「会社から退職勧奨を受けた」「上司から退職を強要された」など、「退職勧奨」と「退職強要」は、会社から退職を求められる場面で使われる言葉です。
どちらも会社が従業員に退職を働きかける点では共通していますが、法律上の扱いには大きな違いがあります。
結論からいうと、「退職勧奨」は会社が従業員に自発的な退職を勧めること、「退職強要」は従業員の自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ることです。
例えば、会社が従業員に経営上の事情を説明し、退職条件を提示したうえで、退職する意思があるか尋ねる場合は、退職勧奨に当たります。
一方、従業員が退職を拒否しているにもかかわらず、執拗に面談を繰り返したり、退職届を書くまで帰さないと迫ったりする場合は、違法な退職強要が問題になります。
ただし、退職勧奨を複数回行ったという事実だけで、直ちに違法と判断されるわけではありません。退職を勧める目的や方法、回数、従業員の意思など、具体的な事情によって判断されます。
この記事では、「退職勧奨」と「退職強要」の意味や違いを比較表で整理し、退職勧奨を断れるのか、違法になる可能性がある言動、退職届を提出してしまった場合、失業給付の扱い、相談窓口まで詳しく解説します。
- 「退職勧奨」と「退職強要」の違い【結論】
- 【徹底比較】「退職勧奨」と「退職強要」の違いを比較表で整理
- 「退職勧奨」とは?意味と正しい使い方
- 「退職強要」とは?意味と正しい使い方
- 「退職勧奨」と「退職強要」の決定的な違い
- どこから違法?退職強要が問題となる代表的なケース
- 実際に違法な退職勧奨が問題となった裁判例
- 【実践】退職勧奨を受けたときの対処法
- 退職勧奨を断るときのメール例文
- 退職届を提出してしまった場合は取り消せる?
- 退職勧奨に応じた場合、失業給付は会社都合になる?
- 企業が退職勧奨を行う際の注意点
- 「退職勧奨」「退職強要」と似た言葉の違い
- 「退職勧奨」と「退職強要」の3秒判定
- よくある間違いと注意点
- 「退職勧奨」と「退職強要」の例文12選
- FAQ|「退職勧奨」と「退職強要」のよくある質問
- まとめ|退職勧奨は自由な意思による選択、退職強要は不当な圧力が問題になる
- 参考資料・出典
「退職勧奨」と「退職強要」の違い【結論】
「退職勧奨」と「退職強要」を区別するうえで重要なのは、従業員が退職するかどうかを自由に判断できる状態にあるかという点です。
- 退職勧奨:会社が従業員に対し、自発的に退職するよう勧めること。
- 退職強要:従業員の自由な意思を妨げるような言動や働きかけによって、退職を迫ること。
例えば、会社が事業の縮小を理由に、従業員に退職を勧めることがあります。
退職金の上乗せや再就職支援などを提示したうえで、従業員が自分の意思で応募するかどうかを決められる場合は、退職勧奨として行われることがあります。
しかし、従業員が退職したくないと明確に伝えているにもかかわらず、繰り返し長時間の面談を行い、退職するよう圧力をかける場合は、違法な権利侵害となる可能性があります。
厚生労働省も、退職勧奨を受けた労働者は、理由にかかわらず退職を拒否できると説明しています。
【徹底比較】「退職勧奨」と「退職強要」の違いを比較表で整理
| 比較項目 | 退職勧奨 | 退職強要 |
|---|---|---|
| 読み方 | たいしょくかんしょう | たいしょくきょうよう |
| 基本的な意味 | 会社が従業員に自発的な退職を勧めること | 自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ること |
| 主な特徴 | 退職という選択肢を提示する | 退職を断りにくい状況をつくり、退職を迫る |
| 従業員の意思 | 応じるか拒否するか自由に判断できる | 自由な意思決定が妨げられていることが問題となる |
| 法的な扱い | 適切な方法であれば、直ちに違法とはならない | 具体的な事情によって違法な権利侵害となる場合がある |
