「60歳になって給料が下がったら給付金をもらえる?」「定年退職後に失業保険を受けてから再就職した場合も対象になる?」「再就職手当との違いは?」など、60歳以降の働き方について考える際に気になるのが、雇用保険の高年齢雇用継続給付です。
高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」という二つの種類があります。
名前がよく似ているため、同じ給付金だと思われがちですが、支給される条件や期間などが異なります。
結論からいうと、「高年齢雇用継続基本給付金」は基本手当を受給せずに60歳以降も働く人のための給付、「高年齢再就職給付金」は基本手当を受給した後、60歳以降に再就職する人のための給付です。
例えば、60歳で定年を迎えた後、同じ会社に再雇用され、雇用保険の基本手当を受けることなく働き続ける場合は、高年齢雇用継続基本給付金が関係します。
一方、60歳以降に離職して基本手当を受け取り、その後、条件を満たして別の会社へ再就職した場合は、高年齢再就職給付金が関係します。
ただし、どちらも給与が下がれば無条件に支給されるわけではありません。原則として、60歳以上65歳未満であることや、雇用保険の加入期間、賃金の低下率など、所定の条件を満たす必要があります。
この記事では、二つの給付金の違いを比較表で整理し、それぞれの支給条件、2025年4月からの給付率の変更、2026年8月からの支給限度額、具体的な計算例、再就職手当との関係、申請方法まで詳しく解説します。
- 「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の違い【結論】
- 【徹底比較】二つの給付金の違いを比較表で整理
- 「高年齢雇用継続基本給付金」とは?意味と支給条件
- 「高年齢再就職給付金」とは?意味と支給条件
- 給付を受けられる期間の違い
- 【2025年4月改正】高年齢雇用継続給付は最大15%から10%へ
- 【2026年8月改定】支給限度額はいくら?
- 【計算例】月給30万円から18万円に下がった場合
- 賃金の低下率が70%だった場合は?
- 「再就職手当」と「高年齢再就職給付金」はどちらも受給できる?
- 高年齢雇用継続給付と年金の関係
- 【実践】場面別に二つの給付金を使い分ける
- 申請方法と必要書類の違い
- 申請前に確認したい5つのポイント
- よくある間違いと注意点
- 「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の3秒判定
- 例文で使い分けを確認
- FAQ|二つの高年齢雇用継続給付のよくある質問
- Q1. 二つの給付金の最も大きな違いは何ですか?
- Q2. 60歳で定年を迎え、同じ会社に再雇用された場合はどちらですか?
- Q3. 60歳以降に別の会社へ転職した場合は、必ず高年齢再就職給付金になりますか?
- Q4. 高年齢再就職給付金には、基本手当の残日数が何日必要ですか?
- Q5. 2026年の給付率は最大何%ですか?
- Q6. 2026年8月からの支給限度額はいくらですか?
- Q7. 賃金が75%未満に下がれば、必ず支給されますか?
- Q8. 高年齢再就職給付金と再就職手当は同時に受け取れますか?
- Q9. 高年齢雇用継続給付は、65歳を過ぎても受給できますか?
- Q10. 高年齢雇用継続給付を受けると、年金は減りますか?
- Q11. 給付金には所得税がかかりますか?
- Q12. 申請方法がわからない場合は、どこに相談すればよいですか?
