会社や役所で仕事をしていると、
- 上司の決裁を取る
- 部長の決裁を受ける
- 社長の決裁を仰ぐ
- 所定の決裁を経る
といった表現を耳にすることがあります。
ここで気になるのが、
「決裁を取る」という日本語は本当に正しいのか
という点です。
辞書を見ると「決裁を仰ぐ」「書類を決裁する」といった例が示されている一方、実際の職場では「決裁を取ってください」「まだ決裁が取れていません」といった言い方も珍しくありません。
そのため、
- 「決裁を取る」は間違った日本語なのか
- 正式な文章では「決裁を受ける」と書くべきなのか
- 「決裁を仰ぐ」と「決裁を受ける」は何が違うのか
- 「決裁を経る」はどんな場面で使うのか
- 「承認を取る」と「決裁を取る」は同じなのか
- そもそも「決裁」とは誰が何をすることなのか
と迷うことがあります。
結論から言えば、「決裁を取る」は職場の会話では広く使われる表現ですが、正式な文書では「決裁を受ける」「決裁を仰ぐ」「決裁を経る」のほうが意味を明確にしやすいと考えると分かりやすいでしょう。
特に行政機関などの正式な文書管理規程では、
「決裁を受ける」
「決裁を経る」
「決裁を仰ぐ」
といった表現が実際に使われています。
一方、「決裁を取る」は、
「必要な決裁を得る」
という意味のビジネス上の口語・慣用的な言い方として理解できます。
この記事では、「決裁を取る」と「決裁を受ける」の違いを中心に、「決裁を仰ぐ」「決裁を経る」「承認を取る」「起案」「稟議」との関係まで、会社・行政・社内メールなどの具体例を使って詳しく解説します。
- 結論:「決裁を取る」は通じるが、正式には「受ける・仰ぐ・経る」が明確
- そもそも「決裁」とは?
- 「決裁する」の主体は誰?
- 「決裁を取る」とは?
- 「決裁を取る」は間違い?
- 正式な文章では「決裁を受ける」が使いやすい
- 「決裁を受ける」とは?
- 「決裁を取る」と「決裁を受ける」の違い
- 「決裁を仰ぐ」とは?
- 公的文書でも「決裁を仰ぐ」は使われる
- 「決裁を受ける」と「決裁を仰ぐ」の違い
- 「決裁を経る」とは?
- 公的文書では「決裁を経る」もよく使われる
- 「決裁を受ける」と「決裁を経る」の違い
- 「決裁を得る」とは?
- 「決裁が取れる」はどう?
- 「決裁を取ってください」を正式に言い換える
- 「承認を取る」と「決裁を取る」の違い
- 承認者と決裁者は同じ人?
- 「決裁」と「決定」の違い
- 「決裁」と「決済」は違う
- 「稟議」と「決裁」の関係
- 「稟議を通す」と「決裁を取る」の違い
- 「起案」と「決裁」の関係
- 決裁文書とは?
- 「決裁済み」とは?
- 「未決裁」とは?
- 「事後決裁」とは?
- 決裁権者とは?
- 金額によって決裁者が変わる例
- 「決裁権限」とは?
- 「専決」とは?
- 「代決」とは?
- 「決裁を回す」は正しい?
- 「決裁を上げる」とは?
- 「決裁を下ろす」とは?
- 「決裁を下す」は自然?
- 「承認をもらう」と「決裁をもらう」
- 社内メールではどう書く?
- 「ご決裁ください」は自然?
- 「決裁をお願いします」は誰に言う?
- 「決裁をお願いします」と「承認をお願いします」の違い
- 「決裁を取る」は目上の人に失礼?
- 規程では「決裁を取る」を避けたほうがよい?