| 代表的な場面 | 退職条件を提示し、本人の希望を確認する | 拒否後も執拗に退職を迫る、脅迫的な言動を用いる |
| 退職の成立 | 本人の自由な意思に基づく合意などが必要 | 意思表示の有効性や損害賠償などが問題となる場合がある |
| 拒否できるか | 拒否できる | 退職する義務が生じるわけではなく、拒否や相談が可能 |
| 判断する際のポイント | 説明内容、退職条件、本人の意思など | 言動の内容、回数、面談時間、拒否後の対応など |
なお、「退職強要」は、退職勧奨と対比して使われる一般的な表現です。法律上、すべての言動を一律に分類する正式な基準があるわけではありません。
退職を求める行為が違法になるかどうかは、具体的な事実関係に基づいて判断されます。
「退職勧奨」とは?意味と正しい使い方
退職勧奨は、会社が自発的な退職を勧めること
「退職勧奨」は、会社が従業員に対して、自分の意思で退職するように勧めることです。
例えば、事業の縮小によって人員を削減する必要が生じた企業が、従業員に退職を勧める場合があります。
会社は、退職金の上乗せや再就職支援などの条件を提示し、従業員が退職を希望するかどうかを確認することがあります。
ただし、退職勧奨は、会社が従業員に退職という選択肢を提示する行為であり、それ自体によって労働契約が終了するわけではありません。
退職勧奨には応じなくてもよい
退職勧奨を受けた従業員は、退職するかどうかを自分の意思で判断できます。
例えば、会社から退職を勧められたとしても、現在の職場で働き続けたいと考えている場合は、退職勧奨を拒否することができます。
退職勧奨を拒否したという理由だけで、退職する義務が発生するわけではありません。
また、退職勧奨を受けたその場で、必ず回答しなければならないというものでもありません。
退職勧奨に応じた場合は、合意退職となることがある
会社から退職勧奨を受けた従業員が、自分の意思で退職することに同意した場合は、会社と従業員の合意によって労働契約を終了させることがあります。
このような退職は、一般的に「合意退職」または「合意解約」と呼ばれます。
ただし、自由な意思で同意したといえるかどうかが重要です。
退職する意思がないのに、会社からの圧力によって退職届を書かされたような場合には、意思表示の有効性が問題となる可能性があります。
「退職勧奨」の例文
- 会社から退職勧奨を受けたが、引き続き勤務することを希望した。
- 人員削減に伴い、会社が一部の従業員に退職勧奨を行った。
- 退職勧奨の条件として、割増退職金が提示された。
- 退職勧奨を受けたため、家族と相談することにした。
- 退職勧奨に応じるかどうか、慎重に検討している。
「退職強要」とは?意味と正しい使い方
退職強要は、自由な意思を妨げるような退職の働きかけ
「退職強要」は、従業員の自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ることです。
例えば、従業員が退職を拒否しているにもかかわらず、退職するまで面談を続けると告げたり、脅迫的な言動を用いたりする場合が考えられます。
ただし、退職勧奨が違法な退職強要に当たるかどうかは、具体的な事情によって異なります。
退職を勧める回数だけでなく、面談の時間や内容、従業員が拒否した後の対応などを含めて判断されます。
退職強要は違法な権利侵害となる場合がある
会社が従業員に退職を勧めること自体は、直ちに違法になるわけではありません。
しかし、退職を勧める方法が社会通念上相当と認められる範囲を超え、従業員の自由な意思決定を妨げる場合は、違法な権利侵害となることがあります。
例えば、退職を拒否した従業員に対し、執拗に面談を繰り返し、心理的な圧力を加える場合です。
このような退職勧奨について、会社側の損害賠償責任が認められた裁判例もあります。
退職強要の判断では、拒否後の会社の対応も重要
従業員が退職を希望しないと明確に伝えた場合、会社がその意思をどのように扱ったかは重要な判断材料になります。
例えば、退職を拒否した後も、短期間に何度も長時間の面談が行われ、退職するまで勧奨を続けると告げられた場合などです。