- まとめ|基本手当を受けたかどうかが、二つの給付金の大きな違い
- 参考資料・出典
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の違い【結論】
二つの制度を区別する際に、最も重要なのは、離職後に雇用保険の基本手当を受け取ったかどうかです。
- 高年齢雇用継続基本給付金:基本手当などを受けず、原則として60歳到達時などの賃金に比べて75%未満に賃金が低下した状態で働き続ける、一定の60歳以上65歳未満の人を対象とする給付。
- 高年齢再就職給付金:基本手当を受給した後、60歳以降に再就職し、基本手当の支給残日数や再就職後の賃金低下などの条件を満たした人を対象とする給付。
例えば、同じ会社に継続して勤務する場合や、基本手当を受けずに転職する場合は、高年齢雇用継続基本給付金が関係することがあります。
一方、基本手当を受けてから再就職する場合は、高年齢再就職給付金が関係します。
なお、高年齢再就職給付金には、再就職日の前日に基本手当の支給残日数が100日以上あることなど、独自の支給条件があります。
【徹底比較】二つの給付金の違いを比較表で整理
| 比較項目 | 高年齢雇用継続基本給付金 | 高年齢再就職給付金 |
|---|---|---|
| 主な対象者 | 基本手当を受けず、60歳以降も働く人 | 基本手当を受けた後、60歳以降に再就職した人 |
| 年齢 | 原則60歳以上65歳未満 | 原則60歳以上65歳未満 |
| 雇用保険の加入期間 | 原則として被保険者であった期間が5年以上 | 基本手当の算定基礎期間が5年以上 |
| 基本手当の受給 | 原則として受給していないこと | 受給していること |
| 賃金の低下 | 60歳到達時等の賃金の75%未満 | 基本手当の算定基礎となった賃金日額の30倍に相当する額の75%未満 |
| 基本手当の支給残日数 | 原則として要件にならない | 再就職日の前日に100日以上必要 |
| 安定した職業への就職 | 再就職を必須としない | 1年を超えて雇用されることが確実と認められることなどが必要 |
| 支給対象期間 | 原則として60歳到達月等から65歳到達月まで | 支給残日数に応じて最長1年または2年。ただし65歳到達月まで |
| 2025年4月以降の給付率 | 新しい支給率が適用される人は賃金の最大10% | 新しい支給率が適用される人は賃金の最大10% |
| 再就職手当との関係 | 基本手当を受けていないことなどが前提 | 同一の就職について再就職手当と併給できない |
二つの給付金は、どちらも高年齢者の雇用の継続を支援する制度ですが、離職後に基本手当を受けたかどうかによって、対象となる給付金が異なります。
「高年齢雇用継続基本給付金」とは?意味と支給条件
60歳以降も働き続け、賃金が下がった場合の給付
高年齢雇用継続基本給付金は、原則として基本手当を受けず、60歳到達時などに比べて賃金が75%未満に低下した状態で働き続ける人を対象とする給付です。
例えば、60歳で定年を迎えた後、同じ会社と再雇用契約を結び、引き続き勤務する場合です。
定年前の月給が30万円で、再雇用後の月給が18万円になったとすると、賃金は以前の60%に低下しています。
このような場合、年齢や雇用保険の加入期間などの条件を満たせば、高年齢雇用継続基本給付金を受け取れる可能性があります。
主な支給条件は3つ
高年齢雇用継続基本給付金については、主に次の条件が重要です。
- 原則として60歳以上65歳未満の雇用保険一般被保険者であること。
- 雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あること。
- 60歳到達時などの賃金に比べて、各月の賃金が75%未満に低下していること。
ただし、実際の支給には、支給対象月の初日から末日まで被保険者であることや、賃金額が支給限度額を下回っていることなど、ほかの条件もあります。
60歳になった時点で加入期間が5年未満の場合
60歳到達時点で、雇用保険の被保険者であった期間が5年に満たない場合でも、すぐに受給できる可能性がなくなるわけではありません。
例えば、60歳を迎えた時点で加入期間が4年だった人が、その後も雇用保険に加入して働き続け、61歳で5年に達した場合です。
ほかの条件を満たしていれば、加入期間が5年になった時点以降に給付の対象となる可能性があります。
ただし、この場合は賃金低下を比較する基準時点などが異なることがあります。
同じ会社で働き続けることが絶対条件ではない
高年齢雇用継続基本給付金は、一般的に定年後の継続雇用や再雇用の場面で説明されます。
しかし、同じ会社で働き続けることだけが対象ではありません。
例えば、60歳以降に離職し、基本手当などを受けずに別の会社へ転職する場合でも、加入期間や賃金低下などの条件を満たせば、対象になることがあります。
重要なのは、同じ会社か別の会社かという点だけではなく、基本手当の受給状況や雇用保険の加入期間などです。
「高年齢再就職給付金」とは?意味と支給条件
基本手当を受けた後に再就職する場合の給付
高年齢再就職給付金は、雇用保険の基本手当を受けた後、60歳以降に再就職し、賃金が所定の基準を下回った人などを対象とする給付です。
