を失わせるのは、
取消し
です。
| 場面 | 用語 |
|---|---|
| 契約成立前の申込みを引っ込める | 撤回 |
| 成立した法律行為を取消原因に基づいて取り消す | 取消し |
「撤回」はいつでもできる?
できるとは限りません。
契約の申込みについて、民法第521条では、承諾期間を定めてした申込みは原則として撤回できないと定めています。
また第524条でも、承諾期間を定めない一定の申込みについて、相手から承諾の通知を受けるのに相当な期間が経過するまでは撤回できないとされています。
つまり、
「まだ契約前だから、申込みはいつでも自由に撤回できる」
とは限りません。
発言の場合は「取消し」と「撤回」のどちら?
一度発言した内容を、
「その発言をなかったことにしたい」
として取り下げるなら、一般には、
「発言を撤回する」
が自然です。
たとえば、
「先ほどの発言を撤回します」
と使います。
一方、単に発言内容に間違いがあり、正しい内容へ直すのであれば、
「発言を訂正します」
のほうが自然です。
「撤回」と「訂正」の違い
| 撤回 | 訂正 |
|---|---|
| 発言そのものを取り下げる | 誤った部分を正しく直す |
| 「その発言は取り下げます」 | 「正しくは○○です」 |
たとえば、
「売上は1億円です」と発言したが、正しくは1億2,000万円だった
なら、
発言を訂正する
のが自然です。
一方、
「A社とは今後一切取引しない」と発言したが、その方針自体を取り下げる
なら、
発言を撤回する
という表現が適しています。
「申請を撤回する」は使える?
一般的には使われます。
一度提出した申請について、審査・決定前などに自ら取り下げる場合、
「申請を撤回する」
「申請を取り下げる」
と表現することがあります。
ただし行政手続では、
- 撤回
- 取下げ
- 申請取消し
など、手続ごとに正式名称が異なる場合があります。
実際の申請では、その制度の申請要領を確認してください。
予約をやめる場合は「取消し」と「撤回」のどちら?
ホテルや航空券、飲食店などの日常的な予約では、
予約を取り消す
または、
キャンセルする
が一般的です。
「予約を撤回する」と言って意味が通じないわけではありませんが、通常の日本語としてはやや硬く、不自然に感じられる場合があります。
したがって、日常的な予約なら、
「予約の取消し」
が使いやすいでしょう。
クーリング・オフは「取消し」?「撤回」?
特定商取引法では、クーリング・オフについて、
「申込みの撤回又は契約の解除」
という表現が使われます。
つまり、まだ契約成立前の申込みであれば申込みの撤回、すでに契約が成立していれば契約の解除という整理です。
一方、不実告知などによって誤認して契約した場合には、同法や消費者契約法に基づく、
意思表示の取消し
が問題になる場合があります。
この3つは同じ制度ではありません。
「撤回」「解除」「取消し」はどう違う?
| 用語 | 基本的なイメージ |
|---|---|
| 撤回 | 自分が出した申込み・発言などを引っ込める |
| 取消し | 取消原因に基づき、法律行為等の効力を否定する |
| 解除 | 有効に成立した契約を解除権に基づいて解消する |
たとえば、
契約成立前 → 申込みを撤回
詐欺などで意思表示に問題がある → 取消し
契約成立後に相手が代金を払わない → 解除
という違いがあります。
「取消し」と「無効」の違い
「取消し」と「無効」も混同しやすい言葉です。
民法上、無効な法律行為は、原則として最初から法律上の効力がありません。
一方、取り消すことができる行為は、
取り消されるまでは一応効力がある
点が重要です。
そして取消権が行使されると、民法第121条によって、
初めから無効だったものとみなされます。
| 無効 | 取消し |
|---|---|
| 原則として最初から効力がない | 取り消されるまでは一応効力がある |
| 取消しの意思表示を必要としない | 取消権者による取消しが必要 |
「取消し」と「解除」の違い
取消しと解除も、どちらも契約関係をなくす結果につながることがあります。
しかし理由が異なります。
取消しは、錯誤、詐欺、強迫、行為能力の制限など、意思表示・法律行為の成立過程に問題がある場合などに使われます。
解除は、契約自体はいったん有効に成立したものの、債務不履行などその後の事情によって契約関係を解消する場合などに使われます。
たとえば、
だまされて契約した → 取消し
相手が代金を払わない → 解除
という違いです。