ただし、本人が一度拒否した後に、会社が再び退職について話し合ったという事実だけで、必ず違法になるわけではありません。
具体的な言動の内容や経緯などを踏まえて判断されます。
「退職強要」の例文
- 退職を拒否した後も執拗に面談が行われ、退職強要ではないかと疑問を感じた。
- 退職届を書くまで帰さないと迫られ、退職強要の可能性について相談した。
- 会社による働きかけが、違法な退職強要に当たるかどうかが争われた。
- 退職強要が疑われる言動について、日時と内容を記録した。
- 退職強要の問題について、総合労働相談コーナーに相談した。
「退職勧奨」と「退職強要」の決定的な違い
違い1:従業員が自由に断れる状態にあるか
退職勧奨では、従業員が退職するかどうかを自由に選択できることが重要です。
会社から退職を勧められても、従業員は引き続き働くことを希望できます。
一方、退職強要が問題となる場面では、従業員の自由な意思決定が妨げられている可能性があります。
例えば、退職を拒否したにもかかわらず、拒否を認めない態度で退職を迫り続ける場合などです。
違い2:働きかけの内容や方法が異なる
適切な退職勧奨では、退職を勧める理由や条件などが説明され、従業員に判断する機会が与えられます。
一方、退職強要が疑われる場合には、脅迫的な言動、執拗な面談、退職を拒否したことを理由とする不利益な扱いの示唆などが問題になることがあります。
ただし、退職勧奨が違法となるかどうかは、個別の事情に応じた判断が必要です。
違い3:違法性や損害賠償が問題になる場合がある
退職勧奨そのものは、従業員が自由な意思で応じるかどうかを判断できる限り、直ちに違法となるものではありません。
しかし、退職を強要するような言動によって、従業員の自由な意思決定が妨げられたり、名誉感情が害されたりした場合には、不法行為に基づく損害賠償責任が問題となることがあります。
また、強い圧力の下で退職の意思表示を行った場合は、その意思表示自体の有効性が争われる可能性もあります。
どこから違法?退職強要が問題となる代表的なケース
ケース1:退職を拒否した後も執拗に面談を繰り返す
退職勧奨を拒否した従業員に対し、会社が繰り返し面談を行う場合があります。
再度の話し合いが必要になることもあるため、複数回の面談が直ちに違法になるわけではありません。
しかし、拒否の意思が明確であるにもかかわらず、退職するまで勧奨を続けると告げたり、長時間の面談を何度も繰り返したりする場合は、違法な権利侵害となる可能性があります。
ケース2:退職届を書くまで帰さないと迫る
従業員に対して、退職届を提出するまで面談を終了しないと告げたり、自由に帰れない状況に置いたりする場合は、重大な問題となる可能性があります。
退職について同意するかどうかは、従業員が自由な意思で判断する必要があります。
退職を迫る過程で脅迫的な言動などが行われた場合には、民事上の問題だけでなく、具体的な行為によっては別の法律上の問題が生じる可能性もあります。
ケース3:退職を拒否したら不利益な扱いをすると告げる
例えば、従業員が退職を拒否した際に、不合理な配置転換や、業務上の必要性がない仕事の取り上げなどを示唆する場合があります。
ただし、配置転換そのものが常に違法になるわけではありません。
実際にどのような理由で配置転換などが行われたのか、その必要性や従業員への影響などを踏まえて判断されます。
退職を迫るために不利益な扱いを示唆したり、実施したりする場合は、違法性が問題となる可能性があります。
ケース4:人格を否定するような発言を繰り返す
退職勧奨の場面では、会社が従業員に対して、業務上の評価や人員配置の事情などを説明することがあります。
しかし、必要な説明の範囲を超え、人格を否定するような発言や、名誉感情を害するような言動を繰り返す場合は、違法な権利侵害となる可能性があります。
また、発言内容や職場での関係などによっては、パワーハラスメントの問題にも関係する場合があります。
実際に違法な退職勧奨が問題となった裁判例
下関商業高校事件とは?