例えば、60歳で会社を退職し、ハローワークで基本手当の受給資格を得て、一定期間、基本手当を受け取った後に再就職する場合です。
再就職後の賃金が、基本手当の算定基礎となった賃金と比較して75%未満に下がり、ほかの条件も満たしていれば、高年齢再就職給付金の対象となる可能性があります。
基本手当の支給残日数が100日以上必要
高年齢再就職給付金では、再就職した日の前日に、基本手当の支給残日数が100日以上あることが必要です。
例えば、所定給付日数が150日の人が、30日分の基本手当を受けた後に再就職した場合、単純な差引きでは120日分が残ります。
この場合は、支給残日数100日以上という条件を満たす可能性があります。
一方、同じ150日の所定給付日数でも、既に70日分を受け取っていた場合は、残りが80日となり、通常、高年齢再就職給付金の対象にはなりません。
ただし、実際の支給残日数はハローワークで確認する必要があります。
安定した職業に就く必要がある
高年齢再就職給付金では、原則として、1年を超えて引き続き雇用されることが確実と認められる安定した職業に就くことが必要です。
例えば、1年以上の継続雇用が見込まれる雇用契約などが考えられます。
一方、短期間だけ働く予定で、継続雇用の見込みがない場合などは、対象とならないことがあります。
再就職手当を受けた場合は併給できない
高年齢再就職給付金と再就職手当は、同一の就職について両方受け取ることができません。
例えば、60歳以降に基本手当を一定以上残して再就職した場合、再就職手当と高年齢再就職給付金の両方の支給条件を満たす可能性があります。
しかし、同じ再就職について再就職手当を受け取ると、高年齢再就職給付金は支給されません。
そのため、両方の制度が関係する場合は、それぞれの支給条件や給付期間を確認する必要があります。
給付を受けられる期間の違い
高年齢雇用継続基本給付金は原則65歳到達月まで
高年齢雇用継続基本給付金は、原則として60歳到達日の属する月から65歳に達する日の属する月までが支給対象期間となります。
ただし、60歳になった時点で雇用保険の加入期間が5年に満たない場合などは、支給対象期間の始まりが異なることがあります。
また、各月について給付を受けるには、その月の初日から末日まで継続して雇用保険の一般被保険者であることなどが必要です。
高年齢再就職給付金は支給残日数で1年または2年
高年齢再就職給付金の支給期間は、再就職した日の前日における基本手当の支給残日数によって異なります。
| 再就職時の基本手当の支給残日数 | 原則となる支給期間 |
|---|---|
| 200日以上 | 再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで |
| 100日以上200日未満 | 再就職日の翌日から1年を経過する日の属する月まで |
| 100日未満 | 原則として対象外 |
ただし、1年または2年の期間が残っている場合でも、65歳に達した場合は、原則として65歳到達月までとなります。
また、実際に支給されるのは、その期間内に各月の支給要件を満たした場合に限られます。
【2025年4月改正】高年齢雇用継続給付は最大15%から10%へ
2025年4月1日から新しい給付率が適用される
高年齢雇用継続給付は、2025年4月1日から支給率が引き下げられました。
これまで賃金の最大15%だった給付率が、新しい制度では最大10%となっています。
ただし、2025年4月1日以降に給付金を受け取る人すべてが、自動的に新しい10%の給付率になるわけではありません。
原則として、60歳到達日、またはその時点で加入期間が5年に満たない人については5年に達した日が、2025年4月1日以降かどうかによって適用される給付率が異なります。
改正前後の給付率を比較
| 比較項目 | 旧制度 | 新制度 |
|---|---|---|
| 主な適用対象 | 原則として2025年3月31日以前に所定の基準日を迎えた人 | 原則として2025年4月1日以降に所定の基準日を迎えた人 |
| 最大給付率 | 各月の賃金の15% | 各月の賃金の10% |
| 最大給付率になる賃金低下率 | 原則として61%以下 | 原則として64%以下 |
| 支給対象となる賃金低下 | 原則として75%未満 | 原則として75%未満 |
例えば、新制度の対象となる人で、60歳到達時の月額賃金が30万円、60歳以降の月額賃金が18万円だった場合です。
賃金の低下率は60%となるため、ほかの条件を満たせば、最大給付率である10%が適用されます。
この場合、単純計算では1か月当たり1万8,000円です。
60歳到達日だけで判断できない場合もある
2025年4月の改正では、60歳到達時点で被保険者であった期間が5年に満たない場合、その期間が5年に達した日が重要になります。
例えば、2025年3月に60歳になったものの、その時点で雇用保険の加入期間が5年に満たず、2025年5月に5年へ到達した場合です。
このようなケースでは、新しい給付率が適用される可能性があります。
制度変更前後の条件を正確に区別する際には、「変更」と「修正」の違いも参考になります。
【2026年8月改定】支給限度額はいくら?
