インターネットやルーターの設定を見ていると、
「IPv4アドレス」
「IPv6対応」
「IPv4 over IPv6」
といった言葉を見かけます。
しかし、
「IPv4とIPv6は何が違う?」
「IPv6のほうが速い?」
「IPv6ならIPアドレス不足はなくなる?」
「IPv6ではNATがいらない?」
「IPv4のサイトへIPv6から接続できる?」
「IPv6ならセキュリティも高い?」
と迷うことがあります。
結論からいうと、「IPv4」と「IPv6」は、どちらもネットワーク上でデータを目的地へ届けるためのInternet Protocolですが、最大の違いはIPアドレスの大きさです。
IPv4は、
32ビット
のIPアドレスを使用します。
一方、IPv6は、
128ビット
のIPアドレスを使用します。
その結果、利用できるアドレス数は、
IPv4:約42.9億個
IPv6:約3.4×10の38乗個
と桁違いになります。
IPv6は単に「IPアドレスを長くしたIPv4」ではありません。
ヘッダー構造、自動設定、ブロードキャストの扱い、フラグメント処理などにも違いがあります。
IETFのRFC 8200では、IPv6をIPv4の後継となるInternet Protocolとして規定し、IPアドレスを32ビットから128ビットへ拡張したことなどを説明しています。
一言で覚えるなら、
IPv4=「現在も広く使われる32ビットのIP」
IPv6=「巨大なアドレス空間を持つ128ビットの後継IP」
です。
この記事では、「IPv4」と「IPv6」の違いから、アドレス表記、IPv4アドレス不足、NAT、プライベートアドレス、SLAAC、DHCPv6、DNS、速度、安全性、IPv4 over IPv6まで詳しく解説します。
- 「IPv4」と「IPv6」の違い【結論】
- そもそも「IP」とは?
- 「IPv4」とは?
- IPv4アドレスはいくつある?
- IPv4ではなぜアドレス不足が問題になった?
- 「IPv6」とは?
- IPv6アドレスはなぜ長い?
- IPv6の「::」とは?
- IPv4とIPv6のアドレス数はどれくらい違う?
- IPv4の「プライベートIPアドレス」とは?
- IPv4で広く使われる「NAT」とは?
- IPv6ではNATが不要?
- IPv6にもプライベートアドレスはある?
- IPv6の「リンクローカルアドレス」とは?
- IPv4とIPv6のループバックアドレス
- IPv6には「ブロードキャスト」がない
- 「マルチキャスト」とは?
- IPv4とIPv6ではヘッダーも違う
- IPv4のヘッダーチェックサムとIPv6
- IPv4とIPv6ではフラグメント処理も違う
- IPv6の「SLAAC」とは?
- IPv6ならDHCPはいらない?
- DNSではIPv4とIPv6をどう区別する?
- なぜIPv6用は「AAAA」なの?
- IPv4とIPv6はそのまま通信できる?
- 「デュアルスタック」とは?
- 「IPv4 over IPv6」とは?
- IPv6にすればインターネットは必ず速くなる?
- 日本で「IPv6にしたら速くなった」と言われる理由
- IPv6はIPv4より安全?
- IPv6ならポート番号はなくなる?
- IPv6アドレスとポート番号を一緒に書く方法
- IPv4とIPv6ではサブネットも違う?
- IPv4とIPv6はどちらか一方を選ぶ?
- IPv4は将来すぐ使えなくなる?
