Wi-Fiルーターの仕様を調べていると、「MIMO」「アンテナダイバーシティ」「空間ストリーム」といった言葉を目にすることがあります。
どれも無線通信に関係する技術ですが、それぞれ何が違うのでしょうか。
例えば、複数のアンテナを使って異なるデータを同時に送受信すれば、通信速度を高められる場合があります。一方、複数のアンテナで受け取った電波を利用すれば、電波の状態が悪い場所でも通信を安定させられる場合があります。
前者はMIMOの空間多重、後者はダイバーシティの代表的な考え方です。
ただし、MIMOとダイバーシティは、完全に別々の技術ではありません。MIMOは複数の送受信アンテナを利用する技術であり、その中でダイバーシティを利用することもあります。
「MIMO」は送信側と受信側の複数アンテナを活用する通信技術。「ダイバーシティ」は、複数の電波経路などを利用して、電波の受信状態の悪化による影響を軽減する技術です。
この記事では、MIMOとダイバーシティの違いを比較表で整理し、Wi-Fiの通信速度や安定性、アンテナの本数、空間ストリーム、ビームフォーミングなどとの関係を詳しく解説します。
- 結論|MIMOは複数アンテナの活用技術、ダイバーシティは通信品質を高める技術
- 【徹底比較】MIMOとダイバーシティの違いを一覧表で解説
- MIMOとは?意味・仕組み・通信速度が向上する理由
- ダイバーシティとは?意味・仕組み・通信が安定する理由
- なぜ複数のアンテナを使うと通信が安定するのか?
- 「空間多重」と「空間ダイバーシティ」の違いとは?
- 「2×2 MIMO」とは?アンテナ2本なら速度は2倍になる?
- 「2本のアンテナで同じデータを送る」のと「異なるデータを送る」のはどう違う?
- 「アンテナダイバーシティ」と「MIMO」は同じ技術?
- 「MIMO」と「MU-MIMO」の違いとは?
- 「MIMO」と「OFDMA」はどう違う?
- 「MIMO」と「ビームフォーミング」の違いとは?
- Wi-Fiルーターでは、MIMOとダイバーシティのどちらが重要?
- 2.4GHzと5GHzでは、MIMOやダイバーシティの効果が違う?
- MIMOとダイバーシティの具体例を場面別に比較
- MIMO対応ルーターなのに通信速度が出ないのはなぜ?
- ダイバーシティがあれば、Wi-Fiの電波は必ず強くなる?
- 【実践】MIMOとダイバーシティを見分ける3つの判断基準
- MIMOとダイバーシティを理解する際によくある4つの間違い
- 参考リンク
- FAQ|MIMOとダイバーシティに関するよくある質問
- まとめ|MIMOは複数アンテナの活用技術、ダイバーシティは通信品質を改善する技術
結論|MIMOは複数アンテナの活用技術、ダイバーシティは通信品質を高める技術
MIMOとダイバーシティの違いを理解する際には、複数のアンテナを何のために利用しているのかを考えることが重要です。
- MIMO(マイモ):送信側と受信側で複数のアンテナを利用する無線通信技術。異なるデータを同時に送る空間多重や、通信品質を改善する空間ダイバーシティなどに利用できる。
- ダイバーシティ:複数のアンテナや電波経路などを利用し、電波の受信状態が悪くなる影響を軽減する技術。通信の安定性や信頼性を高めるために使用される。
例えば、送信側と受信側にそれぞれ2本のアンテナがあり、異なる2つのデータを同じ時間・周波数帯で送受信する場合には、MIMOの空間多重を利用しています。
一方、同じデータについて、異なるアンテナから受け取った信号を選択したり組み合わせたりする場合には、ダイバーシティを利用しています。
ただし、MIMOを使用しているからといって、必ず複数の独立したデータを同時に送信しているわけではありません。
通信環境によっては、複数のアンテナを、通信速度の向上よりも信号品質の改善に活用する場合もあります。
【徹底比較】MIMOとダイバーシティの違いを一覧表で解説
| 比較項目 | MIMO | ダイバーシティ |
|---|---|---|
| 正式名称・意味 | Multiple Input Multiple Output | 複数の信号経路などを活用する通信技術の総称 |
| 基本的な仕組み | 送信側と受信側に複数のアンテナを用いる | 特性の異なる複数の信号を選択・合成するなどして利用する |
| 主な目的 | 通信速度や通信品質などの向上 | 受信状態や通信の信頼性の向上 |
| 代表的な方式 | 空間多重、空間ダイバーシティなど | アンテナ選択、最大比合成、送信ダイバーシティなど |
| 異なるデータの同時伝送 | 空間多重を利用する場合に可能 | ダイバーシティ自体の主な目的ではない |