- 業務フローでは「決裁を経る」が便利
- 「決裁を取る」の言い換え一覧
- 「決裁を取る」が自然な場面
- 「決裁を受ける」が自然な場面
- 「決裁を仰ぐ」が自然な場面
- 「決裁を経る」が自然な場面
- 3秒で見分ける方法
- よくある間違い
- 例文で使い分けを確認
- 場面別のおすすめ表現
- 「決裁を取る」と書いてはいけないわけではない
- 「決裁を取る」と「許可を取る」の違い
- 「決裁を取る」と「同意を取る」の違い
- 「決裁を取る」と「了承を取る」の違い
- 決裁と責任の関係
- 電子決裁でも意味は同じ
- 電子決裁での「申請」と「決裁」
- よくある質問
- まとめ
- 参考資料
結論:「決裁を取る」は通じるが、正式には「受ける・仰ぐ・経る」が明確
まず、4つの表現を整理します。
| 表現 | 意味 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 決裁を取る | 必要な決裁を得る | 社内会話・口語 |
| 決裁を受ける | 決裁権者に判断してもらう | 一般的・正式な文章 |
| 決裁を仰ぐ | 上位者に決裁を求める | 丁寧・やや硬い文章 |
| 決裁を経る | 決裁という手続きを通過する | 規程・公文書・説明文 |
たとえば、部下が作った企画書について部長の判断が必要な場合、日常会話では、
「この企画書、今日中に部長の決裁を取っておいて。」
と表現することがあります。
一方、正式な業務文書なら、
「本件について部長の決裁を受ける。」
「本件について部長の決裁を仰ぐ。」
「所定の決裁を経た後、契約を締結する。」
などのほうが意味を明確にできます。
そもそも「決裁」とは?
「決裁」は「けっさい」と読みます。
上位者や権限を持つ人が、部下・担当者などから提出された案について、可否を最終的に判断することです。
たとえば、
- 契約を締結してよいか
- 予算を使ってよいか
- 新しい制度を実施してよいか
- 人事異動を行ってよいか
- 社外へ文書を発出してよいか
などについて、権限を持つ人が判断します。
「決裁」の例文
- 部長が申請書を決裁した。
- 社長の決裁を受ける。
- 最終決裁は役員が行う。
- この契約は本部長決裁となる。
- 決裁終了後に発注手続きを行う。
「決裁する」の主体は誰?
ここを理解すると「決裁を取る」がなぜ少し特殊な表現なのかが分かります。
「決裁する」のは、基本的に決裁権を持つ人です。
たとえば、
担当者が企画書を作成
↓
課長・部長などへ提出
↓
部長が可否を判断
という場合、決裁するのは部長です。
担当者は自分自身で「決裁する」のではなく、部長から決裁を受ける立場です。
「決裁を取る」とは?
「決裁を取る」は、職場でよく使われる表現です。
意味としては、
「決裁権者から必要な決裁を得る」
ということです。
たとえば、
- 「この見積書は部長の決裁を取ってください。」
- 「社長決裁を取ってから契約します。」
- 「まだ決裁が取れていないので発注できません。」
と使われます。
ビジネス会話としては意味が十分通じる表現です。
「決裁を取る」は間違い?
一律に「間違い」とする必要はありません。
実際の企業では「許可を取る」「承認を取る」「了解を取る」と同じ感覚で、
「必要な決裁を得る」
という意味で使われています。
ただし、「決裁」という語そのものは、権限者が可否を決める行為です。
そのため、文章を厳密にするなら、
- 決裁を受ける
- 決裁を仰ぐ
- 決裁を得る
などのほうが関係を明確にできます。
正式な文章では「決裁を受ける」が使いやすい
公的な文書でも、「決裁を受ける」という表現が実際に使われています。
たとえば厚生労働省の中央労働委員会文書管理規程では、決裁文書について、所定の規程に従い、
「決裁を受けるものとする」
という表現が用いられています。
したがって、社内規程・手順書・業務マニュアルなど、正式な文章を書く場合は、
「決裁を取る」
より、
「決裁を受ける」
とすると無難です。
「決裁を受ける」とは?
