「上司に上申する」「社長に進言する」のように使われる「上申」と「進言」。どちらも、自分より上の立場にいる人へ何かを伝える場面で使われるため、違いが分かりにくい言葉です。
たとえば、「新しい設備の導入を部長に上申する」と「新しい設備の導入を部長に進言する」では、どちらも日本語として成立します。しかし、伝えている内容の性質や、言葉から受ける印象には違いがあります。
簡単に整理すると、「上申」は上位者や上級機関に事情・意見・要望などを正式に申し述べること、「進言」は目上の人に対して意見や助言を申し述べることを意味します。
特に「上申」は組織上の手続きや正式な報告というニュアンスが強く、「進言」は相手の判断に役立ててもらうために意見や提案を伝えるニュアンスが強い点が重要です。
この記事では、「上申」と「進言」の意味や違いを整理し、会社・行政・上司との会話など具体的な場面を使いながら、どちらを使えばよいのかを分かりやすく解説します。
結論:「上申」は上位者への正式な申し出、「進言」は目上の人への意見・助言
最初に結論をまとめると、「上申」と「進言」の違いは次のように整理できます。
| 比較項目 | 上申 | 進言 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 上位者・上級機関へ事情や意見などを申し述べること | 目上の人へ意見や助言を申し述べること |
| 重視される点 | 組織上の上下関係・正式な手続き | 意見・助言・提案の内容 |
| よく使われる場面 | 会社、役所、組織、正式な申請・報告 | 会社、組織、政治、歴史的な場面など |
| 文書との相性 | 非常に強い。「上申書」など | 必ずしも文書である必要はない |
| 相手 | 上司、上級部署、上級機関など | 上司、経営者、権限を持つ目上の人物など |
| 代表的な表現 | 部長に上申する/本部に上申する | 社長に進言する/上司に進言する |
ポイントは、単純に「上の人に伝える」というだけではありません。
上申は「組織の下から上へ正式に情報・意見・要望を上げる」という方向性が強く、進言は「相手のために自分の考えや助言を伝える」という内容面が強い言葉です。
したがって、社内の正式な承認手続きに乗せるのであれば「上申」が適しており、社長や上司に対して「この方針に変更した方がよいと思います」と意見を述べるのであれば「進言」が自然です。
「上申」の意味とは
上申とは上位者に事情や意見などを申し述べること
「上申(じょうしん)」とは、一般的に上位の立場にいる人や上級の機関に対して、事情・意見・要望などを申し述べることを意味します。
「上」という漢字が含まれていることからも分かるように、組織の下位から上位へ情報を上げるという方向性が明確な言葉です。
たとえば、会社で課長が部長にある案件の承認を求めたり、地方の機関が上級機関に事情を報告したりする場合に「上申」が使われます。
日常会話で頻繁に使われる言葉ではなく、会社や行政機関など、一定の階層を持つ組織で使われやすい表現です。
「上申書」という形でもよく使われる
「上申」は、特に文書との結び付きが強い言葉です。
代表的なのが「上申書」です。
上申書は、上司や上級機関などに対して、事情・意見・要望・報告事項などを正式に伝えるための文書を指します。
たとえば会社では、次のような内容を上申するケースがあります。
- 設備の購入や更新
- 人員の増員
- 予算の追加
- 人事上の措置
- 業務方法の変更
- 特別な対応の承認
- 社内規程の変更
つまり「上申する」という言葉には、単に意見を言うだけでなく、組織の正式なルートを通して上の立場へ案件を上げるというニュアンスがあります。
「上申」の例文
- 新しい検査装置の導入について部長に上申した。
- 担当部署から本部へ予算の増額を上申する。
- 現場の状況をまとめ、上司に上申書を提出した。
- 人員不足について会社側に上申することになった。
- 特別な事情があるため、例外的な対応を上申した。
これらの例では、いずれも「下位から上位へ正式に案件を上げる」という共通点があります。
「進言」の意味とは
進言とは目上の人に意見を申し述べること
「進言(しんげん)」とは、目上の人に対して、自分の意見や考え、助言などを申し述べることを意味します。
単なる報告よりも、「こうした方がよいのではないでしょうか」「この方法を採用すべきだと思います」といった意見を伝える場合に使われやすい言葉です。