高年齢雇用継続給付には、各月の賃金と給付額の合計に関係する「支給限度額」があります。
この支給限度額は、原則として毎年8月1日に改定されます。
| 適用期間 | 支給限度額 |
|---|---|
| 2025年8月1日~2026年7月31日 | 386,922円 |
| 2026年8月1日から | 397,369円 |
2026年8月1日からは、支給限度額が39万7,369円に変更されました。
例えば、支給対象月の賃金と計算上の給付金を合計すると、この限度額を超える場合には、支給額が調整されることがあります。
また、支給対象月の賃金そのものが支給限度額以上であれば、原則として給付金は支給されません。
なお、支給限度額とは別に、60歳到達時等の賃金月額の上限額・下限額や、給付金の最低限度額も設けられています。具体的な申請では、適用時点の金額をハローワークへ確認しましょう。
【計算例】月給30万円から18万円に下がった場合
ここでは、新制度の最大給付率10%が適用される人について、簡単な計算例を紹介します。
60歳到達時の月額賃金が30万円で、60歳以降の月額賃金が18万円となった場合です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 60歳到達時の月額賃金 | 300,000円 |
| 60歳以降の月額賃金 | 180,000円 |
| 賃金の低下率 | 60% |
| 適用する最大給付率 | 10% |
| 給付額の計算例 | 18,000円 |
この場合、賃金の低下率は64%以下なので、基本的には最大給付率10%が適用されます。
180,000円 × 10% = 18,000円
つまり、ほかの支給条件を満たす場合、1か月当たり1万8,000円が給付額の目安になります。
ただし、実際の計算では、みなし賃金や支給限度額などが関係する場合があります。
賃金の低下率が70%だった場合は?
新制度では、60歳以降の賃金が基準となる賃金の64%以下に低下した場合、原則として各月の賃金の10%相当額が支給されます。
一方、64%を超えて75%未満に低下した場合には、低下率に応じた給付率が適用されます。
例えば、60歳到達時の賃金が30万円、60歳以降の賃金が21万円の場合です。
この場合、低下率は70%ですが、最大給付率10%をそのまま適用するわけではありません。
64%を超えて75%未満の範囲にあるため、所定の計算式によって、10%より低い給付率が適用されます。
また、賃金が75%以上の水準であれば、原則として高年齢雇用継続給付の対象になりません。
「再就職手当」と「高年齢再就職給付金」はどちらも受給できる?
60歳以降に失業保険の基本手当を受けた後、再就職する場合には、再就職手当と高年齢再就職給付金の両方の制度が関係することがあります。
しかし、同一の就職について、再就職手当と高年齢再就職給付金を重複して受給することはできません。
再就職手当は、基本手当を一定以上残して安定した職業に就いた場合などに、一時金として支給される制度です。
一方、高年齢再就職給付金は、再就職後の賃金が所定の水準まで低下した場合に、条件を満たす月について支給される制度です。
高年齢再就職給付金には、支給残日数に応じて1年または2年という支給対象期間がありますが、その間、必ず毎月支給されるわけではありません。
例えば、再就職後に給与が上がって賃金低下率が75%以上になった月については、原則として給付の対象外です。
制度の性質と支給方法が異なるため、実際にどちらの支給条件を満たしているか確認する必要があります。
高年齢雇用継続給付と年金の関係
高年齢雇用継続給付を受けると、年金が一部停止される場合がある
60歳以降も働きながら、高年齢雇用継続給付を受ける場合は、老齢厚生年金との関係にも注意が必要です。
例えば、65歳になる前の老齢厚生年金を受け取っている人が、高年齢雇用継続給付を受ける場合、年金の一部が支給停止されることがあります。
また、在職老齢年金の仕組みによって、給与と年金の額に応じた調整が行われる場合もあります。
そのため、給与と給付金だけでなく、年金への影響も確認することが重要です。
高年齢雇用継続給付が非課税でも、年金への影響は別の問題
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金は、原則として所得税の課税対象となりません。
しかし、非課税だからといって、年金の支給額に一切影響しないわけではありません。
年金について具体的な影響を知りたい場合は、年金事務所などへ確認しましょう。