「決裁を受ける」は、担当者・起案者などが決裁権者に案件を提出し、判断してもらうことです。
例:
- 契約書について部長の決裁を受ける。
- 起案文書は課長の決裁を受ける。
- 所定の決裁権者から決裁を受けた後に施行する。
「誰が判断するのか」が比較的分かりやすい表現です。
「決裁を取る」と「決裁を受ける」の違い
意味自体は近いですが、表現の性格が違います。
| 項目 | 決裁を取る | 決裁を受ける |
|---|---|---|
| 意味 | 必要な決裁を得る | 決裁権者に判断してもらう |
| 文体 | 口語的・社内的 | 正式・説明的 |
| 社内会話 | 自然 | 自然 |
| 規程・公文書 | やや口語的 | 使いやすい |
| 関係の明確さ | やや省略的 | 明確 |
「決裁を仰ぐ」とは?
「決裁を仰ぐ」も非常によく使われる表現です。
「仰ぐ」には、目上の人・専門家などに判断や指示を求める意味があります。
そのため、
「決裁を仰ぐ」=上位者に決裁を求める
という意味になります。
例文
- 本件について社長の決裁を仰ぐ。
- 契約内容を整理したうえで役員の決裁を仰ぐ。
- 最終案について上司の決裁を仰いだ。
「決裁を受ける」より、相手が上位者であることを意識した表現です。
公的文書でも「決裁を仰ぐ」は使われる
政府・公的機関の資料でも「決裁を仰ぐ」という表現が確認できます。
たとえば、契約事務などについて、担当者が必要な手続きを行ったうえで上位者の決裁を仰ぐ、といった形です。
そのため、「決裁を仰ぐ」は単なる話し言葉ではなく、正式な文章でも使える表現です。
「決裁を受ける」と「決裁を仰ぐ」の違い
両方とも、決裁権者に判断してもらう意味です。
ただし、
- 決裁を受ける=決裁してもらう事実を客観的に表す
- 決裁を仰ぐ=目上・上位者へ判断を求めるニュアンスが強い
という違いがあります。
手順書・規程なら「決裁を受ける」、上司への依頼・説明なら「決裁を仰ぐ」とすると自然です。
「決裁を経る」とは?
「決裁を経る」は、決裁という手続きを通過することです。
「経る」には、ある段階・過程を通るという意味があります。
そのため、
決裁を経る=必要な決裁手続きを終えたうえで次の段階へ進む
という意味になります。
例文
- 所定の決裁を経た後に通知する。
- 部長決裁を経て契約を締結する。
- 必要な決裁を経た文書のみ発送する。
- 再度決裁を経る必要がある。
公的文書では「決裁を経る」もよく使われる
厚生労働省の文書取扱規則では、決裁終了後に文書を修正する場合について、改めて順次、
「決裁を経る」
という表現が使われています。
つまり「決裁を経る」は、決裁を一つの正式な手続・段階として表現するときに非常に適しています。
「決裁を受ける」と「決裁を経る」の違い
似ていますが、視点が違います。
決裁を受ける
決裁権者に判断してもらう行為に焦点があります。
決裁を経る
決裁という手続きを通過したことに焦点があります。
たとえば、
「部長の決裁を受ける。」
は、部長との関係に重点があります。
「決裁を経て契約する。」
は、契約までの業務プロセスに重点があります。
「決裁を得る」とは?
「決裁を得る」も自然な表現です。
必要な決裁を取得したことを簡潔に表します。
例:
- 社長の決裁を得た。
- 必要な決裁を得てから発注する。
- 役員決裁を得た後、取引先へ連絡する。
「決裁を取る」を少し文章語に言い換えたい場合にも使いやすいでしょう。
「決裁が取れる」はどう?
