経済ニュースでは、
「企業物価指数が上昇した」
「輸入物価指数は円安の影響で上昇した」
「輸入コストの上昇が国内価格へ波及している」
といった表現をよく目にします。
どちらも日本銀行が公表する物価統計に関係するため、
「企業物価指数と輸入物価指数は何が違う?」
「輸入物価指数も企業物価指数の一種?」
「円安になるとどちらが上がる?」
「輸入物価が上がると、あとからCPIも上がる?」
と混乱しやすい言葉です。
結論からいうと、「企業物価指数」は企業間で取引される商品(財)の価格変動を測る統計体系です。その中に「国内企業物価指数」「輸出物価指数」「輸入物価指数」があります。
つまり厳密には、
輸入物価指数は企業物価指数の基本分類指数の一つ
です。
ただしニュースで「企業物価指数が上昇した」といった場合には、文脈上、
国内企業物価指数
を指していることも多くあります。
そこで違いを簡単に整理すると、
国内企業物価指数=「日本国内で生産され、国内企業向けに取引される商品の価格」
輸入物価指数=「海外で生産され、日本へ輸入される商品の価格」
です。
特に輸入物価指数は、
- 原油など国際商品価格
- 海外メーカーの販売価格
- 為替レート
の影響を受けやすく、円安が進むと円ベースの輸入物価を押し上げる場合があります。
そして輸入コストの上昇が企業の仕入れ価格へ波及し、企業が販売価格へ転嫁すれば、国内企業物価指数や最終的にはCPI(消費者物価指数)へ影響する可能性があります。
この記事では、「企業物価指数」と「輸入物価指数」の違いから、円ベース・契約通貨ベース、円安、原油高、価格転嫁、CPIへの波及まで詳しく解説します。
- 「企業物価指数」と「輸入物価指数」の違い【結論】
- そもそも「企業物価指数」とは?
- 企業物価指数は「1つの指数」ではない
- ニュースの「企業物価指数」は国内企業物価指数を指すことがある
- 「国内企業物価指数」とは?
- 国内企業物価指数は日本版PPI?
- 「輸入物価指数」とは?
- 国内企業物価指数と輸入物価指数を具体的に比較
- 輸入品の国内販売価格は国内企業物価指数に入る?
- 輸入物価指数には「円ベース」と「契約通貨ベース」がある
- 「契約通貨ベース」とは?
- 「円ベース」とは?
- 円安になると輸入物価指数は上がる?
- 円高なら逆のことが起こる?
- 円安と海外価格上昇が同時に起きたら?
- 「円安=必ず輸入物価上昇」ではない
- 原油価格上昇は輸入物価指数へどう影響する?
- 輸入物価が上昇すると国内企業物価も上昇する?
- 輸入物価上昇からCPIまでの波及
- 「価格転嫁」が重要
- 輸入物価指数はCPIの先行指標?
- 輸入物価が下がっているのにCPIが上がることはある?
- 輸入物価と「コストプッシュ・インフレ」の関係
- 「輸入インフレ」とは?
- 輸入物価指数とCPIの対象は大きく違う
- 輸入物価指数と「企業向けサービス価格指数」の違い
- 輸入物価指数と「輸入価格」は同じ?
- 2026年時点の企業物価指数の基準は?
- 指数の「100」は価格が100円という意味?