「取消し」と「撤回」で迷ったときの3秒判定
| こんな場面 | 使いやすい言葉 |
|---|---|
| 詐欺による意思表示の効力をなくす | 取消し |
| 未成年者が一定の契約を取り消す | 取消し |
| 消費者契約法に基づき意思表示を取り消す | 取消し |
| 契約成立前の申込みを引っ込める | 撤回 |
| 一度した発言を取り下げる | 撤回 |
| 提案そのものを取り下げる | 撤回 |
| 発言の数字だけ間違っていた | 訂正 |
| 債務不履行を理由に契約を終わらせる | 解除 |
最も簡単な覚え方は、
取消し=「法的に効力を消す」
撤回=「自分が出したものを引っ込める」
です。
「取消し」を使った例文
- 詐欺を理由として契約の意思表示を取り消した。
- 未成年者が締結した契約について取消しが問題となった。
- 注文の取り消しを依頼する。
- 誤認して行った意思表示を取り消す。
- 消費者契約法に基づく取消しを検討する。
「撤回」を使った例文
- 先ほどの発言を撤回します。
- 会社は当初の提案を撤回した。
- 契約の申込みを撤回できるか確認する。
- 申請者が申請を撤回した。
- 候補者は立候補の意向を撤回した。
ビジネスメールでの使い分け
一度出した提案そのものを取り下げる
「先日ご提示した提案につきまして、社内事情により撤回させていただきたく存じます。」
この場合は、提案自体を引っ込めるので「撤回」が適しています。
送った注文をキャンセルする
「誠に恐れ入りますが、昨日お送りした注文につきまして、取り消しをお願いできますでしょうか。」
日常的な商取引では「注文取消し」「キャンセル」が自然です。
発言内容が間違っていた
「先ほどの発言に誤りがございました。正しくは○○です。訂正いたします。」
発言そのものを取り下げるのではなく、誤りだけを直すのであれば「撤回」ではなく「訂正」が適しています。
よくある間違い1:「取消し」と「撤回」は完全な同義語だと思う
日常語では意味が重なることがありますが、法律上は区別されます。
特に民法上の取消しには、第121条による遡及的な効果があります。
よくある間違い2:「取消しは単に気が変わったときにも自由にできる」と思う
日常的な予約や注文では事業者のルールに従って取り消せることがあります。
しかし民法上の取消しには、錯誤・詐欺・強迫など所定の取消原因が必要です。
よくある間違い3:「撤回なら何でもいつでも自由にできる」と思う
契約の申込みについては、民法第521条・第524条のように、一定期間は撤回できない場合があります。
撤回できるかは制度や契約内容を確認してください。
よくある間違い4:「発言を間違えたら必ず撤回」と思う
間違った部分だけを正しくするなら「訂正」です。
発言そのものを取り下げるなら「撤回」です。
よくある間違い5:「取消しと無効は同じ」と思う
無効は原則として当初から効力がありません。
取消しが可能な行為は、取消権が行使されるまでは一応有効であり、取消し後に初めから無効だったものとみなされます。
よくある間違い6:「取消しと解除は同じ」と思う
取消しは意思表示等の成立段階の問題、解除は有効な契約成立後の債務不履行などが典型です。
法律上の要件も効果も同じではありません。
よくある間違い7:「クーリング・オフ=取消し」と思う
特定商取引法では、クーリング・オフを「申込みの撤回又は契約の解除」として構成しています。
一方、不実告知等によって誤認した場合の「取消し」は別の制度です。
「取消し」と「撤回」に関するよくある質問
Q1. 「取消し」と「撤回」の一番簡単な違いは?
民法上の典型では、取消しは法律行為の効力をさかのぼって失わせ、撤回は一度出した意思表示などを取り下げることです。
Q2. 発言をなかったことにしたい場合は?
一般には、
「発言を撤回する」
が自然です。
Q3. 発言の内容に間違いがあった場合は?
発言そのものを取り下げる必要がなく、誤った部分だけ直すなら、
「発言を訂正する」
が自然です。
Q4. 契約の申込みをやめる場合は?
契約成立前の申込みを引っ込める場面では「撤回」が使われます。
ただし民法上、申込みの内容によって一定期間撤回できない場合があります。
Q5. 詐欺で契約してしまった場合は?
民法や消費者契約法の要件を満たす場合には、意思表示の「取消し」が問題になります。
Q6. 取消しすると契約は最初から無効ですか?
民法第121条が適用される取消しでは、取り消された行為は初めから無効だったものとみなされます。
Q7. 取消しと解除はどう違いますか?