| 通信速度 | 空間多重によって向上できる場合がある | 通信品質の改善によって実効速度が向上する場合がある |
| 通信の安定性 | 利用方式に応じて改善できる | 電波の状態が悪化する影響を軽減することが中心 |
| 主な使用例 | Wi-Fi、携帯電話など | Wi-Fi、携帯電話、各種無線通信など |
| 両者の関係 | ダイバーシティを利用する方式もある | MIMOシステムの中でも活用される |
最も重要なのは、MIMOとダイバーシティが、必ずしも二者択一ではないという点です。
MIMOの複数アンテナを使い、通信速度を重視する場合には空間多重を利用し、通信の信頼性を重視する場合にはダイバーシティを利用できます。
実際の無線機器では、通信環境や機器の仕様などに応じて、複数の技術が組み合わされる場合があります。
MIMOとは?意味・仕組み・通信速度が向上する理由
MIMOの基本的な意味
MIMOは、「Multiple Input Multiple Output」の略称です。日本語では、複数入力・複数出力などと説明されます。
送信側と受信側の両方で、複数のアンテナを利用する無線通信技術です。
一般家庭のWi-Fiルーターやスマートフォンなどでも、MIMOに対応した機器が使用されています。
異なるデータを同時に送信する「空間多重」
MIMOの代表的な利用方法が、空間多重です。
空間多重とは、複数のアンテナを使って、異なるデータを同じ時間・周波数帯で送受信する技術です。
例えば、送信側と受信側にそれぞれ2本のアンテナがあり、電波の状態も良好な場合には、2つの独立したデータの流れを同時に送受信できる場合があります。
これにより、同じ周波数帯域を利用しながら、通信速度を向上させることができます。
空間ストリームとは?
空間多重で同時に伝送する、独立したデータの流れを「空間ストリーム」と呼びます。
例えば、2つの空間ストリームを同時に利用する場合、理想的な条件では、1つの空間ストリームの場合よりも多くのデータを伝送できます。
ただし、実際の通信速度は、アンテナ数だけで決まるわけではありません。
利用する周波数帯域、通信規格、受信機器の対応状況、電波環境などによって変化します。
MIMOは高速化以外にも使われる
MIMOは、空間多重による高速化だけを目的とする技術ではありません。
複数のアンテナを利用することで、受信信号の品質を改善したり、通信を安定させたりすることもできます。
このようなMIMOの利用方法には、空間ダイバーシティなどがあります。
つまり、「MIMO=必ず複数ストリームを同時伝送する技術」と考えるのではなく、複数アンテナを活用する技術として理解すると正確です。
ダイバーシティとは?意味・仕組み・通信が安定する理由
ダイバーシティの基本的な意味
無線通信におけるダイバーシティは、特性の異なる複数のアンテナや電波経路などを活用し、通信品質の悪化を軽減する技術です。
例えば、Wi-Fiの電波は、壁や家具、金属製の物体などに反射する場合があります。
その結果、同じ部屋の中でも、場所によって電波の強さが変化することがあります。
一つのアンテナで受信状態が悪くなっても、別のアンテナでは比較的良好な信号を受信できる場合があります。
このような違いを利用するのが、アンテナダイバーシティの基本的な考え方です。
受信状態のよいアンテナを選ぶ方式
ダイバーシティには、複数のアンテナから、受信状態のよいアンテナを選択する方式があります。
例えば、2本のアンテナがある場合、一方のアンテナで電波が弱くなっても、もう一方では良好な状態で受信できることがあります。
そのとき、状態のよいアンテナを使用することで、通信の安定性を改善できる場合があります。
この方式は、一般に選択ダイバーシティなどと呼ばれます。
複数の信号を組み合わせる方式
ダイバーシティには、複数のアンテナから受け取った信号を組み合わせて利用する方式もあります。
例えば、各アンテナで受信した信号の品質に応じて重みづけを行い、信号を合成する方法です。
代表的な方式として、最大比合成(MRC:Maximum Ratio Combining)があります。
このような技術を利用すると、単一のアンテナだけで受信する場合よりも、信号品質を改善できる場合があります。
ダイバーシティの目的は通信の信頼性を高めること
ダイバーシティの主な目的は、電波の受信状態が悪くなる影響を軽減することです。
例えば、電波の状態が不安定な環境では、通信エラーが発生し、データを再送する必要が生じる場合があります。
ダイバーシティによって受信状態が改善すれば、通信エラーや再送を減らせる可能性があります。
ただし、利用できる効果は、電波環境やアンテナの配置、機器の設計などによって異なります。
なぜ複数のアンテナを使うと通信が安定するのか?