退職勧奨の違法性を考えるうえで代表的な裁判例が、最高裁判所の1980年7月10日判決である「下関商業高校事件」です。
この事件では、退職を拒否している市立高校の教員に対して、教育委員会側が長期間にわたり退職勧奨を行っていました。
その後、勧奨の方法が強引になり、繰り返し出頭を命じて長時間の勧奨を行うなどの事情がありました。
裁判では、こうした働きかけが違法な権利侵害に当たるかどうかが争われました。
退職を勧めること自体ではなく、その方法が問題となった
この事件では、退職勧奨そのものが一律に禁止されると判断されたわけではありません。
問題となったのは、退職を拒否している教員に対して、執拗な勧奨や心理的な圧力を加えるなどした具体的な方法です。
最高裁判所は、使用者側の上告を棄却し、損害賠償を認めた原審の判断が維持されました。
この裁判例からも、退職勧奨では、労働者の自由な意思を尊重し、社会通念上相当と認められる方法で行うことが重要だとわかります。
【実践】退職勧奨を受けたときの対処法
1. その場で退職に同意する必要はない
会社から退職を勧められたとしても、その場で退職するかどうかを決める必要はありません。
例えば、「退職の意思は現時点ではありません」「提示された条件を確認し、検討してから回答します」と伝える方法があります。
退職するかどうかは、現在の収入や生活費、転職の可能性なども踏まえて判断することが大切です。
2. 退職を希望しない場合は明確に伝える
退職する意思がない場合は、会社にその意思を明確に伝えましょう。
例えば、「退職する意思はありません。引き続き勤務を希望します」と伝える方法があります。
口頭だけでなく、必要に応じてメールなどで意思を伝え、記録を残しておくことも考えられます。
3. 面談の内容を記録する
退職勧奨を受けた際には、いつ、誰から、どのような説明や働きかけがあったのかを記録しておくとよいでしょう。
例えば、面談の日時や場所、参加者、所要時間、提示された退職条件、自分がどのように回答したかなどです。
後から事実関係を確認する必要が生じた場合に備え、メールや書面なども保存しておきましょう。
4. 退職条件が提示された場合は書面で確認する
会社から退職金の上乗せや再就職支援などの条件を示された場合は、その内容を確認しましょう。
例えば、退職予定日や退職金の額、支給時期、再就職支援の利用条件などです。
口頭で説明された内容と、実際に提出する書類の内容が異なる可能性もあるため、必要に応じて書面での説明を求める方法があります。
5. 困った場合は公的な相談窓口を利用する
退職勧奨が執拗に行われている場合や、退職を強要されていると感じる場合は、公的な相談窓口などに相談する方法があります。
例えば、都道府県労働局の総合労働相談コーナーでは、退職勧奨や解雇、嫌がらせなど、職場でのさまざまな労働問題について相談できます。
相談する際には、面談の記録や会社からの通知、退職条件に関する資料などを整理しておくと、状況を説明しやすくなります。
問題が起きたときの行動を整理する際には、「対応」と「対処」の違いも参考になります。
退職勧奨を断るときのメール例文
退職する意思がないことを伝える場合
退職勧奨を受けたものの、退職する意思がない場合は、曖昧な表現を避け、簡潔に伝えるとよいでしょう。
例えば、次のような文章です。
「先日はお時間をいただき、ありがとうございました。ご説明いただいた内容を検討しましたが、現時点で退職する意思はありません。引き続き勤務を希望しておりますので、よろしくお願いいたします。」
退職を希望しない意思を明確に伝えることが重要です。
退職条件を検討する時間が必要な場合
会社から退職条件を提示されたものの、すぐに判断できない場合は、検討する時間が必要であることを伝える方法があります。
例えば、次のような文章です。
「ご提示いただいた退職条件について、内容を確認したうえで検討したいと考えております。現時点では退職に同意しておりませんので、回答までお時間をいただけますと幸いです。」
ただし、退職する意思がない場合は、検討中という表現によって誤解を招かないよう、現在の意思を明確にすることも大切です。
繰り返し退職を求められている場合
退職しない意思を伝えているにもかかわらず、繰り返し退職を求められている場合は、必要に応じて自分の意思を文書で残す方法があります。
例えば、次のような文章です。
「これまでの面談でもお伝えしたとおり、退職する意思はありません。引き続き勤務を希望しておりますので、退職を前提とした面談については、今後の必要性をご説明いただけますでしょうか。」
ただし、具体的な事情によっては、会社への返信方法などについて専門家に相談することも考えられます。
退職届を提出してしまった場合は取り消せる?