- 企業物価指数の「前年比」と「前月比」の違い
- 「企業物価指数・輸入物価指数」で迷ったときの3秒判定
- 「企業物価指数」を使った例文
- 「輸入物価指数」を使った例文
- よくある間違い1:「企業物価指数と輸入物価指数は完全に別の統計」と思う
- よくある間違い2:「企業物価指数=国内企業物価指数」と必ず考える
- よくある間違い3:「輸入品も国内企業物価指数に入る」と思う
- よくある間違い4:「円安になれば海外の商品価格自体が上がった」と思う
- よくある間違い5:「輸入物価上昇率とCPI上昇率は同じになる」と思う
- よくある間違い6:「輸入物価が下がればCPIもすぐ下がる」と思う
- よくある間違い7:「企業物価指数にはサービスも全部入る」と思う
- 「企業物価指数」と「輸入物価指数」に関するよくある質問
- まとめ
- 参考リンク・出典
「企業物価指数」と「輸入物価指数」の違い【結論】
| 比較項目 | 企業物価指数 | 輸入物価指数 |
|---|---|---|
| 意味 | 企業間で取引される商品全般の価格変動を測る統計体系 | 海外から日本へ輸入される商品の価格変動を測る指数 |
| 関係 | 上位概念 | 企業物価指数の基本分類指数の一つ |
| 主な対象 | 国内品・輸出品・輸入品 | 輸入品 |
| 代表的な構成 | 国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数 | 輸入商品の価格 |
| 価格調査段階 | 指数によって異なる | 原則として日本へ荷降ろしされる通関段階 |
| 為替の影響 | 系列による | 円ベースでは強く受ける場合がある |
| 作成機関 | 日本銀行 | 日本銀行 |
3秒で判断するなら、
「企業間の商品価格全般の統計?」 → 企業物価指数
「海外から日本へ入ってくる商品の価格?」 → 輸入物価指数
と考えると分かりやすいでしょう。
そもそも「企業物価指数」とは?
企業間で取引される「商品」の価格変動を測る統計
企業物価指数は英語で、
Corporate Goods Price Index(CGPI)
と呼ばれます。
日本銀行は企業物価指数について、
企業間で取引される商品(財)全般に関する価格変動を測定する物価指数
と説明しています。
ここで重要なのが、
「企業間」
と、
「商品(財)」
です。
消費者がスーパーや店舗などで支払う価格を見るCPIとは、取引段階が異なります。
企業物価指数は「1つの指数」ではない
企業物価指数を理解するうえで、最も重要なポイントです。
日本銀行の企業物価指数の基本分類指数は、
- 国内企業物価指数
- 輸出物価指数
- 輸入物価指数
の3つから構成されています。
| 基本分類指数 | 対象 |
|---|---|
| 国内企業物価指数 | 国内で生産した国内需要家向けの商品 |
| 輸出物価指数 | 日本から海外へ輸出する商品 |
| 輸入物価指数 | 海外から日本へ輸入する商品 |
したがって、厳密には、
「企業物価指数」と「輸入物価指数」を完全に別々の統計として扱うのは正確ではありません。
輸入物価指数は企業物価指数体系の一部です。
ニュースの「企業物価指数」は国内企業物価指数を指すことがある
一方、一般のニュースでは、
「企業物価指数が前年比○%上昇」
という表現で、実質的に、
国内企業物価指数
を取り上げているケースがあります。
そのため一般向けには、
国内企業物価指数と輸入物価指数の違い
として理解すると分かりやすいでしょう。
この記事でも、以下では特に断りがない場合、比較対象としての「企業物価」は主に国内企業物価指数を念頭に説明します。
「国内企業物価指数」とは?
国内企業物価指数は、
国内で生産され、国内需要家向けに取引される商品
の価格を測ります。
日本銀行によると、国内品については原則として、
生産者段階の出荷時点の価格
を調査します。
つまり、消費者が小売店で支払う価格よりも前の段階にある、
メーカーなどが企業へ販売する際の価格
を中心に捉える指標です。
国内企業物価指数は日本版PPI?
概ねそのように考えられます。
日本銀行は国内企業物価指数について、国際的な標準である、
PPI(Producer Price Index=生産者物価指数)
に概ね相当すると説明しています。
海外経済ニュースで、
「米国PPIが上昇」
と報じられる場合がありますが、日本では国内企業物価指数が似た役割を持つ指標です。
ただし、国によって対象範囲や統計制度が異なるため、完全に同じではありません。
「輸入物価指数」とは?