ダイバーシティを理解するうえで重要なのが、「マルチパス」と「フェージング」という現象です。
マルチパスとは?
マルチパスとは、送信された電波が、壁や天井、床などで反射し、複数の経路を通って受信機に届く現象です。
例えば、自宅のWi-Fiルーターから送信された電波は、スマートフォンへ直接届く場合もあれば、壁などに反射して届く場合もあります。
複数の経路を通った電波が受信機に届くことで、電波同士が強め合ったり、弱め合ったりする場合があります。
フェージングとは?
フェージングとは、電波の受信レベルなどが変動する現象です。
例えば、スマートフォンを少し移動しただけで、Wi-Fiの受信状態が変わることがあります。
このような変化には、マルチパスによる影響などが関係している場合があります。
ダイバーシティは、受信状態が悪くなる影響を軽減する
例えば、少し離れた位置に2本のアンテナを設置した場合、一方のアンテナでは電波が弱くなっても、もう一方では良好な信号を受信できることがあります。
その違いを利用して、受信状態のよい信号を選んだり、複数の信号を組み合わせたりすることで、通信品質を改善できます。
ただし、アンテナを増やすだけで、必ず大きな効果が得られるわけではありません。アンテナ同士で受信する信号の性質が十分に異なることも重要です。
「空間多重」と「空間ダイバーシティ」の違いとは?
MIMOとダイバーシティの関係を理解するうえで、特に重要なのが「空間多重」と「空間ダイバーシティ」です。
空間多重は、異なるデータを同時に送る
空間多重では、複数のアンテナを利用し、異なるデータを同時に伝送します。
例えば、2本の送信アンテナと2本の受信アンテナがある場合、電波環境などの条件が整えば、2つの独立した空間ストリームを利用できます。
この場合、同じ時間に送受信できるデータ量を増やすことが目的です。
空間ダイバーシティは、信号品質を改善する
一方、空間ダイバーシティでは、アンテナごとに異なる電波の受信状態などを利用して、通信の信頼性を高めます。
例えば、同じデータについて、複数のアンテナや伝送経路から得られる信号を活用する場合です。
この場合、異なるデータをできるだけ多く同時に送ることよりも、必要なデータを確実に届けることが重要になります。
両者は、通信環境によって使い分けられる
例えば、電波の状態が良好な環境では、複数の空間ストリームを使い、通信速度を高められる場合があります。
一方、電波の状態が悪化している場合には、ストリーム数を減らしたり、受信信号の品質を高める仕組みを利用したりすることがあります。
ただし、実際の切り替えや制御の方法は、無線規格や機器の設計などによって異なります。
「2×2 MIMO」とは?アンテナ2本なら速度は2倍になる?