- 「IPv4・IPv6」で迷ったときの3秒判定
- 「IPv4」を使った例文
- 「IPv6」を使った例文
- 具体例で比較:家庭のパソコン
- 具体例で比較:Webサイトへ接続する
- よくある間違い1:「IPv6はIPv4のアドレスを長くしただけ」と思う
- よくある間違い2:「IPv6にすれば必ず通信速度が上がる」と思う
- よくある間違い3:「IPv6ならセキュリティ対策は不要」と思う
- よくある間違い4:「IPv6にはポート番号がない」と思う
- よくある間違い5:「IPv6ならNATを絶対に使えない」と思う
- よくある間違い6:「IPv4とIPv6はそのまま完全互換」と思う
- よくある間違い7:「IPv4アドレスが枯渇したのでIPv4はもう使えない」と思う
- 「IPv4」と「IPv6」に関するよくある質問
- まとめ
- 参考リンク・出典
「IPv4」と「IPv6」の違い【結論】
| 比較項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| 正式名称 | Internet Protocol Version 4 | Internet Protocol Version 6 |
| アドレス長 | 32ビット | 128ビット |
| アドレス数 | 約42.9億 | 約3.4×10の38乗 |
| 表記例 | 192.168.1.10 | 2001:db8::1 |
| 主な数字表記 | 10進数 | 16進数 |
| 区切り | 「.」 | 「:」 |
| ブロードキャスト | あり | なし。用途をマルチキャスト等で代替 |
| 自動設定 | DHCPv4など | SLAAC・DHCPv6など |
| NAT | アドレス節約のため広く利用 | アドレス節約目的では原則必要性が低い |
| 現在の位置付け | 現在も広く利用 | IPv4の後継として普及が進む |
3秒で判断するなら、
「192.168.1.10のような形式?」 → IPv4
「2001:db8::1のような形式?」 → IPv6
と覚えると分かりやすいでしょう。
そもそも「IP」とは?
IPは、
Internet Protocol
の略です。
ネットワークを越えて、送信元から宛先へデータを届けるための基本的なプロトコルです。
IPパケットには、
- 送信元IPアドレス
- 宛先IPアドレス
などが含まれます。
ルーターは宛先IPアドレスを見ながら、データをどの経路へ転送するか判断します。
IPv4もIPv6も、
「ネットワーク上の目的地へパケットを届ける」
という基本的な役割は共通しています。
「IPv4」とは?
32ビットのIPアドレスを使うInternet Protocol
IPv4は、
Internet Protocol Version 4
の略です。
基本仕様は1981年公開のRFC 791にまとめられています。
IPv4アドレスは32ビットで、一般には、
192.168.1.10
のように表記します。
8ビットずつ4つに分け、それぞれを0〜255の10進数で表示し、「.」で区切ります。
たとえば、
192.168.1.10
なら、
- 192
- 168
- 1
- 10
という4つの数字で構成されています。
IPv4アドレスはいくつある?
IPv4は32ビットなので、理論上の組み合わせは、
2の32乗=4,294,967,296
です。
約42.9億個になります。
ただし、そのすべてを一般のインターネット端末へ割り当てられるわけではありません。
プライベートアドレス、ループバック、マルチキャスト、各種特殊用途などに予約された範囲があります。
IPv4ではなぜアドレス不足が問題になった?
インターネットが設計された当初、約43億というアドレス数は非常に大きく見えました。
しかしその後、
- パソコン
- スマートフォン
- サーバー
- ルーター
- IoT機器
- 各種ネットワーク機器
が世界中で急増しました。
IPv4の限られたアドレス空間だけでは、すべての機器へ個別のグローバルIPv4アドレスを割り当てることが難しくなりました。
IANAも現在、IPv4について、IANAがRIRへ新たに配分するための供給は枯渇していると説明しています。
ただし、
「IPv4アドレスが世界から完全になくなり、もうIPv4を使えない」
という意味ではありません。
既に割り当てられたIPv4アドレスは現在も広く利用されています。
「IPv6」とは?
128ビットの巨大なアドレス空間を持つIPv4の後継
IPv6は、
Internet Protocol Version 6
の略です。
現在の基本仕様はRFC 8200です。
IPv6では、IPv4の32ビットから大幅に拡張して、
128ビット
のアドレスを使用します。
利用可能な組み合わせは、
2の128乗
です。
およそ、
3.4×10の38乗
という極めて大きな数になります。
IPv6は、この巨大なアドレス空間によって、IPv4のアドレス不足問題を根本的に改善できるよう設計されています。
IPv6アドレスはなぜ長い?