社内会話ではよく使われます。
たとえば、
「今日中に決裁が取れそうです。」
「まだ社長決裁が取れていません。」
という言い方です。
意味としては、
「決裁を得られる」
「決裁が完了する」
ということです。
正式な文章なら、
- 決裁を得ていない
- 決裁が完了していない
- 決裁を受けていない
などにすると、より明確です。
「決裁を取ってください」を正式に言い換える
社内メールなどで丁寧にするなら、次のように言い換えられます。
「部長の決裁を取ってください。」
↓
「部長の決裁を受けてください。」
「部長の決裁を仰いでください。」
「部長の決裁を得たうえで進めてください。」
業務手順として書くなら、
「部長の決裁を受けた後、発注手続きを行う。」
のようにすると明確です。
「承認を取る」と「決裁を取る」の違い
「承認を取る」という言い方も職場ではよく使います。
承認は、ある内容・行為を認めることです。
決裁は、権限を持つ人が案件について最終的な可否を決めることです。
そのため、
- 承認=内容を認める
- 決裁=権限者が最終的な判断を下す
という違いがあります。
詳しくは、「承認」と「決裁」の違いとは?意味・権限・稟議書での使い分けをビジネスの例文付きで徹底解説も参考にしてください。
承認者と決裁者は同じ人?
会社のルールによって異なります。
一つの文書について、
担当者
↓
係長確認
↓
課長承認
↓
部長決裁
のような流れを設定している組織もあります。
この場合、承認者と最終決裁者は別です。
一方、小規模な組織では同じ人が承認・決裁を行うこともあります。
「決裁」と「決定」の違い
「決定」は、物事を決めることを広く表します。
「決裁」は、組織の中で権限を持つ人が、提出された案について可否を決める場面で使われます。
たとえば、
「会議で開催日を決定した。」
とは言えますが、必ずしも決裁手続きを意味しません。
一方、
「部長が予算案を決裁した。」
なら、権限者による組織上の意思決定を表しています。
詳しくは、「決定」と「決裁」の違いは?意味・使い分けを会議・稟議の例文で解説をご覧ください。
「決裁」と「決済」は違う
漢字が似ているため、非常に多い間違いです。
決裁
権限を持つ人が案件の可否を決めること。
例:
「部長の決裁を受ける。」
決済
代金の支払いなどを済ませること。
例:
「クレジットカードで決済する。」
したがって、上司へ企画書を回す場合は「決済」ではなく「決裁」です。
「稟議」と「決裁」の関係
会社では「稟議」と「決裁」も一緒に使われます。
稟議は、案件を書面・システムなどで関係者へ回し、承認・合意などを得ながら意思決定する方法です。
最終的に決裁権者が可否を判断します。
そのため、イメージとしては、
稟議=意思決定までの手続
決裁=その手続の中で権限者が最終判断すること
と整理できます。
「稟議を通す」と「決裁を取る」の違い
「稟議を通す」は、稟議のプロセス全体を完了させるという意味で使われます。
「決裁を取る」は、その中でも最終的な決裁を得ることに重点があります。
たとえば、
「稟議を回して、部長決裁を取る。」
という表現ができます。
「起案」と「決裁」の関係
「起案」は、組織の意思決定を受けるための案・文書を作ることです。
担当者が起案した文書を上位者へ回し、最終的に決裁を受けます。
つまり、
起案
↓
回議・確認・承認など
↓
決裁
という流れになることがあります。
「起案」と関連する用語については、「起案」と「立案」の違いは?意味・使い分けを企画・稟議の例文で解説も参考になります。
決裁文書とは?
決裁文書は、組織として意思決定するために決裁へ回される文書や、決裁された内容を記録した文書です。
行政機関では文書管理規程などに基づき、
- 起案
- 決裁
- 施行
- 保存
などの手続が定められています。
「決裁済み」とは?
必要な決裁がすでに完了している状態です。
たとえば、
「この契約書は決裁済みです。」
なら、所定の決裁権者による判断がすでに終了していることを表します。
「未決裁」とは?
まだ必要な決裁が完了していないことです。
未決裁の段階で、本来決裁後に行うべき契約・発注・通知などを進めると、社内規程違反などになる場合があります。
そのため、業務では決裁状況を明確に管理することが重要です。
「事後決裁」とは?