合意退職の申し込みなら、承諾前に撤回できる場合がある
会社から退職勧奨を受け、退職願などを提出した場合、その書類が合意退職の申し込みに当たることがあります。
この場合、会社の権限ある人が承諾する前であれば、原則として撤回できる場合があります。
一方、既に合意が成立している場合は、自由に撤回できるとは限りません。
一方的な辞職の意思表示では、到達後の撤回が難しい場合がある
提出した退職届などが、一方的な辞職の意思表示に当たる場合は、その意思表示が会社に到達した後、原則として自由に撤回することが難しくなります。
ただし、退職願や退職届という名称だけで、法律上の性質が必ず決まるわけではありません。
書類の記載内容や提出した経緯、会社とのやり取りなどを踏まえて判断する必要があります。
強い圧力の下で提出した場合は、意思表示の有効性が問題になることがある
退職する意思がないにもかかわらず、会社からの強い圧力によって退職届を提出した場合には、退職の意思表示が有効かどうかが問題になる可能性があります。
例えば、脅迫に当たるような行為によって退職の意思表示を行った場合は、民法上の取消しなどが問題になることがあります。
ただし、退職勧奨を受けた後に提出したという事実だけで、退職届が当然に無効となるわけではありません。
具体的な事情に応じて、法律の専門家などに相談することが重要です。
また、会社による正式な承諾と、単に内容を理解したことを意味する了承は、日常的な日本語でも意味が異なります。関連する表現については、「承認」と「了承」の違いも参考になります。
退職勧奨に応じた場合、失業給付は会社都合になる?
退職勧奨による離職は特定受給資格者に該当する場合がある
雇用保険では、会社から直接または間接に退職するよう勧められ、それによって離職した人は、一定の条件の下で「特定受給資格者」に該当します。
ただし、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度などに自ら応募して離職した場合は、退職勧奨による離職の類型には該当しません。
退職勧奨に応じたことと、常設の早期退職制度を利用したことは、雇用保険上の離職理由を考える際に区別する必要があります。
会社が「自己都合退職」と記載しても最終決定ではない
会社から退職勧奨を受けたにもかかわらず、離職票の離職理由が「自己都合退職」とされている場合があります。
このような場合、労働者はハローワークに実際の退職の経緯を説明し、離職理由について異議を申し出ることができます。
ハローワークでは、会社と本人の双方から事情を確認するなどして、離職理由を判断します。
退職勧奨を受けた際のメールや通知書、面談記録などがあれば、必要に応じて整理しておきましょう。
失業給付の金額や日数は個別の条件によって異なる
特定受給資格者に該当する場合でも、雇用保険の基本手当を受けるためには、所定の受給資格を満たす必要があります。
また、基本手当の支給額や所定給付日数は、退職前の賃金、年齢、雇用保険の被保険者期間、離職理由などによって異なります。
具体的な受給の可否や支給額などについては、ハローワークで確認しましょう。
企業が退職勧奨を行う際の注意点
退職勧奨の目的と理由を明確にする
会社が退職勧奨を行う場合は、なぜ退職を勧めるのか、どのような条件を提示するのかを整理することが重要です。
例えば、経営上の事情や組織再編などを背景とする場合には、その内容について説明することが考えられます。
ただし、退職を勧める理由があるというだけで、強引な方法が正当化されるわけではありません。
従業員が拒否する自由を尊重する
退職勧奨は、従業員に自発的な退職を勧める行為です。
そのため、従業員が退職を拒否する自由を尊重する必要があります。
