行政文書や会社の資料では、「規則を制定する」「計画を策定する」といった表現がよく使われます。どちらも、何かを考えて正式に定める場面で使われるため、「社内方針を制定する」と「社内方針を策定する」のどちらが自然なのか迷うことがあります。
結論からいうと、「制定」は法律・条例・規則などのルールを正式に定めること、「策定」は計画・方針・戦略などの内容を検討し、形にして定めることです。「制定」は定められたものの規範性や正式性に重点があり、「策定」は目的を実現するための案を練り、具体的な計画にまとめる過程に重点があります。
ただし、「指針」「ガイドライン」「方針」のように、制定と策定の両方が使われる対象もあります。その場合は、守るべきルールとして正式に設けるのか、将来の行動を導く内容を検討してまとめるのかによって表現が変わります。
この記事では、「制定」と「策定」の意味、決定的な違い、法律・社内規程・事業計画・ガイドラインなどでの使い分けを、比較表と具体例でわかりやすく解説します。「作成」「立案」「決定」「設定」との違いも整理するので、公用文やビジネス文書を作る際の判断に役立ててください。
結論:「制定」はルールを正式に定め、「策定」は計画を練って定める
「制定」と「策定」は、どちらも新しい内容を定める行為ですが、中心となる対象と目的が異なります。
- 制定:法律、条例、規則、規程、制度などを正式なルールとして定める
- 策定:計画、方針、戦略、指針などの内容を検討し、実行できる形にまとめて定める
典型的な組み合わせは、「法律を制定する」と「事業計画を策定する」です。法律は権限のある機関が所定の手続を経て社会のルールとして定めるため「制定」、事業計画は目標、期間、手段、予算などを検討して具体化するため「策定」が自然です。
一言で覚えるなら、守らせるための決まりを設けるなら制定、進むための道筋を組み立てるなら策定です。ただし、「制定=必ず強制力がある」「策定=単なる案にすぎない」と考えるのは正確ではありません。策定された計画が組織の正式な行動基準になることもあれば、制定された規程が組織内部だけに適用されることもあります。
大切なのは、対象となる文書の名称だけでなく、その文書が「何を定めるものか」を見ることです。権利・義務・手続・禁止事項などのルールを定めるなら制定、目標の達成方法や将来の方向性をまとめるなら策定が基本になります。
【徹底比較】「制定」と「策定」の意味・対象・使い方
| 比較項目 | 制定 | 策定 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 法令や規則などを正式に定める | 計画や方針を検討し、具体的に定める |
| 意味の重点 | 正式なルールとして成立させること | 目的に向けた内容を練り、形にすること |
| 代表的な対象 | 法律、条例、規則、規程、制度、基準 | 計画、方針、戦略、指針、構想、ロードマップ |
| 典型的な表現 | 法律制定、条例制定、規程制定 | 計画策定、方針策定、戦略策定 |
| 主な役割 | 行為や手続の基準を示す | 目標と実現方法を示す |
| 重視される点 | 権限、正式な手続、規範性 | 調査、分析、検討、具体化 |
| 時間の向き | 定めた後の行為を規律する | 将来の行動や達成までの道筋を示す |
| 行政での例 | 条例を制定する | 地域防災計画を策定する |
| 会社での例 | 情報管理規程を制定する | 中期経営計画を策定する |
| 英語の目安 | enact、establish | formulate、develop |
比較表は基本的な傾向を示したものです。実際には「基準を制定する」と「基準を策定する」、「指針を制定する」と「指針を策定する」の両方が使われます。このような対象では、完成した文書を正式な決まりとして成立させる側面を強調するなら「制定」、内容を調査・検討して組み立てる側面を強調するなら「策定」が選ばれやすくなります。
また、官公庁、自治体、会社などが文書の正式名称や手続名を定めている場合は、その表記を優先します。一般的には策定が自然な計画でも、根拠法令が「計画を定める」としていたり、組織内の規程が「計画の制定」と呼んでいたりする場合があります。引用や正式な通知では、発行主体の用語を勝手に置き換えないことが重要です。
「制定」の意味とは
権限と手続に基づいて正式な決まりを設ける
「制定」は、法律や規則などを新たに定めることです。「制」には物事の形や秩序を整える意味があり、「定」には内容を確定する意味があります。そのため、単に文章を作るだけではなく、権限のある主体が必要な手続を経て、正式なルールとして成立させるニュアンスを持ちます。