取消しは詐欺・錯誤・行為能力など、意思表示や法律行為の成立段階の問題が典型です。
解除は、有効に成立した契約について債務不履行などを理由に契約を解消する制度が典型です。
Q8. 申請は「取消し」と「撤回」のどちらですか?
制度によります。
一般語では「申請を撤回する」「申請を取り下げる」と表現できますが、行政手続では正式名称が決められている場合があります。
Q9. 予約は「撤回」できますか?
通常の日本語では「予約を取り消す」「キャンセルする」のほうが自然です。
Q10. 「取消し」と「撤回」の法律上の区別はどんな場合でも同じですか?
いいえ。
民法上の典型的な整理としては、取消しは遡及的、撤回は将来に向かうと理解できますが、法律分野によって用語法が異なる場合があります。
個別の法律・契約・行政手続では、その制度の条文や正式な用語を確認してください。
まとめ
「取消し」と「撤回」は、どちらも一度行ったことを後からやめる場面で使われますが、法律上の典型的な意味は異なります。
| 取消し | 撤回 |
|---|---|
| 法律行為などの効力を取り消す | 自分が一度示した意思等を取り下げる |
| 取消原因が必要 | 申込み・発言・提案などで使う |
| 民法上は初めから無効とみなす | 一般には将来に向けて効果を消滅させる |
| 詐欺・錯誤などによる取消し | 申込み・発言の撤回 |
最も簡単な覚え方は、
取消し=「効力を法的に消す」
撤回=「出したものを引っ込める」
です。
たとえば、
詐欺によってした契約の意思表示を法律上取り消す
場合は、
取消し
が問題になります。
民法第121条では、取り消された行為は、
初めから無効だったものとみなす
と定められています。
一方、
まだ契約が成立する前に、出した申込みを引っ込める
場合には、
撤回
という言葉が使われます。
民法第521条・第524条にも「申込み」の「撤回」という表現があります。
日常的な言葉まで含めると、
発言そのものを取り下げる → 撤回
発言の誤りだけ直す → 訂正
予約・注文をやめる → 取消し・キャンセル
詐欺等による意思表示の効力を失わせる → 法律上の取消し
債務不履行等で有効な契約を解消する → 解除
と整理すると分かりやすいでしょう。
ただし「取消し」「撤回」という用語の意味は、民法、消費者法、行政法などで完全に統一されているわけではありません。
特に法的効果が問題になる場面では、
「取消しだから必ずこうなる」「撤回だから必ずこうなる」
と単語だけで判断せず、該当する法令・契約・手続の規定を確認することが重要です。
参考リンク・出典
-
e-Gov法令検索「民法」
― 第120条で取消権者、第121条で「取り消された行為は、初めから無効であったものとみなす」と規定。第121条の2では原状回復義務を規定 -
e-Gov法令検索「民法」第521条・第524条
― 契約の申込みについて「撤回」という用語を使用し、承諾期間を定めた申込み等について撤回を制限するルールを規定 -
消費者庁「消費者契約法 逐条解説」
― 不当な勧誘による契約の申込み・承諾の意思表示の取消しについて解説し、取り消された場合は民法第121条により初めから無効だったことになると説明 -
消費者庁「特定商取引法ガイド―訪問販売」
― クーリング・オフ等について「申込みの撤回又は契約の解除」と、不実告知等について「意思表示の取消し」を区別して解説 -
コトバンク「取消し」
― 一般的な意味と、民法上、法律行為の効力を後から失わせる取消しの意味を掲載 -
コトバンク「撤回」
― 一度提出・公示したものなどを取り下げる一般的な意味と、民法上、意思表示の効果を将来に向かって消滅させるという整理を掲載
※本記事では、民法上の典型的な「取消し」と「撤回」の違いを中心に説明しています。法律上、「取消し」という語が使われていても、すべてが民法第121条と同じ遡及的効果を持つとは限りません。
※「取消し=遡及的」「撤回=将来的」という区別は、両者を理解するうえで有効な基本整理ですが、行政法その他の分野では制度ごとの用語法・効果を確認する必要があります。
※クーリング・オフ、消費者契約法による取消し、民法上の解除、一般的な解約は、それぞれ要件・効果が異なる制度です。「契約をやめる」という結果だけを理由に同じものとして扱わないよう注意してください。
※契約・行政処分など具体的な法律問題については、事実関係や適用法令によって結論が変わります。重要な案件では弁護士その他の専門家への確認を検討してください。