例えば、退職する意思がないと明確に伝えた従業員に対して、退職するまで面談を繰り返すといった方法は、違法性が問題になる可能性があります。
面談の方法や回数に注意する
退職勧奨を行う際には、面談の時間や回数、参加者、発言内容などにも注意が必要です。
例えば、必要以上に長時間の面談を繰り返したり、複数人で一人の従業員に圧力をかけたりする場合は、問題となる可能性があります。
適切な説明と、従業員が冷静に判断できる環境を確保することが重要です。
退職条件と手続きを明確にする
退職金の上乗せや再就職支援などを提示する場合は、具体的な条件を明らかにする必要があります。
また、退職する意思がある場合でも、実際の合意内容や退職日などについて、誤解が生じないようにすることが重要です。
退職勧奨への同意と、労働契約を終了させる正式な合意がどの段階で成立するのかについても、慎重に確認する必要があります。
「退職勧奨」「退職強要」と似た言葉の違い
「退職勧奨」と「解雇」の違い
「解雇」は、会社が労働契約を一方的に終了させることです。
一方、退職勧奨は、会社が従業員に自発的な退職を勧めることであり、それだけで労働契約が終了するわけではありません。
例えば、会社から退職を勧められても、従業員は拒否することができます。
一方、解雇の場合は、会社による一方的な契約終了の意思表示であり、その有効性について労働契約法などのルールが関係します。
「退職勧奨」と「希望退職」の違い
「希望退職」は、会社が一定の条件を示し、退職を希望する従業員を募集することです。
一方、退職勧奨は、会社が従業員に退職するよう勧める行為です。
希望退職者の募集に伴い、会社が個別の従業員に退職を勧める場合もありますが、両者は同じ意味ではありません。
また、雇用保険上の離職理由についても、募集の背景や退職の経緯などによって扱いが異なる場合があります。
「退職強要」と「パワーハラスメント」の違い
「パワーハラスメント」は、職場における優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するものです。
一方、退職強要は、自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ることを意味します。
退職を迫る過程で、職場での優越的な関係を利用して人格を否定するような発言を繰り返す場合などは、退職強要とパワーハラスメントの両方が問題になる可能性があります。
ただし、具体的な行為がどの法律上の問題に当たるかは、個別の事情によって判断されます。
「退職強要」と「脅迫」の違い
「脅迫」は、相手に害悪を告知することなどによって、恐怖を与える行為です。
一方、退職強要は、従業員の自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ることです。
退職を迫る際に脅迫的な言動が行われる場合もありますが、退職強要と呼ばれる行為のすべてが、刑法上の脅迫罪に当たるわけではありません。
「退職勧奨」と「合意退職」の違い
退職勧奨は、会社が従業員に退職を勧める行為です。
一方、合意退職は、会社と従業員が合意して労働契約を終了させることです。
退職勧奨を受けた従業員が自由な意思で退職に同意した場合には、合意退職となることがあります。
ただし、退職勧奨を受けたという事実だけで、合意退職が成立するわけではありません。
「退職勧奨」と「退職強要」の3秒判定
| 伝えたい内容 | 使いやすい言葉 |
|---|---|
| 会社が従業員に自発的な退職を勧める | 退職勧奨 |
| 退職条件を提示し、本人の希望を尋ねる | 退職勧奨 |
| 退職を拒否した後も、執拗に退職を迫る | 退職強要が問題となる可能性 |