国会が法律を定める、地方公共団体が条例を定める、会社が就業規則や情報管理規程を設けるといった場面が代表例です。内閣法制局の「法律ができるまで」では、法律案の原案作成、関係省庁との調整、内閣法制局の審査、閣議決定、国会での審議、成立、公布という過程が示されています。法律の制定は、単なる文案作成ではなく、所定の権限と手続を伴うことがわかります。
なお、「制定」は新しい法令や規則を設けるときに使うのが基本です。すでに存在する法律や規則の一部を変える場合は、通常「改正」といいます。全面的な見直しであっても、既存の法令を残したまま内容を改める手続なら「全部改正」と呼ぶことがあります。
制定されたものは行為の基準になる
制定の対象となるものは、何をしてよいか、何をしてはいけないか、どの手続を取るか、誰に権限や責任があるかなどを定めることが多く、制定後の行為を規律する役割を持ちます。
- 法律:社会全体に関わる権利や義務、制度を定める
- 条例:地方公共団体の事務や地域のルールを定める
- 社内規程:組織内部の権限、手続、管理方法を定める
- 大会規則:参加資格、競技方法、禁止事項を定める
岡山市の公式ページでは、条例は地方公共団体が議会の議決を経て制定する法の一形態であると説明されています。この例からも、「制定」が正式な権限と手続に結びつく言葉であることがわかります。
「制定」を使う代表例
- 新たな法律を制定し、事業者の義務を明確にする
- 地域の実情に合わせた条例を制定する
- 個人情報の取扱規程を制定する
- 新制度の運用に必要な細則を制定する
- 表彰制度を新設し、選考規則を制定する
- 安全確保のための社内基準を制定する
これらに共通するのは、関係者が従うべきルールや判断基準を正式に設ける点です。「文書が完成した」だけではなく、承認や議決などを経て、組織の決まりとして位置づけられることに焦点があります。
「制定」という言葉そのものの意味や使い方については、「制定」とは?意味・読み方・使い方をわかりやすく解説も参考にしてください。
「策定」の意味とは
目的を達成するための内容を考え、具体化する
「策定」は、計画や方針などを考えて定めることです。「策」には、目的を達成するための手段、計略、案という意味があります。そのため、「策定」には、現状を調査し、課題を分析し、目標や手段を選び、実行可能な内容へまとめるという検討過程が含まれます。
単に日付や数値を決めるのではなく、「何を目指し、そのために何をするか」を体系化する場面に向いています。行政では基本計画、防災計画、地域福祉計画、ガイドラインなど、会社では経営計画、事業戦略、販売方針、人材育成計画などに使われます。
厚生労働省は、検討会の報告や審議会での議論を経て、個人事業者等の健康管理に関するガイドラインを「策定」したと説明しています。この用例では、実態把握、対策の検討、関係者の議論を踏まえ、取組の方向をまとめる過程が「策定」という語に表れています。
計画策定には調査・合意形成・具体化が含まれる
計画を策定する際には、一般に次のような作業が行われます。
- 現状や課題を調査する
- 目的と達成目標を定める
- 複数の手段を比較する
- 関係者の意見を調整する
- 実施項目、担当、期限、予算を具体化する
- 案を審議し、正式に決定する
すべての策定にこの全工程が必要なわけではありませんが、「策定」は結果だけでなく、内容を練り上げるプロセスを想起させます。単にファイルへ文字を入力する「作成」より、目的に沿った構想や判断が強く含まれる言葉です。
「策定」を使う代表例
- 地域の課題を踏まえて防災計画を策定する
- 今後5年間の中期経営計画を策定する
- 新市場への参入戦略を策定する
- 情報システムの運用方針を策定する
- 従業員の人材育成計画を策定する
- 事故防止のためのガイドラインを策定する
いずれも、目標や課題を踏まえ、将来の行動を導く内容をまとめる例です。策定された計画や方針には、必要に応じて評価指標や見直し時期を設けます。計画を作って終わりにせず、実行と検証につなげることが重要です。
決定的な違いは「規範を設ける」のか「道筋を組み立てる」のか
制定は「守るべき基準」を生み出す
制定の中心は、関係者の行為を規律するルールを正式に設けることです。誰が何を行えるか、どの手続が必要か、違反した場合にどう扱うかなど、判断や行動の基準を示します。
たとえば、会社が「情報セキュリティ規程」を制定する場合、アクセス権限、機密情報の取扱い、事故発生時の報告、違反時の措置などを定めます。これは将来像を描く計画ではなく、従業員が守るべきルールを作る行為です。