【実践】場面別に二つの給付金を使い分ける
場面1:60歳で定年を迎え、同じ会社に再雇用された場合
60歳で定年を迎えた後、同じ会社に再雇用され、基本手当を受けずに働き続ける場合です。
賃金が60歳到達時等の75%未満に低下し、雇用保険の加入期間などの条件を満たす場合は、高年齢雇用継続基本給付金が関係します。
場面2:60歳以降、基本手当を受けてから再就職した場合
60歳以降に会社を退職し、ハローワークで基本手当を受けた後、新しい会社へ再就職する場合です。
基本手当の支給残日数が100日以上あり、再就職後の賃金が所定の基準の75%未満に低下した場合などには、高年齢再就職給付金が関係します。
場面3:60歳で転職したが、基本手当は受けていない場合
60歳で会社を退職し、基本手当を受給せずに別の会社へ転職する場合です。
このような場合でも、雇用保険の加入期間や賃金低下などの条件を満たせば、高年齢雇用継続基本給付金の対象になる可能性があります。
別の会社へ転職したという理由だけで、高年齢再就職給付金になるわけではありません。
場面4:基本手当の残りが80日で再就職した場合
基本手当を受給した後、支給残日数80日の時点で再就職する場合です。
高年齢再就職給付金を受けるには、再就職した日の前日に基本手当の支給残日数が100日以上あることが必要です。
そのため、この場合は原則として高年齢再就職給付金の対象にはなりません。
ただし、再就職手当など、別の制度の支給条件を満たす可能性はあります。
場面5:再就職後の賃金が以前より高くなった場合
基本手当を受けた後に再就職したものの、再就職後の賃金が以前より高くなった場合です。
高年齢再就職給付金は、所定の基準と比較して賃金が75%未満に低下した月などが対象です。
したがって、賃金が低下していない場合は、通常、対象になりません。
申請方法と必要書類の違い
高年齢雇用継続基本給付金の申請
高年齢雇用継続基本給付金は、原則として事業主がハローワークへ申請します。
申請の際には、雇用保険の加入状況や60歳到達時などの賃金、支給対象月に支払われた賃金などを確認する必要があります。
例えば、60歳到達時等賃金証明書や高年齢雇用継続給付支給申請書などが関係します。
初回の受給資格確認と、その後の支給申請では、必要な書類や手続きが異なります。
高年齢再就職給付金の申請
高年齢再就職給付金についても、原則として事業主を通じてハローワークへ申請します。
基本手当の受給状況や、再就職日の前日における支給残日数、再就職後の賃金などを確認する必要があります。
また、再就職手当との併給はできないため、同じ就職について再就職手当を受けていないか確認します。
原則として2か月ごとに申請する
高年齢雇用継続給付は、通常、2か月ごとに支給申請を行います。
ただし、支給対象月の指定や申請期限、電子申請の利用など、具体的な手続きは個別の状況によって異なります。
会社の人事・給与担当者は、ハローワークから指定された申請期間や必要書類を確認しましょう。
従業員本人が申請する場合も含め、提出方法などに疑問がある場合は、管轄のハローワークへ相談することが重要です。
申請前に確認したい5つのポイント
1. 基本手当の受給状況を確認する
最初に、離職後に基本手当を受け取ったかどうかを確認しましょう。
原則として、基本手当を受けていない場合は高年齢雇用継続基本給付金、受けた後に再就職した場合は高年齢再就職給付金が関係します。
2. 雇用保険の加入期間を確認する
高年齢雇用継続基本給付金では、原則として雇用保険の被保険者であった期間が5年以上あることが必要です。
一方、高年齢再就職給付金では、基本手当の算定基礎期間が5年以上あることなどが必要になります。
過去の加入期間が通算されるかどうかは、離職後の空白期間や給付の受給状況などによって異なります。
3. 賃金が75%未満に低下しているか確認する
二つの給付金では、賃金が所定の基準の75%未満に低下していることが重要です。
ただし、基準となる賃金は、60歳到達時等の賃金と、基本手当の算定基礎となった賃金という違いがあります。
実際の計算では、給与明細や賃金台帳などを基に確認しましょう。
資料の数字が正しく記載されているか確かめる際には、「確認」と「検証」の違いも参考になります。
4. 再就職の場合は支給残日数を確認する
高年齢再就職給付金を受けるには、再就職日の前日における基本手当の支給残日数が100日以上必要です。
また、100日以上200日未満か、200日以上かによって支給対象期間が異なります。
再就職手当の支給条件も満たしている場合は、同一の就職について両方を受給できない点に注意しましょう。