たとえば、社員が経営者に経営方針の変更を勧めたり、部下が上司に業務改善策を提案したりする場面が「進言」に当たります。
「上申」と同じように上下関係のある場面で使われますが、「進言」は組織上の手続きよりも、相手の判断のために意見を述べることに重点があります。
「進言」は助言や提案のニュアンスが強い
たとえば、社長が新しい事業への進出を検討しているとします。
社員が社長に対して、
「現在の市場環境を考えると、もう少し時期を待った方がよいと思います」
と意見を伝えるのであれば、「社長に進言した」と表現できます。
この場合、その社員が正式な書類を提出している必要はありません。口頭で意見を述べた場合でも「進言」は使えます。
「進言」と意味が近い「具申」との違いについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
「進言」と「具申」の違いとは?意味・使い分けを上司・組織・ビジネスの例文で解説
「進言」の例文
- 部下が社長に事業計画の見直しを進言した。
- 私は上司に、現在の方法を変更すべきだと進言した。
- 側近が責任者に撤退を進言した。
- 現場の担当者が経営陣に改善策を進言する。
- 担当者として、計画を延期するよう進言した。
「進言する」の後には、「〜した方がよい」「〜すべきだ」といった助言・提案に相当する内容が続きやすいのが特徴です。
【徹底比較】「上申」と「進言」の違い
違い1:上申は「手続き」、進言は「意見」に重点がある
最も重要な違いは、どこに重点が置かれているかです。
「上申」は、組織の下位から上位へ案件や事情を伝えるという組織上の手続きを強く意識した言葉です。
一方、「進言」は、上司などの目上の人物へ自分の考えを伝えるという意見や助言の内容を強く意識しています。
たとえば、課長が部長へ新しい設備の購入申請を正式に提出する場合は、
「設備購入について部長へ上申した」
が自然です。
一方、担当者が部長に、
「現在の設備は老朽化しているので、早めに入れ替えた方がよいと思います」
と意見を述べたのであれば、
「設備の更新を部長に進言した」
と表現できます。
違い2:「上申」は正式性が高い
「上申」は「進言」よりも、一般に正式な印象を与える言葉です。
「上申書」という文書名が存在することからも、その性質が分かります。
企業や官公庁などでは、案件を担当者から課長、課長から部長、さらに上級の決裁者へと上げていくことがあります。
このように組織の正式なルートを通して案件を上げる場合、「上申」が使いやすくなります。
一方、「進言」は必ずしも正式な手続きである必要はありません。
会議中に部下が上司へ意見を述べた場合や、個別の面談で社長に助言した場合にも使用できます。
違い3:進言には「相手の判断を助ける」という性質がある
「進言」では、単なる情報伝達ではなく、相手の判断や行動に影響を与えるための意見を述べることが中心になります。
たとえば、
- 計画を中止した方がよいと進言する
- 新しい制度を導入するよう進言する
- 責任者を交代させるべきだと進言する
といった使い方ができます。
この点では「提案」や「提言」とも近いところがあります。
「提案」と「提言」の使い分けについて確認したい場合は、以下の記事も参考になります。
「提案」と「提言」の違いは?意味・使い分けを例文でわかりやすく解説
違い4:「上申」は事情の報告だけでも使える
「進言」は意見・助言を述べる意味が中心ですが、「上申」は必ずしも積極的な提案を含むとは限りません。
たとえば、現場で重大なトラブルが発生した際、その事情を上位部署へ正式に報告する場合にも「上申」と表現されることがあります。
つまり、
- 上申=事情・意見・要望などを上へ伝える
- 進言=自分の意見・助言を上の人へ伝える
という違いがあります。
違い5:「上申」は組織、「進言」は人物を意識しやすい
もう一つの違いとして、誰に対して行うかがあります。
「進言」は、
- 社長に進言する
- 上司に進言する
- 大臣に進言する
- 責任者に進言する
のように、特定の人物を相手とする表現が自然です。
これに対して「上申」は、
- 本部へ上申する
- 上級機関へ上申する
- 会社側へ上申する
- 担当部署へ上申する
のように、人物だけでなく組織・部署・機関を相手として使うこともできます。
もちろん「部長に上申する」という表現もできるため、完全に区別されるわけではありません。しかし、言葉が持つ基本的な性質として覚えておくと使い分けやすくなります。
会社では「上申」と「進言」をどう使い分ける?