海外で生産され、日本へ輸入される商品の価格を測る
輸入物価指数は、
海外で生産され、日本国内へ輸入される商品
の価格変動を測る指数です。
日本銀行では原則として、商品が日本へ入着する段階での、
CIF価格
を調査しています。
CIFは、
Cost, Insurance and Freight
の略で、商品代金に加えて保険料・運賃などを含む取引条件です。
つまり輸入物価指数は、
海外の商品が日本へ到着する段階で、いくらになっているか
を見る指標と考えると分かりやすいでしょう。
国内企業物価指数と輸入物価指数を具体的に比較
たとえば、日本の食品メーカーが海外から小麦を輸入し、日本国内でパンを製造するとします。
この場合、
海外から輸入する小麦価格
は、輸入物価指数に関係します。
その小麦を使って日本国内でパンを製造し、メーカーが卸売企業などへ販売するときの価格は、
国内企業物価指数
に関係する可能性があります。
そしてスーパーなどで消費者に販売するパンの価格は、
CPI
に関係します。
単純化すると、
海外の小麦
↓
輸入物価指数
↓
日本企業の原材料コスト
↓
国内企業物価指数
↓
小売価格
↓
CPI
という流れを考えることができます。
輸入品の国内販売価格は国内企業物価指数に入る?
基本的には入りません。
国内企業物価指数の対象は、
国内で生産した国内需要家向けの商品
です。
海外で生産され日本へ輸入された商品については、
輸入物価指数
で捉えます。
そのため、
「日本国内で企業が買う商品なら、すべて国内企業物価指数に入る」
わけではありません。
輸入物価指数には「円ベース」と「契約通貨ベース」がある
輸入物価指数を見る際に非常に重要なのが、
円ベース
と、
契約通貨ベース
の違いです。
海外との取引は、
- 米ドル
- ユーロ
- 円
- その他の通貨
などで契約されます。
日本銀行は輸出入物価指数について、契約通貨ベースの指数と、それを円へ換算した円ベースの指数を公表しています。
「契約通貨ベース」とは?
契約通貨ベースは、取引契約で使われている通貨で見た価格変化です。
たとえば原油価格が、
1バレル80ドル → 100ドル
になれば、ドルベースで25%上昇します。
これは、
海外商品そのものの値上がり
を見るうえで役立ちます。
「円ベース」とは?
円ベースでは、外貨建ての取引価格を為替レートを使って円換算します。
そのため、
海外商品の値段
と、
為替変動
の両方が影響します。
ここが円安と輸入物価の関係を理解するポイントです。
円安になると輸入物価指数は上がる?
円ベースでは、他の条件が同じなら上昇する方向に働きます。
たとえば、海外の商品価格が、
100ドル
で変わらないとします。
1ドル100円なら、
100ドル × 100円 = 1万円
です。
しかし1ドル150円になると、
100ドル × 150円 = 1万5,000円
になります。
商品のドル価格は変わっていません。
それでも円で見れば50%高くなります。
したがって、
契約通貨ベースは横ばいでも、円ベース輸入物価指数が上昇する
ことがあります。
円高なら逆のことが起こる?
はい。
海外商品の外貨建て価格が変わらなくても、円高になれば円で支払う金額は減ります。
そのため円高は、他の条件が同じなら、
円ベース輸入物価を押し下げる方向
に働きます。
円安と海外価格上昇が同時に起きたら?
輸入物価への上昇圧力はさらに強くなる可能性があります。
たとえば、
海外商品価格が、
100ドル → 120ドル
になり、同時に為替が、
1ドル100円 → 150円
になったとします。
輸入価格は、
100ドル × 100円 = 1万円
から、
120ドル × 150円 = 1万8,000円
へ上昇します。
海外価格上昇と円安の両方が重なると、輸入企業の負担が大きく増える場合があります。
「円安=必ず輸入物価上昇」ではない
為替以外の要因もあるためです。
たとえば円安が進んでも、同時に原油や穀物などの海外価格が大幅に下落すれば、円ベース輸入物価がそれほど上がらない場合があります。
逆に円高でも、海外商品価格が大幅に上昇すれば輸入価格が上がる可能性があります。
そのため輸入物価を見るときは、
為替
と、
海外の商品価格
を分けて考えることが重要です。
原油価格上昇は輸入物価指数へどう影響する?