策定は「目標への道筋」を形にする
策定の中心は、目的を実現するための方向性や手段を検討し、実行可能な道筋へまとめることです。どこを目指すか、何を優先するか、いつまでに何を行うかを示します。
同じ会社が「情報セキュリティ強化計画」を策定する場合、現状の課題、3年間の目標、システム更新、研修、予算、実施時期などをまとめます。規程が日常的な行為の基準であるのに対し、計画は現状から目標へ進むための工程表です。
同じ案件で両方を使うことがある
制定と策定は、どちらか一方しか行わないとは限りません。一つの施策で両方が必要になることがあります。
例:「会社は情報セキュリティ基本方針を策定し、その方針を実行するために情報管理規程を制定した。」
この例では、まず組織が目指す方向や基本的な考え方を方針として策定し、その後、具体的な権限や手続を規程として制定しています。方針が「どこを目指すか」を示し、規程が「何を守るか」を示す関係です。
実務では、案を組み立てる作業と、正式に決める手続も区別する必要があります。原案を作る行為については「起案」と「立案」の違い、組織として決める行為と権限者が承認する行為については「決定」と「決裁」の違いを確認すると、制定・策定までの流れを整理しやすくなります。
場面別の使い分け
法律・条例・規則
法律、条例、規則などを新しく設ける場合は、「制定」を使います。
- 国会で法律を制定する
- 地方公共団体が条例を制定する
- 委員会の運営規則を制定する
これらは、権限のある機関が正式な手続を経てルールを定めるものです。「法律を策定する」という表現は、法律案の内容を検討する段階を比喩的に述べる場合には理解できますが、法律そのものを正式に成立させる意味では「制定」が適切です。
また、新たに設けるなら「制定」、既存の内容を変えるなら「改正」、効力を持たせて実際に動かし始めるなら「施行」です。「法律を策定し、制定し、施行する」と機械的に並べるのではなく、法律案の立案、法律の制定、公布、施行という正式な過程に合わせて表現します。
社内規程・規則・要領
会社が就業規則、経理規程、文書管理規程などを新設する場合も、「制定」が自然です。社内の権限や手続、禁止事項、責任などを定め、関係者が従う正式なルールにするためです。
例:「テレワークの恒常的な運用に向け、在宅勤務規程を制定しました。」
ただし、「要領」「マニュアル」「ガイドライン」は、組織によって位置づけが異なります。規程体系上の正式な規範として新設するなら「制定」、業務の進め方を検討して文書にまとめるなら「策定」や「作成」が使われます。文書管理規程で用語が定義されている場合は、それに従いましょう。
基本計画・事業計画・行動計画
行政の基本計画や会社の事業計画は、通常「策定」を使います。計画は、現状分析、目標、具体的施策、期間、役割分担、評価方法などを検討してまとめるものだからです。
環境省の「災害廃棄物処理計画策定・点検ガイドライン」でも、計画骨子を作り、技術資料を参照しながら詳細を記載する流れが示されています。単に名称を決めるのではなく、実際に機能する計画へ組み立てることが「策定」です。
例:「地域住民へのアンケート結果を踏まえ、5年間の地域福祉計画を策定します。」
方針・戦略・構想
方針、戦略、構想は「策定」と相性のよい言葉です。組織が目指す方向、重点分野、資源の配分、実現手段などを考えてまとめる性質があるためです。
- 経営方針を策定する
- 販売戦略を策定する
- 都市再生構想を策定する
- 危機対応方針を策定する
一方、方針を社内の正式な規範として定めることに焦点を当て、「基本方針を制定する」と表現する組織もあります。表題にする際は、方針の性質と過去の文書体系を確認してください。
基準・指針・ガイドライン
基準、指針、ガイドラインは、制定と策定のどちらも使われるため注意が必要です。
- 審査の合否を決める正式な基準を設ける――基準を制定する
- 専門家の検討を踏まえ、取組の方向をまとめる――指針を策定する
- 関係者が守るべき統一ルールを定める――ガイドラインを制定する
- 望ましい対応方法を検討して示す――ガイドラインを策定する
強制力の有無だけで完全に分けることはできません。発行主体が、その文書を規程体系のどこに位置づけ、どのような手続で成立させるかを確認する必要があります。
公的機関の用例から見る違い
内閣法制局が示す法律の制定過程
内閣法制局は、内閣提出法律案について、所管省庁による原案作成、関係省庁との意見調整、審査、閣議決定、国会審議、成立、公布までの流れを示しています。各省庁が施策目標を実現するために、新しい法律の制定や既存法律の改正・廃止の方針を決め、法律案を作成するという説明です。