設備購入の正式な申請なら「上申」
会社で新しい設備の購入を希望し、上司や経営陣の承認を受ける必要がある場合は「上申」が適しています。
例:
「老朽化した設備の更新について、工場長へ上申しました。」
この文章からは、単に「買った方がよい」と意見を言ったのではなく、正式な案件として上の立場へ上げたことが読み取れます。
経営判断への意見なら「進言」
一方で、会社の方針について自分の意見を上司や経営者に伝える場合は「進言」が自然です。
例:
「市場の状況を考慮し、新店舗の出店を延期すべきだと社長に進言した。」
ここでは、正式な申請手続きよりも「延期した方がよい」という意見そのものが重要です。
承認を求める手続きと進言は別物
会社では、意見を出した後に正式な承認や決裁が必要になることがあります。
たとえば、
- 担当者が改善策を考える
- 上司に改善を進言する
- 正式な案件として上申する
- 権限を持つ人が承認・決裁する
という流れも考えられます。
つまり、「進言」と「上申」は必ずしもどちらか一方しか使えないものではなく、同じ案件の異なる段階で使われる可能性があります。
承認と決裁の違いについては、次の記事で詳しく整理しています。
「承認」と「決裁」の違いとは?意味・権限・稟議書での使い分けをビジネスの例文付きで徹底解説
「上申する」と「申請する」の違い
「上申」と混同しやすい言葉に「申請」があります。
申請とは、一定の許可・認可・承認などを求めて、正式に申し出ることです。
一方、上申は「上位者へ申し述べる」という上下関係が中心になっています。
| 言葉 | 中心となる意味 |
|---|---|
| 上申 | 上位者・上級機関へ事情や意見を申し述べる |
| 申請 | 許可・承認などを得るため正式に申し出る |
そのため、「上申した結果、正式な申請手続きに進んだ」というケースもあります。
「進言する」と「提案する」の違い
「進言」と「提案」も似ています。
提案は、相手に対して案や考えを示すことを広く意味するため、上下関係を必要としません。
同僚同士でも、部下から上司でも、上司から部下でも「提案」は使えます。
一方、「進言」は基本的に自分より上の立場にいる人へ意見を述べる場合に使います。
たとえば、
- 同僚に新しい方法を提案する
- 部下に改善案を提案する
- 顧客に新商品を提案する
はいずれも自然ですが、これらを「進言する」とすると不自然になることがあります。
「進言」には目上の相手という条件が含まれていると考えると分かりやすいでしょう。
「上申」と「具申」の違い
「上申」と非常に似ている言葉として「具申」があります。
具申も、上司や上級機関へ意見や事情を詳しく申し述べることを意味します。
そのため、場面によっては「上申」と「具申」がかなり近い意味で使われます。
ただし、「上申」は下位から上位へ申し述べるという方向性そのものが強く、「具申」は事情や意見の内容を具体的に述べることを意識した表現です。
また、「進言」は相手への助言・意見という意味合いがより強くなります。
大まかに整理すると、
- 上申:上の立場へ正式に申し述べる
- 具申:事情や意見を具体的に申し述べる
- 進言:目上の人へ意見・助言を申し述べる
となります。
【実践】迷ったときの「上申」「進言」の選び方
正式な案件として上へ上げるなら「上申」
まず確認したいのは、「正式な組織上の手続きなのか」という点です。
社内で案件を正式に上司へ上げたり、文書を提出したりする場合には「上申」が適しています。
たとえば、
- 予算追加を上申する
- 設備更新を上申する
- 人員増加を上申する
- 特例措置を上申する
などです。
「こうした方がよい」と意見を言うなら「進言」
自分より上の人に対して、判断材料となる意見や助言を伝える場合には「進言」が適しています。
- 計画の延期を進言する
- 方針変更を進言する
- 新制度の導入を進言する
- 責任者の交代を進言する
「〜した方がよい」「〜すべきだ」という内容を伝えているなら、「進言」が自然になるケースが多いでしょう。
書類を提出するなら「上申」が使われやすい
「上申書」という言葉があるように、書面で正式に提出する場合は「上申」が非常によく使われます。
ただし、「書面=必ず上申」というわけではありません。
意見書や提案書を提出する場合、その行為の目的によっては「提案」「具申」「進言」などの方が適切なこともあります。
「上申」と「進言」は同時に使える?
「上申」と「進言」は意味が重なるため、同じ出来事に両方の言葉が関係する場合があります。
たとえば、担当者が工場長に、
「この設備は故障が増えているので、更新した方がよいと思います」
と意見を述べた段階では「進言」と考えられます。
その後、設備更新の理由・費用・必要性をまとめた書類を正式に提出したのであれば「上申」と表現できます。
つまり、
進言 → 意見を伝える
上申 → 案件として正式に上へ上げる
という流れになるケースもあるのです。
「上申」と「進言」の言い換え表現
「上申」の言い換え候補
文脈によって、次のような表現が近い意味で使われます。
- 申し出る
- 報告する
- 申請する
- 具申する
- 上司に上げる
- 上級機関へ報告する
ただし、それぞれ意味は完全には一致しません。
特に「申請」は許可などを求める意味が強く、「報告」は事実を知らせる意味が中心です。
「進言」の言い換え候補
- 提案する
- 助言する
- 意見を述べる
- 具申する
- 意見具申する
- 忠告する
「忠告」は相手の行動に注意を促す意味が強いため、単純な言い換えにはならない場合があります。
上司に対して「進言させていただきます」は自然?