IPv6では、たとえば、
2001:0db8:1234:5678:0000:0000:0000:0001
のようなアドレスを使用します。
16ビットずつ8つに分け、16進数で表記します。
これでは長いため、省略規則があります。
たとえば、
2001:0db8:0000:0000:0000:0000:0000:0001
なら、
2001:db8::1
のように短縮できます。
IPv6の「::」とは?
IPv6では、連続する0の部分を、
::
で省略できます。
たとえば、
2001:db8:0:0:0:0:0:1
は、
2001:db8::1
と表記できます。
ただし、1つのIPv6アドレスの中で「::」を何度も使うと、どこに何個の0が入るのか分からなくなるため、圧縮表記として使用できるのは1か所です。
IPv4とIPv6のアドレス数はどれくらい違う?
| 項目 | IPv4 | IPv6 |
|---|---|---|
| ビット数 | 32 | 128 |
| 理論上の組み合わせ | 2の32乗 | 2の128乗 |
| 概算 | 約42.9億 | 約3.4×10の38乗 |
IPv6はIPv4の、
「4倍の長さだからアドレス数も4倍」
ではありません。
アドレスのビット数が32ビットから128ビットになったため、組み合わせの数は指数関数的に増えます。
IPv4の「プライベートIPアドレス」とは?
IPv4アドレス不足への対策として非常に広く使われてきたのが、
プライベートIPv4アドレス
です。
RFC 1918では、
- 10.0.0.0/8
- 172.16.0.0/12
- 192.168.0.0/16
がプライベートネットワーク用に予約されています。
家庭でよく見る、
192.168.1.10
などはこの一種です。
これらを家庭・会社内部で再利用し、ルーターでグローバルIPv4アドレスとの変換を行うことで、限られたIPv4アドレスを節約できます。
IPv4で広く使われる「NAT」とは?
NATは、
Network Address Translation
の略です。
IPアドレスを変換する仕組みです。
家庭では、
- 192.168.1.10
- 192.168.1.11
- 192.168.1.12
など複数の端末が、ルーターを通じてインターネットへ接続します。
実際にはIPアドレスだけでなくTCP・UDPのポート番号も変換するNAPTによって、複数端末が1つのグローバルIPv4アドレスを共有する構成が広く使われています。
IPv6ではNATが不要?
「IPv6ではNATという技術が絶対に存在しない」という意味ではありません。
ただしIPv6には非常に大きなアドレス空間があるため、IPv4のように、
「グローバルIPアドレスを節約するため、家庭内の多数端末を1個のアドレスへ押し込む」
必要性は大幅に低くなります。
IPv6では端末へグローバルに一意なアドレスを割り当て、ルーターでそのままルーティングする構成を取りやすくなっています。
ただし、
NATがない=インターネットから誰でも自由に端末へ接続できる
という意味でもありません。
ルーターやファイアウォールで、外部からの通信を適切に制御することが重要です。
IPv6にもプライベートアドレスはある?
IPv4のRFC 1918プライベートアドレスと完全に同じ仕組みではありませんが、IPv6には、
Unique Local Address(ULA)
があります。
RFC 4193では、
FC00::/7
をUnique Local IPv6 Unicast Address用に定義しています。
ULAは主に組織・サイト内のローカル通信で利用するためのアドレスで、通常のグローバルインターネット上で経路制御されることを想定していません。
ただし、
IPv4の192.168.x.xとIPv6のULAが完全に同じ設計
というわけではない点には注意してください。
IPv6の「リンクローカルアドレス」とは?
IPv6では、
FE80::/10
のリンクローカルアドレスがあります。
同じリンク上の機器同士で通信するためのアドレスです。
IPv6対応インターフェースでは、グローバルIPv6アドレスとは別にリンクローカルアドレスを持つことがあります。
ルーター発見などIPv6の基本機能でも重要な役割を持ちます。
IPv4とIPv6のループバックアドレス
自分自身のコンピューターを示す、
ループバックアドレス
にも違いがあります。
| IPv4 | IPv6 |
|---|---|
| 127.0.0.1が代表例 | ::1 |
開発環境などで利用する、
localhost
は、環境によってIPv4の127.0.0.1やIPv6の::1へ名前解決されます。
IPv6には「ブロードキャスト」がない
IPv4では、同じネットワーク内の複数端末へ一斉にデータを送る、
ブロードキャスト
があります。
一方、RFC 4291では、
IPv6にはブロードキャストアドレスがない
と規定されています。
IPv4でブロードキャストが担っていた用途は、IPv6では主に、
マルチキャスト
などによって実現します。
「マルチキャスト」とは?