通常は事前に受けるべき決裁を、やむを得ない事情などにより事後に受けることを指す場合があります。
ただし、事後決裁を認める条件は組織の規程によって異なります。
勝手に「あとで決裁を取ればよい」と考えてよいわけではありません。
決裁権者とは?
決裁する権限を与えられている人です。
会社によって、
- 課長
- 部長
- 本部長
- 役員
- 社長
などに決裁権限が割り当てられています。
案件の金額・重要度によって決裁者が変わることもあります。
金額によって決裁者が変わる例
たとえば架空の会社で、
| 金額 | 決裁権者 |
|---|---|
| 10万円未満 | 課長 |
| 10万円以上100万円未満 | 部長 |
| 100万円以上 | 役員 |
という決裁規程があるとします。
30万円の発注なら、課長の判断だけでは完了せず、部長の決裁が必要です。
「決裁権限」とは?
ある案件について最終的に可否を判断する権限です。
決裁権限がない人が「問題ありません」と言っても、それだけでは正式な決裁にならない場合があります。
誰の決裁が必要なのかは、職務権限規程・決裁規程などで定められます。
「専決」とは?
決裁関連では「専決」という言葉もあります。
専決は、本来上位者に属する権限などについて、規程に基づき特定の下位者が常時決裁することを指す場合があります。
たとえば、一定金額以下の契約について課長が専決できる、といったルールです。
「代決」とは?
代決は、決裁権者が不在などの場合に、定められた代理者が代わって決裁することです。
専決と代決は異なります。
専決は権限規程によって通常から決裁できる仕組み、代決は本来の決裁権者の代わりに決裁する仕組みとして整理できます。
「決裁を回す」は正しい?
職場では、
「この文書を決裁に回してください。」
「決裁を回しています。」
という表現も使われます。
これは、起案文書などを決裁のため関係者・決裁者へ順番に送るという意味です。
電子決裁でも、承認ルートへ送ることを「回す」と表現する会社があります。
「決裁を上げる」とは?
「決裁を上げる」も社内用語として使われることがあります。
一般には、上位者へ決裁依頼を出す意味です。
ただし、正式な文章では、
- 決裁を申請する
- 決裁を仰ぐ
- 起案する
など、具体的な表現にしたほうが分かりやすい場合があります。
「決裁を下ろす」とは?
「決裁を下ろす」という表現も職場によっては使われます。
決裁権者が判断を出す意味で使われることがありますが、一般的には、
- 決裁する
- 決裁を下す
- 承認する
などの表現のほうが意味が明確です。
「決裁を下す」は自然?
「判断を下す」「裁定を下す」と同じ感覚で使われることがあります。
ただし「決裁する」という動詞だけでも十分です。
たとえば、
「社長が最終決裁をした。」
「社長が可決の決裁をした。」
などと表現できます。
「承認をもらう」と「決裁をもらう」
職場では「もらう」も頻繁に使われます。
たとえば、
「上司の承認をもらいました。」
「社長の決裁をもらいました。」
です。
会話では自然ですが、正式な文章なら、
- 承認を受ける
- 承認を得る
- 決裁を受ける
- 決裁を得る
などにすると整った表現になります。
社内メールではどう書く?
上司に依頼する場合
「本件につきまして、ご決裁をお願いいたします。」
「添付の起案書について、ご決裁くださいますようお願いいたします。」
同僚に手続きを依頼する場合
「内容確認後、部長の決裁を受けてください。」
「部長決裁を得た後、発注処理をお願いいたします。」
決裁状況を報告する場合
「本件は部長決裁まで完了しております。」
「現在、役員決裁中です。」
「ご決裁ください」は自然?
自然です。
決裁権者本人に、判断をお願いする表現です。
ただし、相手との関係によっては、
「ご決裁のほど、よろしくお願いいたします。」
「ご確認のうえ、ご決裁くださいますようお願いいたします。」
などとすると、より丁寧です。
「決裁をお願いします」は誰に言う?