5. 支給限度額や申請期限を確認する
高年齢雇用継続給付には、毎年見直される支給限度額などがあります。
2026年8月1日からの支給限度額は39万7,369円です。
また、申請には所定の期間があるため、給与明細などの必要資料を整理し、期限について会社やハローワークへ確認しましょう。
よくある間違いと注意点
「同じ会社に再雇用されないと基本給付金をもらえない」は誤り
高年齢雇用継続基本給付金は、同じ会社で働き続ける場合に限られません。
例えば、基本手当などを受けずに別の会社へ転職した場合でも、加入期間や賃金低下などの条件を満たせば対象となることがあります。
「基本手当を受けて再就職すれば、必ず再就職給付金をもらえる」は誤り
高年齢再就職給付金を受けるには、基本手当の支給残日数が100日以上あることや、賃金が所定の基準の75%未満に低下していることなどが必要です。
基本手当を受けて再就職したという事実だけで、無条件に受給できるわけではありません。
「2025年4月以降は全員10%になる」は誤り
給付率の変更には経過措置があります。
原則として、60歳到達日、またはその時点で加入期間が5年に満たない人については5年に達した日が、2025年4月1日以降かどうかによって適用される支給率が異なります。
「再就職手当と高年齢再就職給付金は両方もらえる」は誤り
同一の就職について、再就職手当と高年齢再就職給付金を重複して受給することはできません。
それぞれの支給条件や受給できる期間などを確認する必要があります。
「給付を受ければ年金も必ず満額支給される」は誤り
高年齢雇用継続給付を受ける場合、老齢厚生年金の一部が支給停止されることがあります。
具体的な年金額への影響については、年金事務所などに確認しましょう。
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の3秒判定
| 状況 | 関係する給付金 |
|---|---|
| 60歳以降、同じ会社で基本手当を受けずに働き続ける | 高年齢雇用継続基本給付金 |
| 60歳以降、基本手当を受けずに転職する | 高年齢雇用継続基本給付金が関係する場合がある |
| 基本手当を受けた後、60歳以降に再就職する | 高年齢再就職給付金が関係する場合がある |
| 基本手当の支給残日数が200日以上あり、60歳以降に再就職する | 高年齢再就職給付金の支給対象期間は原則最長2年 |
| 基本手当の支給残日数が100日以上200日未満で再就職する | 高年齢再就職給付金の支給対象期間は原則最長1年 |
| 基本手当を受けずに働いているが、賃金が75%以上の水準である | 原則として高年齢雇用継続給付の対象外 |
| 同一の就職について再就職手当を受けた | 高年齢再就職給付金との併給不可 |
基本手当を受けずに働くなら高年齢雇用継続基本給付金、基本手当を受けてから再就職するなら高年齢再就職給付金と覚えると、基本的な違いを理解しやすくなります。
例文で使い分けを確認
「高年齢雇用継続基本給付金」の例文
- 60歳で定年を迎え、同じ会社に再雇用されたため、高年齢雇用継続基本給付金の支給条件を確認した。
- 再雇用後の賃金が大きく下がったため、高年齢雇用継続基本給付金を申請した。
- 基本手当を受けずに転職したため、高年齢雇用継続基本給付金の対象になるか問い合わせた。
- 高年齢雇用継続基本給付金の給付率について、2025年4月の制度改正を確認した。
- 支給対象月の賃金額を基に、高年齢雇用継続基本給付金の概算額を計算した。
- 会社の給与担当者に、高年齢雇用継続基本給付金の申請方法を尋ねた。
「高年齢再就職給付金」の例文
- 基本手当を受給した後、60歳以降に再就職したため、高年齢再就職給付金の支給条件を調べた。
- 再就職時の支給残日数が200日以上あったため、高年齢再就職給付金の支給対象期間を確認した。
- 高年齢再就職給付金と再就職手当の両方は受給できない。
- 再就職後の賃金が低下したため、高年齢再就職給付金を申請した。
- 高年齢再就職給付金の申請に必要な書類を会社へ提出した。
- 高年齢再就職給付金の支給額について、ハローワークへ問い合わせた。
FAQ|二つの高年齢雇用継続給付のよくある質問
Q1. 二つの給付金の最も大きな違いは何ですか?
基本手当を受けたかどうかです。高年齢雇用継続基本給付金は、基本手当などを受けずに働く人、高年齢再就職給付金は、基本手当を受給した後に再就職した人を主な対象としています。
Q2. 60歳で定年を迎え、同じ会社に再雇用された場合はどちらですか?