意味としては通じますが、実際のビジネス会話では少し硬く、大げさに感じられる場合があります。
通常の職場であれば、
- 「一点、提案があります」
- 「私から意見を申し上げてもよろしいでしょうか」
- 「この点については、○○した方がよいと考えています」
などの方が自然なケースも多いでしょう。
「進言」は文章の中で第三者の行為を説明するときに使いやすい言葉です。
たとえば、
「担当者は経営陣に計画の見直しを進言した。」
という表現は自然です。
「上申させていただきます」は自然?
社内で実際に「上申」という手続きを行っている組織であれば、使用されることがあります。
たとえば、
「本件については部長へ上申いたします。」
「必要な資料をそろえたうえで上申させていただきます。」
などです。
ただし、「上申」という言葉を通常使わない会社で無理に使用すると、必要以上に堅苦しく感じられることがあります。
社内用語として「稟議に上げる」「決裁を申請する」「部長へ申請する」などの表現が定着している場合は、その組織の表現に合わせた方が自然です。
「上申」と「進言」を使った例文比較
| 場面 | 適した表現 | 例文 |
|---|---|---|
| 設備購入を正式に上司へ申請 | 上申 | 設備更新について工場長へ上申した。 |
| 経営方針について社長へ意見 | 進言 | 事業計画を見直すよう社長に進言した。 |
| 人員不足を正式に報告 | 上申 | 増員の必要性について本部へ上申した。 |
| 上司に改善案を伝える | 進言 | 現在の作業方法を変更するよう進言した。 |
| 上級機関へ事情を説明 | 上申 | 現在の事情を書面にまとめて上申した。 |
| 責任者へ判断変更を求める | 進言 | 計画を延期すべきだと責任者に進言した。 |
FAQ:「上申」と「進言」のよくある質問
Q1. 「上申」と「進言」は同じ意味ですか?
完全に同じではありません。
どちらも目上・上位の立場へ何かを伝える言葉ですが、「上申」は正式に案件・事情・意見などを上位へ伝える意味が強く、「進言」は自分の意見や助言を目上の人へ伝える意味が強いという違いがあります。
Q2. 上司に意見を言う場合は「上申」と「進言」のどちらですか?
単に「こうした方がよいと思います」と意見を伝えるのであれば「進言」が適しています。
一方、その意見を正式な案件として上司へ提出したり、承認を求めたりする場合には「上申」が使われることがあります。
Q3. 「上申書」とは何ですか?
上司・上級部署・上級機関などに対して、事情や意見、要望などを正式に伝えるための文書です。
会社によって書式や用途は異なり、設備購入、人事、予算、例外措置などについて作成される場合があります。
Q4. 「進言書」という言葉もありますか?
「進言書」という表現が使われることはありますが、「上申書」と比べると一般的な定型文書名として使われる場面は限られます。
「進言」は、文書よりも「誰かに意見を述べる」という行為そのものを表す言葉として理解すると分かりやすいでしょう。
Q5. 「社長に上申する」は正しいですか?
正しい表現です。
社長が自分より上位の決裁者であり、案件を正式に上げるのであれば「社長に上申する」と表現できます。
Q6. 「社長に進言する」は正しいですか?
正しい表現です。
社長に対して経営や業務について意見・助言を述べる場合、「社長に進言する」と表現できます。
Q7. 「上申」と「具申」はどちらが硬い言葉ですか?
どちらも日常会話より、行政・会社・組織などで使われやすい硬めの言葉です。
「上申」は上位へ伝えるという方向性が強く、「具申」は意見や事情を具体的に述べる意味が強いため、単純に硬さだけで区別するものではありません。
Q8. 普通の会社員が「進言」という言葉を使ってもよいですか?
問題ありません。ただし、日常的な職場の会話では「提案する」「意見を伝える」と言った方が自然な場合もあります。
「進言」は「部下が経営陣に方針変更を進言した」のように、出来事を説明する文章で特に使いやすい言葉です。
まとめ
「上申」と「進言」は、どちらも自分より上の立場に何かを伝えるときに使われる言葉ですが、意味の中心には違いがあります。
- 上申:上位者・上級機関へ事情・意見・要望などを正式に申し述べること
- 進言:目上の人へ意見・助言・提案などを申し述べること
「上申」は会社や行政などの組織上の手続きとの結び付きが強く、「上申書」のように文書で行われることも多い言葉です。
一方、「進言」は「こうした方がよい」「この方針に変更すべきだ」といった、自分の意見や助言を目上の人物へ伝える場合に適しています。
迷ったときは、「正式な案件として上へ上げるなら上申」「目上の人に意見・助言を伝えるなら進言」と覚えておくと使い分けやすいでしょう。
なお、実際の会社では「上申」「申請」「稟議」「提案」などの用語が社内規程によって独自に使い分けられている場合があります。ビジネスで使用するときは、一般的な意味だけでなく、自社で定められている用語や手続きも確認することが大切です。