マルチキャストは、特定のグループに参加している複数の通信相手へデータを送信する仕組みです。
IPv6では、
- ルーター発見
- 近隣ノードの発見
- 各種制御通信
などでマルチキャストが重要な役割を持っています。
つまり、
IPv4=ブロードキャストも利用
IPv6=ブロードキャストを廃止し、マルチキャスト等を利用
という違いがあります。
IPv4とIPv6ではヘッダーも違う
IPパケットには、通信に必要な情報を持つ、
IPヘッダー
があります。
IPv4の基本ヘッダーは最小20バイトで、オプションを含めることで長くなる構造です。
IPv6の基本ヘッダーは、
40バイト
です。
IPv6では基本ヘッダーを整理し、追加情報が必要な場合には、
拡張ヘッダー(Extension Header)
を基本ヘッダーと上位プロトコルの間へ追加する方式を採っています。
IPv4のヘッダーチェックサムとIPv6
IPv4のヘッダーには、
Header Checksum
があります。
IPv4ではTTLなどのヘッダー情報がルーターを通るたびに変化するため、チェックサムも再計算されます。
IPv6の基本ヘッダーには、このIPv4と同じヘッダーチェックサムフィールドはありません。
IPv6では基本ヘッダーを簡素化し、不要な中間処理を減らすよう設計されています。
IPv4とIPv6ではフラグメント処理も違う
ネットワークで送れるパケットサイズには、
MTU
という制限があります。
大きすぎるパケットを分割する処理を、
フラグメンテーション
と呼びます。
IPv4では、条件によって通信経路上のルーターがパケットを分割できます。
一方、RFC 8200ではIPv6について、
通信経路上のルーターはフラグメントを作らず、必要な場合は送信元ノードがフラグメントを作成する
仕組みになっています。
中継ルーターが処理できないサイズのパケットを受け取った場合には、ICMPv6のPacket Too Bigメッセージなどを利用して送信元へ通知します。
IPv6の「SLAAC」とは?
IPv6の特徴の一つが、
SLAAC
です。
SLAACは、
Stateless Address Autoconfiguration
の略です。
IPv6端末は、ルーターから通知されるネットワークプレフィックスなどを利用し、自分自身のIPv6アドレスを自動設定できます。
RFC 4862では、IPv6ホストが手動設定や追加サーバーを必要とせずにアドレスを自動生成できる仕組みが規定されています。
IPv6ならDHCPはいらない?
必ずしもそうではありません。
IPv6では、
- SLAAC
- DHCPv6
- SLAAC+DHCPv6
など複数の構成があります。
ネットワークの管理方針によって、DHCPv6を使ってIPv6アドレスや各種設定を管理する場合もあります。
したがって、
「IPv6=DHCP不要」
と覚えるのは正確ではありません。
DNSではIPv4とIPv6をどう区別する?
DNSにも違いがあります。
代表的には、
Aレコード=IPv4アドレス
AAAAレコード=IPv6アドレス
です。
たとえば同じWebサイトについて、DNSに、
- Aレコード
- AAAAレコード
の両方を登録し、IPv4・IPv6のどちらでも接続できるようにすることがあります。
なぜIPv6用は「AAAA」なの?
IPv4用のAレコードに対し、IPv6アドレスはIPv4の4倍のビット長である128ビットです。
そのためIPv6用のアドレスレコードは、
AAAA
と名付けられています。
「クアッドAレコード」と呼ばれることもあります。
IPv4とIPv6はそのまま通信できる?