基本手当を受けずに再雇用された場合は、高年齢雇用継続基本給付金が関係します。ただし、雇用保険の加入期間や賃金低下など、ほかの条件を満たす必要があります。
Q3. 60歳以降に別の会社へ転職した場合は、必ず高年齢再就職給付金になりますか?
必ずしもそうではありません。基本手当を受けずに転職した場合は、高年齢雇用継続基本給付金が関係することがあります。一方、基本手当を受けてから再就職した場合は、高年齢再就職給付金が関係します。
Q4. 高年齢再就職給付金には、基本手当の残日数が何日必要ですか?
再就職した日の前日に、基本手当の支給残日数が100日以上あることが必要です。200日以上の場合は原則最長2年、100日以上200日未満の場合は原則最長1年が支給対象期間となります。ただし、65歳到達月までという年齢上の制限があります。
Q5. 2026年の給付率は最大何%ですか?
2025年4月1日以降に所定の基準日を迎えた人については、原則として最大10%です。一方、経過措置により、従来の最大15%が適用される人もいます。
Q6. 2026年8月からの支給限度額はいくらですか?
2026年8月1日からの支給限度額は39万7,369円です。ただし、実際の支給額は賃金の低下率や、支給対象月の賃金額などによって異なります。
Q7. 賃金が75%未満に下がれば、必ず支給されますか?
必ずしもそうではありません。年齢や雇用保険の加入期間、支給対象月の被保険者資格、支給限度額、給付金の最低限度額など、ほかの条件も満たす必要があります。
Q8. 高年齢再就職給付金と再就職手当は同時に受け取れますか?
同一の就職について、二つの給付を重複して受給することはできません。両方の支給要件に該当する可能性がある場合は、受給する給付について確認する必要があります。
Q9. 高年齢雇用継続給付は、65歳を過ぎても受給できますか?
原則として65歳に達する月までが対象です。高年齢再就職給付金について、1年または2年の支給対象期間が残っている場合でも、65歳に達すると年齢による制限が適用されます。
Q10. 高年齢雇用継続給付を受けると、年金は減りますか?
一定の条件に該当する場合、老齢厚生年金の一部が支給停止されることがあります。具体的な影響は年金の種類や受給状況などによって異なるため、年金事務所などに確認しましょう。
Q11. 給付金には所得税がかかりますか?
高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金は、原則として所得税の課税対象となりません。
Q12. 申請方法がわからない場合は、どこに相談すればよいですか?
勤務先の人事・給与担当者や、管轄のハローワークへ相談しましょう。基本手当の受給状況や雇用保険の加入期間、給与明細などを整理しておくと、具体的な確認がしやすくなります。
まとめ|基本手当を受けたかどうかが、二つの給付金の大きな違い
「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」は、どちらも60歳以降の賃金低下を補い、65歳までの雇用の継続を支援するための雇用保険給付です。
- 高年齢雇用継続基本給付金:基本手当などを受けず、60歳以降も賃金が低下した状態で働く一定の人を対象とする給付。
- 高年齢再就職給付金:基本手当を受給した後に再就職し、支給残日数や賃金低下などの条件を満たす人を対象とする給付。
- 2026年時点の制度:新しい給付率が適用される人は賃金の最大10%。2026年8月1日からの支給限度額は39万7,369円。
特に重要なのは、高年齢再就職給付金について、基本手当の支給残日数が100日以上必要なこと、そして同一の就職について再就職手当との併給ができないことです。
また、どちらの給付金も、賃金が75%未満に低下したという理由だけで、必ず支給されるわけではありません。
60歳以降の働き方や再就職を考える際には、基本手当の受給状況、雇用保険の加入期間、給与の変化、65歳までの期間などを整理し、適用される給付金を確認しましょう。
会社による申請が進まない場合や、支給条件について疑問がある場合は、ハローワークへ相談することが重要です。問題が発生した際の行動の使い分けについては、「対応」と「対処」の違いも参考になります。
参考資料・出典
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ハローワークインターネットサービス|雇用継続給付
高年齢雇用継続給付の制度概要、支給条件、給付率や支給限度額について確認できます。
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厚生労働省|Q&A~高年齢雇用継続給付~
二つの給付金の受給資格、支給期間、再就職手当との関係、年金への影響などを確認できます。
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厚生労働省|令和7年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率を変更します
2025年4月1日からの最大給付率の引き下げと、旧制度が適用される人への経過措置について確認できます。