日本は原油など多くのエネルギー資源を海外から輸入しています。
そのため原油、天然ガス、石炭などの国際価格が上昇すると、輸入物価指数を押し上げる要因になります。
さらに、エネルギーは幅広い産業で利用されるため、
- 電力
- ガス
- 物流
- 化学製品
- 製造業
などのコストへ波及する可能性があります。
輸入物価指数が注目される理由の一つです。
輸入物価が上昇すると国内企業物価も上昇する?
上昇要因にはなりますが、必ず同じ割合で動くわけではありません。
たとえば輸入原材料が20%値上がりしても、商品の製造コストに占める原材料の割合が10%なら、完成品価格がそのまま20%上がるわけではありません。
また企業が、
- 利益を減らして吸収する
- 別の原材料へ切り替える
- 生産性を上げる
- 価格を一部だけ転嫁する
場合もあります。
したがって、
輸入物価 → 国内企業物価
には波及経路がありますが、一対一ではありません。
輸入物価上昇からCPIまでの波及
輸入物価が家計の物価へ波及する代表的な経路は、次のように整理できます。
原油・原材料価格上昇、円安
↓
輸入物価上昇
↓
企業の仕入れコスト上昇
↓
国内企業物価上昇
↓
企業が小売・サービス価格へ転嫁
↓
CPI上昇
です。
ただし、実際にはすべての段階で価格転嫁が行われるわけではありません。
「価格転嫁」が重要
価格転嫁とは、
原材料費・仕入れ価格・人件費などの上昇分を販売価格へ反映すること
です。
輸入価格が大幅に上がっても、企業が販売価格を据え置けば、コスト上昇は企業利益の減少として吸収されます。
この場合、CPIへの波及は小さくなります。
一方、多くの企業が価格転嫁を進めれば、消費者価格も上昇しやすくなります。
輸入物価指数はCPIの先行指標?
将来の物価上昇圧力を考える材料にはなりますが、単純な先行指標ではありません。
輸入物価上昇から小売価格の改定までには時間差がある場合があります。
そのため、輸入物価指数が先に上がり、その数か月後にCPIへ影響が出るケースもあります。
しかし、
- 価格転嫁されない
- 需要が弱い
- 輸入価格が短期間で下落する
- 政府の価格抑制策が行われる
などによって、CPIへの影響が小さくなることもあります。
したがって、
「輸入物価が5%上昇したから、数か月後にCPIも5%上昇する」
という関係ではありません。
輸入物価が下がっているのにCPIが上がることはある?
あります。
たとえば原材料価格や円安による輸入コスト上昇が一服したとしても、
- 過去のコスト上昇の価格転嫁
- 人件費上昇
- 家賃上昇
- 外食・宿泊などサービス価格上昇
が続いていれば、CPIは上昇する可能性があります。
輸入インフレが落ち着いた後に、国内の賃金・サービス価格が物価を押し上げる局面へ変わることもあります。
輸入物価と「コストプッシュ・インフレ」の関係
輸入物価上昇は、
コストプッシュ・インフレ
の代表的な要因の一つです。
たとえば、
- 原油高
- 穀物価格上昇
- 金属価格上昇
- 円安
によって輸入コストが増え、企業がそのコストを販売価格へ転嫁すれば、物価が上昇します。
ただし物価上昇が続く過程で、
- 賃金上昇
- 需要増加
- 企業の価格設定行動の変化
など国内要因が強くなれば、インフレの性格も変化していきます。
「輸入インフレ」とは?