IPv4とIPv6は別のIPプロトコルなので、そのまま同一形式のパケットとして直接置き換えられるわけではありません。
IPv4しか理解できない端末は、IPv6パケットをそのまま処理できません。
反対に、IPv6しか利用できない環境からIPv4のみのサービスへ接続する場合にも、何らかの互換・変換技術が必要になることがあります。
そのため長い移行期間を支えるために、
- デュアルスタック
- トンネリング
- プロトコル変換
などの技術が利用されています。
「デュアルスタック」とは?
デュアルスタックは、
IPv4とIPv6の両方を利用できる状態
です。
RFC 4213では、IPv4とIPv6双方を完全に実装する方式をDual IP Layer、一般にDual Stackとして説明しています。
たとえばパソコンが、
IPv4アドレス:192.168.1.20
と、
IPv6アドレス:2001:db8:….
の両方を持ち、接続先に応じてIPv4またはIPv6を利用する構成です。
「IPv4 over IPv6」とは?
日本のインターネット回線でよく見かけるのが、
IPv4 over IPv6
です。
これは、IPv6を利用したネットワーク基盤の上でIPv4通信も利用できるようにする技術の総称的な表現です。
具体的な方式はISPによって異なり、
- IPv4パケットをIPv6ネットワーク上で運ぶ
- 事業者側の設備でIPv4アドレスやポートを共有する
などの仕組みが利用されます。
したがって、
「IPv4 over IPv6=IPv4がIPv6そのものに変わる」
わけではありません。
IPv6にすればインターネットは必ず速くなる?
必ずしも速くなるとは限りません。
IPv4とIPv6では、
- 利用するネットワーク経路
- ISPの設備
- 混雑状況
- 接続方式
- 相手サーバー
- ルーター
などが異なる場合があります。
そのため、結果としてIPv6系の接続が速く感じられる場合もあります。
しかし、
「IPv6というプロトコル自体だから必ずIPv4より高速」
とはいえません。
日本で「IPv6にしたら速くなった」と言われる理由
日本の固定回線では、利用する接続サービスによって、IPv4通信とIPv6系通信が異なるネットワーク方式を利用することがあります。
その結果、従来のIPv4接続で混雑していた部分を回避でき、夜間などに速度が改善するケースがあります。
つまり、
IPv6アドレスが128ビットだから速い
というより、
利用する接続方式・経路・設備の違いによって速くなる場合がある
と理解したほうが正確です。
IPv6はIPv4より安全?
IPv6だから自動的に安全になるわけではありません。
IPv6にも、
- 脆弱なサービス
- 設定ミス
- 不正アクセス
- マルウェア
- フィッシング
などのセキュリティリスクがあります。
また、IPv4でNATを利用している家庭では、NATの動作によって外部から内部への新規通信がそのまま届きにくく見える場合があります。
IPv6ではグローバルに到達可能なアドレスを各端末が持てるため、
ファイアウォールで適切に外部通信を制御することが重要
です。
「NATがない=危険」「IPv6=安全」と単純に考えるのではなく、ファイアウォールを含むネットワーク全体の設定で判断する必要があります。
IPv6ならポート番号はなくなる?
なくなりません。
IPアドレスとポート番号は役割が異なるからです。
IPv6になっても、TCP・UDPなどではポート番号を使用します。
たとえばHTTPSなら、IPv6通信でも一般に、
TCP 443
などを利用します。
HTTP/3ならIPv6上でも、QUICがUDP 443を利用する構成があります。
つまり、
IPv4・IPv6=通信先のIPアドレス方式
TCP・UDPのポート番号=その通信先のサービスを区別
という関係は変わりません。
IPv6アドレスとポート番号を一緒に書く方法
IPv6アドレスでは「:」を多く使用します。
そのためURLでポート番号まで指定するときに、単純に、
2001:db8::1:8080
と書くと、どこまでがIPv6アドレスで、どこからがポート番号なのか分かりにくくなります。
そこでIPv6リテラルをURLで使用するときには、
[2001:db8::1]:8080
のようにIPv6アドレスを「[ ]」で囲みます。
IPv4とIPv6ではサブネットも違う?