| 退職届を書くまで帰さないと迫る | 退職強要が問題となる可能性 |
| 会社が従業員を一方的に辞めさせる | 解雇 |
| 会社が退職希望者を募集する | 希望退職 |
| 会社と従業員が合意して退職する | 合意退職 |
| 従業員が自分の意思で労働契約を終了させる | 辞職 |
退職を勧める行為そのものを指すなら「退職勧奨」、自由な意思を妨げるような働きかけを指すなら「退職強要」が基本的な使い分けです。
ただし、違法性については、実際の言動や経緯などを踏まえて判断する必要があります。
よくある間違いと注意点
「退職勧奨を受けたら、必ず退職しなければならない」は誤り
退職勧奨は、会社が従業員に自発的な退職を勧める行為です。
そのため、従業員は退職勧奨に応じることも、拒否することもできます。
「退職勧奨はすべて違法」は誤り
会社が従業員に退職を勧めること自体は、直ちに違法となるわけではありません。
ただし、退職を勧める方法が社会通念上相当な範囲を超え、従業員の自由な意思を妨げる場合には、違法な権利侵害となることがあります。
「退職を一度拒否した後の面談は、すべて違法」とは限らない
退職を拒否した後に再び面談が行われたという事実だけで、必ず違法になるわけではありません。
しかし、拒否の意思が明確であるにもかかわらず、執拗に退職を迫るような場合は、違法性が問題となる可能性があります。
「退職届を提出したら、どのような場合も撤回できない」は誤り
退職届などの法的な扱いは、記載内容や提出した経緯などによって異なります。
例えば、合意退職の申し込みであれば、会社の承諾前に撤回できる場合があります。
また、強い圧力の下で提出した場合には、意思表示の有効性が問題となる可能性があります。
「離職票が自己都合なら、必ず自己都合退職になる」は誤り
雇用保険上の離職理由は、会社が記載した内容だけで決まるわけではありません。
実際には退職勧奨による離職だったにもかかわらず、離職票が自己都合退職とされている場合は、ハローワークに事情を説明することができます。
「退職勧奨」と「退職強要」の例文12選
「退職勧奨」を使った例文
- 会社から退職勧奨を受けたが、引き続き勤務することを希望した。
- 人員削減に伴い、会社が一部の従業員に退職勧奨を行った。
- 退職勧奨の条件として、割増退職金が提示された。
- 退職勧奨を受けたため、家族と相談することにした。
- 退職勧奨に応じるかどうか、慎重に検討している。
- 退職勧奨に応じた場合の離職理由について、ハローワークに確認した。
「退職強要」を使った例文
- 退職を拒否した後も執拗に面談が行われ、退職強要ではないかと疑問を感じた。
- 退職届を書くまで帰さないと迫られ、退職強要の可能性について相談した。
- 会社による働きかけが、違法な退職強要に当たるかどうかが争われた。
- 退職強要が疑われる言動について、日時と内容を記録した。
- 退職強要を受けたとして、労働者が損害賠償を求めた。
- 退職強要の問題について、総合労働相談コーナーに相談した。
FAQ|「退職勧奨」と「退職強要」のよくある質問
Q1. 「退職勧奨」と「退職強要」は同じ意味ですか?
同じ意味ではありません。退職勧奨は、会社が従業員に自発的な退職を勧めることです。一方、退職強要は、従業員の自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ることです。
Q2. 退職勧奨は断れますか?
断れます。厚生労働省は、退職勧奨を受けた労働者は、理由にかかわらず、退職するかどうかを自由に選択できると説明しています。退職する意思がない場合は、その意思を明確に伝えることが大切です。
Q3. 退職勧奨は違法ですか?