海外価格上昇や通貨安によって輸入品の価格が上がり、それが国内物価を押し上げる現象を、
輸入インフレ
と表現することがあります。
輸入物価指数は、この輸入段階での価格上昇を確認する代表的な統計です。
ただし、
輸入物価上昇=国内全体が同じ程度インフレ
という意味ではありません。
国内物価への波及度合いを見る必要があります。
輸入物価指数とCPIの対象は大きく違う
| 輸入物価指数 | CPI |
|---|---|
| 海外から輸入される商品 | 家計が購入する財・サービス |
| 企業段階の取引価格 | 消費者段階の価格 |
| サービスは基本的に対象外 | サービスも対象 |
| 円ベースでは為替の影響が大きい | 為替の影響は価格転嫁を通じて間接的 |
そのため、輸入物価とCPIは大きく異なる動きをすることがあります。
輸入物価指数と「企業向けサービス価格指数」の違い
輸入物価指数は、
輸入される商品(財)
が対象です。
一方、企業同士で取引される、
- 運輸
- 広告
- 情報通信
- 不動産
- 専門サービス
などのサービス価格については、
企業向けサービス価格指数
があります。
企業物価を幅広く分析するには、商品とサービスの両方を見る必要があります。
輸入物価指数と「輸入価格」は同じ?
日常語としては近い意味で使われますが、輸入物価指数は多数の商品価格を一定の方法で集約した、
統計上の指数
です。
ある1商品の輸入価格が上がったからといって、輸入物価指数全体が同じ割合で上がるわけではありません。
各商品の取引額などに応じたウエイトがあるためです。
2026年時点の企業物価指数の基準は?
日本銀行が現在公表している企業物価指数は、
2020年基準
です。
国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数について2020年を100とする系列が公表されています。
一方、日本銀行は2026年6月に、
2025年基準改定
に向けた基本方針を公表しています。
物価指数は経済構造や取引内容の変化を反映するため、定期的に基準改定が行われます。
指数の「100」は価格が100円という意味?
違います。
物価指数の100は、基準時点の価格水準を100として表しているだけです。
たとえば輸入物価指数が、
100 → 120
になれば、基準時点と比べた価格水準が20%高いことを示します。
商品価格そのものが120円という意味ではありません。
企業物価指数の「前年比」と「前月比」の違い
ニュースでは、
前年同月比
と、
前月比
の両方が使われることがあります。
前年同月比は1年前と比較するため、中期的な物価変化を把握しやすい指標です。
一方、前月比は直近の変化を早く確認できますが、短期的な振れも大きくなります。
輸入物価の変化が急な場合には、前年比だけでなく前月比も確認すると転換点を把握しやすくなります。
「企業物価指数・輸入物価指数」で迷ったときの3秒判定
| 知りたいこと | 見る指標 |
|---|---|
| 企業間の商品価格全般 | 企業物価指数 |
| 国内生産品の企業間価格 | 国内企業物価指数 |
| 海外から入る商品の価格 | 輸入物価指数 |
| 日本から海外へ出す商品の価格 | 輸出物価指数 |
| 円安の輸入価格への影響 | 円ベース輸入物価指数 |
| 海外の商品価格そのものの変化を見たい | 契約通貨ベース輸入物価指数 |
| 家計が支払う物価 | CPI |
「企業物価指数」を使った例文
- 原材料価格の上昇によって企業物価指数が上昇した。
- 企業間の商品の価格変化を企業物価指数で確認する。
- 企業物価指数には国内・輸出・輸入の基本分類指数がある。
- 企業物価の上昇が消費者価格へ波及するか注目されている。
- 企業物価指数は日本銀行が作成している。
「輸入物価指数」を使った例文