どちらにも、ネットワーク部分を示す、
プレフィックス長
があります。
IPv4では、
192.168.1.0/24
のような表記がよく使われます。
IPv6では、
2001:db8:1234:5678::/64
のような表記があります。
一般的なIPv6 LANでは、/64のサブネットが広く利用されています。
ただし「IPv6なら必ずあらゆるネットワークが/64」という意味ではなく、アドレス割り当てや用途によってプレフィックス長は異なります。
IPv4とIPv6はどちらか一方を選ぶ?
現在は、
IPv4からIPv6へ一晩で全世界が切り替わる
という状況ではありません。
IPv4は現在も非常に多くのサービスで利用されています。
一方、IPv6も通信事業者、クラウド、Webサービス、家庭用回線などで広く利用されています。
そのため当面は、
IPv4とIPv6が共存する環境
を前提として考えることが重要です。
IPv4は将来すぐ使えなくなる?
「IPv6があるからIPv4が直ちに使えなくなる」ということではありません。
IANAの新規IPv4供給は枯渇していますが、既に世界中へ割り当てられているIPv4アドレスは現在も利用されています。
そのため実際の移行では、
- デュアルスタック
- IPv4 over IPv6
- NAT
- プロトコル変換
などを利用しながら、IPv4とIPv6を共存させています。
「IPv4・IPv6」で迷ったときの3秒判定
| こんな場合 | 答え |
|---|---|
| 192.168.1.10 | IPv4 |
| 203.0.113.10 | IPv4 |
| 2001:db8::1 | IPv6 |
| fe80::から始まる | IPv6のリンクローカルアドレス |
| 32ビット | IPv4 |
| 128ビット | IPv6 |
| ブロードキャストを利用 | IPv4 |
| ブロードキャストアドレスがない | IPv6 |
| SLAAC | IPv6 |
最も簡単に覚えるなら、
IPv4=「短い32ビットアドレス」
IPv6=「巨大な128ビットアドレス」
です。
「IPv4」を使った例文
- パソコンへIPv4アドレスが割り当てられた。
- IPv4のプライベートアドレスとして192.168.1.10を使用する。
- ルーターがIPv4のNATを行う。
- DNSのAレコードからIPv4アドレスを取得する。
- サーバーがIPv4とIPv6の両方に対応している。
「IPv6」を使った例文
- 回線がIPv6へ対応している。
- IPv6アドレスとして2001:db8::1を使用する。
- DNSのAAAAレコードからIPv6アドレスを取得する。
- IPv6ではSLAACを利用してアドレスを自動設定できる。
- 端末がIPv6のリンクローカルアドレスを持っている。
具体例で比較:家庭のパソコン
家庭のパソコンがIPv4で、
192.168.1.20
というプライベートIPアドレスを持っているとします。
インターネットへ通信するときは、家庭用ルーターのNAT・NAPTによって、外部向けのIPv4通信へ変換される場合があります。
一方IPv6では、ISPから割り当てられたIPv6プレフィックスを使って、パソコン自身がグローバルIPv6アドレスを持つ構成があります。
外部からの不要な接続は、ルーターのIPv6ファイアウォール等で制御します。
具体例で比較:Webサイトへ接続する
WebサイトのDNSに、
Aレコード
と、
AAAAレコード
の両方が設定されているとします。
端末がIPv4・IPv6の両方を利用できれば、OSやブラウザはネットワーク状況などに応じて接続方法を選択できます。