ここでは、「施策の目標や方針を検討すること」と、「法律という正式な規範を成立させること」が別の段階として存在します。内容を考える作業だけで法律が制定されるわけではなく、法的な権限と手続を経て成立する点が重要です。
厚生労働省によるガイドラインの策定
厚生労働省の「個人事業者等の健康管理に関するガイドライン」は、災害の実態把握、安全衛生対策の検討、検討会の報告、審議会での議論を踏まえて策定されています。
この用例では、さまざまな情報と意見を基に、関係者が行うべき事項や配慮すべき事項を体系的にまとめる行為を「策定」と呼んでいます。検討の積み重ねによって内容を形にするという、策定の特徴がよく表れています。
デジタル庁が示す「策定日」と「改定日」
デジタル庁の「デジタル社会推進標準ガイドライン」では、個々の文書に「策定日または最終改定日」が示されています。初めて内容をまとめて定めた日が策定日、その後に内容を見直した日が改定日です。
この表記から、策定は初めて計画や方針を形にする行為、改定は既存内容を見直して定め直す行為という時間的な違いも確認できます。初版を作るときと、既存版を更新するときで言葉を分けると、文書の履歴が明確になります。
「作成」「立案」「決定」「設定」との違い
作成:文書や資料などを作ること
「作成」は、文書、表、資料、データ、図面などを作ることを広く表します。内容を考える場合にも、決まった内容を形式に沿って書き表す場合にも使える一般的な言葉です。
たとえば、「事業計画を策定する」は目標や手段を検討して計画を定めること、「事業計画書を作成する」はその内容を文書としてまとめることに焦点があります。実際には同じ担当者が連続して行うこともありますが、意味は同じではありません。
立案:計画や案の骨組みを考えること
「立案」は、目的を実現するための案や計画を考えることです。策定と近い言葉ですが、立案は正式決定前の案を作る段階を指しやすく、策定は検討から正式な内容としてまとめるところまでを含んで使われる傾向があります。
例:「担当部署が基本計画を立案し、審議会の意見を踏まえて自治体が計画を策定した。」
ただし、行政機関によっては、法律案を作る一連の作業を「立案」と呼びます。用語が指す範囲は組織の手続によって異なるため、規程上の定義を確認しましょう。
「立案」と「策定」の違いをさらに詳しく確認したい場合は、「立案」と「策定」の違いも参考にしてください。
決定:複数の選択肢から最終的に決めること
「決定」は、案や選択肢について最終的に意思を定めることです。策定が内容を組み立てる一連の作業を表すのに対し、決定はその内容を採用する判断に焦点があります。
たとえば、担当部署が計画案を策定し、経営会議が最終案を決定し、社長が決裁するという流れが考えられます。「策定した」だけで正式承認まで終わった意味になるかは、組織の用語法によって異なります。
設定:条件や数値などを具体的に決めること
「設定」は、目標値、期限、条件、機器の動作などを具体的に決めることです。「売上目標を設定する」「パスワードを設定する」「適用期間を設定する」のように使います。
計画策定の中で、数値目標や期限を設定することがあります。つまり、策定が計画全体を組み立てる行為であるのに対し、設定は計画を構成する個別の数値や条件を決める行為です。
「策定」と「設定」の違いをさらに詳しく確認したい場合は、「策定」と「設定」の違いも参考にしてください。
よくある間違いと注意点
「事業計画を制定する」と書く
事業計画は、目標と実現方法を検討してまとめるものなので、通常は「策定」が自然です。「制定」でも正式に定めたことは伝わりますが、法律や規則のような規範を設ける印象が強くなります。
不自然になりやすい例:来年度の事業計画を制定しました。
自然な例:来年度の事業計画を策定しました。
「法律を策定する」と正式な成立まで表す
法律案の内容を練る意味で「法案を策定する」という用例はありますが、国会の議決を経て法律を成立させることは「制定」です。案の作成段階と、法律として成立する段階を区別しましょう。
例:「有識者会議の提言を踏まえて法案を立案し、国会の審議を経て新法が制定された。」
「策定=案を作っただけ」と考える
策定には検討過程が含まれますが、必ずしも未確定の案を意味するわけではありません。「政府が基本計画を策定した」といえば、通常は必要な検討や決定を経て、正式な計画としてまとめたことを表します。
未確定であることを示したい場合は、「素案を作成した」「計画案を取りまとめた」「策定中である」と明示します。策定済みなのか、策定に向けて検討中なのかを分けることが大切です。