退職を勧めること自体が、直ちに違法になるわけではありません。ただし、退職を拒否している従業員に対して執拗に退職を迫るなど、自由な意思決定を妨げる場合は、違法な権利侵害となることがあります。
Q4. 退職勧奨を何回も行うと違法になりますか?
面談の回数だけで、一律に違法性が決まるわけではありません。退職を勧める目的や方法、面談時間、従業員が拒否した後の対応などを踏まえて判断されます。ただし、多数回かつ長期間にわたる執拗な退職勧奨について、違法な権利侵害が認められた裁判例があります。
Q5. 退職届を提出してしまった場合は撤回できますか?
書類の内容や提出した経緯などによって異なります。合意退職の申し込みに当たる場合は、原則として会社の承諾前に撤回できる場合があります。また、強い圧力の下で提出した場合には、退職の意思表示そのものが有効かどうかが問題になる可能性があります。
Q6. 退職勧奨に応じた場合、会社都合退職になりますか?
退職勧奨による離職は、雇用保険上、特定受給資格者に該当する場合があります。ただし、従来から恒常的に設けられている早期退職優遇制度に自ら応募した場合などは、取り扱いが異なります。具体的な離職理由はハローワークが判断します。
Q7. 退職勧奨を拒否したら、解雇されますか?
退職勧奨を拒否したことだけで、会社が自由に解雇できるわけではありません。解雇については、労働契約法第16条などに基づき、客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性などが問題となります。具体的な事情によって判断が異なります。
Q8. 退職強要を受けた場合、どこに相談できますか?
都道府県労働局の総合労働相談コーナーなどに相談する方法があります。また、労働組合や弁護士などに相談することも考えられます。相談する際には、面談記録や会社からの通知、メールなどを整理しておくとよいでしょう。
Q9. 退職勧奨とパワーハラスメントは関係がありますか?
関係する場合があります。例えば、職場での優越的な関係を背景として、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動により、従業員の就業環境が害される場合などです。ただし、具体的な行為がパワーハラスメントに当たるかどうかは、個別の事情によって判断されます。
まとめ|退職勧奨は自由な意思による選択、退職強要は不当な圧力が問題になる
「退職勧奨」と「退職強要」は、どちらも会社が従業員に退職を働きかける場面で使われますが、意味と法律上の扱いが異なります。
- 退職勧奨:会社が従業員に対して自発的な退職を勧めること。従業員は応じるか拒否するかを自由に選択できる。
- 退職強要:従業員の自由な意思を妨げるような方法で退職を迫ること。具体的な事情によって違法な権利侵害となる場合がある。
- 共通点:会社が従業員に退職を働きかける行為であり、目的や方法、従業員の意思などが重要になる。
会社から退職を勧められたとしても、退職する意思がなければ応じる必要はありません。
また、退職を拒否した後も執拗に退職を迫られるなど、自由な意思決定が妨げられていると考えられる場合には、面談の記録などを残し、必要に応じて公的な相談窓口や専門家に相談しましょう。
退職勧奨を受けた場合は、提示された退職条件や雇用保険上の離職理由、退職後の生活なども確認し、自分の意思に基づいて判断することが大切です。
参考資料・出典
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厚生労働省|労働契約の終了に関するルール
退職勧奨と解雇の違いや、労働者の自由な意思決定を妨げる退職勧奨の問題について確認できます。
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厚生労働省|退職勧奨に関する裁判例
下関商業高校事件などを通じて、退職勧奨が違法な権利侵害となる場合について確認できます。
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ハローワーク|特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
退職勧奨による離職や、早期退職優遇制度を利用した場合の雇用保険上の取り扱いを確認できます。
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厚生労働省|総合労働相談コーナーのご案内
退職勧奨、解雇、嫌がらせなどの職場トラブルについて相談できる公的窓口を確認できます。