Wi-Fiルーターなどの仕様には、「2×2 MIMO」「4×4 MIMO」といった表記が使われる場合があります。
2×2 MIMOの基本的な意味
一般に「2×2 MIMO」は、送信側と受信側で、それぞれ2本のアンテナを使用する構成を表します。
ただし、製品の仕様表では、機器側の送受信構成を示している場合もあります。具体的に何を表しているのかは、製品の説明を確認しましょう。
アンテナ2本なら、必ず通信速度が2倍になるわけではない
例えば、2×2 MIMOに対応したWi-Fiルーターであっても、接続先のスマートフォンが利用できる空間ストリーム数や通信規格などによって、実際の通信速度は異なります。
また、壁や家具などによる電波の減衰、ほかの機器との電波干渉なども通信速度に影響します。
そのため、アンテナの本数だけを見て、実際の通信速度を判断することはできません。
4×4 MIMOなら、必ず4ストリームを使えるわけではない
例えば、4×4 MIMOに対応した機器でも、接続相手が2ストリームまでしか対応していない場合には、単一の機器との通信で4ストリームを利用できるとは限りません。
また、複数のストリームを利用できるかどうかは、実際の電波環境などによっても異なります。
製品の仕様を比較する場合には、アンテナ数だけでなく、対応する空間ストリーム数も確認しましょう。
「2本のアンテナで同じデータを送る」のと「異なるデータを送る」のはどう違う?
MIMOとダイバーシティの違いを理解するには、複数のアンテナを使って、どのようなデータを伝送するのかを考えると分かりやすくなります。
異なるデータを送る場合は、空間多重に相当する
例えば、同じ時間に、アンテナを利用して異なる2つのデータストリームを伝送する場合には、空間多重の考え方が使われています。
受信側では、複数のアンテナから得た信号を処理し、それぞれのデータを取り出します。
これにより、同じ時間に送れるデータ量を増やすことができます。
同じデータを複数の経路で利用する場合は、ダイバーシティに関係する
一方、同じデータについて、異なるアンテナや電波経路から信号を受け取り、その情報を利用して通信品質を改善する場合には、ダイバーシティの考え方が使われています。
例えば、一方のアンテナで受信した信号の状態が悪くても、別のアンテナから得られる情報を利用できる場合があります。
実際の無線通信は、単純な二択とは限らない
実際のWi-Fiや携帯電話では、空間多重とダイバーシティ以外にも、さまざまな技術が組み合わされています。
そのため、アンテナが2本ある場合でも、必ず異なる2つのデータを送っているとは限らず、必ず同じデータを2回送っているとも限りません。
機器の仕様や通信環境に応じて、複数アンテナの使い方が変わる場合があります。
「アンテナダイバーシティ」と「MIMO」は同じ技術?
アンテナダイバーシティとMIMOは、どちらも複数のアンテナに関係していますが、完全に同じ意味ではありません。
アンテナダイバーシティは、複数アンテナによる受信品質の改善などを目的とする
例えば、従来型のWi-Fi機器では、2本のアンテナのうち、受信状態のよい方を選択する方式が使用されてきました。
この場合、複数のアンテナを備えていても、異なるデータストリームを同時に伝送しているとは限りません。
MIMOは、複数の送受信アンテナを幅広く活用する
一方、MIMOでは、送信側と受信側の複数アンテナを利用し、空間多重や空間ダイバーシティなどを実現できます。
例えば、MIMOシステムの中で、受信側の複数アンテナから得られた信号を組み合わせ、受信品質を改善する場合があります。
ダイバーシティは、MIMOの一部として利用される場合もある
そのため、「MIMOとダイバーシティは、どちらか一方しか使用できない」と考えるのは正確ではありません。
MIMOシステムの中でダイバーシティを利用する場合もあり、通信速度と信頼性の両方を考慮した設計が行われています。
「MIMO」と「MU-MIMO」の違いとは?
MIMOについて調べていると、「MU-MIMO」という言葉もよく目にします。
MIMOは、複数アンテナを利用する通信技術
MIMOは、送信側と受信側の複数アンテナを利用する技術です。
例えば、1台のWi-Fiルーターと1台のパソコンとの通信で、複数の空間ストリームを利用する場合があります。
MU-MIMOは、複数の端末との同時通信に関係する
MU-MIMOは、「Multi-User MIMO」の略称です。
複数のアンテナを活用し、複数の端末との通信を同じ時間・周波数資源で並行して行う技術です。
例えば、家庭内でスマートフォンとパソコンを同時に使用している場合などに、対応機器や通信環境によっては、MU-MIMOを利用できる場合があります。
ダイバーシティとMU-MIMOでは、目的が異なる
MU-MIMOは、複数の端末へデータを同時に伝送することに重点があります。
一方、ダイバーシティは、複数の信号経路などを利用し、通信品質の悪化を軽減することに重点があります。
ただし、実際の機器では、これらの技術が組み合わされる場合もあります。
詳しくは、「MIMO」と「MU-MIMO」の違い|SU-MIMO・空間ストリーム・Wi-Fi 6/7との関係をご覧ください。
「MIMO」と「OFDMA」はどう違う?