「制定日」「策定日」「施行日」を混同する
規程を制定した日と、実際に運用を始める施行日は異なることがあります。また、計画の策定日と、計画期間の開始日も同じとは限りません。
- 制定日:規程などを正式に定めた日
- 策定日:計画や方針を取りまとめて定めた日
- 施行日:法令や規程の効力を発生させる日
- 適用開始日:新しい内容を特定の対象へ当てはめ始める日
通知や文書の履歴欄では、これらの日付を正確に分けて記載しましょう。
正式名称を確認せず言い換える
官公庁の資料や社内規程を紹介するとき、原文が「ガイドラインを策定」としているのに、独自判断で「制定」と言い換えると、手続や位置づけを誤って伝える可能性があります。
一般的な言葉の使い分けは、自分で文章を書く際の判断基準です。他者が定めた文書や制度を引用する場合は、正式な表記を確認し、原文に合わせることが基本です。
ビジネス文書で使える例文
「制定」の例文
- 新しい情報管理規程を制定し、10月1日から施行します。
- 法令への適合を確保するため、社内規則を制定しました。
- 取締役会の承認を経て、リスク管理規程を制定します。
- 条例の制定に向け、住民から意見を募集します。
- 委員会の設置に伴い、運営規則を新たに制定しました。
- 制定された基準に従い、申請内容を審査します。
「策定」の例文
- 市場調査の結果を踏まえ、3年間の販売戦略を策定します。
- 災害時の事業継続計画を策定し、定期的に訓練を行います。
- 関係部署と協議し、新しい業務改善方針を策定しました。
- 計画策定に先立ち、従業員へのアンケートを実施します。
- 数値目標と担当部署を明記した行動計画を策定してください。
- 専門家の意見を取り入れて安全ガイドラインを策定しました。
両方を使い分ける例文
- 環境基本計画を策定し、その実施に必要な管理規程を制定します。
- 人材育成方針の策定後、研修運営規則を制定しました。
- 自治体は防災計画を策定するとともに、避難所運営に関する条例を制定しました。
- 情報セキュリティ戦略を策定し、アクセス権限に関する細則を制定します。
一つの施策の中でも、目標や道筋をまとめる部分には「策定」、守るべきルールを設ける部分には「制定」を使えます。対象を明確に書くことで、文書の役割と手続の違いが伝わります。
実務で迷わないための判断手順
ステップ1:作るものの役割を確認する
まず、その文書が「関係者の行為を規律するもの」か、「将来の目標と行動を示すもの」かを確認します。前者なら制定、後者なら策定が有力です。
- 権利、義務、権限、禁止事項、手続を定める――制定
- 目標、期間、施策、担当、予算、評価方法を定める――策定
ステップ2:手続のどの段階を表すか確認する
内容を考えている段階なのか、案を文書にしている段階なのか、組織として正式に成立させる段階なのかを区別します。
- 案の骨組みを考える――立案
- 内容を検討して計画にまとめる――策定
- 文書や資料として形にする――作成
- 正式な規範として設ける――制定
- 案を最終的に採用する――決定
一つの業務に複数の行為が含まれることもあります。「担当者が案を作成し、委員会で計画を策定し、経営会議が決定する」のように、主体と段階を対応させましょう。
ステップ3:根拠文書と慣例を確認する
法令、条例、社内の文書管理規程、過去の通知などを調べ、正式な用語を確認します。特に、基準・指針・ガイドラインは制定と策定の両方が使われるため、一般論だけで決めないことが大切です。
ステップ4:日付と効力を明記する
制定・策定した事実だけでなく、いつ決まり、いつから実施され、誰が対象になるのかを示します。規程なら制定日と施行日、計画なら策定日と計画期間、ガイドラインなら公表日と適用範囲を明記すると、読み手が行動しやすくなります。
3秒で判断するチェックリスト
急いで言葉を選ぶときは、次の基準で確認してください。
- 法律・条例・規則を新しく設ける? → 制定
- 社内の権限・手続・禁止事項を定める? → 制定
- 事業計画・基本計画をまとめる? → 策定
- 方針・戦略・構想を具体化する? → 策定
- 文書そのものを作る作業を指す? → 作成
- 正式決定前の案を考える? → 立案
- 数値や条件を個別に決める? → 設定
基準、指針、ガイドラインの場合は、3秒で断定せず、規範として正式に設けるのか、検討した内容を方針としてまとめるのかを確認しましょう。発行主体の正式な表記がある場合は、それに従います。
「制定」と「策定」に関するFAQ
Q1. 「方針を制定する」と「方針を策定する」はどちらが正しいですか?