基本的には、決裁権を持っている人へ言います。
決裁権のない同僚へ「決裁をお願いします」と言っても、その人自身が決裁できない場合があります。
その場合は、
「部長決裁まで手続きをお願いします。」
などとすると意味が明確です。
「決裁をお願いします」と「承認をお願いします」の違い
相手が最終決裁権者なら「決裁をお願いします」が適します。
中間的な確認・同意を求める場合は「承認をお願いします」が適することがあります。
ただし、会社のワークフローシステムでは「承認」「決裁」の用語が独自に定義されている場合があります。
社内規程を優先してください。
「決裁を取る」は目上の人に失礼?
社内で第三者について、
「部長の決裁を取ります。」
と話すこと自体が直ちに失礼になるわけではありません。
ただし、本人に直接、
「あなたの決裁を取りたいです。」
と言うより、
「ご決裁をお願いいたします。」
「ご決裁いただけますでしょうか。」
のほうが自然で丁寧です。
規程では「決裁を取る」を避けたほうがよい?
社内規程・業務マニュアルのように、長期間使う正式な文書なら、できるだけ意味が明確な表現を選ぶのがおすすめです。
たとえば、
△「担当者は部長の決裁を取ること。」
より、
○「担当者は部長の決裁を受けるものとする。」
○「担当者は部長の決裁を得た後、手続きを行う。」
のほうが文書表現として整っています。
業務フローでは「決裁を経る」が便利
手続きの順番を説明するなら、「決裁を経る」が便利です。
たとえば、
起案 → 課内確認 → 部長決裁 → 契約
という流れなら、
「部長の決裁を経た後、契約締結手続きを行う。」
と書けます。
「決裁を取る」の言い換え一覧
| 元の表現 | 言い換え | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 決裁を取る | 決裁を受ける | 一般・正式文書 |
| 決裁を取る | 決裁を得る | 簡潔な文章 |
| 決裁を取る | 決裁を仰ぐ | 上位者に求める場合 |
| 決裁を取る | 決裁を経る | 手続・業務フロー |
| 決裁を取る | ご決裁いただく | 丁寧な対人表現 |
「決裁を取る」が自然な場面
次のような社内会話なら、ごく自然です。
「これ、部長決裁を取ってから発注してください。」
「決裁取れましたか?」
「まだ役員決裁が取れていません。」
テンポの速い職場の会話では便利な表現です。
「決裁を受ける」が自然な場面
規程・手順書・報告書などです。
例:
「起案者は、所定の決裁権者の決裁を受けるものとする。」
文章として誰が何をするか明確です。
「決裁を仰ぐ」が自然な場面
上位者へ判断を求めることを強調するときです。
例:
「重要案件であるため、役員会で協議したうえで社長の決裁を仰ぐ。」
「決裁を経る」が自然な場面
プロセスを説明するときです。
例:
「所定の決裁を経た文書を取引先へ発送する。」
3秒で見分ける方法
迷ったら次のように判断してください。
Q1. 社内の口頭会話?
→ 「決裁を取る」でも自然
Q2. 規程・マニュアル・正式文書?
→ 「決裁を受ける」が使いやすい
Q3. 上司に判断を求めることを強調したい?
→ 「決裁を仰ぐ」
Q4. 業務プロセス上、決裁を通過することを言いたい?
→ 「決裁を経る」
Q5. 「取る」を少し整った文章にしたい?