Wi-Fi 6などの説明では、MIMOとともにOFDMAという言葉も使用されます。
MIMOは、複数アンテナを活用する
MIMOは、送信側と受信側の複数アンテナを活用し、空間多重や通信品質の改善などを実現する技術です。
OFDMAは、周波数資源を分割して利用する
一方、OFDMAは、「Orthogonal Frequency Division Multiple Access」の略称です。
無線通信で利用する周波数資源を細かく分割し、複数の端末に割り当てる技術です。
例えば、小さなデータを送受信する機器が多数存在する環境では、周波数資源を効率よく割り当てることが役立つ場合があります。
MIMOとOFDMAは、組み合わせて利用できる
MIMOは空間的な伝送経路、OFDMAは周波数資源の割り当てという、異なる観点の技術です。
そのため、同じ無線通信システムの中で、両方を組み合わせて利用できる場合があります。
OFDMAとMU-MIMOの詳しい違いについては、「OFDMA」と「MU-MIMO」の違い|Wi-Fi 6・6E・7との関係も参考になります。
「MIMO」と「ビームフォーミング」の違いとは?
MIMOとともに使用される技術として、ビームフォーミングがあります。
ビームフォーミングは、電波の伝わり方を調整する技術
ビームフォーミングは、複数のアンテナから送信する電波の位相や振幅などを調整し、特定の方向や受信機に向けて、電波の伝わり方を制御する技術です。
例えば、Wi-Fiルーターから接続先の機器へ、効率よく信号を届けるために利用される場合があります。
MIMOの空間多重とは目的が異なる
MIMOの空間多重は、複数の独立したデータストリームを同時に伝送することで、通信速度を高める技術です。
一方、ビームフォーミングは、電波の伝わり方を調整し、必要な受信機へ信号を届けやすくすることなどを目的としています。
複数アンテナを使う技術でも、役割はそれぞれ異なる
ビームフォーミング、空間多重、ダイバーシティは、いずれも複数アンテナを利用する場合があります。
しかし、ビームフォーミングは電波の方向や信号品質、空間多重は複数データの同時伝送、ダイバーシティは通信品質の悪化への対処という、異なる観点を持っています。
実際の機器では、これらが組み合わされる場合もあります。
Wi-Fiルーターでは、MIMOとダイバーシティのどちらが重要?
Wi-Fiルーターを選ぶ場合、MIMOとダイバーシティのどちらか一方だけを重視すればよいわけではありません。
高速な通信を重視する場合
例えば、大容量のファイルを転送したり、高画質の動画を視聴したりする場合には、通信速度が重要になることがあります。
このような場合には、MIMOの対応状況や空間ストリーム数、対応するWi-Fi規格などが参考になります。
ただし、ルーターが多くのストリームに対応していても、接続先の機器が同じ数のストリームに対応しているとは限りません。
電波が不安定な環境では、通信品質も重要
例えば、Wi-Fiルーターとスマートフォンの間に壁や家具がある場合、電波の受信状態が悪化することがあります。
ダイバーシティなどの技術は、このような環境で通信品質を改善するために役立つ場合があります。
ただし、ダイバーシティがあるからといって、どのような環境でも安定して通信できるわけではありません。
実際の通信環境に合わせて選ぶ
例えば、同じ部屋でパソコンを使用する場合と、壁を挟んだ別の部屋でスマートフォンを使用する場合では、電波の条件が異なります。
また、複数の機器を同時に接続する場合には、MU-MIMOやOFDMAなどの対応状況も参考になります。
製品選びでは、アンテナの本数だけでなく、通信規格や接続する機器の仕様、設置場所などを総合的に確認しましょう。
2.4GHzと5GHzでは、MIMOやダイバーシティの効果が違う?