- 円安によって円ベースの輸入物価指数が上昇した。
- 原油価格下落を受けて輸入物価指数が低下した。
- 契約通貨ベースの輸入物価指数と円ベースを比較する。
- 輸入物価指数の上昇が企業の仕入れコストを押し上げた。
- 輸入物価指数からCPIへの波及には価格転嫁の程度が影響する。
よくある間違い1:「企業物価指数と輸入物価指数は完全に別の統計」と思う
輸入物価指数は、企業物価指数の基本分類指数の一つです。
国内企業物価指数、輸出物価指数と合わせて企業物価指数体系を構成しています。
よくある間違い2:「企業物価指数=国内企業物価指数」と必ず考える
一般ニュースではそのような意味で使われる場合がありますが、厳密な企業物価指数体系には輸出・輸入物価指数も含まれます。
よくある間違い3:「輸入品も国内企業物価指数に入る」と思う
国内企業物価指数の対象は国内で生産された国内需要家向けの商品です。
輸入品は輸入物価指数で捉えます。
よくある間違い4:「円安になれば海外の商品価格自体が上がった」と思う
円安によって円ベース価格が上昇しても、契約通貨ベースの価格は変わっていないことがあります。
為替要因と海外商品価格要因を分けることが重要です。
よくある間違い5:「輸入物価上昇率とCPI上昇率は同じになる」と思う
輸入物価は企業段階、CPIは消費者段階です。
対象商品も異なり、価格転嫁の程度も違うため、上昇率は一致しません。
よくある間違い6:「輸入物価が下がればCPIもすぐ下がる」と思う
企業が過去のコスト上昇を後から価格転嫁したり、人件費やサービス価格が上昇したりすれば、輸入物価低下後もCPIが上昇する場合があります。
よくある間違い7:「企業物価指数にはサービスも全部入る」と思う
企業物価指数は主に商品(財)の価格指数です。
企業向けサービスについては、別途「企業向けサービス価格指数」があります。
「企業物価指数」と「輸入物価指数」に関するよくある質問
Q1. 企業物価指数と輸入物価指数の一番簡単な違いは?
企業物価指数は企業間の商品価格を測る統計体系で、輸入物価指数はその中で輸入商品の価格を測る系列です。
Q2. 国内企業物価指数と輸入物価指数の違いは?
国内企業物価指数は国内で生産した国内需要家向けの商品、輸入物価指数は海外で生産され日本へ輸入される商品を対象とします。
Q3. 円安になると輸入物価指数は必ず上がりますか?
円ベースでは上昇方向に働きますが、海外の商品価格が大幅に下落すれば、必ず上昇するとは限りません。
Q4. 契約通貨ベースを見る意味は何ですか?
為替変動の影響をある程度切り分け、海外の商品価格そのものが上がったのか下がったのかを分析しやすくなります。
Q5. 円ベースと契約通貨ベースの差は何を表しますか?
大きな差がある場合、為替変動の影響が重要な要因になっている可能性があります。
ただし通貨構成なども関係するため、単純に差のすべてをドル円だけで説明できるわけではありません。
Q6. 輸入物価が上がると国内企業物価も上がりますか?
輸入原材料を多く使う企業では上昇要因になります。
ただし企業がコストを吸収する場合もあり、波及の程度は業種や企業によって異なります。
Q7. 輸入物価が上がるとCPIも上がりますか?
価格転嫁を通じてCPIを押し上げる可能性があります。
ただし波及には時間差があり、同じ割合で上昇するわけではありません。
Q8. 輸入物価指数にサービスは含まれますか?
企業物価指数は商品(財)を中心とする指数です。
サービス価格については別の物価統計を確認する必要があります。
Q9. 日本の企業物価指数は現在何年基準ですか?
2026年9月時点では2020年基準の企業物価指数が公表されています。
日本銀行は2025年基準への次回改定に向けた基本方針も公表しています。
Q10. 経済ニュースでは何を一緒に見るとよいですか?