一般には「方針を策定する」が自然です。組織が目指す方向や行動の考え方を検討してまとめるためです。ただし、その方針を規程体系上の正式な規範として設けることに重点を置く場合や、組織が「方針制定」と呼んでいる場合は「制定」も使われます。
Q2. 「計画を制定する」は間違いですか?
必ずしも間違いとはいえませんが、通常は「計画を策定する」が自然です。計画は目標や実現手段を検討して組み立てるものだからです。法令や組織規程で「計画を制定する」と定められている場合は、その正式表記に従います。
Q3. 「ガイドラインを制定する」と「策定する」はどう使い分けますか?
統一的に守るべき基準として正式に設ける側面を強調するなら「制定」、専門的な検討を重ねて望ましい対応方針をまとめる側面を強調するなら「策定」が使われやすくなります。実際には両方の用例があるため、発行主体の文書体系と正式名称を確認してください。
Q4. 法律は誰が「制定」するのですか?
日本の法律は、原則として国会の議決によって成立します。内閣提出法律案の場合、各省庁で原案が作られ、内閣法制局の審査や閣議決定を経て国会へ提出されます。国会で可決・成立した後、公布され、定められた日から施行されます。
Q5. 「制定」と「設定」は何が違いますか?
制定は法律や規則などのルールを正式に定めること、設定は数値、条件、状態などを具体的に決めることです。「人事評価規程を制定し、評価期間と目標値を設定する」のように使い分けられます。
Q6. 「策定」と「作成」は同じですか?
同じではありません。策定は目的や課題を踏まえて計画・方針の内容を検討し、定めることです。作成は文書や資料などを作る行為を広く表します。「事業計画を策定し、その内容を説明する資料を作成する」と区別できます。
Q7. 既存の規程を見直す場合も「制定」ですか?
既存の規程の一部や全部を改める場合は、通常「改正」を使います。新しい規程を初めて設けるなら制定です。旧規程を廃止し、別の規程を新設する場合は、「旧規程を廃止し、新規程を制定する」と表現できます。
Q8. 策定した計画は必ず実行しなければなりませんか?
計画の法的な拘束力や実行義務は、その根拠法令や組織内での位置づけによって異なります。「策定」という言葉自体が、強制力の有無を決めるわけではありません。計画の対象者、根拠、承認手続、進捗管理の方法を確認する必要があります。
まとめ
「制定」と「策定」は、どちらも何かを定める場面で使われますが、対象と焦点が異なります。
- 制定:法律・条例・規則・規程などを正式なルールとして設ける
- 策定:計画・方針・戦略などの内容を検討し、実行できる形にまとめる
典型的には「法律を制定する」「事業計画を策定する」と覚えるとよいでしょう。制定は権限や正式な手続を経て、関係者の行為を規律する基準を生み出すことに重点があります。策定は現状や課題を分析し、目標と実現手段を組み立て、将来の道筋を明確にすることに重点があります。
ただし、基準、指針、方針、ガイドラインのように、制定と策定の両方が使われる対象もあります。この場合は、規範として正式に設ける側面を強調するのか、内容を検討してまとめる側面を強調するのかを確認します。発行主体の正式な用語や文書管理上の位置づけがある場合は、その表記を優先してください。
迷ったときは、「関係者が守る決まりを設けるなら制定」「目標へ進む道筋を組み立てるなら策定」と置き換えてみましょう。さらに、案を考える「立案」、文書を形にする「作成」、最終的に意思を定める「決定」、数値や条件を決める「設定」と区別すれば、行政文書やビジネス文書をより正確に書けます。
参考資料・出典
- 内閣法制局「法律ができるまで」
- 岡山市「条例と規則はどのような性質のものですか?」
- 厚生労働省「個人事業者等の健康管理に関するガイドラインの策定について」
- デジタル庁「デジタル社会推進標準ガイドライン」
※外部サイトの内容やURLは、公開後に変更・移動・削除される場合があります。