Wi-Fiでは、2.4GHz帯や5GHz帯など、複数の周波数帯が使用されます。
2.4GHz帯は、障害物の影響を受けにくい場合がある
一般に、2.4GHz帯は5GHz帯と比べて、壁などを通過する際の減衰が小さい場合があります。
一方、電子レンジやほかの無線機器などと周波数帯が重なるため、電波干渉の影響を受ける場合もあります。
5GHz帯は、利用できるチャネル幅が広い場合がある
5GHz帯は、2.4GHz帯と比べて、広いチャネル幅を利用できる場合があります。
そのため、対応機器や電波環境によっては、高速な通信に適しています。
一方、壁などによって電波が減衰しやすい場合があり、設置環境によっては通信状態が悪化することもあります。
MIMOとダイバーシティは、周波数帯とは別の観点
MIMOやダイバーシティは、複数のアンテナや電波経路などを活用する技術です。
一方、2.4GHzと5GHzは、使用する電波の周波数帯を表しています。
そのため、MIMOとダイバーシティの効果は、周波数帯だけでなく、電波の反射や減衰、アンテナ配置などによっても変化します。
詳しくは、「2.4GHz」と「5GHz」の違い|Wi-Fiの速度・距離・電波干渉・使い分けをご覧ください。
MIMOとダイバーシティの具体例を場面別に比較
| 場面 | MIMOに関係する例 | ダイバーシティに関係する例 |
|---|---|---|
| 家庭用Wi-Fi | 複数ストリームを利用して高速な通信を行う。 | 複数アンテナから得られる信号を利用し、受信状態を改善する。 |
| ノートパソコン | 対応するルーターとの間で複数ストリームを利用する。 | 受信状態の異なるアンテナを活用する。 |
| スマートフォン | 対応する通信方式で複数アンテナを活用する。 | 電波の状態が変化する影響を軽減する。 |
| 複数端末の同時利用 | MU-MIMOにより、複数端末との同時通信を行う。 | 各端末との通信品質の改善に活用する場合がある。 |
| 電波が良好な環境 | 複数の空間ストリームを利用できる場合がある。 | 受信状態が変化したときの影響を軽減できる場合がある。 |
| 電波が不安定な環境 | 利用できるストリーム数が減る場合がある。 | 複数の信号経路を利用し、受信品質を改善できる場合がある。 |
このように、MIMOとダイバーシティは、通信の高速化と安定性という異なる目的に関係しています。
ただし、MIMOそのものにもダイバーシティを利用する方式があるため、実際の機器では、両者が組み合わされている場合があります。
MIMO対応ルーターなのに通信速度が出ないのはなぜ?
MIMOに対応しているWi-Fiルーターを使っていても、期待した通信速度が得られない場合があります。
接続先の機器が対応しているストリーム数が少ない
例えば、ルーターが4ストリームに対応していても、スマートフォンが2ストリームまでしか対応していなければ、そのスマートフォンとの通信で4ストリームを使えるとは限りません。
ルーターの仕様だけでなく、接続する機器の仕様も確認する必要があります。
電波の状態が悪い
例えば、ルーターとパソコンの間に壁や家具などがある場合、電波の状態が悪化することがあります。
その結果、複数ストリームを利用しにくくなったり、通信方式が調整されたりする場合があります。
ほかの機器との電波干渉が発生している
例えば、近隣のWi-Fiルーターなどと同じ周波数帯を利用している場合、電波干渉や通信の混雑が発生することがあります。
このような場合には、MIMOに対応していても、期待した通信速度が得られないことがあります。
インターネット回線側が制約になっている
例えば、Wi-Fiの通信速度が十分に高くても、インターネット回線や接続先のサーバーなどが原因で、実際のダウンロード速度が制限される場合があります。
そのため、通信速度が遅い場合には、Wi-Fiだけでなく、インターネット回線や接続先の状況なども確認しましょう。
ダイバーシティがあれば、Wi-Fiの電波は必ず強くなる?