輸入物価だけでなく、
- 国内企業物価指数
- CPI
- 為替レート
- 原油・商品価格
- 企業向けサービス価格指数
- 賃金
を組み合わせると、物価上昇の原因と波及経路を理解しやすくなります。
まとめ
「企業物価指数」と「輸入物価指数」は似た言葉ですが、関係性を整理すると理解しやすくなります。
| 企業物価指数 | 輸入物価指数 |
|---|---|
| 企業間の商品価格を測る統計体系 | 企業物価指数の基本分類指数の一つ |
| 国内・輸出・輸入の3分類が中心 | 海外から日本へ輸入する商品が対象 |
| 日本銀行が作成 | 日本銀行が作成 |
| 企業段階の物価を見る | 輸入段階の価格変化を見る |
最も重要なのは、
「企業物価指数」と「国内企業物価指数」を混同しないこと
です。
企業物価指数という統計体系には、
国内企業物価指数
輸出物価指数
輸入物価指数
があります。
そして比較すると、
国内企業物価指数=国内で作った商品の国内企業向け価格
輸入物価指数=海外から日本へ入る商品の価格
です。
また輸入物価指数では、
契約通貨ベース
と、
円ベース
を区別することが重要です。
円安が進めば海外価格が変わっていなくても、円ベースの輸入価格は上昇する可能性があります。
そのため、
契約通貨ベースは横ばい・円ベースは上昇
という場合には、為替が輸入コストを押し上げている可能性を考えることができます。
さらに物価の波及を整理すると、
海外価格・為替
↓
輸入物価指数
↓
企業の仕入れコスト
↓
国内企業物価指数
↓
価格転嫁
↓
CPI
という流れが考えられます。
ただし、この波及は自動的ではありません。
企業の利益吸収、競争環境、需要、人件費、政策などによって、途中で弱まったり時間差が生じたりします。
関連用語まで整理すると、
企業物価指数=企業間で取引される商品価格の統計体系
国内企業物価指数=国内生産・国内需要家向け商品の価格
輸出物価指数=日本から海外へ輸出する商品の価格
輸入物価指数=海外から日本へ輸入する商品の価格
契約通貨ベース=取引契約通貨で見た輸出入価格
円ベース=為替を反映して円換算した輸出入価格
CPI=家計が購入する財・サービスの価格
企業向けサービス価格指数=企業間で取引されるサービスの価格
となります。
経済ニュースで「輸入物価が上昇した」と聞いたら、
「海外価格が上がったのか」「円安の影響なのか」「その後、国内企業物価やCPIへ転嫁されているのか」
まで確認すると、物価上昇の構造をより正確に理解できるでしょう。
参考リンク・出典
-
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)のFAQ」
― 企業物価指数を企業間で取引される商品全般の価格指数と定義し、国内企業物価指数・輸出物価指数・輸入物価指数の対象範囲を解説 -
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)の概要」
― 国内企業物価指数、輸出物価指数、輸入物価指数の3つを企業物価指数の基本分類指数として整理し、統計の目的・機能を解説 -
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)」
― 企業物価指数の月次公表データ、国内企業物価指数・輸出物価指数・輸入物価指数などの時系列データを掲載 -
日本銀行「企業物価指数(2020年基準)の解説・関連資料」
― 調査価格、価格調査段階、ウエイト、指数計算、輸出入物価指数の契約通貨別構成などを詳しく掲載
※厳密には「輸入物価指数」は企業物価指数の基本分類指数の一つです。本記事では、一般ニュースで「企業物価指数」が国内企業物価指数を指すことが多い点も踏まえ、「国内企業物価指数」と「輸入物価指数」の実務的な違いも併せて説明しています。
※円ベースの輸入物価指数は為替変動の影響を受けます。一方、契約通貨ベースでは海外の商品価格そのものの変化を把握しやすくなります。ただし輸入契約には複数通貨が使われるため、両指数の差を単純にドル円レートだけで説明できない場合があります。
※輸入物価上昇から国内企業物価・CPIへの波及には時間差があり、価格転嫁の程度も企業・業種・商品によって異なります。輸入物価指数だけで将来のCPI上昇率を機械的に予測することはできません。
※2026年9月時点で日本銀行が公表している企業物価指数は2020年基準です。日本銀行は2026年6月に2025年基準改定に向けた基本方針を公表しており、将来は基準・品目・ウエイト等が変更される可能性があります。