利用者は通常、
「今からIPv4を使う」
と毎回手動で選ぶ必要はありません。
よくある間違い1:「IPv6はIPv4のアドレスを長くしただけ」と思う
アドレス空間の拡大が最大の特徴ですが、それだけではありません。
ヘッダー構造、自動設定、ブロードキャスト、フラグメント処理などにも違いがあります。
よくある間違い2:「IPv6にすれば必ず通信速度が上がる」と思う
必ずではありません。
実際の速度はISP、接続方式、経路、混雑、相手サーバーなどによって変わります。
よくある間違い3:「IPv6ならセキュリティ対策は不要」と思う
IPv6でもファイアウォール、OS更新、安全な認証、暗号化などのセキュリティ対策が必要です。
よくある間違い4:「IPv6にはポート番号がない」と思う
IPv6でもTCP・UDPを利用する場合にはポート番号があります。
IPアドレスが128ビットになっても、ポート番号の役割はなくなりません。
よくある間違い5:「IPv6ならNATを絶対に使えない」と思う
IPv6向けのアドレス変換技術自体は存在します。
ただし、IPv4のようなアドレス節約を目的とした家庭内NATは、IPv6の巨大なアドレス空間では基本的に必要性が低くなります。
よくある間違い6:「IPv4とIPv6はそのまま完全互換」と思う
別のIPプロトコルです。
移行・共存のため、デュアルスタック、トンネル、変換技術などが利用されます。
よくある間違い7:「IPv4アドレスが枯渇したのでIPv4はもう使えない」と思う
IANAの未割り当てIPv4供給は枯渇していますが、既に割り当てられているIPv4アドレスは現在も世界中で使用されています。
「新しい空きアドレスが潤沢に存在しない」ことと、「IPv4そのものが利用不能」は別です。
「IPv4」と「IPv6」に関するよくある質問
Q1. IPv4とIPv6の一番簡単な違いは?
IPv4は32ビット、IPv6は128ビットのIPアドレスを使用することが最大の違いです。
Q2. IPv4とIPv6ではどちらが新しいですか?
IPv6です。
IPv6はIPv4の後継として設計されたInternet Protocolです。
Q3. IPv6にするとインターネットが速くなりますか?
速くなる場合はありますが、IPv6だから必ず高速になるわけではありません。
ISPの接続方式、混雑、経路などが大きく影響します。
Q4. IPv6ではNATは不要ですか?
IPv4のようなアドレス節約目的のNATは基本的に必要性が低くなります。
ただしアドレス変換技術そのものがIPv6に存在しないわけではありません。
Q5. IPv6ならIPアドレスがほぼ無限なのですか?
数学的に無限ではありませんが、128ビットなので約3.4×10の38乗という非常に巨大なアドレス空間があります。
Q6. IPv4サイトをIPv6回線から見られますか?
利用している回線・ISP・ルーター等が適切な共存・変換技術を提供していれば利用できます。
デュアルスタックやIPv4 over IPv6など、さまざまな方式があります。
Q7. IPv6ではDHCPを使いますか?
使う場合があります。
IPv6にはSLAACとDHCPv6があり、ネットワーク構成によって一方または両方を利用します。
Q8. IPv6ではブロードキャストを使いますか?
IPv6にはブロードキャストアドレスがありません。
その役割の多くをマルチキャストなどで実現します。
Q9. DNSのAとAAAAの違いは?
Aレコードは主にIPv4アドレス、AAAAレコードはIPv6アドレスを登録するために使用します。
Q10. 今後はIPv6だけ覚えればよいですか?