ダイバーシティは、通信品質の改善に役立つ技術ですが、必ず電波が強くなることを保証するわけではありません。
複数アンテナを利用しても、電波環境によって効果は異なる
例えば、2本のアンテナが似たような電波の状態に置かれている場合には、ダイバーシティの効果が小さくなることがあります。
一方、それぞれのアンテナで受信状態が十分に異なる場合には、良好な信号を選択したり、信号を組み合わせたりする効果を得られる可能性があります。
ダイバーシティだけで通信距離が決まるわけではない
Wi-Fiの通信距離は、送信出力、アンテナの特性、使用する周波数帯、障害物など、さまざまな条件によって変化します。
そのため、ダイバーシティに対応しているという情報だけで、通信距離を正確に判断することはできません。
設置場所の見直しが役立つ場合もある
例えば、Wi-Fiルーターを金属製の家具の近くに置いたり、床に近い場所に設置したりすると、電波の状態に影響する場合があります。
通信状態が悪い場合には、機器の仕様を確認するだけでなく、設置場所や周囲の障害物などを見直すことも重要です。
【実践】MIMOとダイバーシティを見分ける3つの判断基準
1. 異なるデータを同時に伝送するなら、MIMOの空間多重
例えば、複数の空間ストリームを利用し、同じ時間に多くのデータを送受信する技術について説明する場合には、MIMOの空間多重が関係します。
この場合、通信速度を向上させることが主な目的です。
2. 複数の信号から受信品質を改善するなら、ダイバーシティ
例えば、一方のアンテナで受信状態が悪くても、別のアンテナの信号を利用できる場合には、ダイバーシティの考え方が関係します。
この場合、電波の受信状態が悪くなる影響を軽減することが主な目的です。
3. 両方が利用される場合もあるため、機器の具体的な仕様を確認する
例えば、あるWi-FiルーターがMIMOに対応している場合でも、どのような空間多重やダイバーシティの方式を利用しているのかは、製品によって異なります。
そのため、MIMOという名称だけで、具体的なアンテナの動作をすべて判断することはできません。
必要に応じて、製品の仕様書やメーカーが公開している技術資料などを確認しましょう。
MIMOとダイバーシティを理解する際によくある4つの間違い
1. MIMOは高速化専用、ダイバーシティは安定化専用だと考える
MIMOは、空間多重による高速化だけでなく、空間ダイバーシティによる通信品質の改善などにも利用できます。
そのため、MIMOとダイバーシティを、完全に独立した技術として考えるのは正確ではありません。
2. アンテナが多いほど、必ず通信速度が速くなると考える
アンテナの本数は、MIMOの通信能力に関係します。
しかし、利用できる空間ストリーム数は、接続先の機器や電波環境などによって制限される場合があります。
そのため、アンテナの本数だけで実際の通信速度を判断することはできません。
3. ダイバーシティは、必ずアンテナを切り替える方式だと考える
ダイバーシティには、受信状態のよいアンテナを選択する方式だけでなく、複数のアンテナから得られる信号を組み合わせる方式などもあります。
そのため、ダイバーシティをアンテナの切り替えだけで説明するのは正確ではありません。
4. MIMOに対応していれば、どのような場所でも高速通信ができると考える
MIMOの性能は、電波の状態や接続する機器の仕様などによって変化します。
例えば、障害物や電波干渉などによって通信環境が悪くなると、複数の空間ストリームを十分に利用できない場合があります。
実際の通信速度を考える際には、MIMOへの対応状況だけでなく、利用環境も確認しましょう。
参考リンク
- Cisco|マルチパスとダイバーシティ
- IEEE Technology Navigator|MIMOの仕組み・空間多重・空間ダイバーシティ(英語)
- Cisco|MIMOの受信信号処理と空間多重に関する技術資料(英語・PDF)
FAQ|MIMOとダイバーシティに関するよくある質問
Q1. MIMOとダイバーシティは同じ技術ですか?
完全に同じではありません。MIMOは送信側と受信側の複数アンテナを利用する技術であり、空間多重や空間ダイバーシティなどに利用できます。一方、ダイバーシティは、複数の信号経路などを利用して通信品質の悪化を軽減する技術です。MIMOの中でダイバーシティを利用する場合もあります。
Q2. MIMOとは何の略ですか?