→ 「決裁を得る」
よくある間違い
1. 「決裁」と「決済」を混同する
上司が判断するのは「決裁」です。
代金を支払うのは「決済」です。
2. 承認と決裁をすべて同じ意味だと思う
承認は認めること、決裁は権限者による最終判断という違いがあります。
3. 決裁権のない人に「決裁してください」と言う
相手が承認者なのか決裁者なのか、社内ルールを確認しましょう。
4. 正式文書でも話し言葉の「決裁を取る」を多用する
誤りとは言い切れませんが、「受ける」「得る」「経る」のほうが役割を明確にできます。
5. 決裁前に実行してしまう
組織の規程で事前決裁が必要なら、決裁完了前に契約・発注などを進めないことが重要です。
例文で使い分けを確認
例1:日常の社内会話
○「この申請、今日中に部長決裁を取っておいてください。」
口頭では自然です。
例2:業務マニュアル
○「担当者は申請書について部長の決裁を受ける。」
正式な手順として明確です。
例3:上司へ求める
○「重要案件のため、社長の決裁を仰ぐこととします。」
上位者へ判断を求めています。
例4:業務フロー
○「所定の決裁を経た後、契約書を発送する。」
決裁を一つの手続として表しています。
例5:完了を報告
○「本件は役員決裁を得ています。」
必要な決裁が完了していることを表します。
場面別のおすすめ表現
| 場面 | おすすめ表現 |
|---|---|
| 同僚との会話 | 決裁を取る |
| 社内チャット | 決裁を取る/決裁を得る |
| 業務マニュアル | 決裁を受ける |
| 社内規程 | 決裁を受ける/決裁を経る |
| 上司への依頼 | ご決裁をお願いする |
| 上位者へ判断を求める説明 | 決裁を仰ぐ |
| 手続きの流れ | 決裁を経る |
| 決裁済みを表す | 決裁を得た/決裁済み |
「決裁を取る」と書いてはいけないわけではない
日本語は、実際の使用場面によって慣用表現が広がります。
「決裁を取る」も、ビジネスの現場では広く意味が通じます。
したがって、
「決裁を取るは完全な誤用なので絶対に使ってはいけない」
とまで考える必要はありません。
重要なのは、文章の目的です。
会話なら簡潔な「決裁を取る」。
正式文書なら関係が明確な「決裁を受ける」。
上位者へ求めるなら「決裁を仰ぐ」。
手続の通過を示すなら「決裁を経る」。
というように選べばよいでしょう。
「決裁を取る」と「許可を取る」の違い
「許可を取る」もよく使われる表現です。
許可は、原則として禁止・制限されている行為について、権限者などが「してよい」と認める意味で使われます。
決裁は、組織内部で案件について可否を判断することです。
たとえば、
「上司から出張の決裁を受ける。」
「施設管理者から撮影許可を取る。」
というように対象が異なります。
「決裁を取る」と「同意を取る」の違い
同意は、相手と同じ意思を持つこと・相手の提案などに賛成することです。
必ずしも上下関係や決裁権限を伴いません。
たとえば関係部署全員の同意を取った後、最終的に部長決裁を受けるということもあります。
「決裁を取る」と「了承を取る」の違い
了承は、事情・内容を理解したうえで受け入れる意味です。
「了承を取る」は相手に事情を説明し、納得して受け入れてもらうニュアンスがあります。
決裁は、より制度的な権限に基づく判断です。
決裁と責任の関係
決裁は単なる形式的なハンコではありません。
決裁権者は、案件の内容を確認し、自分に与えられた権限の範囲で判断します。
そのため、決裁ルートは、
- 誰が判断するのか
- 誰に権限があるのか
- どこまで責任を負うのか
を明確にする役割も持っています。
電子決裁でも意味は同じ
紙の稟議書に印鑑を押す方式から、電子決裁システムへ移行している組織も多くあります。
しかし、「決裁」の基本的な意味は変わりません。
電子システム上で、
- 申請
- 確認
- 承認
- 決裁
などの処理が行われます。
電子決裁での「申請」と「決裁」
電子ワークフローでは、担当者側が案件をシステムへ登録して送信することを「申請」と呼ぶ場合があります。
その後、決裁権者が可否を判断するのが「決裁」です。
つまり、
申請する側
と
決裁する側
は基本的に別です。
よくある質問
Q1. 「決裁を取る」は正しい日本語ですか?
社内会話では広く使われ、意味も十分通じる表現です。
ただし、正式な文章では「決裁を受ける」「決裁を得る」などのほうが明確です。
Q2. 「決裁を受ける」とはどういう意味ですか?
決裁権者に案件を判断してもらうことです。
Q3. 「決裁を仰ぐ」とはどういう意味ですか?