現時点ではIPv4とIPv6が共存しています。
ネットワークを理解するなら、両方の基本を知っておくことが重要です。
まとめ
「IPv4」と「IPv6」は、どちらもネットワーク上でデータを目的地へ届けるInternet Protocolですが、設計には大きな違いがあります。
| IPv4 | IPv6 |
|---|---|
| 32ビット | 128ビット |
| 約42.9億アドレス | 約3.4×10の38乗アドレス |
| 192.168.1.10 | 2001:db8::1 |
| 「.」で区切る | 「:」で区切る |
| ブロードキャストあり | ブロードキャストなし |
| アドレス節約のNATが広く利用 | アドレス節約目的のNATへの依存を減らせる |
| DHCPv4など | SLAAC・DHCPv6など |
最も簡単な覚え方は、
IPv4=「32ビットの従来型IP」
IPv6=「128ビットの後継IP」
です。
IPv4ではアドレス空間が約43億しかないため、インターネットの急速な拡大に伴ってアドレス不足が大きな問題になりました。
その対策として、
- プライベートIPアドレス
- NAT・NAPT
- アドレス再利用
などが広く使われています。
IPv6ではアドレスを128ビットへ拡大し、非常に巨大なアドレス空間を確保しました。
さらに、
- SLAACによる自動設定
- ブロードキャストの廃止
- 拡張ヘッダー
- 中継ルーターでのフラグメント処理の廃止
など、IPv4から複数の変更が行われています。
ただし、
IPv6=必ず速い
IPv6=必ず安全
IPv6=IPv4がもう不要
という意味ではありません。
現在はIPv4とIPv6の移行・共存期間であり、デュアルスタックやIPv4 over IPv6などの技術によって両者が利用されています。
ネットワーク用語を整理するなら、
IPv4・IPv6=IPアドレスとパケット配送の方式
TCP・UDP=その上でデータを運ぶ方法
ポート番号=通信先のサービスを区別
DNS=名前からIPv4・IPv6アドレスなどを検索
と考えると、これまでのネットワーク用語の関係も理解しやすくなります。
参考リンク・出典
-
IETF / RFC Editor「RFC 791: Internet Protocol」
― IPv4の基本仕様。IPv4のパケット、アドレス、ルーティング、フラグメンテーション、ヘッダーチェックサム等を規定 -
IETF / RFC Editor「RFC 8200: Internet Protocol, Version 6 (IPv6) Specification」
― 現在のIPv6基本仕様。IPv6をIPv4の後継として位置付け、アドレス長を32ビットから128ビットへ拡張したこと、基本ヘッダー、拡張ヘッダー、フラグメント処理等を規定 -
IETF / RFC Editor「RFC 4291: IP Version 6 Addressing Architecture」
― IPv6の128ビットアドレス、ユニキャスト・エニーキャスト・マルチキャスト、アドレス表記、リンクローカルアドレス、IPv6にブロードキャストが存在しないことなどを規定 -
IETF / RFC Editor「RFC 4862: IPv6 Stateless Address Autoconfiguration」
― IPv6のステートレスアドレス自動設定を規定。リンクローカルアドレス生成、Router Advertisementを利用した自動設定、重複アドレス検出等を解説 -
IETF / RFC Editor「RFC 4213: Basic Transition Mechanisms for IPv6 Hosts and Routers」
― IPv4・IPv6共存のための基本技術として、IPv4とIPv6双方を実装するデュアルスタックやトンネリング等を説明 -
IETF / RFC Editor「RFC 1918: Address Allocation for Private Internets」
― IPv4のプライベートアドレス空間として10.0.0.0/8、172.16.0.0/12、192.168.0.0/16を規定 -
IETF / RFC Editor「RFC 4193: Unique Local IPv6 Unicast Addresses」
― IPv6のローカル通信用アドレスとしてFC00::/7のUnique Local Addressを規定 -
IANA「Number Resource Allocation Data」
― IPv4のIANA供給が枯渇していること、およびRIRへのIPv6アドレス配分状況を掲載
※本記事では一般ユーザー向けに、「IPv4=32ビット」「IPv6=128ビット」という最大の違いを軸に整理しています。実際にはアドレス長だけでなく、ヘッダー構造、自動設定、アドレス種別、フラグメント処理などにも違いがあります。
※「IPv4アドレス枯渇」とは、すでに割り当てられて利用中のIPv4アドレスまで消滅したという意味ではありません。IANAなどが新たに自由に配分できるIPv4アドレス空間が枯渇しているという意味で理解する必要があります。
※IPv6を利用したからといって、通信速度・セキュリティが必ずIPv4より向上するとは限りません。実際の性能や安全性は、ISP、経路、ネットワーク設備、ファイアウォール、アプリケーション等にも左右されます。
※IPv6ではIPv4のアドレス節約を目的としたNATへの依存を減らせますが、IPv6でもファイアウォールなどによる適切なアクセス制御は必要です。
※IPv4・IPv6の移行技術は多数存在します。実際の回線で「IPv4 over IPv6」等を利用するときは、契約しているISP・ルーター・サービス事業者の仕様も確認してください。