MIMOは、「Multiple Input Multiple Output」の略称です。日本語では、複数入力・複数出力などと説明されます。
Q3. ダイバーシティは、アンテナを2本使う技術ですか?
2本のアンテナを利用する方式は代表的な例ですが、ダイバーシティは必ず2本に限定されるわけではありません。また、複数のアンテナから受け取った信号を選択する方式や、組み合わせる方式などがあります。
Q4. MIMOに対応していれば、必ず通信速度が速くなりますか?
必ずしもそうではありません。MIMOの空間多重によって通信速度を向上できる場合がありますが、実際の速度は、接続先の機器の仕様や電波環境、使用する通信規格などによって変化します。
Q5. 空間多重とダイバーシティの違いは何ですか?
空間多重は、複数のアンテナを利用して、異なるデータを同時に伝送する技術です。一方、ダイバーシティは、異なるアンテナや電波経路から得られる信号を活用し、通信品質の悪化を軽減する技術です。
Q6. 2×2 MIMOなら、通信速度は必ず2倍になりますか?
いいえ。2×2 MIMOでは、条件が整えば2つの空間ストリームを利用できる場合がありますが、実際の通信速度は、接続先の機器や電波環境などによって変化します。そのため、必ず2倍になるわけではありません。
Q7. ダイバーシティは、Wi-Fiの通信距離を伸ばす技術ですか?
ダイバーシティは、電波の受信状態が悪くなる影響を軽減し、通信品質を改善するための技術です。その結果、通信できる範囲での信頼性が改善する場合もあります。ただし、通信距離は送信出力やアンテナの特性、障害物などにも左右されます。
Q8. MIMOとMU-MIMOはどう違いますか?
MIMOは、複数アンテナを利用する通信技術の総称です。一方、MU-MIMOは、複数の端末との同時通信に対応するためのMIMO技術です。1台の機器との複数ストリーム通信と、複数機器への同時通信という違いがあります。
Q9. ビームフォーミングとダイバーシティは同じですか?
同じではありません。ビームフォーミングは、複数アンテナから送信する電波の位相や振幅などを調整し、特定の受信機などに信号を届けやすくする技術です。一方、ダイバーシティは、複数の信号経路などを利用して、電波の受信状態が悪くなる影響を軽減する技術です。
Q10. Wi-Fiルーターを選ぶときは、MIMOとダイバーシティのどちらを重視すればよいですか?
利用する環境によって異なります。高速な通信を重視する場合には、MIMOの対応状況や空間ストリーム数などが参考になります。一方、電波が不安定な環境では、通信品質を改善する技術も重要です。ただし、製品選びでは、通信規格や接続先の機器、設置場所なども総合的に確認しましょう。
まとめ|MIMOは複数アンテナの活用技術、ダイバーシティは通信品質を改善する技術
MIMOとダイバーシティは、どちらも無線通信における複数アンテナの活用に関係していますが、同じ意味ではありません。
- MIMO:送信側と受信側の複数アンテナを利用する技術。空間多重による高速化や、空間ダイバーシティによる通信品質の改善などに活用できる。
- ダイバーシティ:特性の異なる複数の信号経路などを利用し、受信状態が悪くなる影響を軽減する技術。通信の安定性や信頼性の向上に役立つ。
例えば、異なる2つのデータストリームを同時に伝送する場合には、MIMOの空間多重が関係します。
一方、複数のアンテナから得られた信号を利用し、受信状態を改善する場合には、ダイバーシティの考え方が使われています。
ただし、MIMOは空間多重だけを意味するわけではなく、MIMOシステムの中でダイバーシティを活用する場合もあります。
また、アンテナの本数だけで、通信速度や通信の安定性が決まるわけではありません。接続する機器の仕様や電波環境、通信規格なども重要です。
MIMOは複数アンテナを活用する仕組み、ダイバーシティは複数の信号経路を利用して通信品質を改善する考え方と理解すると、Wi-Fiルーターやスマートフォンの仕様も、より正確に読み解けるでしょう。