上位者・権限者へ決裁を求めることです。
「仰ぐ」に、目上の人へ判断などを求めるニュアンスがあります。
Q4. 「決裁を経る」とは?
決裁という正式な手続きを通過することです。
業務フロー・規程などで使いやすい表現です。
Q5. 「決裁を得る」は自然ですか?
自然です。
「決裁を取る」をやや整った文章に言い換える場合にも適しています。
Q6. 社内メールでは「決裁を取る」と書いてよいですか?
社内で定着している表現なら問題なく通じます。
ただし丁寧にするなら「決裁を受ける」「ご決裁いただく」などが使いやすいでしょう。
Q7. 決裁と承認は同じですか?
同じではありません。
承認は内容を認めること、決裁は権限を持つ人が案件の可否を最終判断することを指す場合が多くあります。
Q8. 決裁と決定の違いは?
決定は物事を決めること全般です。
決裁は、組織の中で権限者が提出された案の可否を判断することです。
Q9. 決裁と決済の違いは?
決裁は上司などによる意思決定、決済は代金の支払い・債権債務の清算などです。
Q10. 「部長決裁を取る」は自然ですか?
社内会話では自然です。
正式な文章では「部長の決裁を受ける」「部長決裁を得る」などにすると分かりやすいでしょう。
Q11. 決裁前に発注してもよいですか?
組織のルールによります。
事前決裁が必要な案件であれば、通常は所定の決裁を受けてから進める必要があります。
Q12. 一番無難な言い方はどれですか?
幅広い文章で使いやすいのは、
「決裁を受ける」
です。
上位者へ求めるなら「決裁を仰ぐ」、手続きを説明するなら「決裁を経る」も適しています。
まとめ
「決裁を取る」は、会社・組織の中でよく使われるビジネス表現です。
意味としては、
「決裁権者から必要な決裁を得る」
ことを表します。
そのため、「決裁を取る」がまったく通じない誤った表現というわけではありません。
ただし、正式な文章では、目的に応じて次のように使い分けると明確です。
| 表現 | 意味・向いている場面 |
|---|---|
| 決裁を取る | 社内会話で、必要な決裁を得る |
| 決裁を受ける | 決裁権者に判断してもらう |
| 決裁を得る | 必要な決裁を取得する |
| 決裁を仰ぐ | 上位者へ決裁を求める |
| 決裁を経る | 決裁手続きを通過する |
最も簡単に整理すると、
口頭なら「決裁を取る」でも自然
正式な文章なら「決裁を受ける」が無難
上司に求めるなら「決裁を仰ぐ」
手続の流れなら「決裁を経る」
です。
また、決裁とは単に「誰かにOKをもらうこと」ではありません。
組織で決められた権限を持つ人が、案件について可否を判断する手続です。
そのため、
- 誰が起案するのか
- 誰が確認・承認するのか
- 誰に決裁権限があるのか
- 決裁後に何を実行するのか
まで理解すると、「決裁を取る」「決裁を受ける」という表現の違いも分かりやすくなります。
文章で迷った場合には、まず、
「誰が誰に判断してもらうのか」
を考えてください。
その関係を最も明確に表せる言葉を選べば、ビジネス文書でも自然で正確な文章になります。
参考資料
- goo辞書「決裁」 ― 権限を持つ上位者が、部下から提出された案の可否を決めるという「決裁」の基本的な意味と、「決裁を仰ぐ」という用例を確認
- 厚生労働省「中央労働委員会文書管理規程」 ― 決裁文書の起案について「決裁を受けるものとする」という正式な用例を確認
- 厚生労働省「厚生労働省文書取扱規則」 ― 決裁終了後の文書修正について「改めて順次決裁を経る」という正式な用例を確認
- 裁判所「下級裁判所における司法行政文書の管理に関する通達」 ― 「決裁を受けた起案文書」など、裁判所における正式な決裁用語の使用例を確認
- 法務省関連資料 ― 契約事務について「決裁を経た上」「決裁を仰ぐ」といった表現が実際に使用されている例を確認
